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【増え続ける海洋ごみ】独自技術で廃ペットボトルをメガネフレームに。プラスチック製品メーカーの海ごみゼロへの挑戦

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廃棄されたペットボトルから生まれたメガネフレームを採用したサングラス
この記事のPOINT!
  • 世界には貧富の差により処理に困ったごみで生活する地域や人々が存在する
  • 内田プラスチックでは、廃棄されたペットボトルを利用してメガネフレームを開発することに成功
  • 海洋ごみをはじめ環境問題、貧困問題の解決に貢献するため、さらなる商品・技術開発を目指す

取材:日本財団ジャーナル編集部

いま、世界中で大きな問題となっている海洋ごみ。このまま何もしなければ、2050年には魚よりもプラスチックごみの量が多くなる(別ウィンドウで開く)と言われている。

特集「増え続ける海洋ごみ」では、人間が生み出すごみから海と生き物たちを守るためのさまざまな取り組みを通して私たちにできることを考え、伝えていきたい。

2019年より日本財団と環境省が実施する、海洋ごみ対策の優れた取り組みを全国から募集・表彰し、その取り組みを国内外に向けて発信する「海ごみゼロアワード」(別ウィンドウで開く)。その2020年度のイノベーション部門において「日本財団賞」を受賞したのは、眼鏡の生産地として有名な福井県鯖江市に本拠地を置くプラスチック製品メーカー、有限会社内田プラスチック(別ウィンドウで開く)だ。廃棄されたペットボトルを再利用したメガネフレームを開発し、製品化することに成功した。独自の技術により、環境に配慮しながらも低価格を実現し、サングラスや老眼鏡を世に送り出している。

今回は代表取締役社長の内田栄時(うちだ・えいじ)さんに、この取り組みを始めたきっかけから、製品化に至るまでの裏側についてお話を伺った。

ごみを資源化することで変わる世界

フィリピンの首都、マニラから20キロメートルほど離れた場所にあるスラム街「スモーキーマウンテン」。自然発火したごみ山からは常に煙が立ち上っており、この名前が付けられたという。

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スモーキーマウンテンの様子。写真提供:有限会社内田プラスチック

2014年3月、内田さんとその息子さんはフィリピンの空港に降り立ち、スモーキーマウンテンへと向かった。

「知り合いから、日本のボランティア団体のスタッフもしていたフィリピン人女性がギャングに銃殺され、そのお子さんだけが生きながらえたと聞きました。そのお子さんのために何か支援がしたいと思い、当時小学生だった息子を連れてフィリピンに飛ぶことにしたんです」

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オンラインでインタビューに応えてくれた内田さん

息子さんにとっては初めての海外。そして、スモーキーマウンテンでは、頻繁に殺傷事件が起きているという。一緒に連れていくに当たって、息子さんには絶対に自分から離れないことを約束させたと言う内田さん。

そんな危険を冒してまで同行させた理由には、息子さんに、豊かさも貧しさも、戦争も平和も善も悪も全てがある本当の世界を見て、そこで何かを学んでほしかったから。実際に訪れた現地の実情は、内田さんにとっても衝撃の連続だったと言う。

「スモーキーマウンテンに足を運び、驚きを受けました。そこに暮らす人の多くが、食糧不足のため体が小さく、毎日100キログラム近くのごみを集めて1日200円ほどの収入を得ていました。その時、思ったんです。これらのごみを加工して製品を作り、付加価値を付けて売ることができれば、人々の暮らしはもう少し改善されるんじゃないかと」

会社の代表を務めながら生粋の技術者でもある内田さんの中で、ごみと貧困問題、そしてその解決の糸口が結びついた瞬間であった。

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内田さんが今も時折連絡を取り合うスモーキーマウンテンで暮らす人々。写真上段真ん中が内田さん、2段目右から2人目が息子さん(2014年撮影)。写真提供:有限会社内田プラスチック

実際にこの後、息子さんとごみを集めて製品化をイメージした植木鉢を作る実験を行い、夏休みの宿題として発表したという。当時の息子さんの文章もとても深い。

「スモーキーマウンテンに来てビックリしたのは、みんな体がとても小さいことです。お金がなくてご飯が食べられないからです。少し調べてみると、飢餓になるのは食糧が十分に作られていないからではありません。(省略)貧困と富を考えるとき、全体が貧しいのではなく、富が偏っているのです。アメリカや中国では、1パーセントの人々が、全体の40パーセントの富を独占しています。(省略)幸せになるためには、人生に調和を生み出さないといけません。家庭、健康、物質的な豊かさ、精神的な豊かさ、時間的余裕、知識、人間関係。多くの場合は、そのいくつかが満たされ、そのいくつかが満たされません」

世界には富の偏りがある。それが目に見えるのが、富の代償に溜まったごみの山だ。現にフィリピンのスモーキーマウンテンには、マニラから多くのごみがしわ寄せとして集まっている。

これは海洋ごみの問題にも近しいものがあるように思えた。人の暮らしが豊かになる代償がごみとなって海に流れ込み、海の生き物たちの暮らしを脅かす。内田さんの話を聞きながら、そう感じた。

鯖江市、眼鏡作りの新たな歴史の一歩

そんな内田さんが、廃棄されたペットボトルからメガネフレームを作り始めたのは、2017年頃から。

「スモーキーマウンテンでの体験に加えて、もともとプラスチック業者として、プラスチックが環境を汚染している問題を何とかしたいという思いがありました。子どもたちに、私たちが子どもの時に遊んだようなきれいな海を残したいと。そんな折に、アメリカの大手飲料メーカーがペットボトルで何か商品を作れる会社を探しているという、お話を耳にしました。結局そのメーカーさんとはご縁はありませんでしたが、私が暮らしている鯖江市は世界三大眼鏡生産地の1つで、日本のメガネフレームの生産において90パーセント以上のシェアを誇っています。そんな鯖江の魅力を生かせたらと考え、自ら使用済みペットボトルでメガネフレームを作ることに挑戦し始めたのです」

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廃ペットボトルを利用したメガネフレームの開発について語る内田さん

1959年に創業して以来、漆器風のプラスチック食器などを製造してきた内田プラスチック。これまでも燃やしても無公害のプラスチックや、塗装してもリサイクルできるプラスチックなど、製品作りを通した環境対策に取り組んできた。

メガネフレーム自体は、鯖江市内にある眼鏡商社から依頼を受けて2016年頃から手掛けるようになった。とはいえ、廃棄されたペットボトルを利用したメガネフレームの開発は、試行錯誤の繰り返しで容易なことではなかった。

「製作の流れとしては、リサイクル業者から購入した使用済みのペットボトルを洗浄、粉砕した後に、溶かして加工するのですが、柔軟性を持たせながら頑丈さを保つことに四苦八苦しました。プラスチックは紫外線に当たると劣化しやすいので、直射日光に当たっても大丈夫なように材料の配合など工夫しました。完成するまで2〜3万個は作り直したでしょうか」

そうして誕生したのが、メガネフレーム3種類に、サングラスフレーム2種類、老眼鏡のフレーム1種類だ。

写真:iOFT主催第24回日本メガネ大賞2021を受賞したペットリサイクルサングラス。
・世界で唯一の独自技術
・PETボトル1本=フレーム1枚
・PETボトルリサイクル推奨マック商品
・国内産【指定PETボトル】リサイクル材を使用
・海洋浄化のための【海の羽根募金】に収益の一部を寄付
・intertek認証のバイオ素材レンズ【BD8 BIO LENS】選択可能
ペットボトルから生まれたサングラス。2021年の日本メガネ大賞(機能・技術 部門)も受賞した。写真提供:有限会社内田プラスチック

環境に優しいメガネフレームから生まれるつながり

日本財団と環境省が実施する「海ごみゼロアワード」に参加した理由については、一時期、新型コロナウイルスによる影響で事業が停滞気味だったという内田さん。

「ちょうど手が空いたタイミングに募集の広告を見かけて、少しでも環境保全の大切さを社会に発信できたらと思い、応募させていただきました。普段は、あまり注目されることがなかったので、今回の受賞により多くの反響をいただき、本当にうれしかったです」

「海ごみゼロアワード」によって新しいつながりも生まれたと言う。

「環境問題について『子どもたちにもっと興味を持ってほしいので講師に来てくれませんか』と、地元の学校から呼ばれる機会も増えました。これは私にとっても、改めて環境問題について向き合ういい経験になっています」

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地元の学校の学生たちと記念撮影する内田さん(写真上段左から6人目)。写真提供:有限会社内田プラスチック

今後の展望については「さらにバリエーションを増やして、スポーツグラスなども作って行きたいですね」と語るが、内田さんはさらに大きな挑戦に踏み出そうとしている。

「フレームだけでなく、海ごみをそのまま再利用できないかと考えています。現在のメガネフレームは、きれいに洗浄されたプラスチックを使用したもの。実際の海ごみは砂や木くずなどプラスチックだけではなく雑多なものが含まれており、それを取り除くことは簡単なことではありません。だからそのまま加工して、歩道のレンガや植木鉢など別のものに加工できたら、海ごみ問題の解決に少しでも貢献できるんじゃないかと思っています」

大きな夢を抱き、地道に試行錯誤を繰り返しながら、商品を開発し続ける内田プラスチック。いつか、貧富の差の象徴であった、スモーキーマウンテンのごみや環境に悪影響を及ぼし続ける海洋ごみが、資源の山に見える世界をつくってほしい。

有限会社内田プラスチック コーポレートサイト(別ウィンドウで開く)

特集【増え続ける海洋ごみ】