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若者のエネルギー観は「理想」よりも「現実」を重視 ~18歳意識調査アンケートより~

葛飾北斎の浮世絵『神奈川沖浪裏』をモチーフにしたイラスト。大きく波打つ激しい荒波の中、制服姿の若者が乗った小舟が進んでおり、背景には富士山とともに多数の風力発電の風車が立ち並んでいる。国際情勢やエネルギー価格高騰といった時代の「荒波」の中で、現実的なエネルギーのあり方を模索する若者の姿を表現している。
激動情勢の波の裏でどう生きるか

昨今のエネルギー価格の高騰や不安定な国際情勢による供給不安などを背景に、若者は、日本のエネルギーのあり方において安定供給や経済性を重視しており、原子力発電所の再稼働や建て替えにも肯定的――日本財団が2026年6月に実施した18歳意識調査「エネルギー」の調査結果(外部リンク)より、若者がエネルギーに関して現実的な見方をしていることがうかがえました。

日本のエネルギーのあり方で重視することを尋ねたところ、全体では「安定して使えること」がトップで、「電気料金が高くなりすぎないこと」、「安全であること」が続きました。一方で、「温室効果ガスの排出を抑えること」は、選択肢の中ではもっとも低い順位に留まりました。

質問:日本のエネルギーのあり方を考えるとき、あなたが特に重視することは何ですか。3つまで選んでください。

"18歳意識調査の棒グラフ。「日本のエネルギーのあり方で重視すること」の質問に回答した人の項目別割合(%)。
全体(n=1000)で「安定して使えること」と答えた人は62.5%。「電気料金が高くなりすぎないこと」と答えた人は53.7%。「安全であること」と答えた人は46.5%。「災害時にも止まりにくいこと」と答えた人は29.3%。「温室効果ガスの排出を抑えること」と答えた人は28.1%。「その他」と答えた人は0.4%。「特にない」と答えた人は10.3%。
男性(n=513)で「安定して使えること」と答えた人は64.7%。「電気料金が高くなりすぎないこと」と答えた人は51.7%。「安全であること」と答えた人は43.7%。「災害時にも止まりにくいこと」と答えた人は29.8%。「温室効果ガスの排出を抑えること」と答えた人は25.3%。「その他」と答えた人は0.2%。「特にない」と答えた人は12.3%。
女性(n=487)で「安定して使えること」と答えた人は60.2%。「電気料金が高くなりすぎないこと」と答えた人は55.9%。「安全であること」と答えた人は49.5%。「災害時にも止まりにくいこと」と答えた人は28.7%。「温室効果ガスの排出を抑えること」と答えた人は31.0%。「その他」と答えた人は0.6%。「特にない」と答えた人は8.2%
出典:日本財団18歳意識調査結果 第82回テーマ「エネルギー」

また、電力の安定供給に貢献する一方で温室効果ガスを排出する火力発電については、「多少温室効果ガスを排出するとしても、安定して発電できる火力発電を維持すべきだ」という回答が全体の5割を超えました。

質問:現在日本では、電力の約65%を石炭・石油・液化天然ガスなど化石燃料を使った火力発電で補っています。
火力発電は、天候に左右されず、必要な時に必要な量を安定して作ることができる一方で、温室効果ガスの排出や、化石燃料を輸入に依存している現状から価格や供給が不安定になる懸念があります。
あなたの考えは、AとBのどちらに近いですか。

A:多少温室効果ガスを排出するとしても、安定して発電できる火力発電を維持すべきだ
B:多少供給が不安定になっても、温室効果ガスを排出する火力発電は減らすべきだ

"18歳意識調査の棒グラフ。「あなたの考えは、AとBのどちらに近いですか。A:多少温室効果ガスを排出するとしても、安定して発電できる火力発電を維持すべきだ、B:多少供給が不安定になっても、温室効果ガスを排出する火力発電は減らすべきだ」の質問に回答した人の項目別割合(%)。
全体(n=1000)で「A に近い」と答えた人は21.3%。「どちらかといえばA に近い」と答えた人は32.8%。「どちらかといえばB に近い」と答えた人は22.5%。「B に近い」と答えた人は11.0%。「わからない」と答えた人は12.4%。
男性(n=513)で「A に近い」と答えた人は28.1%。「どちらかといえばA に近い」と答えた人は30.8%。「どちらかといえばB に近い」と答えた人は18.5%。「B に近い」と答えた人は9.9%。「わからない」と答えた人は12.7%。
女性(n=487)で「A に近い」と答えた人は14.2%。「どちらかといえばA に近い」と答えた人は34.9%。「どちらかといえばB に近い」と答えた人は26.7%。「B に近い」と答えた人は12.1%。「わからない」と答えた人は12.1%
出典:日本財団18歳意識調査結果 第82回テーマ「エネルギー」

さらに、原子力発電に関しても、「安全基準を満たした原子力発電所の再稼働や建て替えを進めるべきだ」という回答が全体の約6割を占めました。

質問:福島第一原発の事故を踏まえ、原子力発電所の再稼働には厳しい安全基準が課されています。安全対策に多額の費用がかかりますが、再稼働が進めば電気料金が安くなることが期待されるほか、温室効果ガスを排出せずに電力を得ることができます。
また、より安全な仕組みを取り入れた新しい原子炉の開発も進められています。
あなたの考えは、AとBのどちらに近いですか。

A:安全基準を満たした原子力発電所の再稼働や建て替えを進めるべきだ
B:原子力発電には事故のリスクや廃棄物の問題があるため、頼るべきではない

"18歳意識調査の棒グラフ。「あなたの考えは、AとBのどちらに近いですか。A:安全基準を満たした原子力発電所の再稼働や建て替えを進めるべきだ、B:原子力発電には事故のリスクや廃棄物の問題があるため、頼るべきではない」の質問に回答した人の項目別割合(%)。
全体(n=1000)で「A に近い」と答えた人は28.5%。「どちらかといえばA に近い」と答えた人は29.8%。「どちらかといえばB に近い」と答えた人は15.8%。「B に近い」と答えた人は13.9%。「わからない」と答えた人は12%。
男性(n=513)で「A に近い」と答えた人は39.8%。「どちらかといえばA に近い」と答えた人は26.5%。「どちらかといえばB に近い」と答えた人は12.1%。「B に近い」と答えた人は9.9%。「わからない」と答えた人は11.7%。
女性(n=487)で「A に近い」と答えた人は16.6%。「どちらかといえばA に近い」と答えた人は33.3%。「どちらかといえばB に近い」と答えた人は19.7%。「B に近い」と答えた人は18.1%。「わからない」と答えた人は12.3%
出典:日本財団18歳意識調査結果 第82回テーマ「エネルギー」

温室効果ガスの排出抑制の優先順位の低さや、火力発電の維持への賛成など、筆者が漠然と抱いていた「若い世代ほど気候変動への関心が高い」というイメージとは必ずしも一致しない今回の調査結果。このような若者の現実的な態度の背景には、どのようなことがあるのでしょうか。

今回は、エネルギー・温暖化対策の専門家である、国際環境経済研究所理事・主席研究員の竹内純子(たけうち・すみこ)先生にお話をお伺いしました。

竹内純子先生

きれいごとでは語れないエネルギー問題、安定供給と手ごろな価格は欠かせない

日本のエネルギーのあり方では、「安定して使えること」「電気料金が高くなりすぎないこと」が重視されています。この結果は、すごく正直だし、現実的だと思いました。エネルギーとは、本来そういうものですよね。

例えば、ヨーロッパ諸国も、以前は環境重視の姿勢を強く出していましたが、ウクライナ危機以降はエネルギー安全保障が最優先となり、世界中から天然ガスなどの化石燃料を買い集めました。その結果、マーケットで買い負けて化石燃料を調達できなくなったバングラデシュやパキスタンなどの貧しい国が停電の憂き目に遭っているのです。

ウクライナ危機や中東戦争を経て感じるのは、きれいごとでエネルギーを語れるのは、きれいごとで済む状況にあるときだけなのだということです。ビジョンを掲げてそれを目指すことは重要ですが、長期の時間がかかるのでその間の現実とどう向き合うかが問われるのです。

エネルギー政策とは、突き詰めれば、「3つのE」のどこに重心を置くかという議論です。3つのEとは、安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を指します。

では、この3つは本当に等しい価値なのでしょうか。エネルギー業界で仕事をしてきた私の立場からすると、そこには優先順位があり、「2E+E」だと考えています。安定供給と経済効率性という2つのEを満たし、その上で環境というEを考える、という意味です。

まずはエネルギーを安定して使えること。そして、それがアフォーダブル(手ごろな価格)であること。「衣食足りて礼節を知る」ではありませんが、環境への配慮は、それらがあって初めて成り立つものだと思います。

気候変動を巡る議論では、これまで「3つのEの中で、環境が最も大事である」という論調でした。しかし、本当にそうだろうか、とも思うのです。

国の委員会などでは、若者の意見を取り入れようとする取り組みが既に行われています。ただ、その際に、気候変動に熱心な若者の意見だけを聞くことで良いのだろうか、という疑問も感じています。

例えば、経済的な理由で大学進学を諦めた若者の、毎月のエネルギーコストの支払に苦労する親を見てきた、という声は聞かなくて良いのでしょうか。また、安定供給の価値は、それが途絶した時に初めて意識されるものです。停電を経験したことのない若者に、その価値が実感できるはずもありません。災害などで停電を経験した若者の声も聞くべきでしょう。

ひとつのEに熱心な若者の意見だけを聞くのではなく、「よく知らない」「勝手にやっておいて」という声を含め、多様な若者の意見を聞く努力が必要だと思います。

昨今のガソリン価格の上昇は、化石燃料の消費を抑制するという意味では、気候変動対策を進める上では望ましいはずです。日本も含めて多くの国で導入されているカーボン・プライシング(炭素価格)は、CO2排出のコストを化石燃料に課すことでその消費を抑制する効果が期待されるのです。

しかし、特に公共交通機関に頼ることが難しく、自家用車への依存が高い地方にとってガソリン価格上昇は打撃が大きく、政府は補助金を出して価格抑制に取り組んでいます。こうした状況を見ても、安定供給や経済効率性とのバランスをとりながら進めなければ、持続可能なエネルギー政策にはならないということだと思います。

火力発電の維持にも原発再稼働にも肯定的な、現実的な若者の見方

火力発電の維持に肯定的な回答が半数を超えるという結果でしたが、正直なところ、私はもっと容認派が多いと思っていました。

ただ、この結果には質問文の影響もあるかもしれません。調査の中で提示された「天候に左右されず、必要な時に必要な量を安定して作ることができる」という説明だと、少し曇った時などに火力発電で補っている程度の印象を与えてしまいます。

しかし、実際には、大きな台風が来れば日本全国が1週間程度悪天候に見舞われることもありえますし、火力発電が担う「調整力」としての役割はもっと大きいのです。電力需要のピークは真夏の昼間ですが、その時間には、発電量の多くを太陽光で賄っています。太陽光の存在感はだいぶ高まっています。

一方、太陽光の出力は夕方以降一斉に落ちていきます。日が傾くと同時に火力発電の発電量を一気に増やす――こうした調整力を持つ火力発電には、電力系統の安定を保つ上で、代えがたい価値があります。

今回の調査結果を見て、そのあたりは十分に伝わっていない印象を受けました。とはいえ、「気候変動を考えれば火力発電は停止すべきだ」という回答にはなっていません。その意味では、若者はある程度現実的に考えているのだと感じました。

一方で、原子力発電については、再稼働や建て替えを容認する意見が6割に上りました。わずかですが、火力発電よりも受容度が高い結果です。私の肌感覚としても、若い世代は原子力に対して決してネガティブではなく、この調査結果と合致しています。

もちろん、福島第一原発の事故をリアルタイムで意識していない世代だということもあるでしょう。加えて、これから生成AIの利用などによって電力需要が伸びる中、世界的にも原子力発電を脱炭素電源として活用する流れが強まっています。名前は知らなかったかもしれませんが、次世代革新炉などの新しい技術開発が進んでいる――こうした状況も、原子力に対して前向きな意見が多い背景にあると思います。

ただし、男女差が大きい点は気になりました。理由は調査結果からは読み取れませんが、理系人材の多寡が影響しているのかもしれません。

自給率が低い日本こそ、エネルギー教育が必要

私はかねてより、「日本にはエネルギー教育がない」と言い続けています。日本は、足元に化石燃料が埋まっている訳ではありません。生活・経済の血液と言われ、国民の生殺与奪を握る存在であるエネルギーの供給の多くを、海外の化石燃料に依存しているのです。それを減らすには、再生可能エネルギーあるいは原子力などの活用が欠かせません。

しかし、再生可能エネルギーにしても広大な砂漠などが無く自然災害も多い日本ではコストが嵩みます。原子力発電については、政府は福島第一原子力発電所事故以降、「可能な限り依存度を低減する」との方針をとってきたため、サプライチェーンが脆弱になっています。

エネルギー自給率を上げることは喫緊の課題ですが、容易ではないのです。こうした状況にもかかわらず、エネルギーに関する学校での教育といえば、理科でレモン電池を作り、社会科でオイルショックについて習う程度で、体系だった教育はありません。

エネルギー問題への若者の関心を高めるための取り組みについてたずねた質問で、「学校におけるエネルギー教育の充実」が一番に挙がったことは、重要なメッセージだと受け止めました。理想的なエネルギー源は存在しませんので、欠点と長所を併せ持つそれぞれの技術を組み合わせて、いかに良いポートフォリオを組むかといった、エネルギーの全体像を踏まえた考え方を教える必要があります。

教育の現場では「マルかバツか」で教えがちですが、いかに良い「三角」を作るか。それこそが、本当に頭を使うところです。

エネルギーについて深く理解するためには、上流の燃料調達においては国際政治の知識が欠かせません。環境経済や、電気工学についての知識も必要です。幅広い知識とバランス感覚が必要とされますが、政府や事業者、専門家であっても、分野が細分化されていて全体像が見えている人は多くありません。

今回の調査結果全体を通じて、若者は思った以上に現実的に考えている、という印象を受けました。最近の若い世代は、SNS等で情報を集めたり、インターネットで自ら一次情報にあたったりすることも簡単にできるので、誤った情報に惑わされにくくなっているのだと思います。もちろん、事業者、政府、専門家も更に努力をしていく必要がありますが、思った以上に、若者が自ら情報にアクセスしてくれていると感じました。

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