「こころ」の交流で明日への活力を みぬま拠点と浦和レッズがサッカー教室でコラボ
2021年3月に開所した「みぬま拠点」は、さいたま市にある「子ども第三の居場所」です。以前にこの施設が「遺贈寄付を用いた拠点」として開設されたことを紹介させていただきました。
そのみぬま拠点と、同じさいたま市をホームタウンとするJリーグ・浦和レッズのコラボレーションが実現。みぬま拠点の子どもたちが、レッズランド(さいたま市桜区)を訪れ、まとわりつくような蒸し暑い気候にも負けず、一心不乱にボールを追いかけました。
日本財団と浦和レッズがコラボするきっかけ
このイベントは、コロナ禍で日常的な運動の機会や遠方への外出の機会が減ってしまった子どもたちに、明日を生き抜く力を育んでもらうために、日本財団が浦和レッズと共同で企画したものです。浦和レッズは、2003年より「こころ」を育むことをテーマに発展途上国や被災地等に対してサッカープログラム「ハートフルサッカー」を提供しており、2018年には、「HEROs AWARD 2018」(外部リンク)を受賞するなど、日本財団と社会貢献活動を共にしてきました。また、みぬま拠点についても、ホームタウンであるさいたま市に初めてオープンする「子ども第三の居場所」ということで、開設当初からあらゆる面でサポートしていただいています。今回は、そうしたサポートの一環で、みぬま拠点の子どもたちがハートフルサッカーに参加する運びとなりました。
壁を取り除くスポーツの力
この日のハートフルサッカーは、ボールを投げたり突いたりするボール遊びからスタート。緊張気味だった子どもたちは、ボールをコントロールしようと、一瞬で真剣な表情に変わります。その様子を見たコーチたちは、すかさず次のメニュー、ボールを抱えながらの鬼ごっこに移行しました。すると鬼役のコーチたちに捕まるまいと、子どもたちの表情は、一気にキラキラと輝きだしました。
こうして、たったの数分で子どもたちの心を鷲掴みにすると、次はボールを足で扱うメニューに移行します。普段あまりサッカーをやったことがない子どもたちにとっては、思い通りにならず難しかったはずですが、「できない」よりも「できるようになりたい」が、「つまらない」よりも「楽しい」がまさっているように見えました。
その後、ボールを奪い合うメニューで、子どもたちの競争心を刺激しながら、十分に体を動かしたあと、最後は、3チームに分かれての試合です。コーチの口から「試合」という言葉が出ると、子どもたちの大きな歓声がグラウンド内に響きわたりました。試合では、男の子も女の子も入り混じりながら、必死に一つのボールを追いかけます。点が入ると少しはにかんだように喜び、点を取られると下を向いて悔しがる子どもたちのこれからの成長が楽しみになる一日になりました。
子どもの健全な成長とスポーツ
みぬま拠点では、子どもたちに提供する体験機会の一つとして、月2回ほどサッカー教室を開催しています。サッカーが盛んな地域柄もあり、サッカー教室には、毎回15〜25名もの子どもたちが参加しているそうです。みぬま拠点で施設長を務める松岡聖典さんは、子どもたちにスポーツ体験を提供する意義を、次のように語ります。
「スポーツには、ネガティブな気分を発散させ、心に安定感を生む効果があると思います。子どもたちは、これらを本能的に感じ取り、スポーツに関心を持つようになりました。子どもたちが楽しむことを通じて、自らスポーツに取り組み、自主性や協調性を育んでもらえたらと思っています」。
実際、施設に入所する前は、あまり人と接したことがなく、周囲とうまくコミュニケーションが取れない子もいましたが、徐々に自ら意見を口にするようになるなど、子どもたちにも、少しづつ変化が見られているそうです。
必死にボールを追いかける子どもたちを見つめながら、松岡さんは、言葉を続けます。
「今日参加した子どもの中には、あまりサッカーが好きじゃないと言う子どももいたんです。でも、蓋を開けてみたら、みんながサッカーを楽しんでいます。真剣そのものですよね。このように、子どもたちが体験したことがきっかけとなり、夢中になれるものを見つけてくれたらいいですね」。
この日、総勢11名の子どもたちと共に汗を流した浦和レッズハートフルクラブのコーチを務める石黒琢也さんは、今回の活動の意義を次のように語ってくれました。
「日本財団との関わりの中で、みぬま拠点のお手伝いができたこと、そして緊張気味だった子どもたちが、最後には“こころ”を通わせてくれたことを、とても嬉しく思います。今後も、地域貢献・社会貢献の輪を広げながら、サッカーを通じた“こころ”の交流を続けていければと思っています」。
サッカーは、たったひとつのボールを追い、ゴールの数を競い合うだけの単純なスポーツです。でも子どもたちはゴールを決めると飛び跳ねて喜び、ゴールを奪われると下を向いて悔しがります。この日のレッズランドのピッチは、子どもたちのむき出しの感情で覆われていました。そして、子どもたちは、ピッチ上にいるすべての仲間たちと、確実に「こころ」を通わせていました。
このように、子どもたちの未来のために、スポーツがもたらしてくれるものは数多くあります。その「スポーツの力」を活用した子どもの居場所作りが、これから全国で広がっていくことを期待したいものです。
取材:瀬川泰祐
日本財団は、「生きにくさ」を抱える子どもたちに対しての支援活動を、「日本財団子どもサポートプロジェクト」として一元的に取り組んでいます。