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日本人のプラごみ廃棄量は世界2位。国内外で加速する「脱プラスチック」の動き

写真:使い捨てプラスチック製品、ペットボトルなどプラスチックごみの数々
生活を豊かにしてくれるが環境問題の原因にもなるプラスチックと上手に付き合うには。photka/shutterstock.com
この記事のPOINT!
  • プラスチックは環境問題の1つの要因になっており、海洋汚染や地球温暖化とも密接に関わっている
  • 世界では無駄なプラスチックを削減するため、製造や使用の禁止、代替品の推進、リサイクル強化が進められている
  • 自治体、事業者、消費者の連携が「脱プラスチック」を推し進め、サスティナブルな社会につながる

取材:日本財団ジャーナル編集部

※この記事は2022年9月30日に公開した記事を再編集しています

私たちの暮らしに欠かせないプラスチック。食品容器やペットボトルだけでなく、家電製品や自動車、建物に至るまで、さまざまなところで使われている。

しかし、現在、世界中で脱プラスチックの動きが加速している。カフェチェーンや飲食店では木製カトラリーや紙ストローの採用が進み、シャンプーや洗剤といった日用品の詰め替えパックの販売シェアも拡大。日用品全体の約80パーセントに達している(※1)。

その背景には、適切に処理されなかったプラスチックごみによる海洋汚染や、製造や焼却時に出る二酸化炭素の増加による地球温暖化など、さまざまな環境問題が絡んでいる。

この記事では、プラスチックに起因する環境問題とともに、世界の脱プラスチックの動向を通して、プラスチックと上手に付き合うために私たち一人一人にできることを考えていきたい。

多岐に及ぶプラスチックの地球環境への影響

プラスチックの語源は、ギリシャ語の「プラスティコス(plastikos)」。「形づくることができる」という言う意味を持つこの言葉は、プラスチックの特性を分かりやすく示している。

石油から製造されるプラスチックは、熱や圧力を加えることで人々が思い描く形に加工できる。さらに軽量かつ丈夫なプラスチックはさまざまな工業製品に使用され、私たちの生活を豊かにしてくれる。しかし、その一方で深刻な環境問題を引き起こしているのも事実だ。

海の生態系の破壊、経済的損失を招く海洋汚染

ストローが鼻に刺さったウミガメや、お腹から膨大なごみが見つかったクジラの死体のニュースなどをきっかけに、世界的に注目されるようになった海洋プラスチックごみ問題。

一般社団法人プラスチック循環利用協会によると、2024年におけるプラスチックの生産量は853万トンとなり、前年に比べて35万トン減に。また廃プラスチックの総排出量は911万トンで、そのうち810万トンが有効利用され、リサイクル率は89パーセントと世界的にみても高い水準になっている。

ただし、そのリサイクル率のうち、66パーセントは環境への負荷が高い「サーマルリサイクル(焼却熱のエネルギー利用)」となり、燃焼時に温室効果ガスである二酸化炭素を大量に排出するため、地球温暖化への影響が懸念されている(※2)。

さらに、毎年約1,100万トンのプラスチックごみが海に流出し、このままのペースでは、2050年には海の中のプラスチックごみの重量が魚の重量を超える(別タブで開く)と予測されている。

海や海岸に漂流・漂着するプラスチックごみの7〜8割は、街でごみとなったものが水路や川を伝って流出しており、ポイ捨てなどマナーやモラルの問題だけでは解決できない(別タブで開く)ことも明らかになった。

プラスチックごみは、海の生物たちの命を脅かすだけでなく、その豊かな自然で成り立っている漁業・養殖業や観光業にも大きな打撃を与えている。経済協力開発機構(OECD)の調べによると、世界で年間130億ドル(1兆4,300億円)もの経済的損失が発生しているという。

写真:海に漂流するプラスチックを中心とする膨大なごみ
人工的に作り出されたプラスチックごみは、自然界で完全に分解されるまでには数百年以上と途方もない時間がかかる。Rich Carey/shutterstock.com

また、一度流出したプラスチックごみは、紫外線による劣化や波の作用などにより破砕され、やがてマイクロプラスチックと呼ばれる5ミリメートル以下の小さな粒子となる。それが海の生物たちに取り込まれることでの生態系への影響や、それを食する人体への影響も懸念(別タブで開く)されている。

地球温暖化を加速させる、温室効果ガスの増加

大規模な森林火災や大雨による洪水、異常な干ばつや寒波の襲来など、毎年のように世界中で起こる異常気象。その原因とも言われる地球温暖化の背景にもプラスチックが存在する。石油から作られるプラスチックは、製造過程やごみとして焼却される過程で、温室効果ガスと呼ばれる二酸化炭素を大量に発生させる。

2016年1月の世界経済フォーラム年次総会(通称「ダボス会議」)に合わせて、イギリスのエレンマッカーサー財団が発表した報告書では、石油消費量におけるプラスチックが占める割合は2014年が6パーセントなのに対し2050年には20パーセントまで上昇。それに伴い、カーボンバジェット(※3)におけるプラスチックが占める割合は2014年が1パーセントなのに対し、2050年には15パーセントにまで上昇すると予想されている。

図表:BAUシナリオにおけるプラスチック量の拡大、石油消費量

イラスト:
プラスチック生産量/2014年3億1,100万トン 2050年11億2,400万トン
海洋における魚とプラスチックの比率(重量ベース)/2014年1:5 2050年1>1:1
世界の石油消費量に対するプラスチックのシェア/2014年6% 2050年20%
カーボンバシェットに対するプラスチックのシェア/2014年1% 2050年15%

吹き出し:
2050年には
・海洋中のプラスチック量が魚の量以上に増加
・石油消費量においてプラスチックが占める割合が20%に上昇
・炭素収支においてプラスチックが占める割合が15%に上昇
資料:THE NEW PLASTICS ECONOMY RETHINKING THE FUTURE OF PLASTICS。環境省の令和元年版『環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書』より引用

もちろんプラスチックだけが海洋汚染や地球温暖化の原因ではないが、大きな影響を及ぼしていることは間違いない。

2018年6月に発表されたUNEP(国連環境計画)の報告書では、2015年のプラスチック生産量を産業セクター別にみた場合、レジ袋、プラスチック製のスプーン、ストロー、商品のパッケージといった容器包装セクターのプラスチック生産量が最も多く、全体の36パーセントを占める。

また、1人当たりプラスチック容器包装の廃棄量を国別で比較した場合、日本はアメリカに次いで2番目に多く年間約32キログラムに相当。このニュースは、実は日本がプラスチックごみ大国だったと、世間でも大きく話題を集めた。

世界中で加速する脱プラスチックの取り組み

深刻な環境問題を背景に、世界的に脱プラスチックの取り組みが進んでいる。主な国の最新の取り組みをまとめてみた。

アメリカ

1人当たりのプラスチック容器包装廃棄量が世界最多のアメリカ。規制は地域で異なるが、米国環境保護庁(EPA)の「国家リサイクル戦略」のもと、2030年のリサイクル率50パーセント達成に向けたインフラ整備が進んでいる(※4)。

廃棄物のさらなる増加予測に対し対策は急務で、使い捨てプラスチックの削減に加え、ごみを分子レベルで再利用する「ケミカルリサイクル」の技術開発が活発化。2026年には新たな透明性認証基準が立ち上がるなど、大学や企業、スタートアップによる問題解決への動きが加速している(※5)。

中国

世界最大のプラスチック消費国である中国は、プラスチックごみ管理を強化している。2021年発表の「プラスチック汚染改善行動計画」では、2025年を目標に生産から消費までの各段階における管理強化を掲げた。具体的には、小売や飲食業での使い捨てプラスチック製品の削減、代替品の普及、化粧品用マイクロビーズの禁止やEC荷物の過剰包装抑制などを推進している(※6)。

さらに2024年には、新たに「65の海湾での海洋ごみ清掃計画」も発表された。これらの施策を通じ、2025年以降もより踏み込んだ管理を進めていく方針だ(※7)。

EU(欧州連合)

EUはプラスチックごみ削減に積極的で、2021年からの使い捨てプラ禁止に加え、2029年までに飲料ボトルの回収率90パーセントなどの目標を掲げている(※8)。

さらに2025年2月には新たな「包装・包装廃棄物規則(PPWR)」が発効し、2026年8月より本格適用となる。これにより、食品包装におけるPFAS(有機フッ素化合物)制限やEU適合宣言の義務化が始まる。2030年に向けてリサイクル材の含有義務なども段階的に強化され、フランス等の先行的な独自規制と合わせ、EU全体で循環型経済への移行が急ピッチで進んでいる(※9)。

欧州のプラスチック対策を牽引するイタリアでは、プラスチック製綿棒やマイクロプラスチックが含まれる化粧品の販売を禁じ、違反には重い罰則を科している。

漁業者が海で回収したプラスチックごみの回収・処理コストを地元全体で負担する制度や、2027年開始(2021年から延期)のプラスチック税など多角的な対策を推進。結果として2024年の包装材リサイクル率は76.7パーセントに達し、2026年も高水準を維持している(※10)。

イギリス

王室もプラスチック製品の使用を禁止するイギリス。2020年以降、ストロー等の供給禁止やカトラリー等への追加規制を進めている(※11)。

2022年より、リサイクル材30パーセント未満のプラスチック包装材に課税する「プラスチック製包装税(PPT)」を導入した。2024年度の課税対象は、製造・輸入された計約314万トンのうち38パーセント。前年の42パーセントから減少し、リサイクル材利用の促進効果が現れている(※12)。

2026年4月からは税率が1トンあたり228.82ポンドへ引き上げられ、今後もさらなる制度の厳格化が進められる方針だ(※13)。

インド

インドでは、2016年3月にプラスチック廃棄物管理規則を制定して以降、製造・流通・使用・処理において規制や罰則を設けるなど環境汚染対策に取り組んできた(※14)。

2022年以降、ストローや120ミクロン未満のポリ袋など使い捨てプラスチック製品の禁止や、包装材への「EPR(拡大生産者責任)ガイドライン」を導入。これまでに約1,570万トンの包装廃棄物がリサイクルされた一方、約86万件の検査で1,985トンが押収され、約1億9,820万ルピーの罰金が科されるなど違反も続いている。

政府は2025年、一元管理ポータルやエコ代替品業者の一覧を公表し、代替市場の育成と実効性の強化を進めている(※15)。

プラスチックを規制せずに「資源として循環」させる日本の新法

日本では2022年4月から「プラスチック資源循環促進法(※16)」が施行された。これはプラスチックを規制するものではなく、プラスチック製品の設計から製造・販売・回収・リサイクルという全体の流れの中で、事業者・自治体・消費者が連携しながら、地球に優しい循環型経済(サーキュラーエコノミー)の構築を推し進める法律だ。

画像:「プラスチック資源循環促進法」普及啓発サイトのTOPページ
環境省が運営する「プラスチック資源循環促進法」普及啓発サイト

この法律は「3R+Renewable」が基本原則となっている。

  • Reduce(リデュース)…製品に使用する資源の量を少なくすること、廃棄物の発生を抑制すること
  • Reuse(リユース)…使用済みとなった製品を廃棄せずに、繰り返し使用すること
  • Recycle(リサイクル)…廃棄物などを原材料やエネルギー源として再利用すること
  • Renewable(リニューアブル)…製品に使用する資源を再生可能なものに代替すること

プラスチックの増加につながらないよう工夫をすると共に「捨てることを前提としない経済活動」を目的とし、事業者や自治体、消費者にそれぞれの役割が求められる。

事業者の役割

事業者は「1.製造事業者」「2.販売・提供事業者」「3.排出事業者」の3つに分類できる。

1.製造事業者

国が定めた「プラスチック使用製品設計指針」に沿って、製品の設計・製造、材料の選択に努めなければならない。

具体的には以下のような工夫が求められる。

  • 使用する材料を少なくする
  • 過剰な包装を抑える
  • 再使用可能な部品を使用する
  • 製品・部品において単一素材を使用(もしくは素材の種類を少なく)する
  • 製品の分解・分別を容易化する
  • プラスチック以外の素材に代替する
  • 再生プラスチック、バイオプラスチックを利用する

このほか、環境負荷等に対する製品のライフサイクル評価を行うとともに、ホームページ等での製品情報の取り組みを積極的に開示することが求められる。優れた製品設計にはグリーン購入法上の配慮や支援を受けられる認定制度も設けられている。

イラスト:事業者の取り組みイメージ。左から、材料の減量化、製品の分解・分別の容易化、再生が容易な材料の使用
事業者による製品設計、認定制度の活用が資源循環型経済をつくる上で重要となる

2.販売・提供事業者(小売業・飲食店、配達飲食サービスなど)

「特定プラスチック使用製品」使用の合理化が求められる。特定プラスチック使用製品として定められた12品目(フォークやスプーン、飲料用ストロー、歯ブラシ、衣類用ハンガーなど)に対し、提供方法の見直しや提供する製品自体の工夫に努めなければいけない。

具体的には以下の通りだ。

  • 特定プラスチック使用製品を有償で提供する
  • 景品等を提供(ポイント還元等)するなど、消費者が特定プラスチック使用製品を使用しないように誘引する
  • 特定プラスチック使用製品について消費者の意思を確認する
  • 特定プラスチック使用製品について繰り返し使用を促す
  • 特定プラスチック使用製品を代替製品に切り替える
  • 商品やサービスに応じて、適切なサイズ・数量で特定プラスチック使用製品を提供する
  • 繰返し使用可能な特定プラスチック使用製品を提供する

さらに製造事業者、販売・提供事業者ともに、自治体や消費者と協力して積極的に自主回収・再資源化を行うことが求められる。

イラスト:事業者の取り組みイメージ。飲食店にて、特定プラスチック使用製品について意思を確認する店員と、使用を断るお客さん
特定プラスチック使用製品を提供しない、使わない社会を目指す

3.排出事業者(事業所、工場、店舗等で事業を行う事業者)

排出・回収・リサイクルの段階において、「排出事業者の判断基準省令」に基づいて排出の抑制・再資源化等の取り組みが求められる。「再資源化事業計画」を作成し、国の認定を受けることで、「廃棄物処理法(※17)」に基づく許可がなくても、再資源化事業を行うこともできる。

なお排出量が250トンを超える排出事業者(多量排出事業者)には、取り組みが不十分な場合に、国から勧告・公表・命令等を受けることがある。

イラスト:排出・回収・リサイクルに関わる、事業者(ごみ収集車、工場、ビル)の取り組みイメージ
事業者にとってプラスチックの排出抑制と再資源化に取り組むことは、大きなメリットにもなる

自治体(市区町村)の役割

プラスチック使用製品廃棄物の分別基準を設けて、その基準に沿って市民が分別に取り組むよう周知することが求められる。また、分別収集された廃棄物を利用しての再商品化や、再商品化計画を作成し国から認定されれば、選別保管などの中間処理を省略することが可能となる。

消費者である私たちに求められる役割

事業者、自治体の努力だけでは、地球に優しい資源循環型の社会はつくれない。「プラスチック資源循環促進法」のサイトでは、普段の暮らしの中で、「プラスチックは、えらんで、減らして、リサイクル」に、積極的に協力することが求められている。取り組むべきことはいたって簡単だ。

イラスト:
えらんで/エコなプラスチック製品をえらぼう(商品を選ぶ消費者)
減らして/使い捨てプラスチックのごみを減らそう(特定プラスチック使用製品)
リサイクル/プラスチック製品は分別してリサイクル協力しよう(分別してごみを捨てる親子)
資源循環型の社会づくりのために、私たち一人一人ができる行動

えらんで

環境に優しいプラスチック製品を選ぶ。できれば、事業者の役割で触れた「プラスチック使用製品設計指針」に沿って作られた製品を選ぼう。

減らして

プラスチックを過剰に使用しないよう心掛け、プラスチックごみを減らす。できれば、事業者の役割で触れた「特定プラスチック使用製品」の合理化に沿って、ライフスタイルを変えてみよう。

リサイクル

市区町村や店頭などでのプラスチック製品の分別・回収・リサイクルに協力する。プラスチックごみによる海洋汚染や、地球温暖化を招く温室効果ガスを抑えるには、正しいごみの分別が大きな鍵に。暮らしの中で「3R+Renewable」を意識しよう。

私たちの暮らしにとても身近で、暮らしを豊かにしてくれるプラスチックは決して悪ではない。そんなプラスチックを扱う人間の行動を改めることこそが、豊かな海を守り、サステナブルな社会をつくるのだ。

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