【現地レポート】豪雨被害の熊本県球磨村へ、技術ボランティアが現地入り
※日本財団は熊本県球磨村からの要請を受けて、重機作業を中心とするボランティア部隊を派遣しました。
本レポートは、ボランティアの一員として参加した当財団職員が執筆しました。
復旧作業の遅れる被災地
PCR検査で陰性を確認し、現地入りしたのは夜10時過ぎ。通行許可証所持車のみ入ることのできる被災地域に入ると、真っ暗な闇の中に、切れて垂れ下がった電線や、骨組みのわかる家、散乱したままの家財。被災してから時が止まったかのような光景に、はっと恐れを感じました。
翌朝、浸水した地区から球磨川を見下ろせば、三大急流と言えど静かで美しい清流。まさか川の水位があんなにも上がり、全てを壊す茶色い濁流になると思えません。
今回活動の拠点となったのは神瀬地区。
日本財団と連携するNPO、東京からの重機ボランティアや現地の消防の方々と、早朝から夕方まで泥の掻き出しや家財撤去の作業の日々。一軒一軒、手やスコップで泥を掻き出し、重機でトラックに積んで運びます。一日かけて一軒の家の泥を出しきりました。床下の泥は2カ月近く経つ今も乾いておらず、外からでは掻き出せないので下に潜って手で掻き集めます。
目に見えない災害ボランティアの意義
今回一緒に活動させて頂いた、NPO法人 IVUSA(国際ボランティア学生協会)深山恭介さん。災害ボランティアの意義を伺ったところ、2つ教えて下さいました。
「災害ボランティアのできることの1つは、泥を出したり濡れた畳を出すなど目に見えるもの。どなたにでもわかる、目に見えるものです。
もう1つは、被災された住民の方々が復旧復興に向けて前に進もうとされている気持ちを、後押しさせて頂くことです。ボランティアが入って作業をすることで、住民の方とボランティアであったり、住民の方同士で会話が生まれます。心の中で溜め込んできたものを口に出す機会になりますし、泥が少しずつ無くなっていくなど作業を進める姿を見て、もう一度頑張ろう、と思って頂けることも多いんです。コミュニティに活気を取り戻すためには、コミュニケーションが欠かせません。コロナ禍でそもそも集まる機会がなく、活動を見る機会もない今はなかなか難しい状況ですね。」
今までと違う災害との向き合い方
大きな重機だけでなく、どうしても沢山の人の手、スコップでしかできないことが多い水害からの復興。県外ボランティアの少ないコロナ禍で、作業の遅れが懸念されています。
それだけでなく、本当の意味で災害を乗り越えるために欠かせない、人と人の繋がりや復興の過程で生まれる見えない力も奪われてしまっているのかもしれません。
あたたかい熊本弁が印象的な球磨村の方々。1日も早く心穏やかな日々が訪れることを願ってやみません。
日本財団 総務部 林美彩