寄付はどこにすべき?社会活動一年生の大学生が問う「信頼できるNPO」の見つけ方

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写真左から、非営利組織評価センター理事長の片山さんと大学生の祝さん

取材:日本財団ジャーナル編集部

この記事のPOINT!

  • 寄付は選挙における「投票活動」と同じ、自分の意思を社会に表明する手段の一つ
  • アメリカの寄付文化はその歴史に根ざしたもの。日本のNPOが学ぶべきものがたくさんある
  • 第三者が組織評価することでNPOの信頼性を高め、みんなが支援しやすい社会を目指す

NPOは、市民との信頼関係があってこそ成り立つ組織である。しかし、東日本大震災の義援金詐欺など一部の団体の不正によって「うさん臭い」「信用できない」といったネガティブなイメージを持つ人がいるのも事実だ。そんなNPOを第三者が評価することで健全なNPOと支援者をつなげ、社会貢献の輪を広げるために、2016年に設立されたのが一般財団法人 「非営利組織評価センター」(別ウィンドウで開く)である。

今回は、同センターの理事長を務める片山正夫(かたやま・まさお)さんにインタビュー。話を伺うのは、フードロス問題(※)に関心を持ち、自身でも解決するためのイベントを仕掛ける大学生の祝とも(いわい・とも)さんだ。彼女も、少しだけNPOという組織に対し不安を抱える市民の一人。社会のために寄付や参加もしたいけど、どこを選んでいいのか分からない…。そんな素朴な疑問を片山さんに投げかけた。

  • 売れ残りや期限切れなど、本来はまだ食べられる食品が廃棄される問題。消費者庁が発表した「食品ロス削減関係参考資料」(令和元年7月11日版)によると、日本国内のフードロスは年間643万トン(平成28年度推計)、1人当たり51キログラムにも上る。

寄付をすることは「社会への意思表明」

祝さん:本日はよろしくお願いします。最初の質問は「寄付」という行為についてです。寄付とは一方的なもので自分へのメリットがない、と思っている人も多いかと思います。寄付する側にとってメリットがないものなのでしょうか?

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大学で社会心理学を専攻する祝さん

片山さん:いきなり核心をつくいい質問ですね。ちょっと視点をずらして「選挙」について考えてみてください。民主主義社会では、市民が「投票」によって国会議員や市長を選び、市民の代わりに彼らが政治的な意思決定をします。しかし、いろいろな価値観を世の中に反映させていくのにそれだけでは不十分だと思いませんか?

選挙の基本は多数決ですから、どうしても少数意見は反映されません。そこで出番となるのがNPOに対する「寄付」です。自分が共感できる活動に取り組む団体に寄付するという行為は選挙投票のようなもので、「寄付を通じてこんな世の中をつくりたい」と自分の意思を表明することでもあるのです。

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気さくにインタビューに応じてくれた非営利組織評価センター理事長の片山さん

祝さん:寄付=投票というお話はとても分かりやすいですね。以前、「買い物」も「投票」の一つであるとして、ゴミ削減に配慮した買い物の普及に取り組む社会活動家の方のお話を聞きました。まさに寄付も同じようなものなんですね。

「共感する寄付」と「信頼する寄付」とは?

祝さん:「寄付をしたい」と思った場合、どうすれば自分に合ったNPOとつながることができますか?

片山さん:寄付には「共感する寄付」と「信頼する寄付」の2つの形があると思います。「共感する寄付」とは、自分が関心を持つ社会課題に取り組む団体へ寄付すること。例えば「子どもの貧困をなんとかしたい」と思っている人が、子ども食堂(※)などの活動を行うNPOに寄付することです。その場合は、自分の関心に合ったNPOをインターネットで探すところから始めるといいでしょう。

  • 地域住民や自治体が主体となって、子どもに無料または安価で食事を提供する取り組み

一方、「とりあえず社会に貢献したいので寄付したい」という人におすすめなのが、「信頼する寄付」です。これはNPOを資金的に支援する団体に寄付することです。寄付したお金は、それらの団体が社会的に困っている人をサポートする活動や社会・自然環境を良くする活動に取り組むNPOに配分してくれます。

一度つながりができればさまざまな情報を提供してくれますから、自分なりの問題意識が芽生えやすく、「共感する寄付」への行動にも結びつきやすくなります。

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NPOが行うボランティア活動に参加する人々。寄付を通して情報を知り、自ら行動を起こす人も多い

祝さん:「信頼する寄付」ならしっかり活動に取り組むNPOを判断して振り分けてくれるので、寄付する方も安心ですね。

ちなみに、インターネットで自分の関心に合ったNPOを探すと、たくさんの団体の情報が表示されると思います。ホームページなどの情報をそのまま鵜呑みにして良いのかという不安もあるのですが、何をポイントに判断すれば良いですか?

片山さん:助成財団から継続的に支援を受けているNPOや、行政と一緒に長く仕事をしているNPOなら信用して良いでしょう。また、実際にNPOが主催するイベントや説明会に参加し、どんな人たちがやっているのか顔を見てみるのも良い方法だと思います。

あとは、私たち非営利組織評価センターの評価・認証を受けているかどうかも大きなポイントでしょうか(笑)。祝さんのおっしゃるとおり、ホームページはとてもかっこいいけど、実際はあまり活動をしていないNPOや、逆にホームページには情報が少ないけれど、活発に意義のある活動をしているNPOもあります。なので、第三者が評価することはとても意義のあることだと思っています。

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祝さん(写真右)からの質問に分かりやすく一つ一つ丁寧に答える片山さん(写真左)

日本のNPOの信頼性を高め、支援するために誕生した「非営利組織評価センター」

祝さん:確かに第三者が評価した情報なら信用できますね。実は、今回非営利組織評価センターの存在を初めて知りました。このセンターが誕生した経緯や日頃行っている活動を教えていただけませんか。

片山さん:誕生した背景ですが、1998年にNPO法人を設立するための法律である「NPO法」(特定非営利活動促進法)ができて以来、NPO法人の数は現在まで5万団体くらいに増えました。NPOも数が増えるに従って、玉石混交(ぎょくせきこんこう)といいますか、一般の人からダーティーな印象を持たれるような団体も出てきたんですね。

そこで、そのNPOが信頼できる団体かどうか第三者機関が厳しい基準に沿って評価し、結果を公表すれば、信頼感を目に見える形にできるんじゃないかと。そのような目的のもと、2016年に非営利組織評価センターは設立されました。

図表:第三者評価制度の仕組みと活用

第三者評価制度の仕組みと活用法を示すイメージ図。非営利組織評価センターが実施する第三者評価制度に申し込んだNPO(寄付金や助成金、行政委託など、広範囲な資金調達を行い社会課題に取り組む)は自己評価の実施、エヴィデンス書類の提供を非営利組織評価センターに行う。非営利組織評価センターは評価基準をクリアしたNPOの情報を公開することで、NPOの信頼性を証明。非営利組織評価センターが公開した情報をもとに、支援者(寄付者、地域コミュニティ財団、企業、助成団体、金融機関、行政)は、NPOを評価し、活動資金の提供やボランティア、プロボノ派遣などを行う。NPOは、支援者に対し活動資金の使途および成果を報告する。
第三者評価制度の仕組み。非営利組織評価センターが第三者の立場からNPOを適正に評価・情報公開することで、NPOと支援先を検討する寄付者や助成財団、企業、行政などとつなぐ

祝さん:どのような基準でNPOを評価しているのですか?

片山さん:評価の方法は2種類あり、まず基礎的な組織運営の状態を評価するのが「ベーシック評価」(別ウィンドウで開く)です。これは、「組織の目的と事業の実施」「ガバナンス」「コンプライアンス」「情報公開」「事務局運営」という5つの領域に対し評価項目(計23基準)を設け、信頼できる組織であるかどうかを評価するものです。

次に、NPOとしてより理想的な姿を評価するのが「アドバンス評価」。これは、目的達成に向けた人材育成や自律した組織の運営・管理、市民との連携・協働、社会に対する責任と情報公開といった領域に対し評価項目(計27基準)を設け、評価員2名を派遣してヒアリングをしながら評価します。

また、アドバンス評価を満たしたNPOには、評価結果を総合的に判断し信頼性の証として「グッドガバナンス認証」(別ウィンドウで開く)を付与しています。

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グッドガバナンス認証マーク。2019年9月末の時点でベーシック評価を受けたNPOは161団体、アドバンス評価が26団体、グッドガバナンス認証を受けたのは13団体になる

これらの評価を受けることは、NPO自身が組織運営に足りない要素を確認し、より健全かつ継続的に運営していく上でも役立ちます。また、一般の方に向けてNPOの健全性もアピールできるという、2つの意義があるのです。

祝さん:評価する側もされる側も大変そうですね!それだけに、評価や認証を受けたNPOには、安心して寄付ができると感じました。

「移民の国」アメリカは、さまざまな施設を民間の力だけでつくり上げてきた歴史がある

祝さん:以前ニューヨークに留学した際、募金活動やボランティアに参加する機会が良くあり、NPOがとても身近な存在にありました。でも、日本ではあまり身近に感じられず…。

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アメリカの寄付文化について語る片山さん

片山さん:アメリカで寄付やボランティア活動が活発な理由は、国家の成り立ちが関係しています。アメリカは移民によってつくられた国。彼らが最初に必要としたのは「教会」「学校」「病院」でした。しかし移民当初、それらを建設してくれる政府や役所はまだ存在しません。そこで仕方なく、自分たちの力でつくりました。「社会に必要なものは、自分たちで寄付を集めてつくる」。この考え方が、アメリカのNPOやボランティアのルーツになっているのです。

祝さん:とても興味深い話ですね。そんな歴史的な背景があったとは。

片山さん:私がアメリカにあるフィランソロピーの研究センターへ訪れた時、お会いした教授がNPOの代表例として挙げたのはハーバード大学やメトロポリタン美術館でした。具体的に言うと、アメリカの建国は1776年ですが、ハーバード大学ができたのは1636年。つまり、アメリカという国家よりも大学の方が先にできた訳ですね。

アメリカには、莫大な資金とボランティアの力で大小さまざまな組織を立ち上げてきたという背景があり、また国民性としても、極端に言えば自分たちの身の回りの大事なことは自分たちでやるから、政府は防衛や外交と通貨管理だけやってくれればいいと考える精神風土なのです。その点が、封建制度を経て近代国家になったヨーロッパや日本とは大きく違いますね。

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現在でもアメリカの大学の中で最も寄付金が多い大学として知られるハーバード大学

祝さん:国家よりも大学が先にできたなんてびっくりです! NPOという概念が生まれた背景が、日本と全く違うんですね。

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片山さんが教えてくれるアメリカの歴史的な話に引き込まれる祝さん

片山さん:その違いは、名刺の肩書きにも見ることができますよ。日本のNPOでは、名刺の肩書きに「理事長」「常務理事」で、組織名も「理事会」「評議員会」「事務局」といった独特の用語が使われます。一方アメリカでは、トップは「プレジデント」や「CEO」、役員は「エグゼクティブ・オフィサー」、役員会は「ボード(取締役会)」など、一般企業と同じ用語が使われます。アメリカのNPOで働く人の意識は、一般企業とほとんど変わらないんですね。NPOで働く人たちが企業に負けないくらいプロフェッショナルで、高い意識を持って活動に取り組んでいるんです。

もちろん、日本でも高い問題意識を持って社会課題に取り組んでいるNPOはたくさんあります。ただ、時にはアメリカのNPOについて学んでみたり、第三者組織評価を利用してみたりするなど、外部に目を向けることで、これまでになかった視点から市民の声や思いなどに触れることができるのではないでしょうか。

祝さん:日本のNPO文化も早くアメリカのように熟成すると良いなと感じました。

片山さん:日本全国のNPOと非営利組織評価センターが協力することで寄付文化が根付けば、より多様な価値観を認め合える社会になると思います。それが、私たちが目指すゴールかな。

祝さん:そんな社会が早く訪れるといいですね。今日は大変勉強になりました。私ももっと積極的に社会活動に関わっていきたいと思います。

非営利組織評価センターの活動を通じて、民間のNPOにも国と変わらぬ信頼が持てる社会をつくりたいと語る片山さん。寄付は私たちが社会に対してさまざまな意思を表明する一つの手段。寄付することで、社会の一員としての実感や充実感をきっと感じられるはず。まずはコンビニの募金箱にお釣りを入れるところからでも始めてみてはいかがだろうか。

撮影:十河英三郎

〈プロフィール〉

片山正夫(かたやま・まさお)

一般財団法人非営利組織評価センター理事長。1958年兵庫県生まれ。(株)西武百貨店文化事業部を経て1989年に(財)セゾン文化財団事務局長に就任。2018年より理事長に。1994~95年、米国ジョンズホプキンス大学公共政策研究所シニアフェローとして、非営利組織のプログラム評価を研究。慶應義塾大学(大学院)での非常勤講師のほか、(公財)公益法人協会、(公財)助成財団センター、(公財)ジョイセフの理事、アーツカウンシル東京カウンシルボード委員(学)国立学園監事などを務める。著書に「セゾン文化財団の挑戦」、共著書に「NPO基礎講座」「プログラム・オフィサー」「民間助成イノベーション」等。
非営利組織評価センター 公式サイト(別ウィンドウで開く)

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