子どもの学びサポーターズセッションレポート(中編)地域の絆で「学びにくさ」を解消する

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ワークショップで意見を交換する子どもと大人たち

取材:日本財団ジャーナル編集部

この記事のPOINT!

  • 理由はないけど学校に行くことができない子どももいる
  • 子どもの「学びにくさ」を解決するには、人や居場所、地域とのつながりが重要
  • 地域で話し合い、活動の輪を広げていくことが、子どもが学びやすい社会への近道になる

日本財団が2018年12月に発表した「不登校傾向にある子どもの実態調査」(別ウィンドウで開く)では、全国の中学生約325万人のうち、文部科学省が定義する不登校生徒約10万人に加え、推計約33万人が学校で何らかの「学びにくさ」を抱えていることが明らかになった。その理由には、「授業が分からない」「テストを受けたくない」「いい成績がとれない」など、学習面に関するものが多く見られた。

6月23日・24日に横浜で開催された「学びにくさ0(ゼロ)の地域のつくり方 〜子どもの学びサポーターズセッション〜(以下、サポーターズセッション)」は、学校になじめない子どもたちが学びやすい地域づくりについて、3人のゲストスピーカーと、地域の大人や子どもたちで考えるイベントだ。

中編となる今回は、ゲストスピーカーも加わっての参加者全員によるワークショップの模様をお届けする。

「学びにくさゼロ」の地域をつくるためにできること

ワークショップのテーマは「学びにくさゼロの地域をつくるために、私たちには何ができるか」。3点のポイントについてディスカッションを行った。

  1. 中心となる考え方、方向性
  2. 具体的な活動や事業、仕組みのアイデア
  3. 実現に向けた初めの一歩

1日目は、2の「具体的な活動や事業、仕組みのアイデア」出しまで進めるべく、グループづくりからスタート。各々がゲストスピーカーによるトークとパネルトークを通して、「学びやすい地域をつくるために一番大切だと感じたこと」をキーワードで画用紙に記載。書き終えたら全員で輪になり、お互いの画用紙を見せ合って、自分と似た考えを持つ参加者同士でチームを組んだ。

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「居場所」や「つながり」と書いた画用紙を見せ合う参加者の方々

多様なバックグラウンドを持つ参加者たちが探る「学びにくさ」の原因と解決策

約2時間に及んでディスカッションが繰り広げられたワークショップ。

「つながり」というキーワードで集まったグループでは「子どもたちと支援機関をつなげるためには何が必要か」について話し合った。メンバーは、中学生で不登校の子どもを持つ母親や学校の先生、不登校だった過去を持つ大学生など。

「私がフリースクールという言葉を知ったのは、不登校になってからでした。母が地域のフリースクールをピックアップしてくれたんです。今になって思うと、不登校になって心が落ちこむ前に、もっと早く学校の先生からその存在を教えてほしかった」

そう語るのは不登校の経験がある大学生Tさん。この話を受けて、不登校児や学校になじめない子どもたちと支援機関をつなげるためには、SNSなどを使った情報を拡散・共有する仕組みや、学校側に意識変化を促すような取り組みが必要という意見が上がった。子どもたちの声をいかに早くキャッチするかが重要と感じたようだ。

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ワークショップで議論し合う参加者の方々

他のグループからは、「問題を一人で抱えてしまいがちな親のための居場所づくり」や「子どもが第三者の大人と出会える場所づくり」、「それぞれの変なところ(個性)を測る“変差値”をつくってみんながありのままの自分でいられる自由な地域づくり」といった、さまざまなアイデアが飛び出した。

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「変差値」を提案する参加者の方

中学生や高校生も参加。大人と子どもの意見が飛び交う2日目

2日目は、大人だけでなく、地域で暮らす中学生や高校生も参加してワークショップが行われた。

まず、1日目を振り返って大人たちだけでアイデアをまとめた後、子どもたちが各グループに加わり、アイデアに対する意見を述べた。

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当事者目線で「学びにくさ」の原因を話し合う子どもたち

ある中学生は「学校の授業についてどう思う?」という大人からの質問に対し、「個別の塾で習ったところを学校で復習するときは大丈夫だけど、塾で習っていない部分は授業だけだと分かりません。先生のペースで授業が進むので、分からなくても質問しづらく、宿題も提出できなくなってしまう」と語る。

他にも「国語の先生は、話を聞きながらノートをとるように言うけど、数学の先生は授業を聞いてからノートをとるよう勧める、といったように先生によってノートのとらせ方が違うので混乱する」といった声も。

塾に行かないと学校の授業について行けないという現状に、疑問を感じる大人たち。ノートのとり方は子ども自身に任せた方がいいという意見も出た。先生と子どもたちの関係性にも問題があるように感じられた。

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大人の意見に耳を傾ける中学生

また、「不登校の生徒とサポート施設をつなぐ“中間地点”の大切さ」というテーマで解決策を模索するグループから出たSNSを活用するアイデアに対し、子どもたちから「小学生や中学生はスマートフォンを持ってない人も多いので、親と一緒に観ることができるテレビを通して発信した方がいいんじゃないかと思います」という意見や、「生徒に無関心な先生が多い気がする。もっと先生が中間地点になってくれればいいのに」といった意見も。今の学校の状況が垣間見えるようだ。

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アイデアをポストイットに書き込む参加者の方

子どもたちの中には次のように自分を説明する子どももいた。

「学校に行けないけれど、特に理由はありません」

「学校に行かなくちゃ」と思えば思うほど、なぜか足が止まってしまう。以来、この子どもは外出しても不登校であることに罪悪感を感じてしまい、あまり家から出られなくなったという。

この話を聞いた大人たちからは「学校へ行くことを前提で考える社会の認識に誤りがあるのかも」「大人は学校に行かないことに理由を求めるけど、子どもには『ここに行きたくない』という感覚でしか行動できないこともある」「まず、本人の気持ちを受け止めることが大切」「学校とフリースクール、学校と病院といった、地域の施設との連携が必要なのでは」と議論が深まるきっかけとなった。

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積極的に意見を述べる高校生

2日間のイベントを経て生まれたアイデアとは

ワークショップの最後に、2日間にわたって作り上げたアイデアが発表された。その中から特にユニークなものを2つほどご紹介したい。

ゲストスピーカーの大山さんが参加したグループからは、“ついでに”子どもが悩みを相談できる「野外フェス」の提案があった。

「フェスの名前は『まだ学校行ってんの?』です。挑発的とも思える名前の裏側には、社会の『学校に行くべき』という固定概念を壊し、『なんで学校行ってないの』と聞かれる子どもやご両親の気持ち楽にできたらという思いを込めました」

子どもたちにはYouTuberや不登校経験がある芸能人、eスポーツを絡めたコンテンツ作りを、大人たちにはフードやカフェブース、ネイル、ハンドマッサージ、そば打ち体験ブースを用意するなど、イベント自体が「行ってみたい!」と思えることが重要だという。

その上で「さりげなく支援施設の職員による相談コーナーがあったり、支援施設のチラシが設置されていたり、全力で“偶然感”“たまたま感”を演出します(笑)」と、気軽に子どもや親御さんが頼れる仕組みをつくることがポイントだと語った。

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自身が参加したグループのアイデアを発表する大山さん

またあるグループは、地域が持つ可能性や、子どもの興味や好奇心を伸ばす「カフェなどの隙間時間を利用した居場所づくり」や「みんなで語り合いながらやるちょっとした仕事」といった、地域を巻き込んだアイデアを提案した。

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地域が秘める可能性について発表する参加者の方

大切なのは「話し合う」こと

最後にサポーターズセッションに参加した、大人たちと子どもたちの声を紹介する。

市役所職員Sさん

「不登校にも、自分がやりたいことを極めたいから学校を休む積極的な不登校と、学校で居場所がないから行きたくない消極的な不登校があると感じました。それぞれに合った、サポートやケアを考えることが大切だと思います」

大学生Tさん

「これまでは不登校経験者として話をすることが多かったのですが、今回は参加者の一人として、いろいろなバックグラウンドを持った大人の人たちと話し合うことができ、刺激的で、視野が広がりました」

子どもたち

「お母さんに誘われて参加しました。自分と違うさまざまな意見を聞けて良かった。新しい友達ができたことも嬉しいです」

「私は、学校に行かないことについて何とも思わないですが、それをネガティブ捉える人が多いことを知りました」

「学校に行ってません。今回は、いろいろな大人に自分の考えを伝えることができて良かったです。不登校について考える良いきっかけになりました」

「他人への無関心が一番の問題だと感じました」

「学びにくさをゼロにするのは大変だけど、人と話すこと、人の話を聞くことは誰にでもできます。今回のような話し合いの場を学校でも開いてほしいです」

「不登校の子を助けたい。このワークショップを未来につなげたいです」

2日間にわたったサポーターズセッションは、多くの大人や子どもの考え方にも変化をもたらしたようだ。感想にもあるように、「学びにくさゼロ」への道のりはまだまだ遠い。しかし、地域のみんなで話し合い、一人でも多くの人や施設がつながっていけば、きっと笑顔で学べる子どもが増えるはずだ。

撮影:十河英三郎

子どもの学びサポータズセッションレポート(前編)はこちら

子どもの学びサポータズセッションレポート(後編) はこちら

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