日本財団ジャーナル

【増え続ける海洋ごみ】リユース食器を導入し、サポーターや地域一丸で取り組むヴァンフォーレ甲府の海ごみゼロへの挑戦

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リユース食器とごみの分別回収への協力を呼びかけるヴァンフォーレ甲府サポーターの子どもたち
この記事のPOINT!
  • ヴァンフォーレ甲府のホームスタジアムでは、観客が使用したごみ容器が年間6、7万個も出ていた
  • 飲食販売にリユース食器を導入しごみ拾いイベントなども実施することで、人や地域の海洋ごみに対する関心が高まった
  • スポーツが持つ強い求心力を生かして、環境の大切さ、美しい海を守ることの意義を発信していく

取材:日本財団ジャーナル編集部

いま、世界中で大きな問題となっている海洋ごみ。このまま何もしなければ、2050年には魚よりもプラスチックごみの量が多くなると言われている。

特集「増え続ける海洋ごみ」では、人間が生み出すごみから海と生き物たちを守るためのさまざまな取り組みを通して私たちにできることを考え、伝えていきたい。

2019年度より日本財団と環境省が実施する、海洋ごみ対策の優れた取り組みを全国から募集・表彰し、その取り組みを国内外に向けて発信する「海ごみゼロアワード」(別ウィンドウで開く)。その2020年度の最優秀賞に輝いたのは、山梨県に本拠地を置くプロサッカークラブ「ヴァンフォーレ甲府」(別ウィンドウで開く)を運営する株式会社ヴァンフォーレ山梨スポーツクラブが行う「ヴァンフォーレ甲府エコスタジアムプロジェクト」(別ウィンドウで開く)だ。

NPO法人スペースふう(別ウィンドウで開く)と共に取り組み、年間で6、7万個も出るヴァンフォーレ甲府のホームスタジアムのフードやドリンクの容器を、リユースできるものに変えて、ごみの削減に努めてきた。

今回は、ヴァンフォーレ山梨スポーツクラブで事業部運営担当兼SDGs推進担当を務める前村幸樹(まえむら・こうき)さんに、その詳しい内容と共に、活動に込めた思いについて話を伺った。

海なし県が取り組む海洋ごみ対策

「私たちの本拠地・山梨県には、海がありません。それなのに、どうして海ごみ対策に力を入れるの?と思われる方もいるでしょう。しかし私たちがやるからこそ、現在、深刻な状況にある海ごみの問題に関心を持ってもらえるのではないかと思い日々活動しています」

そのように、ヴァンフォーレ甲府エコスタジアムプロジェクトに取り組む思いを語る前村さん。

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ヴァンフォーレ山梨スポーツクラブの前村さん

環境省による報告では、毎年少なくとも800万トンに及ぶごみが新たに流出し、そのうち2〜6万トンが日本から発生したものだと推計されている。そして、その7〜8割が街で捨てられたものが水路や河川をたどって海に流れ出たものとなる。

ヴァンフォーレ甲府エコスタジアムプロジェクトでは、試合の際に、会場の飲食で出るプラスチックを減らすべく、2004年よりリユース食器の利用や、スタジアムの周囲にエコステーションを設けて分別回収などを行う他、エコブースを設けての子ども向け環境教育なども実施している。

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リユース食器を導入する前の、試合後のスタジアム周辺の様子
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ごみ箱から溢れる、フード、ドリンク容器などのごみ

「もともとこの取り組みは、ヴァンフォーレ甲府のスポンサーでもある山梨に本社を置く食品メーカー株式会社はくばく(別ウィンドウで開く)さんより、お声がけいただいたのが始まりです。以前は、試合の度に多くのごみが出る状態でした。それをなんとか減らそうと2004年には飲料用コップをリユース化、次は食器をリユースできるものに変えていきました」

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スタジアムの周囲に設置されたエコステーションでリユース食器を回収するボランティアスタッフ
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エコステーションでリユース食器を返却する子どもと、それを受け取るボランティアスタッフ

サポーター、企業、NPOが一体となっての取り組み

2020年海ごみゼロアワード最優秀賞受賞の要因には、はくばくをはじめ、スペースふうとの連携や、サポーターの協力が大きかったと前村さんは語る。

「エコプロジェクトに一緒に取り組むスペースふうさんは、リユース食器のレンタル・販売事業を展開しており、リユース食器を普及させることで循環型社会の実現を目指されています。使い捨てではなく、何度でも洗って使える食器を普及させることで、環境負荷を低減することができるのです」

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スポンサーをはじめとする多くの関係者の協力で実現した、リユース食器

実際に、ヴァンフォーレ甲府エコスタジアムプロジェクトではスタートしてからの16年間で99万個のリユースカップを使用し、削減できた二酸化炭素は76.2トン。これは杉の木に換算すると5,445本が1年間に吸収する量に相当するという。

「また、神奈川県の江ノ島で“日本一楽しいごみ拾い”を目指して活動するNPO法人海さくら(別ウィンドウで開く)さんがプロスポーツチームと共に展開する『LEADS TO THE OCEANプロジェクト』(別ウィンドウで開く)にも2018年より参画。スポーツと清掃活動を軸に、海や自然環境への意識を高めることを目的としており、海さくらさんにはサッカーの試合終了後、スタジアムでごみ拾いイベントを開催していただいています。選手のカードをプレゼントとして用意するなど、面白い仕掛けづくりもあって、毎回多くのサポーターの方や地域の方が参加してくださり、本当にうれしい限りです」

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日本財団・海さくらの共同プロジェクト「LEADS TO THE OCEANプロジェクト」に参加するヴァンフォーレ甲府のファンたち
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試合後のごみ拾いイベントに参加するサポーター

ヴァンフォーレ甲府エコスタジアムプロジェクトで使用するリユース食器は全部で11種類。スムーズな回収を行うため、販売時にデポジット(※)の金額として100円をドリンクやフードの料金に上乗せする形となった。

  • 日本語で「保証金」と訳し、容器やサービスを利用する際に支払う「預かり金」のこと。返却すると支払った金額が払い戻される仕組み

「エコプロジェクトをスタートする際に心配だったことは、普段の料金にデポジット分が加わる一時的な値上げです。仕組みについては売店の方にもしっかりと説明し、ご理解いただきました。サポーターの皆さんにも私たちの思いを汲みとっていただき、いつも食器の回収にご協力いただいています。リユース食器を導入できたのも、皆さんの支えがあってこそだと感謝しています」

デポジット方式にしたことで、大量のごみが削減できたと同時に、食器が紛失することもなくなったという。

画像:売店→[1]1,100円上乗せデポジット販売→お客様→[2]カップを返却100円の返金→回収所→[3]回収後、洗浄工場へ→ 洗浄工場( NPO法人スペースふう)→[4]洗浄して再利用→売店
リユース食器の流れを示した図

「サポーターの方からは、スタジアムでリユース食器を使い、試合後のごみ拾いに参加することで海ごみ問題について理解が進み、地元に戻ってからも街に落ちているごみが気になるようになったという、うれしいお声をいただいています。これからもクラブ、売店やサポーターの皆さん、地域が一丸となり、チームワークを大切にして取り組んでいきたいと思います」

人や地域を牽引するスポーツの力

海ごみゼロアワードへの応募のきっかけについて、前村さんは「私たちの取り組みをより多くの方に知っていただきたいという思いから」と語る。

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2020年9月に日本財団ビルで開かれた海ごみゼロアワード2020授賞式の様子。写真右側は、ヴァンフォーレ山梨スポーツクラブ代表の佐久間悟(さくま・さとる)さん

前村さんの思いのとおり、受賞後の反響は大きく、他のスポーツチームや企業・団体から「運用や管理方法について教えて欲しい」という問い合わせが増えたという。

これまでの活動を振り返って、「私たちが長年この活動を続けることができた理由は、サポーターの方をはじめ、スポンサー企業やスペースふう、売店の皆さんなど、人と人とのつながりがあったから」と話す前村さん。

最後に、海洋ごみ対策におけるヴァンフォーレ山梨スポーツクラブの目標について伺った。

「スポーツには、世間の人々の注目が集まるという点で、大きなポテンシャルがあると思います。そういったスポーツならではの力を生かしながら、地球環境の大切さや海を守ることの意義についても、同時に発信していけたらと考えています」

今後は、リユース食器やごみ拾いイベントなどに加え、お客さんのマイカップ導入なども検討していると語る前村さん。人や地域を巻き込む力が強いヴァンフォーレ山梨スポーツクラブが前面に立ち、プロジェクトを牽引する。これこそが、スポーツの持つ大きな力を活用した社会貢献活動と言える。

写真提供:株式会社ヴァンフォーレ山梨スポーツクラブ

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特集【増え続ける海洋ごみ】