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誰もが健康で幸せに過ごせる未来に——中外製薬の寄付・社会貢献活動に込めたおもい

写真:中外製薬オフィスの企業ロゴの前で、笑顔を向ける酒井めぐみさん
中外製薬サステナビリティ推進部 社会貢献グループの酒井めぐみさん
この記事のPOINT!
  • 中外製薬が、公益のために私財を寄付した個人や企業・団体に授与される紺綬褒章を受章
  • 中外製薬では、新型コロナウイルスの感染拡大において、医薬品の研究・開発と共に社会貢献活動に力を入れている
  • 事業と社会貢献活動を通じて、誰もが健康で幸せに過ごせる社会を目指す

取材:日本財団ジャーナル編集部

国や社会に貢献する人々へ国から与えられる日本の褒章の一つで、公益のために私財を寄付した個人や企業・団体に授与される「紺綬褒章(こんじゅほうしょう)」。その公益団体認定を受けている日本財団にて、2021年7月6日に伝達式(※)が行われた。

  • 賞状と褒章が贈られる式典

受章者は、日本財団とタレントの稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんによる「新しい地図」が立ち上げた「LOVE POCKET FUND(愛のポケット基金)」(外部リンク)が展開する新型コロナウイルスプロジェクトに寄付をした中外製薬株式会社(外部リンク)を含む個人や団体。

大手医薬品メーカーの中外製薬では、会社が定めた行動規準(中外製薬グループ コード・オブ・コンダクト)(外部リンク)の中でも社会貢献活動の重要性を掲げ、医療や福祉、地域社会に向けてさまざまな支援活動を行なっている。

今回は、サステナビリティ推進部 社会貢献グループの酒井(さかい)めぐみさんに、紺綬褒章受章に対する思い、新型コロナウイルス感染症を中心とする社会支援の取り組みについてお話を伺った。

必要な人に支援の手を届けたい

日本には明治時代より、国や社会のために尽くした功労者の栄誉を表彰する栄典制度が設けられている。毎年4月29日(昭和の日)と11月3日(文化の日)に授与される「春秋褒章叙勲(しゅんじゅうほうしょう)」はニュースや新聞でもよく取り上げられるため、見聞きしたことがあるという人も少なくないだろう。

褒章には、自己の危難を顧みず人命救助に尽くした人に授与される「紅綬(こうじゅ)褒章」や、長年にわたって社会奉仕活動(ボランティア活動)に従事し高い実績を挙げた人に授与される「緑綬(りょくじゅ)褒章」、科学技術分野における発明・発見、学術、スポーツ、芸術文化分野における優れた業績を挙げた人に授与される「紫綬(しじゅ)褒章」など6種類(※)がある。

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日本財団で行われた紺綬褒章伝達式の様子

大正7年(1918年)に制定された紺綬褒章は、公益のために私財を寄付した人々に授与されるもので、公的機関や公益法人などに500万円以上寄付した個人、1,000万円以上寄付した企業・団体が対象となる。今回中外製薬はLOVE POCKET FUNDへ4,000万円を寄付した功績が認められ、国から贈られることとなった。

LOVE POCKET FUNDへは現在(2021年9月27日時点)までに4億6,648万9,234円の寄付金が集まっており、医療提供体制や医療機器の整備、子どもたちへの緊急食支援、里親家庭への衛生用品やタブレットの支援などさまざまな形で活用されている。

酒井さんは「もともと当社が取り組む社会貢献活動は日本財団さんの取り組みと親和性が高く、これまでも障がい者スポーツのサポートなどを通してご縁がありました。活動もよく見聞きしていましたので、日本財団さんを通してなら本当に必要な方のもとへ届けられると思いました。自社で届けられる支援の範囲には限りがあり、特に医療関係者の方々に幅広く、直接支援的に支援させていただくことが難しい中で、幅広いネットワークを持ち実績が豊かな日本財団さんなら、安心して届けていただけると考えたのです」と、寄付に至った理由を話す。

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LOVE POCKET FUNDへの寄付理由について語る酒井さん

「昼夜、第一線に立っている国内の医療関係者の皆さまや、新型コロナウイルスの感染拡大によって困難な状況にいる方々を応援したいという気持ちがあり、私たちに何かできることはないかと模索していました。そんな中でLOVE POCKET FUNDの活動を知りました。医療関係者だけでなく、感染拡大により更なる困難を抱えている方々に対して迅速で幅広い支援を予定されていることをお伺いし、協力させていただくことになりました。まだまだ厳しい状況下ではありますが、このような褒章をいただけて大変光栄です。本寄付について公表したところ、社内だけでなく、SNSへの書き込みなどを通じて一般の皆さまからも大きな反響をいただいき、私たちも驚いています」

創業から受け継がれる社会貢献に対する思い

中外製薬の創業は、関東大震災発生から間もない大正14年(1925年)。当時、被災地の惨状を目の当たりにした創業者の上野十蔵(うえの・じゅうぞう)氏が、「世の中の役に立つ薬をつくる」という使命感を抱き、前身となる医薬品商社「中外新薬商会」を立ち上げた。

その想いはいまも脈々と受け継がれており、中外製薬では「革新的な医薬品とサービスの提供を通じて新しい価値を創造し、世界の医療と人々の健康に貢献する」をミッションに掲げ、医療用医薬品に特化した事業を展開している。

中外製薬は、業界に先駆けてバイオ医薬品の研究開発に取り組んでおり、国産初の抗体医薬品(※)を創製するなど、バイオのパイオニアとして知られている他、2002年にはスイスに拠点を置く世界的な製薬会社ロシュ社と提携を開始、より高度な医療を届けるため、現在も新薬や治療法の研究に取り組んでいる。

  • 人の体内に侵入した特定の異物にある抗原(目印)に特異的に結合して、その異物を生体内から除去する分子「抗体」を利用した医薬品。従来の医薬品に比べ、薬剤の標的がはっきりしており、副作用も少なく治療効果がより期待できると言われている

「今、中外製薬のテレビコマーシャルで『私だけの治療法をください』(外部リンク)というキャッチコピーを打ち出していますが、私たちが何よりも願っているのは、患者さんの健康や幸せです。一人ひとりの体質や病気のタイプに合わせて治療を行う『個別化医療』を進めるための研究にも力を入れています」と酒井さん。

また、人々が「健康」であるためには、地域や社会が健全であることも重要との観点から、「医療」「福祉」「共生社会」「次世代育成」「地域社会」の5つの分野で社会貢献活動を推進している。

「具体的には、福祉の分野では、在宅福祉移送サービスカー寄贈事業として1985年より毎年5台ずつ大型の福祉車両の寄贈を行っています。共生社会の分野では障がい者スポーツ支援を行い、現在では特に障がいのあるお子さんのスポーツ活動の支援を行っています。次世代育成分野では、子どもたちに理科教育の支援を行っています。これらの活動には当社の従業員もボランティアとして参加しています。事業活動で皆さんの健康に貢献するのはもちろんのこと、私たちは広い意味での健康という意味で、健全な社会づくりに貢献できればと」

写真:ゲレンデにて撮影した「親子で楽しむチェスキー体験教室」の集合記念写真。背景に宿泊ホテルも映る
2019年3月に開催した「親子で楽しむチェスキー体験教室」スキーが得意な社員がボランティアとして運営に協力。※2021年は新型コロナウイルスの影響で、規模を縮小して開催
写真:実験室で講師に教えてもらいながら実験に取り組む子どもたち
2021年7月に開催された女の子のための実験教室「チャレンジ!イカの解剖」の様子

この他にも災害時にはNPO団体と連携を取りながら避難所の運営に対する支援や、被災地支援を目的とした物産販売会の実施、事業所がある地域の環境保全活動、防災教育支援など活動範囲は多分野にわたる。

酒井さんによると、中外製薬には「人の命や健康に貢献したい」ひいては「自分ができることで社会の役に立ちたい」という思いを抱いて入社してくる社員が多く、社内でボランティアを募ると予想以上の応募があるという。障がい者スポーツ競技大会等のイベントや理科教育では、サポートスタッフとして、災害支援ではボランティアや募金活動など、活動に参加している。

写真:施設内の一角で福島県の特産品を販売する写真とお客さん
2019年11月に開催された「東日本大震災被災地支援 福島県物産販売会、難民支援のための募金キャンペーン」の様子

誰もが健康で幸せな暮らしを送るために

新型コロナ禍における支援活動では、中外製薬は日本財団だけではなく、中国紅十字会を通しての中国への義援金拠出、「かながわコロナ医療・福祉等応援基金」への寄付、研究所のある御殿場市(静岡県)への医療関連物資の寄付など、さまざまな取り組みを行ってきた。

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現在も、新型コロナ禍における支援について模索していると話す酒井さん

「製薬会社として、新薬や治療法の開発に取り組み続けるのは私たちの使命です。これからも誰もが健康で、幸せになる社会を目指して、事業活動はもちろん、社会貢献の分野でも積極的に取り組み続けます。自社の力だけでなく、さまざまな活動を通して出会ったNPO団体や地域の皆さま、医療に限らずいろいろな分野の方々と一緒にアイデアを出し合って、一つひとつの課題に取り組むことで、持続可能な医療の提供にもつなげていけたら」

WHO(世界保健機構)は「健康」の定義を「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、全てが満たされた状態にあること」と示している。

人が自らの力だけで「健康」を維持することは難しい。社会貢献活動が、その一端を担っていることに改めて気付くと共に、中外製薬のような支援に力を入れる企業に支えられていることを強く感じた。

撮影:十河英三郎