都市部と地方の体験格差を埋める。元保育園を活用した栃木・那須「Apple Park」

子ども第三の居場所「Apple Park」。中外製薬株式会社からの5,000万円のご寄付を活用し、2024年、栃木県那須郡初の居場所として開所しました。
運営母体は一般社団法人Apple Base。那須町と那須塩原市、日光市で3ヶ所の居場所を運営しています。

元保育園を活用した子ども第三の居場所
Apple Parkの利用対象は小学生から高校生までで、1日定員は50名。週6~7日開いていて、誰でも無料で利用することができます。
建物はかつて保育園として地域の人から愛されていた空間をリノベーションしました。広々とした調理場や温水プールもあり、大勢の子どもたちが過ごすにはぴったりの環境です。

年齢の壁を超えた子育て支援
代表理事の磯翔さんは、幼稚園・保育園そして放課後児童クラブ(学童保育)を運営する学校法人磯島学園の理事長も務めています。子ども第三の居場所を開設するに至った経緯は、利用する保護者からの子育て相談がきっかけだったと振り返ります。
「幼稚園を卒園して小学生になると、子どもも親も幼稚園・保育園に比べて担任の先生と話す機会はほとんどありません。だから『子育ての悩みを相談する相手がいないんです』と。保護者の中には、きょうだいのお迎え時や町で出会った時に、幼稚園の先生に悩みを相談している方もいました」

長年、子ども支援に関わってきた磯さんのもとには、数々の悩みが届きました。それらに対してできることから始めようと、磯さんは一般社団法人を設立。学校に行けない、勉強についていけないといった困難を抱える子どもに向けた不登校支援や、保護者の相談窓口などの事業を独自に開始しました。
同時に、栃木県・那須塩原市・那須町・日光市から児童に関わる様々な委託事業を受託。未就学児から高校生まで一貫して子どもの成長を見守れるよう、現在は行政と連携しながら、子ども第三の居場所も運営しています。
地方と都市の体験格差を埋めるプログラム
Apple Parkが子どもたちとの関わりの中で重視するのは、地方と都市の体験格差を埋めることです。
「都市部なら学童も自分に合ったところを選べますし、外出も電車に乗れば様々な施設にアクセスすることができます。しかし、地方は子どもが遊べる施設が少なく、移動も車です。都市部の子どもが気軽にできることが、地方ではできません」
そこで磯さんは全国各地のプロフェッショナルとのネットワークを活かして、様々なプログラムを実施しています。
例えば、観光地として栄えている那須には、観光系の専門学校があります。学校に相談し、子どもたちにホテルマン体験をさせてもらう機会をつくるなど、地域性を活かしたプログラムを行いました。


また、地方と都市の距離の壁を超えるオンラインプログラムも充実させています。大阪のパン屋さんから学ぶパン作りや、キックボクシングの先生から習うキックボクササイズ、全国一位のセールス実績を誇る保険のセールスマンから教わるお金の講義など、ユニークな体験がずらり。


特に子どもたちから好評だったのが、お金の講義です。
先生の「なぜお金はもらえるの?」の問いかけから、「ご飯を提供してくれてありがとう」「お花を飾ってくれてありがとう」という言葉がお金に置き換わるパターンがあることを知ったそう。そこから保護者のお金は「ありがとう」をもらって稼いだものであると気づき、子どもたちの価値観は大きく変化しました。
「体験格差を埋めるためには、自分からはやらないことを選ばないと意味がないと思います。勉強を頑張ろうと思ったら、塾に行きますよね。ディズニーランドにいきたければ、お小遣いを貯めて行くでしょう。必要だと思ったら、自分からリーチするんです。大切なのは、自分たちでお金は出しづらいだろうな、足を運ばないだろうなということをやること。Apple Parkでは、普段の生活に存在しない体験を子どもたちにしてほしいと考えています」

保護者の収入アップに繋がる居場所利用
居場所を開設して3年目。子どもにも保護者にも変化が起こっています。
「今の子どもは、スマホなどから自分の求める情報だけを得るので、興味のないことにチャレンジする感覚が薄かった。でも、様々な体験プログラムを通して、一歩目が踏み出せるようになりました。未経験のことにも積極的に挑戦することで、将来、社会で生き抜いていく力がつくのではないかと考えています」

また、Apple Parkを利用することで、ひとり親の保護者が安定して働けるようになり、「収入がアップした」「正職員になり人生で初めて賞与をもらった」と喜びの声も届いています。
「観光地である特性からサービス業は土日祝こそ出勤が求められます。そこでApple Parkは祝日も開設しています。保護者が休日に働くことができるようになると、仕事の選択肢が広がりますし、パートから正社員になった方もいます。かつて食料支援をしていたとあるご家庭は、正社員になったことで年収が大幅にアップ。子どもの身だしなみも整い、塾にも通う余裕が生まれました」
無料で誰でも利用できる。幼稚園から高校生まで一貫して見守ってもらえる。そんな安心感が、保護者からの信頼に繋がり、成果が生まれています。
今後は、「行政と連携した運営や保育園の跡地を利活用したモデルを広めていきたい」と磯さん。那須町にもう1カ所増やすことを目標に、これからも町の子育て支援に全力で取り組んでいきます。
取材:北川由依
「子ども第三の居場所」に興味をお持ちの方は、ぜひ子ども第三の居場所プロジェクトページをご覧ください。