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「日本財団チャリティー自販機」を置いた会社は、社員の社会貢献マインドが高くなる?うわさについて調べてみた

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「日本財団チャリティー自販機」でドリンクを購入する、株式会社MICの中村さん
この記事のPOINT!
  • 日本財団チャリティー自販機は、飲料1本を購入するごとに10円が社会貢献プロジェクトに寄付される
  • 「チャリティー自販機」で買えば、誰でも社会課題の解決に貢献できる
  • 誰もが気軽に寄付できる「チャリティー自販機」で、社会貢献の輪を広げる

取材:日本財団ジャーナル編集部

「社会貢献したいけど、ちょっとハードルが高い」「寄付したお金を正しく使ってくれるのか不安」。そんな人も気軽に寄付できる仕組みを、日本財団はつくっている。その名も「日本財団チャリティー自販機(以下、チャリティー自販機)」(別ウィンドウで開く)だ。

チャリティー自販機は、現在全国の企業等で約7,400台設置されている。導入した企業やドリンクを購入する社員は、どのような思いで自販機を設置し、その結果、どのような変化があったのだろうか。2018年から「チャリティー自販機」を利用している株式会社MICに取材した。

生活に不可欠な「飲み物」を買うだけで、大きな社会貢献に

「チャリティー自販機」の前身は、2008年よりスタートした「日本財団夢の貯金箱」である。「夢の貯金箱」と呼ばれる自販機を設置し、そこから飲料が1本売れるたびに10円寄付される仕組みだ。現在全国に約7,400台設置され、1年間で2億6,000万円の寄付金が集まるまでに成長したこのプロジェクトは当時、「夢の貯金箱総選挙」によって寄付者が支援内容を決定する形をとっていた。

しかし、助けを必要としている人により素早くサポートを届けるため、日本財団が行う支援事業から寄付先を選んでもらう、分かりやすくシンプルな仕組みへと2018年に変更。名称を「日本財団チャリティー自販機」に改めた。

販機による社会貢献、その仕組みは極めてシンプルだ。オフィスなどの施設に「チャリティー自販機」を設置するか、いまある自販機を「チャリティー自販機」に切り替えれば完了である。企業はもちろん、個人での設置も可能だ。

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「チャリティー自販機」。よりスピーディーに支援を届けるべく、「夢の貯金箱」から生まれ変わった

「どのみち自販機を設置するなら」「どのみちジュースを買うなら」、そんな気軽なスタンスで誰もが社会貢献活動に参加できるのが「チャリティー自販機」の最大の特徴と言える。

「夢の貯金箱」と同様に、1本ドリンクが売れるたび10円が寄付される。寄付先となる支援事業は以下の5つだ。

  1. 日本財団 子どもサポートプロジェクト 子どもの貧困対策支援(別ウィンドウで開く)
    • 貧困ゆえに教育や体験の機会を失い、社会から孤立する子どもたちの成長を支援
  2. 日本財団 子どもサポートプロジェクト 難病児と家族支援(別ウィンドウで開く)
    • 医療の発達と共に増加する小児難病や障害。これらと戦う子どもたちとその家族の闘病生活を支援
  3. 日本財団 子どもサポートプロジェクト 夢の奨学金への寄付(別ウィンドウで開く)
    • 社会的養護出身の子どもたちへの進学支援として、給付型奨学金制度を実施
  4. 災害復興支援特別基金(別ウィンドウで開く)
    • 今後予想される大災害の発生時、現場で活動するNPOなどの活動費に対応できるよう支援
  5. 日本財団 HEROs FUND(別ウィンドウで開く)
    • 世界中で活躍するアスリートによる、社会貢献活動を支援

設置の際には、これらの中から支援事業を選ぶことができる。寄付金は経費や手数料など引かれることなく100%支援活動に使用される。

また、全ての飲料メーカーで取扱い可能で、缶・ペットボトル・カップ・紙コップなど、ニーズに合わせた多彩な機種を用意。省エネ機を採用しているため電気代と共にCO2の削減も叶えられ、気軽に社会貢献へ参加できて地球にも優しい、一石二鳥な自販機なのだ。

肩の力を抜いて「せっかくなら、社会貢献しようかな」

「チャリティー自販機」を設置している株式会社「MIC(以下、MIC)」(別ウィンドウで開く)は、1986年からカービジネスをメインに行う企業だ。石油業界を中心としたコンサルティングから、ガソリンスタンド、整備工場や車検工場、レンタカー事業を運営するなど、事業は多岐に渡る。

今回の取材でお話を伺ったのは、取締役の渡邉良夫(わたなべ・よしお)さん。「チャリティー自販機」の導入は社長の増田信夫(ますだ・のぶお)さんの意思によるものとか。

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株式会社MICに勤める渡邉さん

「増田はもともと社会貢献に興味があり、より良い社会を実現するために日頃からアンテナを張り巡らせているんです。行動力もあり、東日本大震災が起きた時には大量の支援物資を持って1人きり、車で福島県まで行ってしまいました」

そんな社長が雑誌の広告で「チャリティー自販機」を見つけたことで、導入が決まったという。当時は日本中で立て続けに自然災害が発生していたこともあり、寄付先は「災害復興支援特別基金」を選んだ。今では全国の事業所で合計11台の「チャリティー自販機」を設置している。

これにより、社内で何か変化は起きただろうか。

「例えば私の場合、車で外回りに出るときには『どうせなら』と前もってチャリティー自販機の飲み物をまとめて買うようになりました。微力でもこれで社会貢献できるなら、うれしい気持ちになります」

「せっかく飲み物を買うなら、チャリティー自販機を使おうかな」。そんな風に考える社員も多いという。自販機を通じて気軽に、そして日常的に社会貢献へ参加しているのだ。

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チャリティー自販機で飲料を購入するMICの中村さん。毎日気軽に社会貢献することができるのが魅力だ

MICが行なっている日常的な社会貢献はもう1つある。毎朝社員総出で、事業所や駅周辺で清掃作業をしているそうだ。タバコの吸殻など大量のごみを、彼らは毎朝袋いっぱい拾っている。

「毎朝掃除するのって気持ち良いものですよ。街はきれいになるし、地域の方ともコミュニケーションが取れるし。良いことずくめです」

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清掃活動中のMICの社員さんたち

肩の力を抜き、習慣として「できる範囲で、無理なく」行動を起こすMIC。「社会貢献って堅苦しい!」彼らの社会貢献のあり方は、そんなイメージを払拭するものだった。

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MIC本社の倉庫に保管された清掃用具

払拭された「社会貢献」や「寄付」のマイナスイメージ

続いて、社員の中村広子(なかむら・ひろこ)さんに「寄付」に対するイメージや「チャリティー自販機」が導入されたことに対する感想を伺った。

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MICに勤める中村さん

——「寄付」に対してどんなイメージをお持ちですか。

中村さん(以下、敬称略):あまり一般的ではない印象です。災害が起きると、海外では市民が当然のように寄付をする文化がありますよね。だけど日本ではまだその文化が根付いていない。それに私自身、道端で募金活動をしている方やNPOを、ついつい疑いの目で見てしまう部分はありますね。

—職場に「チャリティー自販機」が導入されたことで、何か変化はありましたか。

中村:日頃使っている自販機で飲み物を買う。これだけで“社会貢献ができる”ならと、導入以来、飲み物はコンビニに行かず自販機で買うようになりました。

——「チャリティー自販機」を通して得た気づきを教えてください。

中村:“社会貢献”ってなんだかハードルが高くて、自分には無関係なものだと感じていました。特定の人が力を入れている活動で、自分が主体的に参加することはないと思っていたんです。だけど実は100円程度の買い物で、少しずつ社会貢献ができる。これなら私はもちろん、世間の“社会貢献”に対するハードルもぐんと下がりそうですよね。

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チャリティー自販機の前で微笑む渡邊さんと中村さん

「社会のために何かをしたい」という思いを形にすると同時に、「社会貢献って難しそう…」そんな世間の印象をちょっとだけ変えてくれる。そして本当に助けを必要としている人に、大勢の人が手を貸し合う世の中を実現する。「チャリティー自販機」は、そんな可能性のある魔法の自販機と言えるかもしれない。

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撮影:十河英三郎

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