SOSを聞き逃していない?電車で目にするあのマークの意味とは

執筆:日本財団ジャーナル編集部

この記事のPOINT!

・「ヘルプマーク」の着用者は、外見では健康そうに見えても配慮が必要

・マークを身に着けていても、周囲の理解不足により、苦しんでいる人がいる

・マークの意味を知り、活用する取り組みが、みんなが生きやすい社会を実現する


エコマークや非常口マーク、数々の交通標識…。世の中はさまざまなマークであふれているが、中には命を守るための大切なマークや、社会課題を解決するための役目を担うマークもあることをご存じだろうか。

近頃、目にすることが多くなった「ヘルプマーク」をはじめとする、人の命にかかわることもある4つのマークをご紹介しよう。

SOSを聞き逃さないで!言いづらい“助けて”を代弁する「ヘルプマーク」

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身に着けている人への配慮が必要なことを示す「ヘルプマーク」

配布の対象となるのは、義足や人工関節を使用している人や、内部障害や難病の人、妊娠初期の人など、援助や配慮を必要としている人たち。自治体によってはヘルプマークをカラー印刷してラミネート加工したものなどもあるが、基本的にはストラップ型のマークとなり、かばんなどに装着可能だ。裏面には配慮してほしいことなどを書いたシールを貼ることができる。

赤地に白色で「十」と「ハート」がデザインされたマークは、見かけたことがある人も少なくないかもしれない。これは「ヘルプマーク」と呼ばれており、外見からはわからない援助や配慮が必要な人のために作られたものだ。

実はこのマーク、自身も右脚に人工関節を使っている山加朱美(やまか・あけみ)都議会議員の発案によるもので、「外見からは分からない障害者や難病の方は、日常生活で不便を強いられている。そんな方たちに対する理解促進を図るために統一マークを作りたい」と、2011年の都議会で提案したことがきっかけとなり誕生した。見た目からは分からないために、身体に障害や難病を抱えていても周囲に助けを求められずにいる…。そんな人たちの生きづらさを解決するためにできたマークなのだ。

2012年10月から東京都で作成、配布を開始し、2017年にはJIS Z8210(案内用図記号)に採用。これによって「ヘルプマーク」は正式な全国共通のマークとなり、2018年11月の時点で34都道府県への導入が完了した。配布先は導入自治体によって異なるので、必要な場合は事前にホームページなどで確認すると良いだろう。

ちなみに都内では都営地下鉄各駅の駅務室をはじめ、東京都心身障害者福祉センターや都立病院などの該当施設にて無料で配布されている。

できることはたくさんある。マークを見かけたら思いやりのある行動を

そんな「ヘルプマーク」をどれだけの人が認識しているのだろうか。障がい者総合研究所が障害者の方を対象に2017年7月に実施した「ヘルプマークの認知度・利用状況に関する調査」によると、47%の人が「知っている」と回答した。知っている人が半数を下回るという、想像以上に低い数字である。

しかし、実際に「ヘルプマーク」を利用している人はとても少ない。「現在、利用している」との回答が20%にとどまっているのだ。さらに利用したくない理由の上位2つは「利用時の周囲の反応が気になるから」が35%、そして「認知不足により役に立たないと思うから」が33%を占めている。「ヘルプマーク」に対する世間への理解が広まっていないことが原因でSOSを発しづらくなっていると言える。

図表:「ヘルプマーク」の利用率

「ヘルプマーク」の利用率を示す円グラフ。現在利用している20%、利用していたが、現在は利用していない2%、利用したいが、まだしていない41%、利用したいと思わない37%。
障がい者総合研究所 2017年「ヘルプマークの認知度・利用状況に関する調査」より引用。ヘルプマーク」の高い認知度に比べ、実際に利用している人は2割しかいない

図表:「ヘルプマーク」を利用したくない理由

「ヘルプマーク」を利用したくない理由を示す棒グラフ。利用時の周囲の反応が気になるから35%、認知不足により役に立たないから33%、利用する場所や機会がないから27%、入手方法が分からないから25%、外見から障害が分かるため、必要性を感じないから21%、自分の行動エリアでヘルプマークが導入されていないから12%、嫌がらせを受けたなどの噂を聞いたから8%、ヘルプマークのデザインに課題があるから4%、その他4%
障がい者総合研究所 2017年「ヘルプマークの認知度・利用状況に関する調査」より引用。 利用時の周囲の反応や、認知不足への不安が、「ヘルプマーク」の普及を遅らせている

では、本当に助けを必要としている人たちのために、私たちができることは何だろう。

まずは、「ヘルプマーク」の意味を理解するとともに、マークを身に着けていても、身体がつらいときに電車などの優先席を使えずに苦しんでいる人がいることを知ってほしい。

さりこさん「本当に必要な時に、優先してもらえない優先席。ヘルプマークを持つひとだって、元気な時もあるよ。でもね、何かしらの問題を抱えているんだよ。辛そうにしているときは、声をかけて欲しい。助けて欲しい。席を譲ってくれとは言わない。せめて、知っていて欲しい」

「ヘルプマーク」はまだ十分に認知されていないのが現状だ 。「ヘルプマーク」を知っているかもしれないが、目を逸らされた事例も。

のぶにゃんたさん「やはり持病の事考えると、緊急時に外出先で何かあるといけないので、ヘルプマークと連絡先入れたカプセルを携行してる。別に優先座席譲れって意味じゃないけど、チラッと見て直ぐに目を逸らすのはやめて欲しい。こっちは案外、気付いてます」

逆に、「ヘルプマーク」があったことで、助かった人もいる 。

杉浦佑さん「いつも心配するような『ヤバい』と思う状況とも、やっと裏に書けた『お願い』ともちょっと違ったし、そもそもヘルプマークに気付いてくれたからなのか分からないけどその男性のおかげで、とにかく助かりました。何もないときは、いつでもどこにいても俺が援助する側なんだけどなぁ…」

「ヘルプマーク」に対する周囲の理解不足により困っている人もいることが、これらのツイートを見ればよく分かる。一見困っていないように見えても、実はつらい思いをしているのだ。

そのような人たちが少しでも生きやすくなるよう、「ヘルプマーク」を着けた人が困っていたら、ぜひ思いやりのある行動を心がけたい。東京都福祉保健局は、下記のような対応を呼びかけている。

・電車やバスの中で席を譲ろう

病気や障害によって疲れやすい人や、つり革につかまり続けることが困難な人もいる。また外見からは分かりづらいため、優先席に座っていると周りの目が気になりストレスになることも。「ヘルプマーク」を見かけたら席を譲る、事情があることを理解し配慮を示すなどの心遣いを大切にしよう。

・駅や商業施設などで困っていたら、声を掛けよう

交通機関の事故などの突発的な出来事に対して、瞬時に反応することが難しい人もいる。また、立ち上がる、歩く、階段を昇る、降りることが困難な人もいるので、気がついたら声を掛けるように心がけたい。

災害時には、安全に避難できるよう手助けをしよう

視覚障害や聴覚障害のある人は、状況の把握が難しいこともある。また肢体が不自由な場合は行動が遅れてしまうことも考えられる。安全に避難できるようサポートしよう。

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手を貸します、という意思表示をするための「サポートハートマーク」

もし、「困っている人がいたら手を差し伸べたいけど、あと一歩が踏み出せない」という人がいたら、「サポートハートマーク」を身に着けてみてはいかがだろう。これは「ヘルプマーク」の逆転の発想により生まれたもので、「何か困ったことがあれば声をかけてください」という意思を示すもの。見えない疾患・障害啓発プロジェクト実行委員会によって作られたマークだ。ホームページでマークをダウンロードできるので、ぜひ活用してみてほしい。

意味をしっかり理解しておきたい、その他の命にまつわるマーク

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いざというときに命を救えるよう、意味を知っておきたい「AEDマーク」 (一般財団法人日本救急医療財団ホームページより提供)

「AEDマーク」は、AEDの設置場所を示すものだ。

AEDは、心室細動(血液を流すポンプ機能を失った状態)などで突然心臓が正常に拍動できなくなった心停止状態の心臓に対して、電気ショックを行い、心臓を正常なリズムに戻すための医療機器のこと。

一般的に心室細動を起こすと、1分経過するごとに約7〜10%、助かる確率が減っていくといわれている。総務省消防庁の統計資料(2017年版)では、救急車が現場に到着するまでに全国平均で8.5分かかるとされており、救急車を待っていたのでは助かる可能性が低くなる。そのため、救急車が到着するまでに、倒れた人の近くにいる人がAEDを使用して電気ショックによる処置をできるだけ早く行うことが重要となる。

AEDの操作方法は音声でガイドしてもらえる。また自動的に心電図を解析し、電気ショックが必要かどうかも指示してくれるので、操作はそれほど難しくない。そのため、訓練を受けていない人でも使うことが可能だ。しかし、日本赤十字社や、NPO法人日本ACLS協会などが開催している講習で、心肺蘇生とともにAED使用方法を身につけておくことがより望ましい。

総務省消防庁の調べによると2017年に一般市民によってAEDが使用された件数は1,260件あり、1カ月後の生存率は53.5%、社会復帰率は45.7%となっている。ちなみに、一般市民により応急手当てされなかった場合の1カ月後の生存率は9.4%、社会復帰率は4.6%となっており、緊急時のAEDによる処置の重要性が見てとれる。

そして、最後にご紹介するのは、高齢者や障害者のために作られた「命のバトン」マークだ。

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障害者や高齢者を守る「命のバトン」マーク

「命のバトン」とは、一人で過ごすことの多い高齢者や障害者が急病になった時のために、名前や緊急連絡先、かかりつけ医、持病、服薬の情報などが書かれた用紙を保管する緊急医療情報キットのこと。家の中でも比較的場所が分かりやすい冷蔵庫に保管するのが一般的で、救急車などで駆けつけた救急隊員が見つけやすくするために、冷蔵庫のドアや玄関の内側にマークが描かれたシールやステッカーを貼ることで「命のバトン」があることを知らせる。

まだ全国に普及している取り組みではなく、マークのデザインも地域によってさまざまだが、高齢化社会を迎えた今、その必要性は高まってくるだろう。大切な家族の安全を守るためにも、この取り組みをぜひ覚えておこう。

いずれのマークも困っている人を助けるため、あるいは命を守るために、誰かが生み出したもの。より生きやすく安全な社会をつくるためにも、ぜひマークを理解し、活用してほしい。