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NPO法人を設立するには? 設立の要件、手続きの流れを詳しく解説
- NPO法人を設立するには、活動目的や社員数、役員報酬などいくつかの要件を満たす必要がある
- NPO法人設立は、情報公開や適正な会計処理などの義務を負う一方、社会的信用や税制優遇のメリットがある
- 設立手続きや運営については、所轄庁、中間支援組織、専門家への相談が可能
執筆:日本財団ジャーナル編集部
NPO法人を設立するには、さまざまな準備や手続きが必要だ。また、法人設立後は情報公開や適正な会計処理などの義務が生じる。
この記事では、NPO法人を立ち上げる際に把握しておきたい、要件や手続きの流れについて紹介する。法人格を取得した際に生じる義務についても詳しく触れているので、ぜひチェックしてほしい。
1.NPO法人設立要件
NPO法人を設立するには、次の要件を満たす必要がある。
- 特定非営利活動を主な目的にしている
- 営利を目的としないこと
- 社員(構成員)の入会資格や退会の条件が不当ではないこと
- 役員のうち報酬を受け取るのが、役員総数の3分の1以下であること
- 宗教活動や政治活動を主な目的としないこと
- 特定の公職者(候補者を含む)や政党を推薦、支持、反対することを目的としないこと
- 暴力団やその構成員、または構成員でなくなった日から5年を経過しない者が統制する団体ではないこと
- 社員を10人以上有すること
2つ目の「営利を目的としない」とは、事業で得た利益を構成員で分配しないという意味であり、利益の計上自体を禁じているわけではない。NPO法人は、利益を団体の運営や事業の遂行など、本来の活動目的のために使うことは認められている。
2.NPO法人が負う義務
NPO法人を設立した後に生じる義務もある。これらの義務を果たすことは、透明性を高め社会的な信用を得ることにもつながる。
- 情報公開義務
- NPO法人は、活動内容やお金の使い道を、市民に分かりやすく説明する責任がある。 そのため、事業報告書や活動計算書など、事業やお金の動きなどをまとめた報告書を作成し、求めがあればいつでも見せられるようにしておかなくてはならない。また、事業年度ごとに事業報告書等を所轄庁に提出することも求められる
- 適正な会計処理
- NPO法人は、団体のお金の出入りや活動内容を、ルールに沿って正確かに分かりやすく、継続的に記録して管理しなければならない
- 法令および定款の遵守
- NPO法人は、非営利活動法人法と定款を守って正しく運営しなくてはならない。定款には、団体の目的、活動内容、役員についてなど、運営の基本ルールを記載する。定款に記載していない新しい活動をする際には、定款の変更手続きをする必要がある
- 納税義務
- 収益事業を行う場合、法人税や消費税などの納税義務が生じる。税額は、収益事業で得た利益から、収益事業で生じた経費を差し引いて計算する
- 解散
- NPO法人は、活動を続けられない場合や続ける意思がない場合に、解散の手続きをする必要がある。清算人が中心になって、必要な手続きを行う。もし団体に財産が残った場合は、定款に記載されている通りに、他のNPO法人や国などに引き継ぐことになる
団体の将来像を見据え、義務とメリットの双方を理解した上で、法人格取得を検討したい。
3.NPO法人設立の流れ
![[申請者]
1.設立総会
2.設立申請
↓
提出(申請)
↓
[所轄庁]
3.受付
4.公表・縦覧(縦覧期間2週間)
↑
↓
5.認証・不認証の決定(2ヶ月以内)
↓(最長2ヶ月2週間)
通知(2週間以内)
↓
[申請者]
6.設立登記
7.登記完了届提出](/wp-content/uploads/2025/11/SEO-8_1.png)
NPO法人を設立するときには、次の4つの段階に分けて準備を進めよう。事前準備、申請手続き、縦覧・可否決定、登記手続きについて説明する。
3-1.事前準備
事前に、団体の方向性や軸(ビジョン・ミッションなど)を決める。
方向性の決定と人員確保ができたら、NPO団体としての設立総会を開催し、議事録を取ると共に次の書類を作成する必要がある。
- 会則・定款
- 会員名簿
- 役員名簿
- 向こう1年分の事業計画書
- 予算書
3-2.申請手続き
NPO法人として申請する準備ができたら、特定非営利活動法人設立申請書を自治体へ提出する。申請に際しては申請書の他に、次の10種類の書類が必要となる。
- 定款
- 役員名簿(役員の氏名、住所、報酬の有無を記載した名簿)
- 役員の就任承諾書、誓約書の謄本
- 役員の住所又は居所を証明する書類
- 社員のうち 10 人以上の氏名、住所を示す書類
- 確認書(認証要件への適合を確認したことを示す書類)
- 設立趣旨書(設立目的や経緯、活動方針を記載する書類)
- 設立についての意思決定を証明する議事録の謄本
- 事業計画書(設立当初の年度と翌事業年度分)
- 活動予算書(設立当初の年度と翌事業年度分)
事前確認(事前相談)は、自治体によっては予約や書類の準備が必要となる。詳細は、各自治体のホームページを確認しよう。
3-3.縦覧・可否決定
提出した書類一式は、自治体で審査される。そのうち一部は2週間にわたり縦覧(公開)され、市民の目で確認・点検が行われる。
縦覧期間で2週間、その後2カ月以内に審査結果が確定するのが一般的なスケジュールだ。
縦覧期間と審査期間で時間がかかる。
3-4.登記手続き
自治体と縦覧による審査に通過したら、事務所の所在地を管轄する法務局で、法人設立の登記手続きをする必要がある。
登記手続きは、認証されてから2週間以内に次の書類を提出しなければならない。
- 登記申請書
- 定款
- 代表権を有する者の資格を証する書面
- 設立許可書又はその謄本
また法人登記の際は、登記所に提出した代表印・会社実印が必要だ。
登記が完了することで、NPO法人が正式に設立されたこととなる。登記完了後は、以下の書類を所轄庁へ届け出なければならない。
- 設立登記完了届出書
- 登記事項証明書
- 財産目録

4.NPO法人設立にかかる費用
NPO法人の設立自体には、株式会社の設立登記のような登録免許税や、定款認証の手数料はかからない。
自分自身で設立をする場合、実際にかかる費用項目は次のような諸経費分である。
- 印鑑作成費用
- 役員の住民票取得費用
- 登記簿謄本取得費用
上記の中で大半を占めるのは印鑑の作成費用で、5,000円~3万円程度。
また、行政書士や税理士などの専門家に設立手続きを代行依頼することも可能だ。その場合、10万円から30万円程度の費用がかかる場合がある。
5.NPO法人設立のために活用できる助成金
NPO法人の助成金についての詳細は、「NPO法人が活用できる助成金は? 情報収集の手段や、受給条件・申請方法を解説」(別タブで開く)で詳しく解説している。設立・スタートアップ時の助成金についても解説しているので、参考にしてほしい。
6.NPO法人設立に関する相談先
NPO法人の設立には、多くの書類作成や手続きが必要となり、その内容は複雑で多岐にわたる。書類の不備や手続きの漏れは認証の遅れにつながるため、専門家への相談も検討したい。
最も身近な相談先は、事務所所在地を管轄する都道府県または政令指定都市の所轄庁(外部リンク)だ。設立認証申請に関する相談はもちろん、NPO法人の運営や手続きに関する一般的な相談にも応じている。
また、各地域には、NPO法人の設立や運営を支援する中間支援組織(外部リンク)と呼ばれる民間の支援団体がある。中間支援組織に明確な定義はないが、資金・人材・情報・ノウハウなど、NPO法人が必要とする資源を提供している。中間支援組織によって、支援内容は異なるため、事前に支援内容について確認しておこう。
さらに、NPO法人の設立・運営に詳しい税理士、公認会計士、社会保険労務士、司法書士、行政書士などの専門家に相談するのも有効な手段。例えば、NPO法人の設立サポートに強い税理士事務所では、設立の手続きを代行するほか、資金調達や運営相談などの顧問としても対応している。
設立の手続きは煩雑で、時間も労力もかかる。専門家のサポートを上手に活用し、スムーズな法人設立を実現しよう。
まとめ
NPO法人設立には、所轄庁への認証申請や登記などの手続きが必要である。申請が通りNPO法人になれば、義務を負う一方で、活動を進める上で重要な「信用を得らえる」というメリットも得られる。
設立手続きを自分で行う場合、設立費用は法人実印の作成費用や各種証明書の取得費などであり、株式会社の設立と比較すると費用を安く抑えられる。ただし、設立の際の業務を代行する場合に、税理士や行政書士などに依頼するケースも少なくない。
計画的に準備を進め、スムーズな法人設立を実現しよう。
考文献:
国税庁「特定非営利活動促進法により設立されたNPO法人の法人税法上の取扱い」(外部リンク)
内閣府NPOホームページ「特定非営利活動促進法に係る諸手続の手引き」(外部リンク/PDF)
内閣府NPOホームページ「設立の認証・手続き等」(外部リンク)
内閣府NPOホームページ「第2章中間支援組織の活動実態」(外部リンク/PDF)

- ※ 掲載情報は記事作成当時のものとなります。