日本財団ジャーナル

面白い!が探究心を刺激する。いま読んでほしい、これ「も」学習マンガ10選

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マンガが秘めた可能性を追求し続ける山内さんと、おすすめのこれ「も」学習マンガ
この記事のPOINT!
  • まだ見ぬ世界の広さや社会について学べるマンガは、子どもの成長に役立つ
  • マンガは、親子の会話や関連書籍での知識の探求など、次の行動へと促すきっかけをつくる
  • マンガの持つ「楽しさ」「分かりやすさ」「共感力」で、学びの可能性を広げる

取材:日本財団ジャーナル編集部

「またマンガばかり読んで」。それは良くないことなのだろうか?

学校の勉強の理解を助ける「学習マンガ」というジャンルは昔からあるが、普段私たちがエンターテイメントとして読み親しんでいるマンガの中にも、知恵や知識が詰まり、学びの幅を広げるきっかけを与えてくれる作品がたくさんある。

少女マンガ界の大御所・里中満智子(さとなか・まちこ)さんや“ホリエモン”こと堀江貴文(ほりえ・たかふみ)さんといった有識者たちが検討を重ねて選んだ作品を世に届ける、「これも学習マンガだ!〜世界発見プロジェクト〜」(別ウィンドウで開く)。その発起人の一人で事務局長でもあり、マンガを介したコミュニケーションを生み出す合同会社「レインボーバード」(別ウィンドウで開く)の代表・山内康裕(やまうち・やすひろ)さんに、プロジェクトの目的を伺うと共に、新型コロナウイルスの影響で在宅を余儀なくされる子どもたちに読んでほしいマンガを推薦してもらった。

マンガは読み手の世界を広げてくれる

「マンガは世界の広さや、社会について学べる良質なツールだと考えています。書店だけでなく図書館にもっといろんなマンガがあれば、子どもたちの成長に役立つのではないかと考え、『これも学習マンガだ!』プロジェクトを立ち上げました」

そう語る山内さんは、JAXA宇宙センターのある茨城県つくば市出身。「もし子どもの頃に『宇宙兄弟』(講談社)のようなマンガに触れる機会があれば、僕も宇宙飛行士やロケットの開発者を目指していたかもしれません」と笑顔で話す。

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マンガの魅力について語る山内さん

「これも学習マンガだ!」プロジェクトは、新しい世界を発見できるマンガや学びにつながるマンガを選出・発表し、作品を国内外の読者に届ける日本財団、キハラ株式会社(別ウィンドウで開く)、レインボーバードによる協働事業。マンガの持つ「楽しさ」「分かりやすさ」「共感力」に着目し、社会をより良いものにしていくことを目的としている。

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幅広いジャンルと年代から選ばれた作品

このプロジェクトで目を引くのが、マンガを選ぶ「選書委員」の顔ぶれだ。自身もマンガ家で数々の名作を世に送り出してきた里中満智子さんを選書委員長に、起業家で多数の著書を持つ堀江貴文さん、『ドラゴン桜』(講談社)や『働きマン』(講談社)など数々のヒット作を世に送り出した編集者・佐渡島庸平(さどしま・ようへい)さんなど、幅広い分野の“マンガ好き”が集い、意見を交わしながら選定に努めた。

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「これも学習マンガだ!」の選書委員たち。上段の右端が山内さん

「各ジャンルに精通した方々の多様な価値観をお借りしながら、良質なマンガの選出に取り組んでいます。また、発信力を持った堀江さんや、「マンガジャパン」(別ウィンドウで開く)という日本のマンガ文化発展とマンガ家による国際交流を目指す団体を取りまとめる里中先生に協力いただくことで、日本のマンガ作家さんたちにもプロジェクトの有用性を伝えたいという思いもありますね」

2015年にプロジェクトが始動してから3年間かけて200冊を選出。現在では、日本全国の図書館や書店を中心に延べ500箇所以上で、選書したマンガが紹介されている。

マンガから始まる好奇心の旅

「これも学習マンガだ!」というプロジェクト名には、どのような思いが込められているのだろう。

「『これも学習マンガだ!』の『も』には、学術参考書としてのいわゆる『学習マンガ』ではないエンタメ系のマンガも学習に活用できるという社会提案を込めました」

学習マンガとエンタメマンガを行き来する作品も増えてきていると山内さんは語る。

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「これも学習マンガだ!」の小冊子

「『はたらく細胞』(講談社)が良い例ですね。人間の体内に存在する細胞を擬人化した作品ですが、ページの合間に、細胞についての詳しい解説が書かれています。個人的には、人体の不思議に関心を持つ良いきっかけになるのではないかと考えています。このように、枠にとらわれないマンガが増えてきているのはうれしい傾向ですね」

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人体について楽しく学べる『はたらく細胞』(講談社)

また、テレビや動画サイトに比べ、読み手の自主性に委ねられるのもマンガの良いところ。自分のペースでページをめくりながら、しっかりと読み込むことができる。

「マンガを読んでその分野に関心を持ったら、似た分野のマンガを探してみたり、より専門的な書籍を手に取ってみたり。あと親子で意見交換してみるのも面白いですよね」

山内さんによると、マンガによっては巻末に関連資料などが載っているものもあり、そこからまた新しい世界が広がるという。一つの本から、また次の本へとつながる「好奇心の旅」。何とも楽しそうだ。

マンガは多様性を知る打ってつけのツール

新型コロナウイルスの影響で在宅学習を余儀なくされる子どもたち。そんないまだからこそぜひ読んでほしいマンガを、山内さんに10冊選んでもらった。

[小学生におすすめのこれも学習マンガ]

『はじめアルゴリズム』(講談社)

「まず“学校の勉強を好きになる”という観点から数学をテーマにした『はじめアルゴリズム』を選びました。天才小学生の少年の物語を通して、数学は世界を解き明かせる神秘的な学問であり、美しいものと感じることができる作品です」

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『はじめアルゴリズム』第1巻

『アオアシ』(小学館)

「自分の好きなスポーツを深く理解するという点で、サッカーのジュニアユースを題材にした『アオアシ』をおすすめします。主人公であるサッカー少年の物語を通して、進路の選び方や技術の上達方法を具体的に知ることができます」

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『アオアシ』第1巻

『聲の形』(講談社)

「『いじめはいけない』『障害者を差別してはいけない』と学校でも社会でもよく聞かされます。その意味を知る上で、『聲の形』をおすすめします。耳の聞こえない転校生とのコミュニケーションを題材にし、日頃の友達に対する態度や言動について考え直すきっかけを与えてくれます」

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『聲の形』第1巻

[中学生におすすめのこれも学習マンガ]

『ミノタウロスの皿』(小学館)

「中学生は、コミュニケーションのあり方が変わる時期なので、価値観や哲学について触れられる作品を選んでみました。藤子・不二雄の異色短編集『ミノタウロスの皿』は古典的な名作で、SFを舞台に、倫理や人間の本質に触れることができます。死生観の見方も変わるかもしれません」

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『ミノタウロスの皿』©️藤子プロ・小学館

『スキップとローファー』(講談社)

「地方から東京の進学校に入学した主人公が登場する『スキップとローファー』は、過疎の地域と都会でのコミュニケーションの違いについて描く作品です。人の持つ背景によって異なる多様な価値観にどう向き合うか、考えさせられます」

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『スキップとローファー』第1巻

『ヘテロゲニアリンギスティコ -異種族言語学入門-』(KADOKAWA)

「『ヘテロゲニアリンギスティコ -異種族言語学入門-』は、異種族とコミュニケーションを試みるユニークなファンタジー作品になります。新人研究者が主人公で、その苦悩や日常を通して、異なる言語を学ぶことの意義や異文化交流の本質について触れられます」

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『ヘテロゲニアリンギスティコ -異種族言語学入門-』第1巻。©️瀬野反人/KADOKAWA

[高校生におすすめのこれも学習マンガ]

『バディドッグ』(小学館)

「進路について考える機会も多くなる高校生には、大学や職業選びにつながる作品を選んでみました。『バディドッグ』は、人間とAIロボットの共同生活を題材にした作品で、人工知能が持つ限界や人間とロボットの共存の方法にも触れることができます」

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『バディドッグ』第1巻

『ブルーピリオド』(講談社)

「高校生の主人公が美大を目指して青春を燃やす『ブルーピリオド』は、美大学受験やクリエイティブ系の仕事をする人の思考回路などが描かれた作品です。これからの進路、将来就く仕事に悩む学生におすすめです」

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『ブルーピリオド』第1巻

『夕凪の街 桜の国』(双葉文庫)

「日本人が知っておくべき歴史として『夕凪の街 桜の国』も選んでみました。広島の原爆当日ではなく、10年後、40年後、60年後の話について描かれています。戦争の悲惨さや偏見について深く考えさせられる作品です」

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『夕凪の街 桜の国』

[みんなにおすすめのこれも学習マンガ]

『はたらく細胞』(講談社)

「あと、どの学年の子どもも楽しめる作品として『はたらく細胞』をおすすめします。免疫機能や自分の体について知ることができる作品で、新型コロナウイルスが流行している今だから、とても興味を深めることができると思います」

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『はたらく細胞』第1巻

最後に山内さんに、「これも学習マンガだ!」プロジェクトの今後の展望について聞いてみた。

「学習マンガの普及活動という面においては、社会に一つの切り口として提案できたかなと思っています。マンガが教育にどう生きるのか、この研究はまだまだこれからなので、今後はマンガで学ぶ実証研究にもチャレンジしたいですね」

マンガは時代と共に、娯楽としての「エンタメ」、そして「教育」のツールとして機能し始めている。

「マンガは文章だけでなく絵や記号が入ることでイメージが膨らみ、そこから先の世界観は読者の想像に委ねられます。そんな分かりやすくて解釈の幅があることが、今の多様化の時代には打ってつけのツールなのかなと。もっと、マンガ自体が学習以外のさまざまな分野でも普及できればいいなと思っています」

撮影:十河英三郎

〈プロフィール〉

山内康裕(やまうち・やすひろ)

1979年生。法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科修了後、税理士を経て「マンガナイト」を結成。マンガ専門の新刊ブックカフェギャラリー「マンガナイトBOOKS」を東京都文京区に設ける。また、マンガ関連の企画会社「レインボーバード合同会社」を設立(代表社員)し、“マンガ”を軸に施設・展示・販促・商品等のコンテンツプロデュース・キュレーション・プランニング業務等を提供している。「さいとう・たかを劇画文化財団」理事、「これも学習マンガだ!」事務局長を務める。共著に「『ONE PIECE』に学ぶ最強ビジネスチームの作り方」(集英社)、「人生と勉強に効く学べるマンガ100冊」(文藝春秋社)など。
レインボーバード合同会社 コーポレートサイト(別ウィンドウで開く)
マンガナイト 公式サイト(別ウィンドウで開く)