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【ソーシャル人】参加動機は多様でいい。ボランティア活動を後押しし、確実に支援の手が届く社会に
- 日本人のボランティア活動経験者は少なく、中でも企業勤めの人々の経験率が低い
- ボランティア活動に関する情報不足を解決することが、社会貢献の輪を広げる一助に
- 参加動機は多様でいい。自分のための社会貢献活動が未来を豊かにする
取材:日本財団ジャーナル編集部
内閣府が3年に1度実施している「市民の社会貢献に関する実態調査」の結果(※)では、2018年の1年間のうちボランティア活動経験のある人が17パーセント、ない人が83パーセントと、圧倒的に経験者が少ない。
- ※ 出典:令和元年度 市民の社会貢献に関する実態調査 報告書。全国に居住する満20歳以上の男女8,000人を対象
中でもボランティア経験率が低いのは、会社員12.9パーセント、派遣社員・契約社員・パート・アルバイト14.3パーセントといった、企業勤めの人々。ボランティア活動への参加の妨げとなる問いに対しては、「参加する時間がない」51.4パーセント、「ボランティア活動に関する十分な情報がない34.1パーセント、「参加するための休暇が取りにくい」28.3パーセントと、時間的制約と情報不足を理由に挙げる人が多い。
図表:ボランティア経験活動の有無
図表:職業別ボランティア経験率
図表:ボランティア活動への参加の妨げになる要因(複数回答)
国内最大級のボランテイア募集サイト「activo」(外部リンク)を運営する株式会社activo代表の小澤佳祐(おざわ・けいすけ)さんは、ボランティア活動に関する情報不足を解決し、NPOや社会的企業の活動を支え、「助けを必要としている人たちに確実に支援の手が届く社会」の実現に取り組んでいる。
そんな小澤さんに、日本のボランティア活動を後押しするためのヒントについて話を伺った。
学生時代に知ったボランティアの魅力と課題
「大学1年の夏休みに、インドネシアの貧困地域で家を立てるというボランティアに参加したんです。友達の誘いと、有意義な夏休みの思い出がほしいといった単純な理由からでした。こんな軽い気持ちで参加したボランティアが、とにかく楽しかった。私の中でボランティアに対するイメージが180度変わりました。とても得るものが多かったんです。現地で先輩や友人と一緒になって家を建てた達成感や、一緒に遊んだ子どもたちの笑顔など、どれも、大学生活やアルバイトでは決して得られないものでした」
その後も、東日本大震災などいくつものボランティア活動に参加し、気が付けば非営利組織や市民社会を研究するゼミに所属していたという小澤さん。その中で、市民の想いから自主的な活動が生まれることの尊さや、社会的な意義深さを痛感すると同時に、NPOが抱える問題も見えてきたと言う。
「国内のソーシャルセクターは給与水準が低く、寄付金額が国際的に見て低水準。それ故に、多くの団体が社会課題を解決するための人材不足に悩まされていることを知りました。ちょうどその時、私はIT系企業でインターンをしていたこともあり、テクノロジーを使ってその問題を解決できないかと考えるようになったんです」
限られたエネルギー・資源、環境問題、少子高齢化など、日本はとても多くの課題を抱えている。これらを国や企業だけで解決することが難しく、今後ますますNPOや社会的企業の役割が重要になるはず。しかし、そういったソーシャルセクターの資金調達やリーダー育成などの中間支援の担い手はいるものの、ボランティアの参加に関してはその担い手が不足していると、小澤さんは感じていた。
「ボランティア活動はソーシャルセクターに関わる入り口とも言えます。しかし、Web上の情報が圧倒的に少なかった。だから、堅いイメージを払拭したり、参加したりする機会が少ないのだと。それを解決するために在学中の2013年に立ち上げたのがactivoという『何か力になりたい人』と『力を必要としている非営利組織』をつなぐプラットフォームです」
企業の社会貢献活動を後押しし、課題解決を加速させる
activoのミッションは、「国内ソーシャルセクターの人材・資金不足を解決するプラットフォームをつくり、関わる全ての人々を幸せに」することだ。
現在(2021年11月時点)で、約4,500の団体が登録し、月間で約7,000人の応募者が発生している。ボランティア募集告知を無料で掲載できるのも特徴だ。
サイトを立ち上げた当初や大学卒業後は、ほとんど無給の状態が続いたという。
「ITプラットフォームは立ち上げに時間やお金がかかり、さらにサービス性質上、NPOの方々から高い料金をいただくことも難しいという状況でした。しかし、社会にとっては必要な事業ですし、高いレベルで実現させることができれば、次々に業界の課題を解決することもできるポテンシャルを秘めていると可能性を感じ、諦めずに続けることができました」
地道にNPOや社会的企業を訪ねる活動を続けながら、何度もサイトの改良を繰り返すうちに、口コミを中心に利用者が増えていったという。
「activoを立ち上げるまでは、ボランティアを募集するサイトもあるにはありましたが、スマホ対応もせず、写真もなく検索もまともにできないようなものばかりでした。募集数自体も少なかった。だから、まずは誰もが手軽にしっかりとボランティア情報を探せて、応募することができる。そして、たくさんの魅力的な活動写真が掲載されているようなサイトを目指しました」
「活動場所」から探してみると、「この地域にこんな活動があるんだ!」という発見が多い。「活動テーマ」から探してみると、同じテーマの社会課題に対し団体によってさまざまな取り組み方があるのが興味深く、ボランティア活動というよりもサークル活動を探しているような感覚だ。
また、創業やプロジェクト発足の経緯、取り組む社会課題など、ブログ感覚でアップできる「ストーリー」ページでは、掲載団体それぞれの想いが自分たちの言葉で語られているのも、ボランティに応募する上で、とても参考になる。
ビジネスとしての難しさを乗り越えてactivoを運営してきた小澤さんは、その中で培ってきた資産をもとに、よりスケールアップした社会課題の解決を目指している。
「activoの活動を通して、ボランティアに関する情報が蓄積され、社会貢献意欲の高い個人とのつながりもできました。それを活かして、企業の従業員向けにボランティア情報を提供するなど、より大きな課題の解決につながるサービスを展開できればと」
具体的には「企業が従業員のボランティア活動を後押しするための専用ポータルサービスの提供」「企業がSDGsやCSRの観点でNPOやボランティアの活動に協賛できる仕組みづくり」「社会福祉協議会やボランティアセンターなど、産官学で連携して日本の市民社会成熟を支える仕組みづくり」など模索中だと話す。
参加動機は多様でいい。少しでも関心を抱いたら参加してみる
ボランティア活動は、あくまでも個人の「自発性」によって支えられているもの。だからこそ、さまざまな目的を抱えて参加する人がおり、個々のニーズにマッチした多様な取り組みが存在し、結果それが社会を支えていると、小澤さんは話す。
「『被災地の力になりたい』『この社会課題に詳しくなりたい、行動できる自分でありたい』『楽しい週末を過ごしたい』『同じ関心の人々とつながりたい、コミュニティに属したい』など、動機はいろいろあっていいと思うんです。少しでも関心を抱いたら、まずは参加してみる。その背中を押すような情報を私たちが発信することが、NPOや社会的企業といったソーシャルセクターの活動を支え、助けを必要としている人々に確実に支援を届けるための社会を実現できると考えています」
そのためにも、日本人にとってボランティア活動をもっと身近な存在にしたいと語る小澤さん。
「何となくサイトを眺め、直感で気になるものを見つけたら、どこに惹かれたのか自分に問いかけてみるだけでもいいです。社会貢献とか堅苦しいイメージにとらわれずに、もっと気軽にボランティア活動に参加してほしいですね」
「役に立ちたい」「誰かのために」という気持ちは尊いものだ。しかし、自分の興味関心に素直になり、ボランティアに参加するという姿勢がその経験をより豊かなものにしてくれるはず。あなたも自分のための社会貢献活動の一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。
〈プロフィール〉
小澤佳祐(おざわ・けいすけ)
1991年、京都生まれ。立命館大学在学中に、学生ベンチャー企業内で国内最大級のボランティア募集情報サイト「activo」の立ち上げを行い、卒業後もactivoのサービス運営を続けてきた。2018年1月より、株式会社activoとして事業譲受。
ボランティア求人サイト「activo」公式サイト(外部リンク)
- ※ 掲載情報は記事作成当時のものとなります。