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気候変動悪化に残された時間7.5年。ストップ地球温暖化をカルチャーにして未来を守る

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高校生、大学生で結成された社会に向けて気候変動アクションを呼びかけるa(n)actionのメンバー。2022年4月15日に開催されたClimate Clock完成・設置の記者会見にて
この記事のPOINT!
  • 止まらない地球温暖化。気候変動は今のCO2排出のペースではあと7.5年で手遅れに
  • 脱炭素化が進む日本。さらなる国や企業の取り組みを促すためには、市民レベルでの気候変動への認知が必要
  • 楽しむ気持ちも忘れず、小さなアクションを積み重ねていくことが地球の未来を変える

取材:日本財団ジャーナル編集部

地球温暖化が叫ばれて久しい昨今、世界各地では大規模な森林火災や大雨による洪水、異常な干ばつや寒波の襲来など、毎年のように気候変動を原因とする自然災害が猛威を振るい、甚大な被害をもたらしている。

地球温暖化の要因とも言われる二酸化炭素(CO2)がこのまま増え続けると、21世紀末には世界の平均気温は最大4度以上上昇。氷河の減少や海面の上昇、深刻な異常気象などを引き起こし、農作物の減少や生態系への影響、感染症の増加など私たちの暮らしや健康にも大きな被害をもたらすと言われている。

そんな地球の未来を自分たちの手で守りたいと、高校生と大学生の有志で結成された気候変動アクティビスト集団「a(n)action(アナクション)」(外部リンク)。彼らは2021年の12 月末から1月にかけて、気候変動の変化が後戻りできなくなってしまうポイントと言われる1.5度の気温上昇を防ぐために残された時間をカウントダウンする気候時計「Climate Clock(クライメート クロック)」を渋谷に設置するためのクラウドファンディングを実施し、開始43日目で目標額の1,000万円を達成し話題を集めた。

今回は、a(n)actionのメンバーであるナイハード海音(みお)さん、三島(みしま)のどかさん、遠藤(えんどう)ひかるさんの3人にプロジェクトの進捗状況と共に、地球のために私たち一人一人が今すぐできるアクションについて、話を伺った。

深刻化する気候変動を、クリエイティブに楽しく伝える

そもそも地球温暖化とは何か。地球の表面は大気に覆われ、その中には二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが含まれている。この温室効果ガスがあることで、現在地球の平均温度は14度前後に保たれており、もしなければマイナス19度になってしまうと言われている。

しかし、18世紀の産業革命以降、人類は石炭や石油などの化石燃料を燃やしてエネルギーを得るようになり、経済成長を遂げると共に、大気中の二酸化炭素が急速に増加。これが、地球温暖化を引き起こす主な原因と考えられている。

写真:工場から排出される二酸化炭素などの温室効果ガス
二酸化炭素の排出量が増加し深刻化する地球温暖化(イメージ)。Tatiana Grozetskaya/Shutterstock.com

IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)の2021年に発表された報告書(※)によると、現在のような化石燃料に頼った経済活動を続けていくと、気候変動悪化の歯止めが効かなくなる「臨界点」とされる産業革命から1.5度の平均気温上昇には、2021年〜2040年までの間に到達。残り排出を許された二酸化炭素の量をあと7.5年ほどで使い切ってしまうと言われている。そのまま対策を怠れば、21世紀末には世界の平均気温は最大4度以上上昇する可能性があるのだ。

では、平均気温が上昇すればどのような影響があるのか? (いずれも1850〜1900年平均と比較した場合)

  • 10年に一度の「熱波※」に見舞われる割合。+1.5度で4.1倍、+2.0度で5.6倍、+4.0度で9.4倍
  • 10年に一度の「干ばつ」に見舞われる割合。+1.5度で2.0倍、+2.0度で2.4倍、+4.0度で4.1倍
  • 10年に一度の「大雨」に見舞われる割合。+1.5度で1.5倍、+2.0度で1.7倍、+4.0度で2.7倍
  • 世界の平均海面水位(1995年〜2014年平均と比べて)。+1.5度で28〜55センチ上昇、+2.0度で32〜62センチ上昇、+4.0度で63〜101センチ上昇
  • 熱波とは、広い範囲に4~5日またはそれ以上にわたって、その地域の平均的な気温に比べて著しく高温な空気が覆う現象

大規模な自然災害を引き起こすだけでなく、気温上昇や干ばつによる食料不足、水資源不足、水産・農業生産減少、生態系への影響、感染症の増加など、私たちの暮らしにも多大な被害を及ぼすと予測されている。

写真:干ばつで干上がった湖
平均気温の上昇が進むと大規模な干ばつに見舞われる可能性が増加(イメージ)。chanasorn/Shutterstock.com
写真:洪水で水没した町
地球温暖化が進むと洪水による被害も増加する(イメージ)。Roschetzky Photography/Shutterstock.com

このような地球温暖化の深刻さについて、知ってはいるけど自分に何ができるか分からず、最初の一歩が踏み出せないという人も少なくないだろう。

a(n)actionの発起人であるナイハードさんは「日本では、脱炭素の取り組みは進んできましたが、平均気温の上昇を1.5度以下に抑えることの緊急性は広く知られていません。だからこそ、クリエイティブに楽しく気候変動について発信し、これまでにない新しいアプローチの仕方で皆さんに知ってほしいと思ったんです」と話す。

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発起人のナイハードさんはインターナショナルスクールに通う高校生。学校の昼休みを使ってインタビューに応じてくれた

「自分ごと」として捉え、知ってもらう入口をたくさん作る

a(n) actionの創設メンバーは、ナイハードさんと三島さんに加え、酒井功雄(さかい・いさお)さん、黒部睦(くろべ・むつみ)さんの4人。いずれもスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが2019年に始めた学校ストライキ「Fridays For Future」の日本版(外部リンク)に参加し、そこで出会い、共に気候変動に関する政策提言や署名活動、企業へ向けたキャンペーンなどを行ってきた。

ナイハードさん「メンバーのみんなで『もっと簡単にアクションに参加できる仕組みを作れないか』と模索していた時に、ニューヨークにClimate Clockが設置されたというニュースを目にしました。これを日本にも設置することができたら、多くの人に気候変動について知ってもらえ、行動を促すことができるんじゃないかと考えたんです」

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クラウドファンディングのきっかけになった、2020年にニューヨークに設置されたClimate Clock。写真提供:a(n) action
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グラスゴー(スコットランド)に設置されたClimate Clock。写真提供:a(n) action

Climate Clockは、気温上昇を1.5度までに抑えるために残されたタイムリミット「7.5年」をカウントダウンする気候時計。世界では2020年9月にニューヨークで最初に設置され、グラスゴー、ソウルなどにおいて大規模なものが設置(※)されているが、日本にはまだない(2022年4月時点)。

そうして2021年の11月に結成されたa(n) action。と同時に、Climate Clockを渋谷に設置するためのクラウドファンディング(外部リンク)を開始した。

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クラウドファンディングのトップページ。写真提供:a(n) action

三島さん「私の祖父は新潟でお米を作っているのですが、高校3年生の秋、例年は収穫量の内8割が一等米(※)なのに、その年は2割に減ったと聞きました。その理由は熱帯夜が続いたからだと聞き、異常気象が身近に及ぼしている影響を知りました。考えてみれば、小学生の頃、冬はスキーウェアを着て登下校していたのですが、最近は以前ほど雪が積もりません。それに気付いた時に、初めて地球温暖化が自分ごとになったんです」

  • お米は玄米の状態で等級検査(お米の品質検査)を受けることによって、その等級が決まり、品質の高いものから一等、二等、三等に分類される
写真:インタビューにオンラインで答える三島さん
東京都内の大学に通う三島さんは、地元・新潟でも若者の気候変動運動を立ち上げた

ナイハードさん「いまインターナショナルスクールに通っているんですが、授業の一環で地球温暖化対策を政府に求めるデモに参加したのを機に、環境活動に取り組むようになりました。残り7年という数字を目にした時に『7年後の私は24歳』というあまりにも早すぎるタイムリミットを突きつけられて、初めて気候変動の問題が自分ごとに捉えることができました」

a(n) action が活動する中で大切にしているのは、同世代の若者にいかに「自分ごと」として捉えてもらえるか。Climate Clock設置のプロジェクトを進める傍ら、公式Instagramではメンバー同士が環境に優しい食材を使ってスイーツづくりに挑戦する「バレンタイン対決」や、環境問題をお題にした「山手線ゲーム」など、SNSを通じて楽しく誰でも気軽に取り組める方法を発信している。

いまの活動目標は、まず気候変動の問題に興味を持ってもらうための「小さな入口」をたくさん作ることだと言う。

写真:actionの公式Instagramの画面
a(n) actionの公式Instagramでは、気候変動に対するユニークな取り組みを発信している。写真提供:a(n) action
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環境に優しい食材を使ったスイーツづくりに挑戦した「バレンタイン対決」。写真提供:a(n) action

ナイハードさん「例えば、街のいろんなところでClimate Clockを見かければ『あれは何だろう?あそこにもあったね』と気にしてくれたら第一歩です。私たちは、常に危機感を持った上でいかに楽しく見せ、アクションを起こすプレイヤーを増やすかということを大切にしています」

三島さん「クラウドファンディングで支援してくださった方がClimate Clockを見かけたら、一緒にいる人に『あの時計、私が作ったんだ!』って自慢してくれたらいいな。私たちは気候変動アクションを、エコやサステナブルといった切り口ではなく、『楽しいから参加する』おしゃれなカルチャーにしたいと思っているんです。そこからさらに、政府へメッセージを届ける、エネルギー問題について考えるなど、次につながるように発信していけたらいいなと思っています」

カルチャーの中心地・渋谷から、地球に迫る危機を発信

2021年12月に開始した渋谷にClimate Clockを設置するためのプロジェクトのクラウドファンディングは、わずか43日で目標額の1,000万円を達成。最終的には終了するまでの52日間で1,546人の支援者から1,300万円以上の資金が集まった。

支援者からは「皆さんのアイデアとパッションと行動力に脱帽です!」「皆さんを見ていて、自分たちでもできる!変えていける!と思えるようになりました」「勇気をありがとう!私も協力できてうれしい」など多くの応援コメントが寄せられた。

クラウドファンディングをきっかけに新たにメンバーとして加わった遠藤さんは、「ノーリターンで支援してくださる方もたくさんいて、本当に心強かったです。改めて、支援してくださった皆さんと一緒にプロジェクトを主催しているんだという気持ちになりました」と、活動の中で感じるやりがいを話す。

写真:オンラインでインタビューに答える遠藤さん
東京都内の大学に通う遠藤さん。彼女は、a(n)actionに参加して、改めて「このままでは本当に地球が危ない」と感じたと言う

そして、Climate Clock はついに完成し4月15日に第1号を設置するにあたっての記者会見が行われた。会場にはテレビ局や新聞社など多数のメディアが集まり、注目度の高さがうかがえた。

このプロジェクトには、渋谷区も全面的にバックアップしており、当日は一般財団法人渋谷区観光協会、一般社団法人渋谷未来デザインからも担当者が参加。今後のプロジェクトの展望について説明された。

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完成したClimate Clockの小型機。写真提供:a(n) action
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Climate Clockの完成・設置の記者会見の様子。Climate Clockの大型機と小型機がお披露目された

Climate Clock第1号は4月15日より渋谷駅ハチ公前広場観光案内所「SHIBU HACHI BOX」に設置。第2号以降は、渋谷区役所をはじめ商業施設や文化施設、商店街など若者が多く集まりやすそうな場所に、企業などのパートナーを募りながら渋谷区内100カ所以上の設置を目指す。

設置する上で重視しているのは、渋谷に訪れる人が「1日に何度も目にする」仕掛けをつくること。接触機会を増やすことでカウントダウンへの関心を高め、自発的な行動を促すことが狙いだ。

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SHIBU HACHI BOXに設置されたClimate Clock第1号。写真提供:a(n) action

Climate Clockの画面にはQRコードも表示され、携帯電話で読み取ると、1クリックで「政府・企業に対してアクションを求める宣言」に参加できる特設ページ(外部リンク)へ飛ぶ。宣言数が1万回を突破するごとに環境省へ通知される仕組みになっている。

また特設ページにはサステナブルな活動を行う企業専用の広告枠を設け、その広告収入をもとに気候変動アクションを支えるファンドを設立。都市農園の設置などに活用するなど、渋谷区のエコシティ化も推し進める計画だ。

画像:左側は渋谷区内の設置場所例。西原商店街、将棋会館、国連大学前、渋谷スクランブルスクエア、恵比寿ガーデンプレイス、オペラシティなど交渉中。右側は設置場所例。エレベーターホール、レジ、フードコート、トイレなど
Climate Clockの設置場所のイメージ。素材提供:a(n) action
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目撃する:渋谷で遊ぶ人が1日に数回は目撃する。その中で1度はQRコードにアクセスする。挿入写真はClimate Clockの小型機
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宣言する:QRコードを飛んだページで「政府・企業に対してアクションを求める宣言」に1クリックで参加できる。挿入画像は、特別サイト
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通知する:宣言数が1万回を突破するごとに環境省に通知。さらなるアクション喚起を要請。挿入写真はANN NEWSで流れる環境大臣・山口壮さんの記者会見の様子
Climate Clockを目撃してから、環境省へ通知するまでの一連の流れ。素材提供:a(n) action

「政治や企業を動かさなければ、地球温暖化は防げない」と言う三島さん。

三島さん「『政府に意見する』と聞くと自分とはかけ離れたことに感じるかもしれませんが、これが成功すれば、私たち一人一人には社会を変える力があることを示せるのではないかと思っています。Climate Clock自体は二酸化炭素を減らしたりできるものではありませんが、皆さんの声を集めて届けることで、国や企業を動かし社会全体を変えることができると信じています。何より、気軽にアクションに参加いただくことで、気候変動の問題を『自分ごと』にしてもらえたらうれしいですね」

楽しむことから気候変動アクションを始めよう

今後は、ポッドキャストの配信や、全国の高校にClimate Clockを巡回させながら気候変動に関する授業を行うプロジェクトも計画しているというa(n)action。メンバーの皆さんに、地球温暖化を抑えるために今すぐできるアクションについて伺った。

三島さん「一番身近なのは、地球に優しいものを『選ぶ』こと。私がおすすめしているのは、電力を自然エネルギーなど再生可能なエネルギーに変えるパワーシフトです。たった一度、Webからの手続きで完了できますよ」

遠藤さん「私はブリーチ剤をオーガニックに変えてみました。ほかにも、洋服を買うときは古着屋に行ってみたり。毎日の生活の中で楽しみながらできることから始めてみてください。みんなで少しずつ取り組むだけでもきっと変わると思います」

これからも「楽しい!」を切り口に、気候変動アクションが当たり前になる世の中を目指して活動を広げていきたいと話す。

最後に三島さんは、「私たちの活動はZ世代という視点で注目されがちですが、世代を超えて多くの方に国や社会に気候変動対策を促すアクションに参加してもらえたらうれしいです。そして、10~20代の私たちがクラウドファンディングで1,000万円を集め、プロジェクトを成功させたという前例が、これからさらに若い世代の方たちが自分たちが掲げた目標に向けてアクションを起こすときの希望になれたら」と未来に夢をつなぐ。

地球のためにできること———そんなふうに考えると、大勢の人と一緒に大きなことを始めないと、と肩肘を張って考えがちだが、まずは一歩踏み出すことが肝心だ。そのためには、楽しむ気持ちも忘れてはいけない。a(n)actionのInstagramにはそのアイデアが詰まっているので、ぜひチェックしてほしい。そうして一人一人が日々の中で小さなアクションを積み重ね、社会に大きなうねりを起こしていくことで、地球の未来はきっと変わるはず。

a(n)action 公式Instagram(外部リンク)

a(n)action Climate Clock特設サイト(外部リンク)