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若者はオリンピック・パラリンピックに何を感じているのか? 18歳意識調査から読み解く平和・国家の意識
取材:日本財団ジャーナル編集部
日本財団は、2026年2月のミラノ・コルティナオリンピックの開催に合わせ、18歳意識調査 第76回「冬季オリンピック・パラリンピック」(別タブで開く)を実施しました。
本調査では、オリンピック・パラリンピックは世界各国の友好関係につながると思うと回答した人は全体の73パーセント、国民の団結感や一体感の醸成につながると思うと回答した人は全体の77パーセントに上り、オリンピック・パラリンピックの意義に対して肯定的な意見を持つ若者の姿が見られました(※いずれも「とてもそう思う」、「どちらかといえばそう思う」の合計)。
質問:あなたは、オリンピック・パラリンピックは世界各国との友好関係の構築につながると感じますか。

質問:あなたは、オリンピック・パラリンピックは国民の団結感や一体感の醸成につながると感じますか。

また、冬季オリンピック・パラリンピックで注目している競技を尋ねたところ、オリンピックはフィギュアスケートやスノーボード、スキージャンプなどのメダル獲得が期待される競技が上位にランクインしました。
その一方で、パラリンピックで注目している競技は「特にない」と答えた人が58パーセントに上りました。
質問:冬季オリンピックで注目している競技はありますか。3つまで選んでください。

質問:冬季パラリンピックで注目している競技はありますか。2つまで選んでください。

このようなオリンピック・パラリンピックの意義に対する若者の意識や競技への関心について、スポーツ社会学が専門でオリンピックについて研究している奈良女子大学研究院生活環境科学系スポーツ健康科学領域教授の石坂友司(いしざか・ゆうじ)先生にお話をお聞きしました。

「平和の祭典」という理想と、戦争が続く世界。若者が抱くイメージと現実のギャップ
「オリンピック・パラリンピックは世界各国との友好関係の構築につながる」と考える若者が7割以上存在するという結果でしたが、思ったよりも多い印象です。
近代オリンピックは、1896年にフランス人のピエール・ド・クーベルタンにより世界平和を理念として創設されました。私が教えている学生の中でもクーベルタンの名前や功績を知らない人は多くいますが、それでも世界各国との友好関係の構築につながるイベントという印象は多くの人が持っているのでしょう。
他方で、オリンピックが掲げる世界平和の理念と現実の乖離は気になります。
近代オリンピックの創設にあたりクーベルタンが参照した古代オリンピックは、ギリシャの神々をまつる祭典を行うために、争い合うポリス(都市国家)同士が一時休戦をするというものでした。近代オリンピックが始まった頃のヨーロッパでは国同士の緊張感が高まり世界大戦が懸念されていたため、各国の選手が共に競技を行い、友好関係が生まれることでそれを回避する狙いがあったと考えられています。
現在は、オリンピックの開催に合わせて、国連と国際オリンピック委員会が連携し、休戦決議を採択しています。このような理念に基づけば、今回のミラノ・コルティナ大会においてもオリンピックの期間は戦争状態が解かれるべきでしたが、実際には大会期間中もロシアとウクライナの戦争が続いていました。
ただ、2022年2月にロシアがウクライナ侵攻を開始したのは北京冬季オリンピックの閉会後であり、オリンピック期間中には侵攻が行われなかったという点では、一定の意味があったと言えるかもしれません。
近年のオリンピック・パラリンピックに見る、新たな平和の実現方法の可能性
2021年の東京オリンピック・パラリンピックの頃から、大会に対する見方が変わってきたと感じています。それまではメダルの数を競ったり、日本チームの活躍ばかりが注目されていましたが、東京オリンピックのスケートボードのように、競技終了後に選手同士がお互いをリスペクトし、たたえ合う姿が報道でも取り上げられるようになってきました。
特にパフォーマンス系の競技でこのような傾向が強いように思います。今回のミラノ・コルティナオリンピックでも、スノーボードやフィギュアスケートで同様のシーンが見られました。
また、2018年の平昌オリンピックのスピードスケート女子500メートルの決勝で、金メダルを獲得した小平奈緒(こだいら・なお)選手が、ライバルである韓国の李相花(イ・サンファ)選手とレース後に抱き合ったシーンは、五輪の精神を象徴しているとしてよく取り上げられます。日本と韓国の関係性にはさまざまな背景がありますが、それを超えられると感じさせてくれるシーンでした。
国を超えた選手たちの交流や、お互いにたたえ合う姿を見ることで、観戦する我々も良い気持ちになります。メダルを取ることだけでなく、競技の過程にも価値観を広げる必要があるかもしれません。
以前は、オリンピックといえば4年に一度しかない国際大会で、選手にとっては非常に重圧のかかる舞台でした。しかし現在では、競技ごとの世界選手権なども増えており、オリンピックがそれらと同列のone of themの大会として扱われるようになってきました。
選手のプレッシャーが軽減されたことで、ほっこりするシーンが増え、若い世代の感覚もそれに影響されて変わってきているのではないかと思います。
若者がオリンピック・パラリンピックに感じる「日本人としての一体感」
8割近い若者が「オリンピック・パラリンピックは国民の団結感や一体感の醸成につながる」と回答した点も面白い結果でした。
社会学においては、ナショナリズムの高まりは警戒すべきものと捉える傾向にあります。一般の人でも年配の世代では、戦争を繰り返してはならないという意識が強いため、もしも同様の調査を行ったとしたら異なる結果になるのではないかと思います。
今回の調査結果では、「国民の団結感や一体感の醸成につながる」ことを若者がポジティブ、ネガティブのどちらの意味合いで捉えているのかまでは明らかにされていません。しかし、最近では、ワールドカップやオリンピックなどは国民がみんなで応援できる楽しいイベントとして認識されており、ナショナリズムに対するネガティブな感情は薄れてきているのではないかと思います。
ちなみに、現在のオリンピック憲章では、「オリンピック競技大会は、個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではない」(第1章6項)と規定されているのですが、実際には近代オリンピック初期から国家間競争としての性格を強めていきました。
開始から10年程度でそのような傾向が出始め、1908年のロンドンオリンピックでは開会式で国ごとに入場行進を行うなど、国家間の対抗意識は高まっていました。日本では現在、オリンピック選手に対する国の強化費が年間100億円を超えており、アスリートへの支援が手厚くなっていることからも、国を挙げて競争していると言えます。
パラリンピックへの関心の低さは情報不足。競技の面白さ・魅力の発信に期待
冬季パラリンピックで注目している競技は「スノーボード」「アイスホッケー」が上位に挙がっています。ただ、過去の実績では圧倒的にアルペンスキーが強く、村岡桃佳(むらおか・ももか)選手や森井大輝(もりい・たいき)選手といったメダルが期待される選手もいるので、私の印象とは少し違っていました。オリンピック競技に影響をされている部分があるのかもしれません。
最近では、夏季のパラリンピック競技はメディア露出が増えたり、ボッチャや車いすバスケットなどを体験する機会も増えてきたりしています。これに対して、冬季のパラリンピック競技はそもそも報道が少ない上に、雪上・氷上の競技であるため、実際に体験する機会も多くありません。
冬季パラリンピックで注目している競技は「特にない」と回答した人が58パーセントに上りますが、パラリンピックに対するネガティブな意見というよりは、単に、情報が少なく答えられなかったという状況なのではないかと予想します。
私が行った東京オリンピック・パラリンピックに関する意識調査では、大会終了1年後の振り返りにおいて、大会が社会へ与えた影響として「障害者スポーツへの理解醸成」が最も評価されていました。東京大会では「多様性と調和」がテーマに掲げられたこともあり、パラスポーツに関する教育やメディア露出が進みました。東京大会で初めてパラスポーツを見た人が多くいたと思いますが、まずは観戦するところから始まり、理解が広がっていきます。
また、東京オリンピックではコロナ禍をめぐり開催の賛否が分かれましたが、この調査では開催に反対だった人ほどオリンピックを観戦しない傾向であった一方で、パラリンピックは開催に反対する人も観戦していたという結果もありました。これは、パラリンピックには、大会開催への賛否を超えて、観戦する価値を感じさせるものがあったということだと思います。
以前は、パラリンピックは障害者のスポーツとして捉えられ、「障害のある人がそれを乗り越えて栄光をつかむ」といったストーリーが期待されがちでした。しかし現在では、障害のある人によるトップスポーツとして舵が切られつつあります。そうなると、競技としての面白さや魅力をどこまで発信できるかという点が重要です。
今回のミラノ・コルティナオリンピックではメダルが先行して注目を集めたため、やはりパラリンピックでもメダルを取っていきたいところです。そのためには選手の強化や支援を充実させることも必要と考えます。
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