【現地レポート】宮城県丸森町長に聞く 災害への対応、感じた課題

台風19号で大きな被害が出た宮城県丸森町の保科郷雄(くにお)町長に2月、被災自治体としての経験や今後の課題を聞きました。

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保科郷雄 丸森町長

――被災からこれまで、町としてどのような対応をしてきましたか。

今回の台風では、想定を大きく超える雨が降ったため町中心部などが浸水し、多くの方が被災しました。発災後は避難所の設置や救援物資の集積、分配はもちろんのこと、被害家屋調査、罹災証明発行、応急仮設住宅の設置などフェーズに応じて、町としてできることをしてきました。昨年末には応急仮設へ入居できる環境が整ったので、避難所は閉所しました。死者10人、行方不明者1人となったことを、非常に残念に思います。

――対応にあたるなかで感じた課題はありましたか。

民間が所有している宅地などが崩落したり、土砂が流入したりした場所も多く、家屋に流入したがれきや流木などが膨大でした。当然、片付ける必要があるのですが、行政が個人の所有する土地や家などといった財産に対し直接介入してよいのかという判断ができなかったため、対応が進められませんでした。

また、職員数が少なくマンパワーが足りないことや、緊急時にどのように動くべきかといった知見がなかったため、町民の被災状況とニーズの把握が進まず、対応が後手にまわりました。

写真:家屋の近くに放置された流木と土砂。流木が2階の高さまで積み上がっていました
住宅地に流木が放置されたままになっていました

――これまで多くの災害復旧に関わってきたNPOなどの支援団体が現地入りしました。また、4日後には災害ボランティアセンターが開設し、全国からボランティアの受け入れが始まりました。

被災後、多くのボランティアが町内に入り、宅地内の土砂を出す作業や避難所での炊き出しなどに尽力頂きました。本当に一生懸命やってくださり、大変感謝しています。

災害に関する専門知識が足りず、わからないこともありました。例えば浸水した家の片付けは、水に浸かった場所だけ片付ければ良いと思ってしまいがちです。しかし、実際には壁のなかの断熱材が水を吸い上げているため、浸水した高さ以上の壁をはがさなければならない。

そこで力を発揮してくれたのが、支援団体です。これまで全国の災害現場の復旧に関わってきた支援団体には、ノウハウの蓄積があります。ボランティアが作業しやすいように、必要な作業の判断をしたり、指示を出したりする役割を果たしてくれました。

――行政の立場として支援団体の力が役に立ったと感じたことはありましたか。

それは大いにありました。例えば、被災した人への対応。災害支援にあたるNPOなどが集まってできた団体「震災がつなぐ全国ネットワーク」が作成した「水害にあったときに」という冊子があります。これを、これまで災害支援にあたってきた一般社団法人OPEN JAPANのスタッフらが避難所で被災者に配り、説明してくれていました。行政が説明するより前に、被災した方々がある程度前提となる知識を持ってくれていた。これによってスムーズに理解して頂けて、大変助かりました。

また、支援団体が、被災者一人一人の状況を把握するために、「被災者台帳」の活用も提案してくれました。行政は担当分野ごとに縦割りですが、被災者の状況は様々です。被災者の状況を一元的に把握することで、きめ細かなケアができます。これは町としてやらなければならないことですが、ノウハウがなくてできませんでした。このやり方を教えてくれたのが、OPEN JAPANなどの支援団体でした。

写真:崩れた道を補修するボランティア。複数の作業員が、スコップで土砂をかき出している(一般社団法人OPEN JAPAN提供 )
崩れた道を補修するボランティア(一般社団法人OPEN JAPAN提供) 

――被災から時間が過ぎましたが、課題や必要な支援はありますか。

1階が浸水して使えないため、2階で暮らさざるを得ない方が多くいます。大工や設備業者不足のため、家屋の修繕が進んでいません。

また、自ら声を上げられない被災者にどうやって必要な支援を届けるかも課題です。そのような被災者に支援を届けるには、行政、社会福祉協議会、そして支援団体などが長期的に被災者にアプローチしていくことが必要になります。

行政だけでは手が届かない部分もあるので、今後も支援団体のみなさんと連携しながら、一日も早く被災した住民が元の生活を取り戻せるよう取り組んでいきたいと思います。


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