先輩から学び、横のつながりを育む「コミュニティモデル交流会」

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コミュニティモデルを運営する拠点が集まって交流会を開催しました。

2021年7月、日本財団は「子ども第三の居場所」57拠点を新たに採択、子どもの生き抜く力を育む「居場所」を全国に、計98拠点へ拡大しました。新たな拠点のうち、35拠点がコミュニティモデルです。
各拠点はに拠点開所に向けて、準備に励んでいます。今回はオンラインで行われた「コミュニティモデル交流会」の様子をご紹介します。

地域に開かれたコミュニティモデル

コミュニティモデルは、週3日以上開所。小学校~高校生を主な対象にしながら、地域の方も気軽に立ち寄れる居場所として活用します。子どもたちが地域の人々との交流を通じて人と関わる力や自己肯定感を育むとともに、課題を抱える子どもの早期発見や見守りを行うモデルです。

3つのモデルと運営支援体制図。日本財団から子ども第三の居場所へ運営費助成、ノウハウ共有、支援企業とのマッチング。日本財団は各居場所の情報収集を行う。子ども第三の居場所3つのモデル 常設ケアモデル、学習・生活支援モデル、コミュニティモデル。世帯の課題は虐待、ネグレクト、不登校、発達障害、ひとり親、共働き孤立、生活保護世帯、就学援助世帯などがある。
子ども第三の居場所モデル図

9月に実施した「コミュニティモデル交流会」には、新たに採択された、JOCA大阪拠点(大阪府摂津市)、お花屋さんのこどもごはん原宿拠点(東京都渋谷区)、COCO-Z拠点(熊本県大津町)の3拠点が参加。松川Hug拠点(長野県松川町)の事例を学びながら、交流を深めました。

子どもが立ち寄りたくなる居場所って?

そもそも今回の交流会が開催されたのは、JOCA大阪拠点(運営:公益社団法人青年海外協力協会)から「子どもの利用を増やす方法を知りたい」と日本財団に相談があったことに始まります。

「JOCA大阪を開設して約3年。地域のみなさんには日常の居場所として認識されるようになりました。しかし、世代間交流が少なく利用は年配の方が中心です。子どもや若者も集い、世代間で遊びや学びが生まれたらもっと面白くなるのではないかと考え、コミュニティモデルの運営に応募しました。10月の再オープンに向けて子どもの利用を増やすべく、相談させていただきました」(JOCA大阪拠点)

どうすれば子ども達が立ち寄りたくなる居場所になるのかーー?そのヒントを得るべく、事例に取り上げたのが松川拠点です。

以前の記事でご紹介したように、松川Hug拠点は「放課後、Hug行こうぜ!」と子ども達同士が誘い合って訪れる居場所。松川Hug拠点を運営する特定非営利活動法人Hugの篠田阿依さんから、活動内容を共有いただいた後、それぞれが知りたいことを質疑応答の形式で深めていきました。

松川拠点【NPO法人Hug】一日の流れの説明スライドの1シーン。画面下部に施設の様子の写真。 9:00~コミュニティカフェ・配達弁当仕込み、フリースクール開始。10:00~個別の学習サポート受け入れ開始。11:30~コミュニティカフェ開店(地域の居場所づくり)。15:30~コミュニティカフェ閉店、フリースクール終了。放課後の学習サポート開始【カフェとは別棟】。17:00~(水曜日のみ)こどもカフェ(こども食堂)開催。18:30(水曜日のみ)こどもカフェ(こども食堂)閉店。19:00学習サポート終了、片付け。
Hugの1日の流れ

現在松川拠点では小中学生向けの「学習支援」、毎週水曜日に実施する「子ども食堂」、多世代交流の場にもなっている収益事業「カフェ運営」の3つを中心に、ニーズに合わせて就労サポートや季節毎のワークショップなどを開催しています。

松川拠点の活動詳細についてはこちら

先輩から具体的な事例を学ぶ

Q.どのように利用者を増やしていきましたか?

A.一人ひとりとのつながりを大切にしています。学習支援のボランティアに高齢者の方が多いので、その方からお孫さんに伝えていただくこともありますし、利用したママがママ友ネットワークでおすすめしてくれたこともあります。コミュニティモデルでは、口コミの力が大きいです。

Q.「今日はHugへ行こう!」と人が集まってくるのはなぜ?

A.おそらく子ども達やママ達が求めているものが、Hugにあったからだと思います。学校帰りに自転車に乗ってHugへ来て、スタッフと遊んで、勉強をして、ご飯を食べて。そういう風景が生まれています。
また、毎週水曜日はHugの日と覚えてもらえるよう「こどもカフェ」を開催してきました。子育てと仕事の両立で忙しいママ達も、週1回は夕飯を外で食べられるのはありがたいと言ってくれ、息抜きと明日へのエネルギーチャージの場になっていると感じています。コロナ禍以前、夕食はバイキングにして、好きなものを自由に食べられるようにしていました。利用は子どもだけでも大人だけでもOK。予約なしで食べられる気軽さもあってか、毎週100名ほどが来てくれていましたね。

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松川Hug拠点の様子。小さな子どもやママたちが集うのんびり楽しそうに過ごしていますね。

Q.地域にひらいた場所にしたいが、防犯面が心配です。

A.幸い松川Hug拠点は田舎にあるので、地域の人の顔が見えています。どこの人かわかるので、安心してひらけている側面はあります。でも、都市の拠点はそうはいきませんよね。答えられなくて申し訳ないのですが、顔の見えるつながりを大切にしながらも、都市ならではの方法を模索していく必要がありそうですね。

Q.自治体や教育委員会との連携・情報共有はどのくらいのペースでしていますか?

A.どちらもよく電話がかかってきます。Hugは不登校の子どもも受け入れているので、学校とのコミュニケーションも自然と増えました。最近ではHugで過ごした時間を出席と認めてくれる学校も出てきました。そのため月1回、学習サポートの記録を持って学校を訪問し、先生方と話をしています。定期的な会議は実施していませんが、子どものケアでつながっているところが大きいです。
役場の方がHugで打ち合わせをされることもありますし、長期休暇の際には学校の先生がHugでランチを食べて、子ども達と関わっていくこともあります。

世代間交流を促し、ごちゃまぜの世界をつくる

こうしたさまざまな質問が出た交流会。交流会で得た学びをどのように現場にいかそうとしているのでしょうか。摂津拠点を運営するJOCAの槌谷ひかりさんに聞きました。

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もともと近くに住む高齢者の利用が多かったJOCA大阪拠点。少しずつ利用者層が広がっています。

「Hugの事例を聞いて、子どもを中心に多世代のつながりが生まれるイメージを持つことができました。JOCAでは基本的に日常のスケジュールは子ども達に委ねて、勉強も遊びも自由に過ごしてもらう予定です。その一方で、季節イベントやテスト前の学習教室などはひらいて、世代間の交流を促す取り組みにも力を入れていきます」

最近は中心利用者である年配の方の他にも、少しずつ大学生やリモートワーカー、市の議員さんが立ち寄ってくれるようになってきています。

「JOCAはごちゃまぜの世界をつくることを掲げています。子どもを中心に大学生や高齢者などさまざまな人が関わることで面白い化学反応が生まれることを期待しながら、地域の居場所をつくっていきたいです」

JOCA大阪拠点は7月の採択から約3カ月の準備と改修工事期間を経て、10月にはコミュニティモデルの拠点として再オープンします。今後どのような居場所に育っていくのか楽しみです。

取材:北川由依

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