日本財団ジャーナル

必要なのは養育への理解とサポート体制。ウィズ・コロナ時代におけるファミリーホーム支援の在り方

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日本財団の災害復興支援特別基金における支援により送られた衛生用品を手に持つ、若狭さんご夫妻
この記事のPOINT!
  • 経験豊かな里親が5〜6人の子どもを家庭に迎えて養育するファミリーホームでは、新型コロナの自粛期間中は物資や人手不足が著しかった
  • 日本財団では、全国各地のファミリーホームへ衛生用品やタブレットの支援を実施
  • 子どもたちが困難に陥らないために、ファミリーホームへの理解促進とサポート体制の強化が必要

取材:日本財団ジャーナル編集部

親の病気や離婚、虐待などさまざまな事情により、家族のもとで暮らせない子どもを受け入れる場所といえば、児童養護施設や里親家庭などを思い浮かべる人が多いだろう。

しかし、近年新しい養育形態として注目されているのが「ファミリーホーム」だ。

ファミリーホームとは、2009年から始まった制度で、児童養護施設の職員や里親など、経験豊かな養育者が5〜6人の子どもを家庭に迎え入れて育てる、施設と里親の良いところをかけ合わせた形態とも言える。

まだ収束の兆しが見えない新型コロナウイルス感染拡大は、ファミリーホームにも大きな影響を及ぼしている。

今回は、全国のファミリーホームをつなぐ一般社団法人「日本ファミリーホーム協議会」(別ウインドウで開く)・会長の北川聡子(きたがわ・さとこ)さんと、東京・荒川区で、ファミリーホーム「陽気ぐらしの家 わかさ」を営む若狭(わかさ)さんご夫妻に、ウィズ・コロナ時代における養育課題と必要な支援について話を伺った。

足りない衛生用品と食材。スーパーへの買い出しも大きな負担に

「私たちの家庭では、小学校1年生から高校3年生まで、6人の子どもたちが暮らしています。一つの家庭で、複数人の子どもたちを育てるファミリーホームの運営について、『子育ての負担がすごそうですね』とおっしゃる方も多いのですが、実際はそこまでではありません。ファミリーホームの良さとして、幅広い年代の子どもたちがいることにより、大きい子が小さい子の面倒をみるなど、子ども同士のつながりが生まれ、お互いに『育て合える』点があります」

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ファミリーホームでの暮らしについて語る若狭さんご夫妻

6人子どもがいるからと言って、負担が6倍になることはなく、むしろ6分の1に減ると話すのは、ファミリーホーム「陽気ぐらしの家 わかさ」を営む若狭さんご夫妻。

「もちろん、私たちも親としてそれぞれの子どもに向き合う時間も大切にしていますが、子ども同士が支え合える関係性は、社会に自立して人間関係を築く上で大変役に立つと考えています」

若狭さんご夫妻は、里親の期間も含めて20年以上もの間に、20人を超える子どもを養育してきた。

複数の子どもが一緒に暮らすことで、人間性や社会性を培えるファミリーホーム。しかし、新型コロナウイルス感染拡大による自粛期間中は、衛生用品を中心に物資不足に悩まされたという。

「一番大変だったのは、マスクや消毒液といった感染防止用品が手に入りにくかったことですね。子どもたちを守るためにはこういったものが必要不可欠なのですが、一時期は、どこを探しても見つからない状態でした。マスクを手作りしようにも材料が売っていなかったり…」

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若狭さんが自宅にある素材などもかき集めて作った子ども用のマスク。これまでに200枚以上を手作りした

若狭さん宅では、旦那さんの好物であるお酒を工夫して消毒液を作ったり、着物など自宅にある素材なども活用してマスクを作ったりすることで、なんとか乗り切ったという。

それに加えて大きな負担となったのが、毎日の食事作り。正確には食材の確保であった。

「うちは、子どもだけでも6人いるので、毎日の食材の消費量が一般家庭に比べてとても多いんです。一時期、スーパーマーケットなどで買い占めをするお客さんが問題視される時期がありましたが、その時はスーパーでその日の食材を買うのも一苦労。ネット通販を利用するのにも食材が届くまでに時間がかかる状態でしたし。だから、買い物をする時は何軒かのスーパーをまわって他の人の迷惑にならないよう工夫していました」

全国のファミリーホームをまとめる日本ファミリーホーム協議会・会長の北川聡子(きたがわ・さとこ)さんは、若狭さん宅のようなファミリーホームの状況に加え、新型コロナウイルス感染拡大がもたらす子どもの精神面への影響にも注視していたという。

「一時期学校に通えない時期がありましたが、勉強の遅れと共に子どもの気持ち的にも、家から出られないことに対するモヤモヤや、メディアが過剰に恐怖心を煽り立てることによる不安の増大などを心配しておりました」

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日本ファミリーホーム協議会・会長の北川さん。ご自身もファミリーホームを営み複数の子ども養育している 写真提供:一般社団法人日本ファミリーホーム協議会

また、複数の子どもを育てるファミリーホームでは、普段通いのスタッフなどの手を借りて営んでいるところも多いが、新型コロナウイルスの影響でそれも難しくなり、家事が大きな負担となるケースもあったという。

人と人とのつながりと、希望や勇気を届けた支援

そんな中、日本財団は災害復興支援特別基金(新型コロナウイルス緊急支援)を立ち上げ、そこで集まった寄付金を支援の必要なNPOや団体に届ける活動を展開。全国規模のファミリーホーム研究会や、研修会・情報交換、国への要望などを行う日本ファミリーホーム協議会への支援にも力を入れている。

日本ファミリーホーム協議会を通して、全国各地のファミリーホームに衛生用品(消毒用アルコール、マスク、非接触体温計、防護服など)やタブレット購入費などを無償提供し、感染拡大の防止や、ファミリーホーム間の情報共有に取り組んでいる。

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日本財団からの支援で購入したiPadを使って情報交換を行う日本ファミリーホーム協議会の職員 写真提供:一般社団法人日本ファミリーホーム協議会
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日本財団からの支援で購入した消毒液で新型コロナウイルスの感染予防をするファミリーホーム の子どもたち 写真提供:一般社団法人日本ファミリーホーム協議会

「最も必要としていた、アルコール消毒液、マスク、ペーパータオルなどをお送りいただき、本当に助かりました。とくに非接触型の体温計は、体に触れられることを嫌がりがちな障害がある子などの体温を計るのにとても重宝しました」

他にも、全国のファミリーホームから「子ども用マスクが品薄になっていたので、大変ありがたい」「子どもたちの安全を守れるよう頑張っていきたい」といった喜びの声が、日本財団に届いている。

「我が家にも無事に支援物資が届きました。それまでは手作りのものでしのいでいたものが多かったため、消毒液、ペーパータオル、マスク、体温計の支援は本当に助かりました」

日本財団・災害復興支援特別基金による寄付者からの支援を、若狭さんご夫妻も心から喜んでいる。

リアルとオンラインを活用してファミリーホーム の普及を目指す

現在も、支援によるiPadを活用して役員会や、全国各地のファミリーホームとの情報共有やアンケート調査を実施しているという日本ファミリーホーム協議会。

「全国には、北海道から沖縄まで300を超える会員がいますが、いかに経験豊かな養育者といえども、孤独な中での子育ては大変ですよね。今後はiPadなどを最大限に活用しながら、各地のファミリーホームとのつながりを強化していくことが重要だと考えています」

いわゆる「新しい生活様式」下での取り組みについて会長の北川さんは前向きに語る。

一方、若狭さんご夫妻は、ファミリーホームのサポート体制強化に向けて社会に訴えかける。

「今回のコロナ禍で痛感したのは、物資と合わせてマンパワーの大切さです。ファミリーホームは、子どもたちと、彼らを見守る大人たちで構成されます。しかし、もしどこかのファミリーホームで感染が起きてしまったら、誰が子どもたちの面倒を見てくれるのでしょうか」

写真:自ら編集する社会的養護とファミリーホームの理解促進を図る冊子を手にする若狭さんの旦那さん
若狭さんの旦那さんは、編集長として社会的養護とファミリーホームの理解促進を図る冊子も手掛けている

例えば、行政をはじめ、社会的養護(※)の経験がある大人や、社会課題に関心がある学生などと連携することで、有事の際には、誰かがすぐにサポートに入れる仕組みづくりが必要ではないかと語る。

  • 子どもが家庭において健やかに養育されるよう実親や親族を支援する一方、親の虐待や病気等の理由により親元で暮らすことのできない子どもを里親家庭や児童養護施設等において公的に養育する仕組み
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温かい人柄、明るい笑顔が印象的な若狭さんご夫妻

現在、社会的養護のもと里親など「家庭環境」の中で暮らす子どもは20パーセントに満たない(約4万5,000人のうち7,000人程度)。特定の大人と愛着関係を育むことは子どもの発育にとって大切なことでありながら、そのような環境下で暮らすことのできない子どもが多くいる。

そんな子どもたちにとって、希望の受け皿とも言えるファミリーホーム。里親だけでなく子どもたち同士が絆を深めながら成長していくことのできるこの養育形態の普及と共に、社会全体でサポートしていく重要性を、取材を通して強く感じた。

撮影:佐藤潮