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労働力不足、医療人材不足、社会保障費の増大——間近に迫る「2025年問題」とは?

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超高齢化社会によるさまざまな社会問題が懸念される2025年問題に迫る。Sira Anamwong/Shutterstock
この記事のPOINT!
  • 超高齢化社会を迎える2025年、日本人口の5人に1人が75歳以上の後期高齢者になる
  • 国や企業は労働力の減少、医療・介護制度等の課題解決に向けたさまざまな取り組みが求められる
  • 社会保障制度を維持するためには、一人一人の健康寿命を延伸することも重要

執筆:日本財団ジャーナル編集部

人口構造の変化により、さまざまな問題が発生すると懸念される「2025年問題」。日本の人口は2010年を境に減少を続けており、2025年には約800万人いる全ての「団塊の世代」(1947~1949年生まれ)が後期高齢者(75歳以上)となることで、国民の5人に1人が後期高齢者という超高齢化社会を迎えます。

その結果、大量の後期高齢者を支えるために、社会保障、主に医療・介護、年金などが限界に達し、社会全体に負の影響がもたらされると考えられています。

この記事では、2025年問題について解説すると共に、今から私たちができる対応策についても触れたいと思います。

3人に1人が65歳以上に。超高齢化社会で抱える深刻な課題

内閣府が公表している「令和4年版高齢社会白書」(外部リンク/PDF)によると、2025年には75歳以上の後期高齢者人口が2,180万人、65~74歳の前期高齢者人口が1,497万人に達すると予測されています。国民の約3人に1人が65歳以上、約5人に1人が75歳以上となる計算です。

一方で少子化は止まらず、総務省が公表した資料「我が国のこどもの数」(外部リンク/PDF)によると2023年4月1日時点での日本の総人口に占める子ども(15歳未満)の割合は11.5パーセントと、49年連続で低下しています。

また、日本財団が2023年1月に、全国の17~19歳1,000人を対象に行った「日本財団18歳意識調査結果」(外部リンク)では、全体の約74パーセントが少子高齢化に対して「危機感がある」、約82パーセントが少子高齢化対策に対する政府の対応は「不十分である」と回答。次の世代を担う多くの若者が、日本の未来や社会に対して強い不安を感じていることが浮き彫りになりました。

18歳意識調査の棒グラフ。少子高齢化についての考えの質問に回答した人の割合(%)。全体(n=1,000)で「非常に危機感を感じる」と答えた人は37.3%。「やや危機感を感じる」と答えた人は36.8%。「わからない/考えたことがない」と答えた人は18.3%。「あまり危機感を感じない」と答えた人は3.1%。「まったく危機感を感じない」と答えた人は4.5%。男性(n=514)で「非常に危機感を感じる」と答えた人は40.9%。「やや危機感を感じる」と答えた人は32.1%。「わからない/考えたことがない」と答えた人は17.9%。「あまり危機感を感じない」と答えた人は3.9%。「まったく危機感を感じない」と答えた人は5.3%。女性(n=486)で「非常に危機感を感じる」と答えた人は33.5%。「やや危機感を感じる」と答えた人は41.8%。「わからない/考えたことがない」と答えた人は18.7%。「あまり危機感を感じない」と答えた人は2.3%。「まったく危機感を感じない」と答えた人は3.7%。
若者が抱く少子高齢化への危機感。日本財団18歳意識調査「第52回 –価値観・ライフデザイン–」報告書より
18歳意識調査の棒グラフ。少子高齢化に対する現在の政府の対応についての質問に回答した人の割合(%)。全体(n=1,000)で「十分である」と答えた人は3.7%。「どちらかといえば十分である」と答えた人は14.3%。「どちらかといえば不十分である」と答えた人は43.7%。「不十分である」と答えた人は38.3%。男性(n=514)で「十分である」と答えた人は4.9%。「どちらかといえば十分である」と答えた人は15.8%。「どちらかといえば不十分である」と答えた人は36.6%。「不十分である」と答えた人は42.8%。女性(n=486)で「十分である」と答えた人は2.5%。「どちらかといえば十分である」と答えた人は12.8%。「どちらかといえば不十分である」と答えた人は51.2%。「不十分である」と答えた人は33.5%。
少子高齢化に対する現在の政府の対応について、若者たちの評価。日本財団18歳意識調査「第52回 –価値観・ライフデザイン–」報告書より

2025年問題における最大の課題といわれているのが、労働力人口の減少です。高齢化社会の進行によって今後はあらゆる産業が人材不足に陥り、従業員の採用競争の激化が予想されます。

さらに、2025年には経営者が70歳以上の中小企業が約245万社にまで増加し、その約半数を占める127万社では後継者が決まっていないといわれています。この問題をこのまま放置すれば、約650万人の雇用、約22兆円に及ぶGDP(国内総生産※)が失われる可能性があります。

  • 1年間など、一定期間内に国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値のこと。国の経済動向(規模)を示す指標

また、75歳以上になると病気やけがへのリスクが高くなるため、他の世代よりも医療・介護費が必要になります。平均寿命が延びたことで認知症にかかる人も年々増えており、2025年には約700万人、高齢者の5人に1人、全人口の16人に1人が認知症になる(※)と予測されています。

現在は後期高齢者の医療・介護費の自己負担額1割、残る9割は社会保障費、つまり私たち現役世代が支払っている税金によって補われています。

社会保障費がどんどん膨らむにもかかわらず、労働力人口が大幅に減少することで税収が減り、医療や介護に必要な金額が確保できなくなることは容易に想像できるでしょう。

これに伴って、認知症をはじめとする介護に携わる人材の確保や、医療体制、年金制度の維持が困難になることも大きな課題となっています。

2025年問題に向けて国が打ち出した3つの対策

何よりも深刻なのは、この問題はその後も続くということ。2025年の高齢化率は30パーセント以上、2040年には35パーセント以上になると推計されており、このまま放置すれば、日本は経済だけでなく、国力の衰退を招きかねません。そのため、政府もさまざまな対策を打ち出しています。

1.公費負担の見直し

これまでも3年に1度の介護保険法改正のたびに低所得者の負担軽減は考慮されてきましたが、2022年度からは、75歳以上であっても一定以上の収入がある場合は医療費の負担額を2割にするなど、貯蓄も少なく住居費・教育費などの他の支出の負担も大きい若い世代の負担を軽減し、公平化を図るための見直しが行われました。

2. 医療・介護人材の確保

少子高齢化に加えて、重労働、低賃金などの理由から、慢性的に人材が不足している介護業界。2025年には約38万人もの人材不足が予測されており、人材確保は急務と言えます。

介護人材の離職理由には、「結婚・出産・育児」「労働環境、雇用管理のあり方」「将来の見通しが立たない」「心身の不調、腰痛等」の4点が上位に挙げられます。

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超高齢化が進む日本では介護人材の不足が深刻化している。Ustyle/Shutterstock

そこで、基本的な賃金アップをはじめ、子育てをしながら働き続けることができる環境整備、人材育成、キャリアアップ制度の整備や助成金・補助金の拡充、介護ロボットやICT技術の導入により、身体的負担軽減や事務負担の軽減などの方策が進められています。

また、介護職への理解、関心を高める対策として、さまざまなメディアで仕事の魅力(「楽しさ」「深さ」「広さ」)の情報を発信するなど、イメージアップにも積極的に取り組んでいます。

3.地域包括ケアシステムの構築

政府は、重度の介護が必要になっても、病院などの施設ではなく、住み慣れた地域で人生の最後まで自分らしい生活ができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体となって提供される「地域包括ケアシステム」の構築(外部リンク/PDF)を目指しています。

地域包括ケアシステムのイメージイラスト:
・訪問診療
・在宅医療・介護
・かかりつけ薬剤師
・リハビリ
・外来診療
住まいと医療、介護施設などが連携し、地域一体で取り組む地域包括ケアシステム

各市町村では 2025年に向けて、3年ごとの介護保険事業計画の策定・実施を通じ、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じた地域包括ケアシステムを構築しています。

各地域において高齢者の総合的な支援を担う「地域包括支援センター」の設置が進められており、日本財団では地域に根差した在宅看護サービス事業所を運営、経営できる看護師を育成する「日本財団在宅看護センター起業家育成事業」(外部リンク)に取り組んでいます。

企業側にもさまざまな取り組みが求められる

高齢者人口が増加すれば、働きながら介護を行う「ビジネスケアラー」も増加することが予測されます。仕事と介護の両立は簡単ではなく、さらに子育ても加われば、家族のケアに追われて仕事どころではなくなる可能性も高いでしょう。

経済産業省が2023年3月14日に開催した「産業構造審議会」の資料(外部リンク/PDF)によれば、毎年約10万人が介護を理由に離職しており、2030年にはビジネスケアラーが約318万人に上る見込みです。

働く人材を求める企業側は、短時間勤務や在宅勤務の導入など、一人一人の社員の要望やライフスタイルに合わせた働き方ができるような仕組みをつくり、社内全体で理解を深める必要がでてくるでしょう。

労働力不足を打開するためには、定年を迎えた高齢者や女性、障害者、外国人など、多様な人材の積極的雇用への取り組みも重要です。

しかし、外国人在留者が増えている(別タブで開く)一方で、過酷な労働環境や低賃金などの理由から定着率が低く、企業側には雇用環境の改善をはじめ、受け入れ態勢の見直しが求められています。

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日本の労働人口不足を解消するために外国人労働者など多様な人材が活躍できる環境づくりが企業に求められる。Fast&Slow/PIXTA

また、日本財団ではさまざまな理由から働きづらさを感じている人々を支援し、就業を促進する「WORK!DIVERSITYプロジェクト」(別タブで開く)や、障害者があたりまえに地域で働く環境づくりを目指す「日本財団はたらく障害者サポートプロジェクト」(別タブで開く)など、多角的な視点からダイバーシティな就労支援に取り組んでいます。

「働く意欲はあるのに、働く場所がない」という悩みを抱えている人々が活躍できる職場環境をつくることができれば、生産性の向上にもつながるでしょう。

2025年問題に向けて、私たちができること

社会保障制度を維持し、日本経済の衰退を防ぐためにも、一人一人の健康寿命を延ばすことも重要と言えます。

健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のこと。

厚生労働省は2019年に、2016年に男性72.14歳、女性74.79歳だった健康寿命を、2040 年までに男女ともに3年以上延伸し、男性75.14歳以上、女性77.79歳以上を目指す「健康寿命延伸プラン」(外部リンク/PDF)を策定しました。

プランの実現に向けて、国民全体が人生の最後まで元気に健康で楽しく毎日が送れることを目標とした「スマート・ライフ・プロジェクト(SLP)」(外部リンク)のさらなる充実や、スポーツ庁との連携強化、地域における健康づくりの促進など、さまざまな取り組みが行われていますが、何よりも私たち一人一人が「少しでも長く、健康であるために」という意識のもとに生活をしなければ、健康寿命を延ばすことは難しいでしょう。

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超高齢化社会では一人一人の健康づくりと、地域社会のつながりをつくることが日本の未来を明るくする

健康寿命を延ばすには、「喫煙を控える」「過度な飲酒、暴飲暴食を控える」「睡眠時間を確保する」「ストレスをため込まない」「しっかり休息をとる」「適度に運動する」など、基本的な要素に加えて、「孤立しない」ことも重要だと言われています。

社会的孤立や、日常的な孤独感を抱えている人は、喫煙、肥満、高血圧よりも死亡リスクが高く、認知症も発症しやすくなるという研究データ(※)があることからも、「社会や地域とのつながり」を持ち続けることがどれほど大切か、よく分かるのではないでしょうか。

2025年問題に対して何も対策を講じなければ、2030年には全人口の約30パーセントが65歳以上の高齢者となり、第二次ベビーブームの1971~74年に生まれた団塊ジュニア世代が65歳以上となる2040年には、ますます労働人口の減少が懸念されます。

年齢を重ねても健康で過ごすために、今のうちから健康的な生活を習慣づけ、趣味が合う仲間とスポーツを楽しんだり(別タブで開く)、地域のお祭りなどのイベントに参加したり、楽しみながら人とつながり続けることが、私たちにできる最善策かもしれません。

  • 掲載情報は記事作成当時のものとなります。