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【里親になりたいあなたへ】里親登録の第一歩、児童相談所への問い合わせ(特集第2回/全8回)
- 里親として子どもを預かるには、里親登録が必要
- ⾥親登録は地域の児童相談所へ電話するか、里親制度の説明会(相談会)に参加するところから始まる
- 児童相談所への問い合わせの際は、事前に面談の候補日や聞きたい質問を準備しておく
取材:日本財団ジャーナル編集部
さまざまな事情により、生みの親と離れて暮らす子どもたちを家庭に迎え入れ育てる里親制度。特集第1回目は、里親になるための6つのステップ(別ウィンドウで開く)を紹介した。第2回目以降は、里親登録するまでの準備や手続きの内容について、実際に里親になることを検討する「山田夫婦(仮名)の体験」をもとに、妻の視点を通してお届けする。
第2回のテーマは「児童相談所への問い合わせ」について。里親を考えたらまず行うのが、地域の児童相談所への電話による問い合わせだ。里親登録をしたい旨を伝え、職員との面談日時を調整する必要がある。
「山田夫婦の体験記」登録ステップ1.児童相談所への問い合わせ
「子どもたち」のためにできること
一人息子も無事に高校に合格し、この春から下宿暮らしを始めた。子どもが手を離れ、ようやく自分の時間が持てるようになってきたと感じていたその時、テレビで小さな子どもが虐待を受けて亡くなるというニュースを目にした。
ふと、私自身のことを思い返すと、父子家庭で育ち寂しい気持ちになったこともあったが、周りの大人たちに助けられながら生きてきた。とても幸せだったように思う。
一方で、小さな子どもが虐待で命を落としたり、いろんな理由で大好きなお母さんやお父さんと暮らせなかったりする子どもたちが世の中にいる。
「何か私にできることはないか」。そう次第に思うようになっていた。
夫とは「家族ってなんだろうね」という他愛もない話をするようになり、ある時友人から里親をしていると聞いて「里親制度」というものがあることを知った。
もともと子どもが大好きな私たち夫婦は、「子育ても落ち着いた今なら、里親として子どもを預かるってこともできるよね」と思いが一致した。
最初は、何気ない夫婦の会話から出た「里親」になるというアイデアだったが、次第に「実現できるんじゃない?」と思うようになり、まず地域で開催された里親相談会に2人で参加してみることにした。
そこでは、実際に子どもを預かる里親さんたちの話が聞けて、里親制度に関する紹介もあった。里親になるまでの気持ちの変化、子どもを迎えて日々奮闘する様子を知ることができ、里親家庭のイメージを持つことができた。
また「里親は子どものための制度である」ことや、他人の子どもを育てることの難しさ、またさまざまな困難を乗り越えた先に生まれる絆のことなど、いろいろなことを感じることができた。
里親になるには、まず登録が必要なことや養育費の支給があることも分かった。イベントへの参加を経て、「厳しい環境にいる子どもたちの力になりたい。自分にできることで子どもたちの手助けをしたい」という気持ちが強まり、まず里親の登録をしてみようという話になった。
里親になるための第一歩としての登録
それから夫と2人でインターネットを検索したり、実際に里親をしている友人から話を聞いたり、本を読んでみたりと、いろいろな方法で里親に関する知識を深めた。制度や登録に関する概要がだいたい理解できたところで、「とはいえまず登録しなきゃ、何も始まらないよね」という気持ちになり、詳しい話は直接専門家に聞くことにしようと、私は児童相談所へ電話をすることにした。
里親登録の手続きは、自分たちが暮らす地域の児童相談所(別ウィンドウで開く)への電話連絡から始まる。時間にして5〜10分ぐらいの内容で、児童相談所の職員さんとの面談日を決めると共に、里親登録について疑問や不安などあれば気軽に相談することもできる。
職員「はい、こちら●●児童相談所です」
私「はじめまして、山田という者です。いま夫と里親制度の利用を検討しているのですが、⼿続きなど詳しいことを教えていただけませんか」
職員「お問い合わせありがとうございます。それではまず、簡単に里親制度についてご説明させていただきますね」
職員さんから聞いた話によると、生みの親と暮らすことができない子どもを家に迎える方法には、大きく分けて「里親制度(養育里親)」と「養子縁組」の2種類がある。違いを簡単にまとめると「法的に親子になるか、ならないか」の2つ。養子縁組では法律で親子になる。一方、養育里親は、子どもが生みの親の元に戻るか、18歳で自立するまで子どもを預かる制度で、親権は生みの親にある。養育中は、国から月額9万円の里親手当(※)や子どもの生活費が支給されるそう。
- ※ 2020年4月改正
職員「(東京都の)里親になるためには、『東京都里親認定基準』(別ウィンドウで開く)を満たす必要がありますが、ホームページなどでご覧になられましたか?」
私「細かいところまでは把握できていないのですが、見させていただきました」
職員「実際の登録にあたっては、一度ご夫婦で児童相談所にお越しいただき、直接面談して、さらに詳しい制度の説明と今後の流れについてお話をさせていただきたいと思います。来週か再来週の平日で、ご都合の良い日時はありますでしょうか?」
私「では、来週の水曜日の朝10時からでお願いすることはできますか?」
職員「少しお待ちくださいね…。はい、大丈夫です。ではその時間にお待ちしておりますね。ところで、事前に少しご質問させていただきたいのですが、里親になりたいと思われた理由は何ですか?」
私「きっかけはテレビで見た子どもの虐待のニュースだったんですが、それから自分たちに何かできることはないかと、いろいろと里親制度について調べてみたんです。その中で一定の要件を満たせば、私たちでも里親になれることが分かり、問い合わせさせていただきました」
職員「なるほど。ちなみに奥さまは働かれていますか?また差し支えなければ、現在お住まいの場所や住居の形態についても簡単にお聞かせいただけると助かります」
私「共働きになりますが、育児経験もありますし、子どもも大好きなので、子どもとの時間は大切にしたいと思っています。住まいはこの区内の賃貸マンションになります」
職員「ありがとうございます。共働きの場合でも、子どものための時間を大切に考えてくださっていることは大変ありがたいことです。里親制度は、子どものための制度になります。子育てに対する考えは、今後手続きを進める中で詳しく聞かれると思いますので、ご夫婦の考えにずれが生じないように話し合いを重ねていただきますようお願いします」
私「分かりました。ありがとうございます」
その後、職員さんから里親登録までの流れ(別ウィンドウで開く)を聞いて電話を終えた私。初めての児童相談所への電話は緊張したが、職員さんがとても丁寧に対応してくれたおかげで、話もしやすく、今後の流れについても把握することができた。一歩前に進めたような気がした。
この電話をきっかけに「最初から里親になれる人なんかいない」「制度を完璧に理解する必要はない」「研修や現場の人の声を直接聞いてから、本当に里親になれるのか決めてもいいのではないか」とも思うようになった。
今の時点で大切なのは、「自分がなぜ里親になりたいのか」という理由を夫婦でしっかりと持っておくこと、そこから登録へのステップをスタートさせてもいい、ということが分かった。
[児童相談所に電話連絡するときのポイント!]
- 所得や住居の広さなど里親認定基準があり、自治体のサイトで確認しておくとよりスムーズ。児童相談所職員との電話の中でそれらを確認されることもあるので準備しておくと良い
- 電話は、面談日を決めることも目的の一つ。休みを取れる日など事前に夫婦のスケジュールを把握しておく
- 質問があれば、事前に準備しておき、電話の際に確認する
夫が帰宅後、児童相談所での面談日時と併せて、職員さんと話をした内容を報告した。すると「面談で、どんなことを質問しようか」ととても前向きな様子だった。登録まで道のりは長そうだけど、子どもを預かるということは、それだけ責任あることだと思いつつ、子どもを迎え入れるときのことを考えると、なんだかワクワクしてきた。
〈参考資料〉
- 厚生労働省「里親関制度(資料集)」(別ウィンドウで開く)
- 東京都福祉保健局「東京都の里親制度について」(別ウィンドウで開く)
- 東京都福祉保健局「東京都の養育家庭(里親)とは」(別ウィンドウで開く)
- Tokyo里親ナビ(別ウィンドウで開く)
- 東京都里親PR動画「養育家庭(里親)とは…」(別ウィンドウで開く)
撮影:十河英三郎
- ※ ※里親には養子縁組を前提とする養子縁組里親もいますが、今回の記事においては、養子縁組をせず、一定期間子どもを預かる養育里親(東京都においては養育家庭(里親))について記載しています
- ※ ※里親にまつわる制度は、自治体によって異なります。詳細はお住いの地域を管轄する児童相談所までお問い合わせください
この記事の取材・編集は東京都福祉保健局にご協力をいただいています。
- ※ 掲載情報は記事作成当時のものとなります。