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お金、勉強、子育て…世の中は不平等(ふびょうどう)でいっぱい?

左のイラスト:左にお金持ち、右に多くの貧しい人々が乗った、左に傾いた天秤 右のイラスト:満足に教育や社会保障を受けられず悲しむ母親とその手に抱かれる赤ちゃん
ほんのひとにぎりの人にお金が集まったり、生まれた国や地域(ちいき)によって教育や子育ての支援(しえん)を十分に受けられない人たちがいたりする

小学生のためのSDGs入門記事。第9回は、目標(もくひょう)10「人や国の不平等(ふびょうどう)をなくそう」について考えてみましょう。

生まれた国や地域、人種(じんしゅ)や性別(せいべつ)、障害(しょうがい)のある、なしなど、私たち一人一人にはみんなちがいがあって当たり前です。

しかしそのちがいが原因(げんいん)になって、安全で豊(ゆた)かな暮(く)らしができる人とそうでない人が分かれてしまうことを「不平等(ふびょうどう)」といいます。

例(たと)えば、世界には、高級なレストランで毎日食事をすませる人もいれば、貧(まず)しさのせいでほとんどごはんを食べられず、苦しんでいる人もいます。

このような不平等(ふびょうどう)を減(へ)らし、全(すべ)ての人が取り残(のこ)されないようにするのが目標(もくひょう)10が目指していることです。

では、社会にどのような不平等(ふびょうどう)があるのか見ていきましょう。

連載(れんさい)【小学生SDGsジャーナル】記事一覧(きじいちらん)

世の中にはびこるさまざまな不平等(ふびょうどう)

●お金の不平等(ふびょうどう)

世界のたくさんの国で、お金を持っている人、お金を持っていない人の差(さ)がこれまでにないほど大きくなっています。

お金や土地といった財産(ざいさん)のことを「資産(しさん)」といいます。

2017年の調査(ちょうさ)によると、世界全体にある資産(しさん)のうち約(やく)33パーセントを、世界の人口の中でもっとも豊(ゆた)かな1パーセントの人が持っていることが分かりました。

その一方で、世界人口の中でもっとも貧(まず)しい25パーセントの人たちが持つ資産(しさん)を全部集めても、世界全体の資産(しさん)の10パーセントにしかならなかったのです。

ほんのひとにぎりのお金持ちに資産(しさん)が集まるので、かれらはさらに豊(ゆた)かになり、貧(まず)しい人はチャンスすらもらえず貧(まず)しいまま。こういう状態(じょうたい)を「貧富(ひんぷ)の格差(かくさ)」といいます。

●国や地域(ちいき)の不平等(ふびょうどう)

生きているとだれもが病気やけがをしますし、年を取れば体の調子が悪い部分も出てきます。

働いていた会社が倒産(とうさん)して仕事がなくなったり、事故(じこ)にあって障害(しょうがい)が残(のこ)ったり、という予期せぬ出来事があるかもしれません。

そういう自分の力で生活するのが難(むずか)しいとき、国が必要(ひつよう)なお金を支給(しきゅう)して、最低限(さいていげん)の生活ができるようサポートする制度のことを「社会保障(しゃかいほしょう)」といいます。

しかし、世界には社会保障(しゃかいほしょう)の仕組みがない国もあります。

例(たと)えば、家族が生活できなくなったときに手助けしてくれる制度がある国に住んでいる子どもは、世界中で3人に1人しかいません。また、子どもを生んだばかりで働(はたら)けないお母さんに出産手当(しゅっさんてあて)を支給(しきゅう)している国は約(やく)40パーセントだけです。

子どものイラスト:
社会保障給付(しゃかいほしょうきゅうふ)を受ける子どもの割合(わりあい) 35%

赤ちゃんを抱く母親のイラスト:
・出産手当(しゅっさんてあて)を受ける新生児(しんせいじ)の母親の割合(わりあい) 41%

車いすに乗った人のイラスト:
障害者年金(しょうがいしゃねんきん)を受ける重度障害者(じゅうどしょうがいしゃ)の割合(わりあい) 28%

杖をついた高齢者のイラスト:
年金を受ける定年退職者(ていねんたいしょくしゃ)の割合(わりあい) 68%

失業してうなだれる人のイラスト:
失業手当(しつぎょうてあて)を受ける失業者(しつぎょうしゃ)の割合(わりあい) 22%
世界で社会保障(しゃかいほしょう) を受ける人々の割合

●障害(しょうがい)による不平等(ふびょうどう)

世界には重い障害(しょうがい)を経験(けいけん)している人が13億(おく)人いるといわれており、これは世界人口の16パーセント。つまり世界の6人に1人です。

障害(しょうがい)のある人は健康上(けんこうじょう)の不平等(ふびょうどう)にあいやすく、心の病やぜんそく、糖尿病(とうにょうびょう)や肥満(ひまん)といった病気になるリスクが、障害(しょうがい)のない人の2倍になるといわれています。

また、障害(しょうがい)のある人の中でバスや電車などの便利(べんり)で安い交通機関(こうつうきかん)を利用(りよう)するのが難(むずか)しい、と感じている人は、障害(しょうがい)のない人の15倍におよびます。通える学校や働(はたら)ける場所が限(かぎ)られる、という不平等(ふびょうどう)の問題もかかえています。

●生きる権利(けんり)の不平等(ふびょうどう)

交通手段(こうつうしゅだん)が増(ふ)えて、世界中を人が行き来する時代になったことで、生まれた国を出て、ほかの国に移(うつ)り住む「移民(いみん)」も増(ふ)えています。

移民(いみん)は仕事をもらえるチャンスがその国の人より少ないため、体力的(たいりょくてき)にきつく、人がやりたがらない仕事を引き受けたり、ふつうよりも安いお給料(きゅうりょう)で働(はたら)かされたり、といったこともめずらしくありません。

国によっては移民(いみん)を守る法律がないため、だまされる、暴力(ぼうりょく)をふるわれるといったトラブルが起きても何もしてもらえないことがあります。

写真:工場で働く人たち
移民(いみん)に関する制度(せいど)が整っておらず、安い賃金(ちんぎん)で働(はたら)かされる人も少なくない

このほかにも第3回でふれた、学校に通いたくても通えない人がいる「教育の不平等(ふびょうどう)」(別タブで開く)や、第8回でふれた、女の子だからという理由で子どものうちに結婚(けっこん)させられたりする「性別(せいべつ)による不平等(ふびょうどう)」(別タブで開く)などの問題もあります。

不平等(ふびょうどう)だと、なぜいけない?

「お金の不平等(ふびょうどう)」に例(たと)えて考えると、貧(まず)しい人たちの中には休みたくても働(はたら)かないと生きていけない、お金がなくて満足(まんぞく)に病院に行けない、などの理由で病気が悪くなったり、命を落としたりする人もいます。

お金の不平等(ふびょうどう)が生み出す「貧富(ひんぷ)の格差(かくさ)」が、そのまま「命の格差(かくさ)」や「健康(けんこう)の格差(かくさ)」につながってしまいます。

「不平等(ふびょうどう)」は、命や健康(けんこう)をうばうこともあれば、第1回でふれた貧困(ひんこん)の連鎖(れんさ)(別タブで開く)を生み出して、勉強したり、安定した仕事についたりするチャンスをうばうこともあり、社会や経済(けいざい)の発展(はってん)のさまたげになるのです。

また不平等(ふびょうどう)は、物をぬすむ、うばい合うといった争(あらそ)いごとの原因(げんいん)にもなるため、犯罪(はんざい)や紛争(ふんそう)が起こりやすくなります。

日本財団(にっぽんざいだん)の取り組み

ミャンマー支援(しえん)プログラム(別タブで開く)

人口の約(やく)70パーセントをしめるビルマ族以外(いがい)に、130以上(いじょう)の少数民族(しょうすうみんぞく)が暮(く)らすミャンマーでは、長い間、民族同士(みんぞくどうし)の対立が続(つづ)いてきました。

また、軍隊(ぐんたい)が武力(ぶりょく)を使って国を治(おさ)めようとしたり、それに反対する民族(みんぞく)たちが武器(ぶき)を持って戦(たたか)ったりと、同じ国の中で争(あらそ)う「内戦(ないせん)」も続(つづ)いてきました。

日本財団(にっぽんざいだん)では、医療(いりょう)の支援(しえん)や、障害者(しょうがいしゃ)のサポート、学校建設(がっこうけんせつ)のプロジェクトなど、ミャンマーに暮(く)らす人たちのあらゆる不平等(ふびょうどう)をなくすための活動を行っています。

ミャンマーで取り組む学校の建設支援(けんせつしえん)

日本財団(にっぽんざいだん)ウクライナ避難民支援(ひなんみんしえん)(別タブで開く)

2022年、ロシアがウクライナに対して始めた戦争(せんそう)は、今もまだ続(つづ)いています。

日本財団(にっぽんざいだん)では、戦争(せんそう)からのがれて日本に来たウクライナの人たちが安心して暮(く)らし、前に進めるように、住む場所や家具など生活に必要(ひつよう)なものをそろえるお金、働(はたら)けるようになるまでの生活費(せいかつひ)などの支援(しえん)を行ってきました。

地域(ちいき)の交流イベントに参加するウクライナの子どもたち
 

またいまも長引く日本での生活を見すえて進学や働くために日本語を学ぶための学費の支援(しえん)に取り組むなど、住む国が変(か)わっても不平等(ふびょうどう)にならず、安心して生活できるようサポートしています。

関連(かんれん)記事:
特集(とくしゅう)【避難民(ひなんみん)と多文化共生(たぶんかきょうせい)のかべ】(別タブで開く)

この不平等(ふびょうどう)の問題について私(わたし)たち一人一人ができることは何でしょう? その答えは、ぜひ自分で調べて、考えて、自分にできることから取り組んでみてください。

本や図書館、インターネットで調べてみよう!

  • 自分の生活をふり返(かえ)り、貧(まず)しい国で暮(く)らす人とどういう点で違っているか、どこに不平等(ふびょうどう)があると思うか、考えてみよう
  • 例(たと)えば「障害(しょうがい)のある人」「日本語が読めない、話せない人」「お年寄(としよ)り」など、いろいろな人になったつもりで、家や学校、駅など身の回りをよく見て、使いづらい場所がないか調べてみよう。また、どうすれば使いやすいかも考えてみよう
  • 不平等(ふびょうどう)の問題をなくすために、日本や世界でどのような取り組みが行われているのか調べてみよう

「不平等(ふびょうどう)の問題」について学べるおすすめの本

出版(しゅっぱん):誠文堂新光社(せいぶんどうしんこうしゃ) 監修(かんしゅう):由井薗健(ゆいぞの・けん)/柏谷昌良(かすや・まさよし) 著者(ちょしゃ):小学校社会科授業づくり

『子ども教養図鑑(きょうようずかん) SDGs人権編(じんけんへん)』(外部リンク)

「お金がなくて普通(ふつう)の暮(く)らしができない人たちがいる。どう解決する?」など、世界が直面する18の人権問題(じんけんもんだい)について、小学校の社会科の授業や研究をしている先生たちがビジュアルで解説(かいせつ)した図鑑(ずかん)です。

なぜその問題が起きているのか、という基本の情報(じょうほう)やその背景(はいけい)、国や企業(きぎょう)が行っている取り組みも紹介(しょうかい)しています。

出版(しゅっぱん):PHP研究所(ぴーえいちぴーけんきゅうしょ) 監修(かんしゅう):神島裕子(かみしま・ゆうこ)
 

『平等ってなに? 歴史(れきし)と身近な不平等(ふびょうどう)から考えよう』(外部リンク)

人間は、社会の近代化と共(とも)に不平等(ふびょうどう)のない社会を目指してきました。しかし、世界でも日本でも、不平等(ふびょうどう)や格差(かくさ)が広がっています。

平等(びょうどう)を目指してきた歴史(れきし)や、身近にある平等、不平等(ふびょうどう)の問題を通して、どうして不平等(ふびょうどう)の問題が起こるのか、平等とはなんの平等のことをいうのか、について探(さぐ)ります。

まわりの人に話を聞いてみよう!

  • お父さんやお母さん、近所のおじさん、おばさん、おじいさん、おばあさんに子どものころと今とを比(くら)べると、世界や日本で貧富(ひんぷ)の格差(かくさ)が広がったと思うか、思う・思わないとしたらそれはどうしてか、話を聞いてみよう
  • また、日本以外(いがい)の国から来る移民(いみん)や、障害(しょうがい)のある人など、不平等(ふびょうどう)に直面しやすい人にはどういうサポートが必要(ひつよう)だと思うか、意見を聞いてみよう
  • いろんな人の意見を聞いたら、自分に何ができるか考えてみよう

自分にできることからやってみよう!

  • 調べたこと、聞いたこと、考えたことをノートにまとめて家族、友だちに発表してみよう
  • 世界の不平等(ふびょうどう)をなくす活動をしている団体(だんたい)とつながる、フェアトレードの食品や雑貨(ざっか)を買うようにする、などできることはたくさんあるはず

自分で解決方法(かいけつほうほう)を見つけるのにおすすめ!

アムネスティ・インターナショナル日本(外部リンク)

世界中にいる、差別(さべつ)や暴力(ぼうりょく)に苦しんでいる人たちの自由と尊厳(そんげん)が平等に守られる世界になるよう、世界200カ国で活動をしている人権団体(じんけんだんたい)です。

人権(じんけん)とは何か、平等とは何かを学べると共(とも)に、オンライン署名(しょめい)や寄付(きふ)、イベントへの参加(さんか)など、活動をサポートするための情報(じょうほう)を知ることができます。

フェアトレード・ジャパン(外部リンク)

途上国(とじょうこく)と呼(よ)ばれる貧(まず)しい国で作られた食品や日用品が、経済的(けいざいてき)に豊(ゆた)かな先進国でおどろくほど安い価格(かかく)で売られていることがあります。

その背景(はいけい)には、安い賃金(ちんぎん)しかはらわずに長い時間働(はたら)かせる、などの不平等(ふびょうどう)の問題があるケースが見られます。

公平・公正な貿易(ぼうえき)を意味する「フェアトレード」は、途上国(とじょうこく)の原料(げんりょう)や製品(せいひん)を、働(はたら)いた量(りょう)や価値(かち)に見合った価格(かかく)で買い続(つづ)けることで、立場が弱い途上国(とじょうこく)の労働者(ろうどうしゃ)の生活がよくなるよう目指す仕組みです。

ウェブサイトでは、フェアトレードの仕組みが学べるほか、どこの国でどういう商品が作られているのか、なども知ることができます。

ピープルツリー(外部リンク)

フェアトレードに参加(さんか)する人を増(ふ)やして多くの生産者(せいさんしゃ)をサポートし、先進国に住む人たちの物の買い方を変(か)えることで持続可能(じぞくかのう)な社会を目指す団体「グローバル・ヴィレッジ」が作ったフェアトレード・ブランドです。

あつかっている商品は全(すべ)て公正な取引によるもので、自然素材(しぜんそざい)を手仕事によって仕上げたもの。手編(てあ)みや手織(てお)りなど、それぞれの国や地方、民族(みんぞく)の伝統的(でんとうてき)な手法を用いて、できるだけその地域(ちいき)で採(と)れる素材(そざい)を使っています。

毎月1回、日曜日に開催(かいさい)しているイベント「フェアトレードの学校」では、「フェアトレードってそもそも、何?」という基礎知識(きそちしき)や、毎日の衣食住(いしょくじゅう)にまつわるフェアトレード製品(せいひん)を通して、生産者団体(せいさんしゃだんたい)の活動や、その背景(はいけい)にある社会問題を学ぶことができます。

イラスト:KIKO

[参考文献]

国際連合 持続可能な開発に関するグローバル・レポート2019(外部リンク)

公益財団法人日本ユニセフ協会「人や国の不平等をなくすことはなぜ大切か」(外部リンク)

Towards universal social protection for children: Achieving SDG 1.3 ILO-UNICEF Joint Report on Social Protection for Children, UNICEF ILO, 2019(外部リンク)

公益財団法人日本WHO協会「障がい」(外部リンク)

国連広報センター「SDGs報告 2019」(外部リンク)

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