社会のために何ができる?が見つかるメディア
トイレや水道がなくて、死んでしまう子どもがいるって本当?
小学生のためのSDGs入門記事。第4回は、目標(もくひょう)6「安全な水とトイレを世界中に」について考えてみましょう。
うんちやおしっこをするのは、健康(けんこう)でいるためにとても大切なこと。日本にいる私(わたし)たちが安心して用を足せるのは、家や学校などあちこちにきれいなトイレがあるおかげです。
しかし、世界にはきれいなトイレが使えない国や地域(ちいき)がまだまだたくさんあり、そのせいで病気になり、死んでしまう子どももいるのです。
きれいなトイレがないと、どのような問題が起こるのでしょうか。
連載(れんさい)【小学生SDGsジャーナル】記事一覧(きじいちらん)
「トイレがない」人は日本の人口の約(やく)4倍も!
日本にいる私(わたし)たちは、学校や駅、乗り物の中ででも、きれいなトイレを使うことができます。
そのほとんどが、ボタンやレバーをおすと水がうんちやおしっこを流してくれる「水洗(すいせん)トイレ」です。
こういうトイレが使えるのは、川や湖の水をきれいにして飲めるようにしたり、よごれた水を処理(しょり)して安全な水にもどしたりする、水道の設備(せつび)が整(ととの)っているからです。
しかし世界に目を向けると、安全できれいなトイレを使えない人は34億(おく)人います。そのうち、家の中や近所にもトイレがなく、道ばたや草むらで用を足している人が4億(おく)1,900万人いて、これは日本の人口の4倍近くに当たります。
また、水道の設備(せつび)がなく、安全な水を飲めないところで生活している人の数は、世界人口の4分の1以上(いじょう)に当たる22億(おく)人。そのうち、1億(おく)1,500万人が、湖や河川、用水路などの水をそのまま飲み水などに利用しています。
トイレがきれいでないと、病気になりやすい
トイレがないのも困(こま)りますが、「トイレがあればいい」とも言えません。
というのも、うんちやおしっこにはたくさんのバイキンが住んでいるので、トイレをきれいに管理(かんり)しておかないと、病気の原因(げんいん)になることがあるからです。
例(たと)えば、地面に穴(あな)をほっただけのトイレが村に1つだけあり、そこをみんなで使っている、という地域(ちいき)もあります。
こういうトイレだと、たくさんのうんちやおしっこがそのまま土に染(し)みこんで地下水に入り、飲み水がバイキンやウイルスでよごれてしまうことがあります。
トイレすらなく、道ばたや草むらで用を足す地域(ちいき)では、そこを歩くだけで体にバイキンが着(つ)いてしまいます。
また、うんちやおしっこにはハエなどの虫がたくさん集まってきます。よごれたトイレにいた虫がごはんに止まると、食事からバイキンが体に入ることになります。
このように、さまざまなところにバイキンが増(ふ)えると、貧(まず)しく、栄養(えいよう)が足りていない人ほど病気にかかりやすくなります。
特(とく)に体力のない小さな子どもにとっては命に関(かか)わり、世界で年間約(やく)52万5,000人もの5才に満たない子どもがお腹(なか)をこわして死んでいます。
きれいなトイレがあり、安全な水が飲めることは、命を守ることにつながるのです。
[関連(かんれん)記事]
世界の3人に1人はトイレがない?ユーモアでトイレ問題解決(もんだいかいけつ)のとびらを開く“ミスター・トイレ”の戦術(せんじゅつ)(別タブで開く)
きれいなトイレが生み出す良(よ)い影響(えいきょう)
きれいなトイレが増(ふ)えると、どんな変化(へんか)が生まれるのでしょうか。
●健康(けんこう)を守れる
トイレがきれいになると、うんちやおしっこにいるバイキンが体に入るのを防(ふせ)ぐことができ、病気になりづらくなります。
●水や生活環境(せいかつかんきょう)を守れる
水道がない地域(ちいき)では、湖や川の水、地下水を飲み水にし、料理(りょうり)や洗濯(せんたく)をしていることもあります。きれいなトイレがあると、うんちやおしっこで地域(ちいき)の水がよごれるのを防(ふせ)ぎます。
●安全を守れる
トイレがなくて草むらでしなければいけない、遠くのトイレまで行かなくてはいけない、などの場合、子どもや女性(じょせい)が1人で人気(ひとけ)のないところに行くと、トイレをのぞかれたり、暴力(ぼうりょく)をふるわれたりと危険(きけん)な目にあうことがあります。
個室(こしつ)のあるきれいなトイレになれば、安心できます。
日本にもある! トイレと水の問題
きれいなトイレがたくさんある日本にも、トイレと水に関(かか)わる問題があります。
●水の使用量(しようりょう)の多さ
トイレ、お風呂(ふろ)、洗濯(せんたく)など家庭で使う生活用水の使用量(しようりょう)は、日本人1人当たり、毎日およそ214リットルあります。
そのうちトイレで使うのは約(やく)45リットル。安全な水が飲めない人が22億(おく)人もいるのに対し、日本ではトイレだけで、2リットルのペットボトルで数えると1人あたり毎日22~23本分もの水を使っていることになります。
●多様性(たようせい)への気配り
多様性(たようせい)とは一人一人のちがいを大切にする考え方のことです。ショッピングモールや駅など、公共(こうきょう)の場にあるトイレはいろいろな人が利用(りよう)しますが、人によっては今までのトイレが使いづらいことがあります。
例(たと)えばしゃがんで使う和式トイレはひざが痛(いた)むお年寄(としより)にとってはつらいかもしれません。トイレの出入口がせまかったり、階段(かいだん)だったりすると、車いすの人は中に入れなくて困(こま)る、などの問題です。
また、多くのトイレは「男性(だんせい)用」「女性(じょせい)用」と体の性別(せいべつ)によって分かれていますが、体は男性(だんせい)でも心が女性(じょせい)、など男女で分けられない性別(せいべつ)の人もいます。
そういう人にとっては、どちらのトイレも使いづらくて困(こま)ってしまいます。みんなにとって使いやすいトイレを増(ふ)やすことが求(もと)められているのです。
[関連(かんれん)記事]
隈研吾(くま・けんご)、安藤忠雄(あんどう・ただお)…16人の世界的クリエイターが参画(さんかく)する「公共トイレ」プロジェクト。そのねらいとは(別タブで開く)
日本のトイレにまつわる取り組み
THE TOKYO TOILET(ザ・トーキョー・トイレット)(別タブで開く)
日本の街中(まちなか)には、だれでも使える公共(こうきょう)トイレがあります。しかし暗い、きたない、くさい、こわい、といった理由で使う人が限(かぎ)られていました。
日本財団(にっぽんざいだん)のプロジェクト「THE TOKYO TOILET(ザ・トーキョー・トイレット)」では、性別(せいべつ)・年齢(ねんれい)・障害(しょうがい)のある・なしに関係(かんけい)なく、みんなが気持ちよく使える公共(こうきょう)トイレを建築家(けんちくか)やデザイナーと一緒(いっしょ)に考え、東京・渋谷区に17か所のトイレを設置(せっち)しました。
このトイレや水の問題について私(わたし)たち一人一人ができることは何でしょう?
その答えは、ぜひ自分で調べて、考えて、自分にできることから取り組んでみてください。
本や図書館、インターネットで調べてみよう!
- 世界のトイレで起こっている問題や、その国でなぜトイレの問題が起きているのかを調べてみよう
- トイレと安全な水の問題が、私(わたし)たちの生活やその国の未来(みらい)にどのような影響(えいきょう)をあたえているか調べてみよう
- トイレの問題をなくすために、どのような取り組みが行われているか調べてみよう
「トイレの問題」について学べるおすすめの本
『トイレをつくる 未来(みらい)をつくる』(外部リンク)
東南アジアの国・東ティモールにあるマヌタシ村にいくと、みんながせっせと穴(あな)をほっていました。新しくトイレをつくっているのです。
長い間、日本の人々が関(かか)わっているこのトイレを作るプロジェクトを紹介(しょうかい)した写真絵本です。
『おはなしSDGs 安全な水とトイレを世界中に 水とトイレがなかったら?』(外部リンク)
夏休み、春樹(はるき)が遊びにいった田舎(いなか)のおじいさんの家のトイレは、いまだに「ぼっとん便所(べんじょ)」。そんなトイレをきたないと思う春樹(はるき)に、おじいさんはトイレに苦労(くろう)してきた世界の歴史(れきし)を語り、お手製(てせい)のタイムマシーンで昔のトイレをめぐる旅に出かけます。
まわりの人に話を聞いてみよう!
- お父さんやお母さん、近所のおじさん、おばさん、おじいさん、おばあさんに子どものころのトイレがどうだったか、安全な水が飲めたか、トイレや水の問題について何ができるか意見を聞いてみよう
- いろんな人の意見を聞いたら、自分に何ができるか考えてみよう
自分にできることからやってみよう!
- 調べたこと、聞いたこと、考えたことをノートにまとめて家族、友だちに発表してみよう
- 世界のトイレ問題を支援(しえん)する団体(だんたい)とつながる、トイレやお風呂(ふろ)で水の使い過(す)ぎに気をつける、水をよごさないようにする、などできることはたくさんあるはず
自分で解決方法(かいけつほうほう)を見つけるのにおすすめ!
認定(にんてい)NPO法人(ほうじん)ウォーターエイドジャパン(外部リンク)
1981年に設立(せつりつ)され、世界34か国で活動する水と衛生専門(えいせいせんもん)の国際団体(こくさいだんたい)です。
世界の水とトイレの問題についての情報(じょうほう)を記事やメールマガジンで発信(はっしん)するほか、学校での出前授業(でまえじゅぎょう)などさまざまなイベントも開催(かいさい)しています。
LIXIL × SDGs NEXT STAGE(リクシル×エスディージーズ・ネクスト・ステージ)(外部リンク)
トイレやお風呂(ふろ)などの水回りをはじめ、家の中で使う設備(せつび)をつくっている会社「LIXIL(リクシル)」は、安全できれいなトイレや手洗い設備(せつび)を世界中の人に届(とど)ける活動をしています。
トイレや安全な水にまつわる情報(じょうほう)や、実際(じっさい)の活動レポートなどを見ることができます。
日本トイレ研究所(外部リンク)
全ての人が安心してトイレを利用(りよう)でき、共(とも)に暮(く)らせる社会づくりを目指しています。
「トイレ」を通して社会をよりよい方向へ変(か)えていくことを目的(もくてき)に、子どもの便秘(べんぴ)にまつわる情報(じょうほう)を盛(も)りこんだ「すっきりうんちBOOK(ぶっく)」の発行、トイレやうんちやおしっこに関(かん)する課題(かだい)と向き合う取り組みを表彰(ひょうしょう)する「日本トイレ大賞(たいしょう)」といった活動を行うほか、トイレ環境(かんきょう)の改善(かいぜん)に向けた情報(じょうほう)を発信(はっしん)しています。
イラスト:KIKO
[参考文献]
日本ユニセフ協会「ユニセフの主な活動分野|水と衛生」(外部リンク)
ワールド・ビジョン・ジャパン「【11月19日は世界トイレの日】 安全なトイレが重要な5つの理由」(外部リンク)
東洋経済オンライン「日本人がトイレを流すのに使う『驚きの水の量』」(外部リンク)
連載(れんさい)【小学生SDGsジャーナル】記事一覧(きじいちらん)
- ※ 掲載情報は記事作成当時のものとなります。