日本財団ジャーナル

サステナブルへの思いをファッションに込めて。いま、マリエさんが若者に伝えたいこと

写真
モデルとして、デザイナーとして、経営者として活躍するマリエさん
この記事のPOINT!
  • ファッションの在り方を見直さなければ、無駄にものを消費し続けることになる
  • サステナブルを難しく考えない。好きなこと、楽しいと感じることを入り口にしてほしい
  • サステナブルなファッションもビジネス。利益が生まれてこそ未来は変わっていく

取材:日本財団ジャーナル編集部

サステナブル(※1)やエシカル(※2)を意識したファッションブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカル・マリエ・デマレ)」(別ウィンドウで開く)のデザイナーであり経営者としても活躍する、モデルのマリエさん。ファッションを着る人から作る人へと転身した彼女は、近しい世代でもある若い世代の気持ちがなんとなく分かるからこそ、大好きなファッションを通してサステナブルな取り組みについて伝えたいと語る。

  • ※1.人間・社会・地球環境における持続可能な発展
  • ※2.直訳すると「倫理的・道徳的」。近年は「環境保全・社会貢献」という意味合いで使用される

今秋発表された2021年春夏コレクションに込めた思いや、今の世の中について感じること、人や地球に優しい未来をつくっていくためのヒントを、マリエさんに伺った。

値段うんぬんではなく、服は大切に着てほしい

――マリエさんがPASCAL MARIE DESMARAISを立ち上げられた経緯をお聞かせいただけますか。

マリエさん(以下、敬称略):2017年にブランドを立ち上げて、先日4回目の展示会を終えました。最初は、日本の女の子たちやファンの人たちに自分が学んできたデザインの技術で恩返しをしたいと考えて、8年前に自分の会社を設立したんです。日本の女性たちが働く環境を、ファッションを通してもう少しおしゃれで楽しいものにしたいと、エステサロンや企業の制服を手掛けていました。

そこから、もっとダイレクトに自分の思いや感謝の気持ちをみんなに届けられる方法はないかと考えた時に、自分のブランドを立ち上げようと思ったんです。最初は資金もなかったけど、ファッションに関わるいろんな場所を巡る旅に出かけました。その中で出合う資材や、廃棄物を見てすごくもったいないと感じることが多く、安く譲っていただいて新しいアイテムやファッションに作り変えていこうと取り組み始めたのがきっかけです。

写真
自身のブランドを立ち上げた経緯について語るマリエさん

――2020年10月に展示会を開催されましたが、新作のコンセプトはどういったものでしょうか。

マリエ:『Don’t make shit for another shit(理解のない人たちのために、これ以上無駄なものを作ることはやめよう)』というコンセプトです。

例えば「ファッション」と「服」って全く別のものだと思うんです。大量に在庫処分をしているような激安衣料店では、セーターが500円とかで売られていたりする。そのお店に訪れるお客さんは、単に「服=着るもの」を求めていて「ファッション=おしゃれ」を求めているわけではないのでは…。そう感じた時に、在庫処分は世の中に必要だと思う一方で、作り手はこれだけの服を作る必要があるのかなと、考えさせられました。値段うんぬんではなく、服は大切に着てほしい。そうでないと作る側も着る側も、ものを無駄に消費し続けることになってしまうので。

写真
PASCAL MARIE DESMARAISを象徴するサステナブルデニムの最新作

コンセプトはもう一つ。具体的には「HATERS(ヘイターズ)」という言葉を使ってグラフィック展開をしています。いわゆる「意識高い系」と言われている人たちを(ネット上で)叩いたり、誰かを誹謗中傷したりする人たちを、アメリカでヘイターズと呼ぶんですが、最近日本でもヘイターズになっている人が多いんじゃないかと感じていて、それってどうなの?と。他人への理解がなく、自分に十分な知識もないのに誰かを否定することに疑問を唱えたかったんです。

写真
HATERSをコンセプトにした新作ロングTシャツ

サステナビリティが進まない卸や小売

――マリエさんのファッションやデザインのインスピレーションは、普段どういうところから湧いてくるのでしょうか。

マリエ:一番のインスピレーションは「見間違い」から湧いてくるんですよ。それほど目が悪いわけではないのですが、遠くから歩いてきた女の子の服を見て「何あれ?とってもかわいいジャケット!」と思っていたら、近くで見ると想像していたものと全然違った、みたいな(笑)。その時、自分が最初に想像したかわいいものを描きとめておくんです。それを具現化していくことが多いですね。

コロナの自粛期間中はなかなか外に出かけるチャンスもなくて。この間、久しぶりに表参道で人と待ち合わせして、ベンチに座って行き交う人を見ていた時に、これが足りなかった!と感じました。「あの人の着ている服、かわいい」とか、「あれが流行っているって聞いていたけど、本当に履いている人がいるんだ」とか。コロナによって、改めて街に出て人を観察することってすごく大事なことなんだと痛感しました。

――欧米や日本の企業のサステナブルな取り組みについては、どのように感じていらっしゃいますか。

マリエ:世界的には良い方向で進んでいると感じています。例えば、ハイブランドではBOTTEGA VENETA(ボッテガ・ベネタ)のクリエイティブ・ディレクターに就任した34歳のダニエル・リーさんがサステナブルやジェンダーレス(※)なアイテムを発表したり、日本でもスーパーやコンビニでプラスチックバッグが有料になったり、少しずつ良い方向に変わってきていますよね。

  • 男女の性差をなくしていこうという考え方

一方で、まだまだ難しいのは卸先や小売の側かもしれません。例えば、私たちが手掛ける廃材を使った一つひとつ表情が違う商品などは、ちょっと苦い顔をされることが多いですね。バイヤーさんが良いと思っても、会社が決めた基準や規則に即していないといけないので、全部の色が一緒で、きれいなものじゃないと買い取れないとか。すごく残念だし、変えていかなければいけない未来だなと思います。

楽しみながらサステナブルの知識を深めてほしい

――マリエさんから若い人たちに伝えたい、サステナブルな取り組みへのヒントなどあれば教えていただけますか。

マリエ:堅苦しく考えなくていいんじゃないかな。例えば、「環境のために、ファストファッションを着なくなりました」と言う若い人がいるのですが、今、H&M(エイチ・アンド・エム)やZARA(ザラ)は企業としてサステナブルな取り組みに力を入れているんですね。私もずっと大事に着ているH&Mのジャケットがあります。すごく安いものでも自分が着たいと思ったら、それがファストファッションでもいいと思う。何かをしちゃダメ、と縛っていくよりも、一緒になってサステナブルな未来をつくるための楽しさを覚えていった方がいいですよね。

若い女の子たちと話すときは、自分が大好きなファッションから入ります。最初は「マリエちゃんのそのセーターかわいいね」とか「このマグカップかわいいね」から入ってもらって構わないんです。「これ、小さく畳めて、持ち運びに便利だよ」「しかもBPA(プラスチック容器から溶け出す有害物質)フリーなんだよ」って言うと「BPAって何ですか?」という話になったり。楽しいところから入ってもらって、最終的にものを選ぶときの選択肢を知ってもらえるとうれしいです。

あと若い人たちには、自分の言葉で主張ができるようになってほしいと思います。難しい言葉を使ったり、大人ぶったりする必要は全然ないんです。ただし、知識と理解を増やしていくことは必要なので、勉強することも忘れないでほしい。知識がないと相手を思いやれなかったり、自分が勉強不足だと真実は見えてこなかったりするので。そして自分で考えて、サステナブルについても自分の言葉で楽しく語れるようになってほしいですね。

写真
PASCAL MARIE DESMARAISで手掛けたBPA不使用のマグカップ

サステナブルがビジネスとして成立すれば、未来は変わっていく

――マリエさんは、日本財団が地域密着型の金融機関と連携し、NPOや社会起業家を応援する「わがまち基金」(別ウィンドウで開く)の一環で、兵庫県の但馬信用金庫が取り組むプロジェクトにも参加されたそうですね。

マリエ:但馬信用金庫の方が、私が地方創生に関わりたい、ローカルの職人さんと一緒にものづくりがしたいって言っていたことを、どこかで調べてくださり声をかけていただいたんです。「豊岡市はこんなに素晴らしい技術を持った人たちがたくさんいるんですよ」って、わざわざ東京までお話しに来てくださいました。その後、1年以上かけて何度か豊岡市に足を運んで、鞄職人のモノづくりの素晴らしさや、若い人たちのモチベーションに惚れ込み、いくつか作品づくりに関わらせていただききました。

そこで出会った職人さんが着ていた作業用のジャケットが本当にかっこよかったので、「コラボしましょうよ」と持ちかけて、一緒にジャケットを作ったり、中国のファーを作る会社から引き取った端切れを私たちがパッチワークにして、バッグを作ったりもしました。いろいろな地方でお話を聞くことで、知識を得られるし、ワクワクしながらものづくりができますよね。

――2020年、環境省がSDGsのある暮らしを提案する「森里川海プロジェクト」(別ウィンドウで開く)のアンバサダーに就任されましたが、その経緯についても教えてください。

マリエ:ニュージーランドでサステナブルな暮らしを実践されている、執筆家の四隅大輔(よすみ・だいすけ)さんと知り合うきっかけがあり、いろいろな分野のプロフェッショナルな方たちが意見を交換する、勉強会みたいなものにお声がけいただいたんです。ファッションのことを語れる人がいなかったので、参加して話をしてくれないかと。

その流れから、環境省の『森里川海アンバサダー』の一員としてお誘いいただきました。SNSの中にコミュニティを設けて毎日情報をシェアしたり、この課題を解決して行こうとか活発に意見を交わしたりして、とても勉強になります。小泉進次郎(こいずみ・しんじろう)大臣ともお話しさせていただき、私のJ-WAVEの番組にもゲストとして来ていただきました。

写真
ファッションを通した活動について語るマリエさん

――ファッションを通してさまざまな活動に参加されているマリエさんですが、経営者としてサステブルなものづくりについてお聞かせください。

マリエ:ファッションというビジネスでは、サステナブルやエコだと言っても、やはり売上を出していかなければいけない。どうやって利益に変えていくかは、しっかり考える必要があると感じています。日本は社会のための活動は利益度外視で行うべきものとする風潮がまだ強いと感じています。けれど、企業活動は利益を生まないと続いていかないですよね。社会に良い活動から利益が生まれるとなったら、もっとやっていこうよ!となって未来が変わっていく。それが大事だと思っています。

――マリエさんのこれからの活動についてお話しいただけますか。

マリエ:まずはブランドの認知度をもっと上げて、自分のやっている活動をいろんな人に知ってもらうことが一番の目標です。そして2021年、もしコロナがちゃんと収束したら海外にもどんどん進出していきたいなと思っています。

新しい活動としては、WWDというファッションメディアと連動してスタートする、“プラスティックモンスター”というファッションからアプローチする環境キャラクターをPASCAL MARIE DESMARAISがDUNK WELLという新鋭アーティストと共に開発して、4コマ漫画にして展開していきます。ビニール袋をかぶっているキャラクターなんですが、例えば「過剰包装」がテーマだったり、ファッション界の産業廃棄物の量などをテーマに展開。インスタグラム(別ウィンドウで開く)でも展開していくので、皆さんにもぜひチェックしてほしいです。

撮影:永西永実

〈プロフィール〉

マリエ

モデル・タレント・デザイナー。東京都出身。10歳の時にスカウトされ、モデル活動を始める。2005年、ファッション雑誌「ViVi」(講談社)の人気モデルとして一躍注目され、「東京ガールズコレクション」などに出演。その後、「アッコにおまかせ」や「笑っていいとも!」など情報バラエティ番組でもレギュラーとして活躍。2011年9月、アメリカ・ニューヨークのパーソンズ美術大学に留学。2017年、ファッションブランド『PASCAL MARIE DESMARAIS』を立ち上げる。
PASCAL MARIE DESMARAIS 公式サイト(別ウィンドウで開く)
PASCAL MARIE DESMARAIS 公式インスタグラム(別ウィンドウで開く)