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寄付者にはお礼が重要? 寄付金管理を楽にする「コングラント」に、NPOに必要なことを聞いた

- 寄付金の管理、領収書の発行、定期的な活動報告……。NPOの会計業務は面倒なことが多い
- 「コングラント」は、「もっと会計管理をラクにしてほしい!」というNPOの声から生まれたサービス
- 寄付への参加者を増やすには、もっと楽しく、カジュアルに寄付に参加できる仕組みづくりが必要
取材:日本財団ジャーナル編集部
ただでさえ面倒な会計管理。NPOにはさらに「寄付」の収入が加わり、管理は煩雑化している。
そこで、コングラント株式会社(外部リンク)では、NPOの会計管理が楽にできるだけでなく、クラウドファンディングやマンスリーでの寄付募集などにも対応したファンドレイジングサービス「コングラント」を開発。2024年12月時点で2,800以上の団体が活用しているという。
今回は、同社経営企画室 室長で、ファンドレイジング伴走支援業務などを担当する内藤千賀(ないとう・ちか)さんにお話を伺った。
寄付募集から会計管理までワンストップで解決
――早速ですが、NPOの会計業務にはどのような作業があるのでしょうか? 一般企業との違いも併せて教えてください。
内藤さん(以下、敬称略):基本的には、民間企業やNPOなど法人格にかかわらず、経営を行う上でやるべき業務に大きな違いはないと考えています。
ただ、NPOだからこそ発生する業務があります。それが寄付金の管理です。
よく知られているのはNPOそのものや活動全体に対して行う寄付ですが、最近ではクラウドファンディングのようにプロジェクトを指定したものも増えています。後者の場合は、寄付金の支出管理を明確に、用途別に管理することが必要です。
また、支援者の方に対して寄付金の使い道や、プロジェクトの進捗状況を報告するなどのコミュニケーションや、領収書の送付などの作業が発生します。
継続して寄付していただくためには、1回の寄付に対してお礼メールを送って終わりではなく、毎月の活動報告、年に1度の年次報告書の送付なども大切な業務です。
さらに、NPO法人(特定非営利活動法人)であれば、認定NPO法人を目指す場合、国が定めたパブリック・サポート・テスト(PST※)に適合するために、寄付者名簿というものを作成する必要があります。
他の法人格と同様に、NPO法人にも年に1度総会を開くことが義務付けられていて、事業年度が終了した日から3カ月以内に、所轄庁へ事業報告書等を提出する必要があります。
- ※ NPO法人が市民から広く支援を受けているかどうかを判断するための基準

――想像していた以上に細かい作業が多くて驚きました。ファンドレイジングシステム「コングラント」ではどんなことができるのでしょうか。
内藤:寄付募集から決済、寄付金の管理、領収書の発行がワンストップで行うことができるシステムです。

内藤:まず、簡単な操作で活動内容や寄付募集などの情報を明記した「プロジェクトページ」を作成し、ウェブ上で公開します。
通常の寄付や会費を集めることを目的とした「ベーシック」タイプでは、単発寄付や毎月・毎年の自動決済を同時に募集することができる他、単発で集中的に寄付を集める「クラウドファンディング」、マンスリーサポーターを増やす「マンスリーファンディング」ページの作成も可能です。
決済は最短翌日からクレジットカードが利用可能な他、銀行振込やApple Pay、Google Pay、一部団体ではありますがPayPay寄付にも対応しています。
こうした決済の情報は管理画面に即時で反映され、お礼メールの送信や領収書の発行、送付も簡単にできます。
――プランの利用料金はどうなっていますか。
内藤:無料で利用できるフリープランに加えて、より高機能でカスタマイズなどもできる有料プラン(4,000円~)から選択することができます。
現場の「なんとかしてほしい」という声から生まれたサービス
――初めて寄付を募る団体や、ウェブでのシステム管理に慣れていない方でも使いやすそうですね。どのような背景で「コングラント」は生まれたのでしょうか。
内藤:もともとコングラントは2018年に立ち上げられたサービスで、病院やNPOのウェブサイト制作や、運用のサポートを行うリタワークス株式会社(外部リンク)から独立しました。
多くのユーザーさまから、ウェブサイトから寄付ができるようなシステムにしてほしいとご相談をいだいていたのですが、当時は社会におけるNPOへの信頼性が低く、クレジットカード決済を導入するのがすごく難しかったんです。実際、審査に落ちてしまう団体も数多くありました。
だからといって、決済代行会社にお願いすれば、費用がかかるだけでなく、書類作成にも時間が取られます。また、仮に導入できたとしても、サイト上にカード決済フォームを設置しなければならず、さらに外注費用が発生してしまいます。
この状況を知った弊社の代表が、なんとかできないかと、現場の声をもとに開発されたのが「コングラント」のシステムです。
――決済システムがなかった頃は、定期的な寄付の受付はどのように行っていたのでしょう。
内藤:かつてはウェブサイト上に口座が記載されていて、直接振り込んでいただくか、郵便振替の書類を利用するといった方法が主流だったと思います。
ただ、それですと寄付に対するハードルも高くなりますし、直接振り込まれるので、寄付者の方にお礼のメールを送りたいと思っても連絡先が分からないということも多かったと思います。
――現在、どれくらいの数の団体が登録されているのでしょうか。
内藤:法人の規模や種別を問わず、現在(2024年9月)、2,698の組織で使用されています。
――実際に利用している団体の方からは、反響がありますか。
内藤:多くいたただいているのが「領収書などを郵送する手間がなくなったことで経費削減につながり、他のことに時間を充てられるようになった」「スタッフの意識も変わった」、そして「寄付が増えた」という声です。
寄付者を増やすには、情報発信と寄付しやすい環境づくりが必要不可欠
――会計管理以外にも、NPOが抱えている課題はありますか。
内藤:やはり、最も難しいのは「どのようにして寄付を集めるか」だと思います。ただ、プロジェクトページを作成しただけでは、寄付は集まりません。
呼びかけたり、情報発信をしたりする必要があるのですが、そもそも何から始めたらいいか分からないという団体や、SNSなどを通じて発信してはいるものの、寄付者となり得る方に届いていないのでは、という団体もあります。
――寄付を集めるためには、どうやってアプローチをすればいいのでしょうか。
内藤:多角的なアプローチが必要です。
例えば、多くのNPOがSNSを活用していますが、実際にSNSから寄付につながる確率は、対面などと比べると低いんですね。
もちろん、恒常的に情報を伝えることも大切ですが、直接メールを送ったり、郵送で資料を送ったり、いろんな角度からコミュニケーションが取れるよう、連絡先を獲得することが重要だと思います。
――多くの人から応援される、寄付金が集まるNPOとはどんな団体だと思われますか。
内藤:各NPOの代表がどれだけの熱量で発信しているか、ターゲットに届いているかということに加えて、事業そのものの質も大切です。その事業が社会課題の解決につながっているのか、必要不可欠な活動であると思ってもらえたら、自然とファンは集まるでしょう。
「私たちはこんな活動をしています」というアピールだけでは、なかなか寄付が集まらない現状があります。「○○な社会に変えるために活動しています」とか、「未来がこうなっていたらいいと思いませんか?」とストレートに訴えかけるようなメッセージはすごく大切ですね。
また、いざ寄付をしようと思った場合、多くの寄付者は「この団体は本当に信頼できるのか」という点も重視されますので、しっかりとした組織体制も応援される要素の1つだと思います。
――NPOへの正しい理解促進と、寄付への参加者を増やすためには、どんなことができるでしょうか。
内藤:先日、社内で「寄付とは何か?」という問いに対して“願い”だという話になりました。
寄付をする目的には「環境問題を解決したい」「子どもたちの未来を守りたい」など、さまざまな方の願いがあり、NPOの願いと寄付者の願いが合致することで、形としての「寄付」が生まれます。
日々の生活に追われ、未来についてポジティブに考える余裕がないという方も多いと思うのですが、一人一人が「自分の願望ってなんだろう?」と向き合うきっかけが、寄付への参加につながるのではないでしょうか。

内藤:Yogibo(外部リンク)をスポンサーに迎えた「GIVING100」(外部リンク)など、企業と連携したクラウドファンディングプロジェクトも立ち上げています。
NPOにとっては、多くの人が名前を知っている企業が関わっているということで寄付が増えやすく、期間中に目標金額を達成すれば決済手数料0円になるというメリットもあります。
2023年中に実施された64件のプロジェクトの内、49団体が期間内に目標金額を達成し、寄付の総額は2億円以上となりました。
――今後の展望や、思い描く未来があれば教えてください。
内藤:これまでNPOに向けたサービスを提供してきましたが、さらに寄付が循環するための取り組みとして、大企業の従業員様を対象に、個人の寄付体験を高めるシステムを開発しています。
近年、従業員のウェルビーイングに力を入れる企業が増えていますので、その一環として、社会貢献や寄付への支援につなげられたらと考えています。
――これまで一度も寄付をしたことがない人の心を動かすには、どうしたらいいでしょう。
内藤:確かに、「こんな社会であってほしい」と願いがあったとしても、寄付に対してハードルを感じている人は多いと思います。
弊社としては、決済完了までスムーズなシステムだったり、カジュアルに寄付ができる仕組みを作ったりという点でお役に立てればと思いますが、「寄付」そのものに対する概念を変えるには、私たちプラットフォーム側も、NPO側も、「寄付は気軽にできるもの」という共通認識を持ち、広げていくことがハードルを下げる第一歩ではないかと思います。
編集後記
内藤さんのお話を聞いて、改めてNPOならではの業務の多さを知りました。寄付金集め以外の業務に追われ、活動に対するモチベーションを失ってしまっては本末転倒です。
コングラントでは、ファンドレイジングのさまざまな悩みを解消するヒントをまとめた「ファンドレイジングのコツ100選」(外部リンク)など、伴走支援にも力を入れています。
現在活動中の団体はもちろんのこと、これからNPOを立ち上げようと考えている人は、こちらも参考にしてみてはいかがでしょうか。

- ※ 掲載情報は記事作成当時のものとなります。