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「スマホをやめなさい」は逆効果? 子どものSNS依存を改善する「禁止しない」向き合い方
- 「SNS依存」とは、SNSの利用がやめられず、日常生活や心身の健康に悪影響が出ている状態のこと
- 日本では13~19歳の約9割がSNSを使用。政府・こども家庭庁は規制に向けて動いている
- すでにSNS依存が進行している場合は、保護者や専門家による伴走アプローチが有効
取材:日本財団ジャーナル
「いいね」の数に一喜一憂し、スマホを手放せなくなる。「勉強しなければ……」と頭ではわかっているのに、ショート動画の無限スクロールがやめられない。
そんなふうにSNSに依存し、乱れた生活を送ったり、心身の調子を崩したりする子どもが後を絶ちません。
「SNS依存」とは、SNSの過度の使用によって、生活や心身に悪影響が及んでいる状態のこと。眠れない、メンタルが不安定になる、学校に行けないといった兆候があれば、依存を疑うべき段階です。
海外では、⼦どものSNS依存は単なる個⼈の⽣活習慣の問題を超えて、深刻な社会課題として議論されつつあります。2025年にはオーストラリア、2026年にはインドネシア、マレーシアが、16歳未満のSNSの使用やアカウントの保有を禁止、制限しました。
2025年11月にNTTドコモ モバイル社会研究所が実施した調査によると、日本の小学校高学年の62パーセント、中学生の95パーセントがSNSを使用。いずれも女子の利用が高い傾向にあります。(※1・2)
専門家からは、発達への影響を懸念する声が上がっています。こうした状況を鑑み、政府やこども家庭庁は、⻘少年のインターネット環境整備法に関する議論を進めています。2026年内には、法的規制を含む具体案をまとめる方針です。
SNS依存は、どのようなメカニズムで起こるのでしょうか。子どもがSNS依存に陥ったとき、保護者や周囲の大人が取るべき行動は? SNSやスマホに依存する子どものカウンセリングを行う、NPO⽇本次世代育成⽀援協会(外部リンク)代表理事の鷲津秀樹(わしづ・ひでき)さんに聞きました。


強力な依存性でとりこにし、心や脳、社会生活にダメージを与える
——子どものSNS依存について教えてください。
鷲津さん(以下、敬称略):子どもがSNSを過度に使用することによって、自分をコントロールできない、やるべきことができない、周囲の人に迷惑や心配をかけているといった状態になることです。勉強や人間関係のストレスから逃れようとして、依存に陥ることが多いですね。
—―SNSが依存を引き起こしやすいのはなぜですか。
鷲津: SNSで得られる手軽な刺激が、依存しやすい子が必ず抱えている「寂しさ」や「つまらなさ」を埋めてくれるからです。しかし、ずっと見ているうちに慣れてしまい、もっと強烈な刺激が欲しくなってのめり込んでしまうんです。
SNSでは「いいね」などの報酬をもらえたり、もらえなかったりしますよね。この不規則な「間欠刺激(※3)」はソーシャルゲームのガチャやパチンコといったギャンブルにも見られる傾向で、依存を引き起こしやすいことが分かっています。
また、動画系のSNSであれば、ユーザーのスクロールするスピードから気に入りそうな動画を予測し、「おすすめ」として表示し続けるアルゴリズムがあります。
いずれのSNSも、ユーザーに“快”を与えて依存させる強力な仕組みを備えているので、意志の力だけであらがうことはとても難しいですね。
—―子どもがSNS依存になると、どのような悪い影響がでるのでしょうか。
鷲津:まず、寝つきが悪くなる、精神的に不安定になる、脳の前頭葉(考えたり、判断したりする部分)の機能が低下してしまうなどが挙げられます。深刻化すると、学校に行けなくなる、部屋にひきこもって出られなくなる、暴言を吐く、暴力をふるうなどの症状が見られる子もいます。
青少年期の貴重な時間が奪われることも大きな問題です。「時間」とは、すなわち可能性ですから。SNSにのめり込むほどに、他のことにかけられる時間が減り、未来の可能性が目減りしていく。そのことに、依存している本人も周囲の大人も気づいてほしいですね。


無理やり禁止すると親子関係が悪化し、暴言や暴力に向かう子どももいる
—―子どもがSNS依存に陥っている場合、保護者はどのように対応すれば良いのでしょうか。
鷲津:まずは事態の深刻さを理解し、焦らずじっくり向き合おうと腹を括ることです。そして、専門家から正しいアプローチを教わり、実行することが肝要です。それができれば、多くの場合は改善します。
一方で、保護者が焦って早くなんとかしようとしたり、子どもが嫌がるからと問題を先送りにしたりすると、改善に向かわないこともあります。
当協会に相談に来るのは、依存がある程度進行している親子が多いのですが、保護者がリスクを深く理解していないことも珍しくありません。多くの方が「スマホばかりで勉強をしないんです」とおっしゃいますが、心身に与える影響の方がはるかに重大な問題です。
まずは、「私の子どもはSNS依存という病気なんだ」と正しく認識することが大切ですね。
カウンセリングに来る親御さんにお伝えしているのは、主に2つの理論です。1つ目は、結果(願望)ではなく具体的な行動の改善に焦点を当てる「応用行動分析」(※4)。2つ目は、依存という問題を個人の責任にせず、依存状態を改善するための行動を取る「解決指向アプローチ」(※5)です。
保護者には、これらを踏まえて子どもの行動変容をサポートしてもらいます。「スマホを〇時間以上見てはいけない」「SNSを開いてはいけない」のような、特定の行動を禁止するアプローチは控えるのがポイントです。
—―それはなぜでしょうか。
鷲津:依存状態にある子どもに禁止事項を押し付けても、従うことは少ないからです。
保護者は子どもが約束を破るたびに腹を立て、関係はどんどん悪化していきます。なかには、暴れたり暴言を吐いたりすることで強引に主張を通し、「騒げば言うことを聞いてもらえる」と誤った学習をしてしまう子どももいます。
そうした事態を防ぐために、SNSの全面的な禁止はあえて避けます。代替案を提示し、スモールステップで使用時間を減らしていくことが大切です。

「スマホの代わりに漫画を読んで」で使用時間が大きく変わる
—―実際のカウンセリングの様子を教えてください。
鷲津:例えば、SNS依存で1日11時間スマホを見ている子どもがいたとします。私なら、その子に「毎日寝る前の30分間だけ、スマホを触る代わりに好きなマンガを読んでみて」とお願いします。
命令ではなく、あくまで「お願い」です。そうなってほしいのは大人の都合ですから。保護者には「子どもと一緒に古本屋に行って、好きなマンガを100冊買ってください」と伝えます。
すると「スマホを取り上げられるかも……」と警戒していた子どもは「そのくらいならできそう」と拍子抜けするんですね。実際に、買ってきた大量のマンガを寝室に置いておくと、多くの子は自然とマンガを手に取り、寝る前のスマホをやめられます。続けるうちに、寝つきがだんだん改善してくるんです。
成功した日は、カレンダーに〇をつけます。それが1週間続いたら、家族で好きなものを食べに行くといったお祝いをしてもらいます。当協会に来る子どもの多くは、普段から怒られっぱなしで自己肯定感が下がっているので、お祝いされるとうれしくなって「もう少し続けてみよう」と思えるんです。
これが、先ほどお話しした「応用行動分析」と「解決指向アプローチ」を組み合わせた例です。
「応用行動分析」では「SNSを減らす」ことを目標(願望)にするのではなく、「SNSを減らす行動」に焦点を当てます。
「解決指向アプローチ」では、原因を探ったり、叱ったりするのではなく、どうすれば良くなるかに目を向けます。そして、行動を続けた後は良いことが起きる仕組み(習慣)をつくることで、改善を後押しするのです。
—―スマホの使用時間に、はっきりとした変化が現れるのはいつ頃からですか。
鷲津:この取り組みを1週間続けると、だいたい1日2時間ほど使用時間が減ることが多いですね。ここで気をつけたいのが「もっと減らそう」と焦らないこと。順調に、一直線に良くなるのはまれです。無理させると、子どもの心が壊れてしまいます。
スモールステップで進んでいくと、3カ月ほど経った頃には、スマホの使用時間が1日4~5時間まで減る可能性が高いです。不登校傾向にあった子どもも、学校に行けるようになることがあります。ここまでくると、もはや依存ではありません。
このアプローチのいいところは、保護者が子どもへの関わり方を学べて、子どもが自己肯定感を高められるところです。そもそも、多くの保護者は基準が厳し過ぎて、使用時間が減っても「マイナス100からマイナス50になったところで……」という評価を下しがちです。
しかし、ゼロからのスタートだと思えば、少し変わっただけでプラス50ですよね。親子でそう思えれば、達成感や自己肯定感が高まりやすくなるはずです。
—―周囲の大人の関わりによって、子どもの状態はかなり変わるのですね。
鷲津:依存の背景には必ず寂しさがあります。また、SNSは強力な依存性を持っているため、依存=自己責任とは言えません。そんな状況で「意志が弱いから依存したんだ」と子どもを責めると、その子はさらに孤独になってしまいますよね。
周囲の大人には、依存という課題を外から見つめて、ともに立ち向かうことが求められます。
また、保護者には「自分の子育てが間違っていたせいで子どもがこうなった」と悩み過ぎないでほしいですね。原因を追求するよりも「これからどうしていくか」に焦点を合わせましょう。


SNSは主体的に使えば、依存せず成長の糧にできる
—―一方で、SNSは今の社会を生きる子どもたちにとって「居場所」といえる存在とも考えられます。鷲津さんは子どものSNS利用を規制する社会の潮流については、どう思われますか。
鷲津:適切な規制には賛成の立場です。今後は国内でも、16歳未満の年齢規制や夜間の使用制限が進むのではと考えています。長時間使用や深夜の使用で脳にダメージが及ぶ以上、お酒やタバコと同様に一定の制限は必要ではないでしょうか。
ただし、SNSの規制によって社会とつながりを持ちづらくなる子どもたちの存在には、留意しなければなりません。農村部に住んでいて周りに同世代が少ない子や、LGBTQ+の子、発達障害のある子などは、SNSを通して仲間や居場所を探す傾向があります。一律に規制すると、そうした子を孤立させることになりかねません。
規制をかけるなら、そうした子どもたちの存在を認識し、仲間づくりを助けたり、相談の場を設けたりする必要があるでしょう。
——SNSは、もはや現代人とは切っても切れない存在と考える人もいます。依存せず上手に付き合っていくには、どんなことに気をつけるべきでしょうか。
鷲津:「いいね」などの即時的な刺激を求めたり、流れてくるコンテンツを受動的に眺めっぱなしになったりせず、「デジタルガーデニング」の視点をもって付き合うことをおすすめします。自分のSNSアカウントを自分の庭と捉えて、そのなかでコツコツと何かを育てていくという考え方です。
デジタルガーデニングは実際のガーデニングと同じで、時間軸が長いんです。結果はすぐには出ません。
長い時間のなかでは、失敗もあるし、育てていくうちに枯れる花もある。しかし、何を育てていきたいのか、発信を通してどんな人間になりたいかというゴールを設定し、そこに向かって進めば、他人の反応やアルゴリズムに振り回されることはなくなります。
SNSに呑み込まれるのではなく、成長の糧として上手に活用してほしいですね。

子どものSNS依存を防ぐために、私たち一人一人ができること
最後に、子どもたちがSNSと上手に付き合っていくために、身近な大人である私たち一人一人にできることを鷲津さんに伺いました。
[1]大人である私たち自身が、SNSを漫然と使わない
子どもは大人の背中を見て育つ。周囲の大人がSNSに依存していると、子どもの依存リスクが高まる。大人も使用時間や場面にルールを設けて、長時間ダラダラと閲覧しないようにする
[2]触りたいときは「やるべきことをやってから」
スマホを悪者扱いする必要はないが、睡眠や食事、勉強といった「やるべきこと」より優先するのは避けたい。「やるべきことをやってから」を家庭内の習慣にし、依存を防ぐ
[3]結果を目標にせず、行動を目標にする
「SNSを見る時間を1日1時間以内に留める」といった「結果」を目標にすると挫折しやすい。依存から脱してほしいときは「SNSのアプリをスマホに入れず、ブラウザから見てその都度ログアウトする」「動画SNSの履歴を消し、データをおすすめに反映させない」といった具体的な行動を目標にする
この記事を読んだ皆さんのなかにも「1日何時間もSNSを眺めてしまう」「通知が来るたびに手を止めてスマホを見てしまう」という方がいるのではないでしょうか。もしかすると「SNSばかり見てしまうのは、意志が弱いからだ」と、自分を責めることもあるかもしれません。
私たちはつい、できない部分に目を向けてしまいがちです。しかし、鷲津さんが話す通り「マイナス100がマイナス50になっただけ」ではなく「ゼロからプラス50になった」と考えれば、見える景色は違ってくるのではと思います。
依存からの回復プロセスは一直線ではなく、時間のかかる道のりです。それでも、依存した人を責めるのではなく、小さな変化を喜びながら前進することで未来は変えられる。今回の取材は、そんな希望を感じる機会になりました。
- ※ 1.出典:SNS利用率 小学生高学年で62% 中学生は95%|NTTドコモ モバイル社会研究所(外部リンク)
- ※ 2.主要なSNS(X、Instagram、TikTokなど)の多くは、安全面への考慮や国際的な児童プライバシー保護の観点から、利用規約で対象年齢を「13歳以上」と定めている。出典:年齢制限をすり抜ける小学生たち-α世代のSNS利用のリアル|ニッセイ基礎研究所(外部リンク)
- ※ 3.「間欠刺激」とは、継続的ではなく、一定の間隔を空けたり、不規則なタイミングで加えたりする刺激のこと
- ※ 4.応用行動分析(ABA) 子育てに凄く役に立つ心理学|NPO日本次世代育成支援協会(外部リンク)
- ※ 5.解決志向アプローチ(SFA)の子育て法|NPO日本次世代育成支援協会(外部リンク)
鷲津秀樹(わしづ・ひでき)
NPO法人日本次世代育成支援協会・代表理事。合同会社ベスコスモ・カウンセリング代表、名城大学心理学非常勤講師などを務める。企業での企画・営業職や経営コンサルタントを経験する中で心理面からのサポートの重要性を実感し、心理カウンセラーとして活動を開始。2006年に同協会を設立し、現在は交流分析(TA)や応用行動分析(ABA)などの心理学をベースに、子どもたちの健全な育成や家族のコミュニケーション支援に携わる。
- ※ 掲載情報は記事作成当時のものとなります。