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世界の2人に1人が、お医者さんにみてもらえない?

イラスト:(左)お医者さんにかかることができず、世b峰接種を受けることができずに困っている赤ちゃんを抱いたお母さん。(右)1人のお医者さんに行列する人々
世界にはお医者さんの数が不足し、治(なお)る病気でもみてもらえず命を落としてしまう子どもがたくさんいる

小学生のためのSDGs入門記事。第7回は、目標(もくひょう)3「すべての人に健康(けんこう)と福祉(ふくし)を」について考えてみましょう。

心も体も健康(けんこう)で生活できる。それって幸せなことなんだ、と感じるのは病気やけがをしたときではないでしょうか。

例(たと)えば、我慢(がまん)できないくらいお腹(なか)が痛(いた)い。転んで手の骨(ほね)が折(お)れた。こんなときに、私(わたし)たちは「病院に行かなきゃ!」と考えます。

でも、世界にはお医者さんにみてもらうだけでものすごく高いお金がかかる、そもそも住んでいる場所に病院がない、という国や地域(ちいき)がたくさんあります。

どうすれば、全ての人が健康(けんこう)に暮(く)らせるのでしょうか?

連載(れんさい)【小学生SDGsジャーナル】記事一覧(きじいちらん)

5才になる前に命を落とす子どもが年間500万人以上(いじょう)

日本にいる私(わたし)たちは、風邪(かぜ)を引いたらかぜ薬、骨(ほね)を折(お)ったらギプスなど、病気やけがに合った治療(ちりょう)が受けられます。より重い病気にかかるのを防(ふせ)ぐための健康診断(けんこうしんだん)や予防接種(よぼうせっしゅ)も受けることができます。

このように、みんなが健康(けんこう)に生活していくために必要(ひつよう)になる、基本的(きほんてき)な医療(いりょう)や病気の予防(よぼう)のことを「基礎的(きそてき)な医療保険(いりょうほけん)サービス」といいます。

しかし、世界の約半分の人が「基礎的(きそてき)な医療保険(いりょうほけん)サービス」を受けることができていません。この問題は、子どもにとっては特(とく)に深刻(しんこく)で、世界では5才になるまえに死んでしまう子どもが1年に500万人、つまり6秒に1人の子どもが亡(な)くなっているのです。

その500万人のうちの80パーセント以上(いじょう)が、アフリカと南アジアの国々の子どもたちです。なぜこの地域(ちいき)で、たくさんの子どもが命を落としてしまうのでしょうか?

国ごとの5才までの子どもが死亡する割合(出生1000人あたり/2021年)示す世界地図
出生1,000人あたりの死亡が101人以上、76人から100人、51人から75人、26人から50人いる国の多くがアフリカ、南アジアに集中している
アフリカや南アジアで、多くの子どもが命を落としている。引用:日本ユニセフ協会(きょうかい)「子どもの死亡(しぼう)に関(かん)するデータ」(外部リンク/PDF)

病気になりやすい場所なのに、お医者さんが少ない

子どもが5才になる前に死んでしまう原因(げんいん)は、1番目が肺炎(はいえん)、2番目が下痢(げり)、3番目がマラリアです。

肺炎(はいえん)になる主な理由は、この地域(ちいき)ではまきや石炭、動物のふんを燃料(ねんりょう)に使っているので、家の中の空気がけむりで汚染(おせん)されやすいからです。

次に下痢(げり)の問題は、第4回の記事「トイレや水道がなくて、死んでしまう子どもがいるって本当?」(別タブで開く)でもふれたとおり、きれいなトイレがないことや安全な水が飲めないことなどにより引き起こされます。

マラリアは蚊(か)にさされることで伝染(うつ)る病気で、蚊帳(かや)と呼(よ)ばれる防虫(ぼうちゅう)ネットを使えば予防(よぼう)できるのですが、簡単(かんたん)に手に入らないことが多いのです。

もし先進国に住んでいれば、これらの病気になっても治療(ちりょう)することができるのですが、途上国(とじょう)と呼(よ)ばれる貧(まず)しい国々はお医者さんの数が多くありません。

日本では国民(こくみん)400人あたりに1人のお医者さんがいますが、世界では数万人あたりに1人という国もめずらしくないのです。

肺炎、下痢、マラリアで年間150万人以上の5才までの子どもが命を落としている
・肺炎15%
・下痢8%
・マラリア5%
先進国では治(なお)る病気でも、世界ではまだまだ命を落としてる子どもが多くいる

生まれた場所や地域(ちいき)で健康に生きられるかどうかが変わる

日本には「健康保険(けんこうほけん)」という制度(せいど)があります。健康保険(けんこうほけん)に入っていれば、お医者さんにみてもらったとき、本人は治療費(ちりょうひ)の一部をはらうだけでよく、残(のこ)りは健康保険(けんこうほけん)でまかなってもらえます。

また、住んでいる町によっては、お医者さんにみてもらう子どものお金が無料(むりょう)になるところもあります。

しかし世界にはお医者さんにみてもらうお金は全て自分ではらわなければいけない国もたくさんあります。お金がかかるという理由で病院に行けない人もいて、先進国では治(なお)る病気なのに、途上国(とじょうこく)にいることで死んでしまう人が年間250万人以上(いじょう)いるといわれています。

福祉(ふくし)が充実(じゅうじつ)した日本にもある健康(けんこう)問題

健康(けんこう)でいられるように、お医者さんがたくさんいたり、病気になってもすぐに病院に行けたりする日本でも、次のような問題が起こっています。

●医療格差(いりょうかくさ)

日本にはお医者さんが多い地域(ちいき)と、そうでない地域(ちいき)があります。例(たと)えば、若者(わかもの)が減(へ)ってお年寄(としよ)りばかりになった地域(ちいき)など、お医者さんのいない村や町も増(ふ)えています。

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労働力不足(ろうどうりょくぶそく)、医療人材不足(いりょうじんざいぶそく)、社会保障費(しゃかいほしょうひ)の増大(ぞうだい)——間近にせまる「2025年問題」とは?(別タブで開く)

●生活習慣病(せいかつしゅうかんびょう)

食べ過(す)ぎ・飲み過(す)ぎ、運動(うんどう)不足、お酒、たばこなど、健康的(けんこうてき)でない生活で起こる病気のことを生活習慣病(せいかつしゅうかんびょう)と言います。

不健康(ふけんこう)な生活を続(つづ)けていくと、がんなどの深刻(しんこく)な病気につながることがあります。日本で亡(な)くなる人の半分が生活習慣病(せいかつしゅうかんびょう)が原因(げんいん)で亡(な)くなる、といわれています。

●自殺(じさつ)・心の病

日本は、先進国の中でも自殺する人が最(もっと)も多い国で、1年に2万2,000人(2022年)もの人が自ら命を落としています。

また、15~39才の若者(わかもの)が死んでしまう理由で一番多いのが自殺(じさつ)である国も先進国の中で日本だけ。若者(わかもの)の自殺(じさつ)の理由で最(もっと)も多いのが、うつ病のほか心の病気などによる健康(けんこう)問題です。

日本財団(にっぽんざいだん)の調査(ちょうさ)では、若者(わかもの)の2人に1人が「死にたい」と思ったことがある、というデータも出ています。

15~39才の若者が自殺を考えた、自殺をしようとした人を示す円グラフ

左:自殺を考えた経験
自殺を考えたことがある人44.8%
自殺を考えたことがない人55.2%

右:自殺しようとした経験
自殺しようとしたことがある人19.1%
自殺しようとしたことがない人80.9%
2022年に行った『日本財団(にっぽんざいだん)第5回 自殺意識調査(じさついしきちょうさ)』(別タブで開く)では、若者(わかもの)の2人に1人が自殺(じさつ)を考えたことがあり、5人1人が自殺(じさつ)しようとしたことがあるという結果に

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見えづらい思春期のこころの不調(ふちょう)。カードゲームで自覚(じかく)をうながし、子ども・若者の生きる力を支(ささ)える(別タブで開く)

日本財団(にっぽんざいだん)の取り組み

日本財団在宅看護(にっぽんざいだんざいたくかんご)センター起業家育成事業(きぎょうかいくせいじぎょう)(外部リンク)

日本の人口のうち65才以上(いじょう)の人は30パーセント近くいて、これからも増(ふ)えていくことが予想されています。そのため、病院に行く方法だけではなく、看護師(かんごし)さんがお年寄(としよ)りの家に行って、その人の病気にあったケアをする「在宅看護(ざいたくかんご)」の大切さが見直されています。

日本財団(にっぽんざいだん)では、笹川保健財団(ささかわほけんざいだん)等との協力により、「在宅看護(ざいたくかんご)センターを始めたい」と考える看護師(かんごし)さんの支援(しえん)を行っています。

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コロナ禍(か)における在宅医療(ざいたくいりょう)・看護現場(かんごげんば)のいま。現場(げんば)に安心をもたらしたネスレ日本の社会貢献(しゃかいこうけん)(別タブで開く)

日本財団(にっぽんざいだん)子どもの生きていく力サポートプロジェクト(外部リンク)

自治体(じちたい)やいろいろな専門家(せんもんか)と力を合わせながら、子どもが自殺(じさつ)に追いこまれることなく前向きに生きていけることを目的(もくてき)としたプロジェクトに取り組んでいます。

例(たと)えば、自殺(じさつ)を予防(よぼう)するためのカードゲームの開発(かいはつ)や、身近な人同士(どうし)で支え合うための仕組みづくり、自殺(じさつ)に関する調査(ちょうさ)なども行なっています。

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「助けて」と言えない子ども・若者(わかもの)の声を拾い支援(しえん)につなぐ。OVA伊藤次郎(いとう・じろう)さんの自殺対策(じさつたいさく)の提言(ていげん)(別タブで開く)

この健康(けんこう)や福祉(ふくし)の問題について私(わたし)たち一人一人ができることは何でしょう?

その答えは、ぜひ自分で調べて、考えて、自分にできることから取り組んでみてください。

本や図書館、インターネットで調べてみよう!

  • 世界でどういう病気が問題になっているのか、その病気がなぜ起きているのかを調べてみよう
  • いろんな国の医療(いりょう)サービスの特徴(とくちょう)や違(ちが)いについて調べてみよう
  • お医者さんが少ない国や地域(ちいき)で、病気で死んでしまう子どもの問題をなくすために、どのような取り組みが行われているか調べてみよう

「健康(けんこう)と福祉(ふくし)の問題」について学べるおすすめの本

出版(しゅっぱん):ひさかたチャイルド 文:サラ・ハル 絵:ピーター・アレン 訳(やく):福本友美子(ふくもと・ゆみこ) 監修(かんしゅう):堀川晃菜(ほりかわ・あきな)

『どうなってるの?ウイルスと細菌(さいきん)』(外部リンク)

病気を引き起こす小さな生きもの、ウイルスや細菌(さいきん)の基礎知識(きそちしき)を、カラフルなビジュアルとめくって楽しい111の仕かけでしょうかいします。

感染症(かんせんしょう)を防(ふせ)ぐ身体のしくみ、ワクチンや抗生物質(こうせぶっしつ)、未来(みらい)の治療(ちりょう)方法にも目を向ける絵本です。

出版(しゅっぱん):えほんの杜(もり) 作(さく):岩村太郎(いわむら・たろう) イラスト:千野エー(ちの・えー)

『10歳(さい)の君に贈(おく)る、心を強くする26の言葉 哲学者(てつがくしゃ)から学ぶ生きるヒント』(外部リンク)

「どうして勉強しなければいけないの?」「どうしていじめはなくならないの?」「生きている意味はあるの?」。

学校の先生や親がなかなか答えられない、子どもがかかえるリアルななやみや疑問(ぎもん)を、哲学者(てつがくしゃ)の言葉をヒントに解決します。

まわりの人に話を聞いてみよう!

  • お父さんやお母さん、近所のおじさん、おばさん、おじいさん、おばあさんに子どものころどんな病気にかかったか、病気になったときどうしたか、話を聞いてみよう
  • また、途上国(とじょうこく)で小さな子どもが死んでしまう問題について、どうすれば解決(かいけつ)できると思うか意見を聞いてみよう
  • いろんな人の意見を聞いたら、自分に何ができるか考えてみよう

自分にできることからやってみよう!

  • 調べたこと、聞いたこと、考えたことをノートにまとめて家族、友だちに発表してみよう
  • 世界の人に医療(いりょう)サービスを届(とど)ける活動をしている団体(だんたい)とつながる、運動やバランスのいい食事をして病気にならないように気をつける、などできることはたくさんあるはず

自分で解決方法(かいけつほうほう)を見つけるのにおすすめ!

JICA「日本発の母子手帳 世界へ」(外部リンク)

「母子手帳」とは、お腹(なか)に赤ちゃんがいる女性(じょせい)の体調や、子どもを生んだときのお母さんと赤ちゃんの状態(じょうたい)、子どもの成長(せいちょう)や健康状態(けんこうじょうたい)について、ずっと記録(きろく)していくためのもの。母子手帳があると、母親と子どもにいつ・どんなケアが必要(ひつよう)か分(わ)かり、医療(いりょう)とのつながりもできます。

日本は1948年から母子手帳を活用し始め、今では母子の死亡(しぼう)が最(もっと)も少ない国になりました。JICAでは、開発途上国(とじょうこく)でも母子手帳の仕組みが広まるようサポートしてしています。

ヤクルトの出前授業(じゅぎょう)(外部リンク)

乳酸菌飲料(にゅうさんきんいんりょう)やヨーグルトなどを作る食品メーカー『ヤクルト』は、主に小学生に向けた出前授業(でまえじゅぎょう)「おなか元気教室」を行っています。

目指しているのは、健康(けんこう)のために正しい食や生活の習慣(しゅうかん)を身につけてもらうこと。「早ね、早起き、朝ごはん、朝うんち」をテーマに、うんちの状態(じょうたい)や、腸(ちょう)の大切さ、腸(ちょう)の中の乳酸菌(にゅうさんきん)の働(はたら)きなど、良いうんちを出すための生活習慣(しゅうかん)について伝(つた)えています。

ミズノ「POWERED LIFE(パワード ライフ)」(外部リンク)

スポーツ用品メーカーの『ミズノ』は、たくさんのアスリートをサポートしてきた独自(どくじ)のスポーツテクノロジーを使って、ふだんの生活体を動かすときに出てくるいろいろな困(こま)りごとを解決(かいけつ)しようと取り組んでいます。

ウェブサイトでは、そういった取り組みで生まれた商品や、イベント・セミナー情報(じょうほう)が見られ、いくつになっても健康(けんこう)で幸せな生活を送れる人が増(ふ)えるよう応援(おうえん)しています。

イラスト:KIKO

[参考文献]

THE WORLD BANK「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に焦点を当てる:グローバル・モニタリング報告書」(外部リンク)

日本ユニセフ協会「2021年の5歳未満児死亡数、500万人。死亡数減少も、多くの国でSDGs達成困難か」(外部リンク)

日本ユニセフ協会「ユニセフの主な活動分野|保健」(外部リンク)

日本ユニセフ協会「いま、この瞬間にも。救える命がたくさんあります。」(外部リンク)

日本生活習慣病予防協会「生活習慣病とは」(外部リンク)

朝日新聞デジタル「女性19歳以下の自殺者数、7割増 コロナ禍前5年平均と21年比較」(外部リンク)

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