日本財団ジャーナル

【里親になりたいあなたへ】里親登録の申請書類を作成・提出する(連載第6回/全8回)

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里親認定登録申請書を記入する夫婦(イメージ)
この記事のPOINT!
  • 里親認定前研修を通して学んだこと、感じたことを夫婦で共有し合う
  • 申請書は「里親になりたい理由」「里子の育て方」「養育環境」を夫婦各々の言葉で記入する
  • 里親申請には家族や親族の同意が必要。事前にしっかり説明し、理解を得ることが大切

取材:日本財団ジャーナル編集部

さまざまな事情により、生みの親と暮らすことができない子どもたちを家庭に迎え入れて育てる「里親制度」。この連載では、里親登録するまでの準備や手続きの内容について、実際に里親になることを検討する「山田夫婦(仮名)の体験」をもとに、妻の視点を通してお届けする。

第6回のテーマは、「里親登録の申請」について。里親認定前研修を受講し、里親になる意思が固まったら管轄の児童相談所に申請書類を提出する。その際「里親認定登録申請書」には、子どもの養育環境や里親の経済事情、そして夫婦双方の考えを明確に記入する必要がある。

「山田夫婦の体験記」登録ステップ6. 里親登録申請書類の作成・提出

夫婦で話し合いながら作成する申請書

4日間に及ぶ里親認定前研修を終えた次の週末。私と夫は、里親認定登録申請書を目の前にして、向かい合った。申請書は4枚で構成されていて、2枚目に家庭状況や住居、経済状況といった基本情報を記入し、3枚目、4枚目に私と夫のそれぞれの言葉で記入する欄がある。主に問われるのは以下の3点。

  • 里親になりたい理由(里父と里母それぞれ自身の言葉で記入※以下同様)
  • 里子に対する関わり方、育て方
  • 養育環境をどのように整えていくか

その他、家族(実子)や親族の考え、過去の子育て経験について、希望する里子の年齢や性別などについて記入する項目がある。

座学(別ウィンドウで開く)で学んだことや児童養護施設での実習(別ウィンドウで開く)体験を振り返りながら、大切なお子さんを預かる立場になれるのか、どんな風に子どもを育てていきたいのか2人で話をした。

私「里親については事前に勉強していったつもりだったけど、実際に研修に参加して、初めて知ることがたくさんあったなと思う。例えば、赤ちゃん返りの話とか。実の子ども以上に、子どもと向き合う必要があるんだなって改めて思ったわ」

夫「 そうだな。僕も子どもの試し行動があることや赤ちゃん返りの話は衝撃を受けたし、改めて子育ては簡単じゃないなって思ったよ。ところで、施設実習はどうだった? 」

私「私が行った施設は、幼い子から高校生ぐらいの子までいて6名ぐらいの小さな施設だったわ。みんな明るくて素直だった。私にコーヒーを淹れてくれた子もいてね、本当に可愛かったな。でも、職員さんはみんな平等に面倒をみなきゃいけないし、子どもたちが甘えたくても十分に甘えられないところを見ていると、少し可愛そうな気持ちにもなったんだよね。里親になったら、そんな子どもたちの思いにも応えてあげられるのかなって」

夫「そうだね。みんないい子たちだっただけに、職員さんから子どもたちが育った背景や家族の話を聞いたら、なんだかやるせない気持ちになってしまった。子どもにも自分が生活をする環境を選ぶ権利があるんじゃないかって思ったよ。施設がいいって子もいるかもしれないけど、里親と一緒に暮らしたいって願う子もいるかもしれないからね」

写真:児童養護施設の子どもと遊ぶ里親候補の夫
里親認定前研修・実習の様子(イメージ)

私「あと、食事の時間はとても大事なんだって改めて思った。子どもたちと一緒に準備して、一緒にごはんを食べることで仲良くなれたし。職員さんがね、子どもたちと話をしながら、みんなのお箸の持ち方や好き嫌いをしていないかちゃんと見てるの。苦手な物を食べられたら褒めてあげることも忘れないしね」

夫「そうなんだ。こっちの施設では男性職員も料理をしていて、おいしかったよ!僕も得意料理を作れるようになりたいなって思った。子どもを迎えたら、毎日ごはんを一緒に食べられるといいよな」

私「そのためにも仕事と家庭のやりくり、ちゃんと考えないとね」

養育方針、生活スケジュール、お互いの役割など、夫との話は尽きず、結局その日は申請書を埋め切ることができなかった。家庭の在り方や、それをどのように実現していくか。研修を通して、改めて一緒に考え話し合うことの大切さに気付かされた。そうすることで、家族としての考え方が固まってくるし、里親としてのスタンスも定まるのだ。

家族・親族と理解を深め合うことの大切さ

里親になるには、自分たちだけでなく実子や親族に理解してもらい、後々家族トラブルにならないよう合意を得る必要がある。予定よりも遅くなってしまったけど、夫と私の両親、そして離れて暮らす息子に、里親になりたいと思っていることを報告することにした。

私の両親は「ひとさまの子を預かるなんて」と心配したが、里子になる子どもたちの事情や里親制度について分かるように説明し研修にも参加したことを伝えると、最終的には「最後までしっかり育てなさい」と理解を示してくれた。夫の両親も同様だ。心配なのは今年高校生になったばかりの息子のこと。ちゃんと受け入れてくれるだろうか…。私は息子の携帯に電話した。

私「久しぶり、元気にしてる?」

息子「うん。こっちの生活にもだいぶ慣れたてきたよ。友達もできたしね」

私「なんだか楽しそうで良かったわ。…ちょっとね、相談があって電話したの。実は、お父さんと2人で里親になろうかって話をしていてね」

息子「え!里親って、他の人の子どもの親になるやつ?」

私「うん。いま子どもの虐待のニュースとか多いでしょ。で、ちょっと調べてみるといろんな事情で本当の親と暮らせない子どもがたくさんいるの。確か、全国で4万5,000人ぐらいだったかな。それでね、あなたも大きくなったことだし、社会貢献の意味でもそんな子どもたちに何かしてあげられることはないかなって、お父さんと考えるようになったのよ」

それから私は、今回なりたいのは養子縁組を前提とする里親ではなく一定期間子どもを迎え入れて育てる親権のない養育里親であること、児童相談所で面談(別ウィンドウで開く)したこと、里親になる研修を受けて実際に施設の子どもたちとも会って一緒に過ごしたことを、時間をかけて息子に説明した。

息子「ふーん…そっか。だけど僕も一度、里親について調べてみてもいい?」

私「もちろんよ。あなたの気持ちが大切だから、ゆっくりでいいから考えてみてくれる」

息子「うん。じゃあまた連絡するね」

少し息子の声が沈んだように思えたのは気のせいだろうか。電話よりも直接顔を合わせて話をした方が良かったかもしれないと悔やまれた。そのことを会社から帰った夫に話すと「仕方ないよな。まだ高校生になったばかりだし、理解してもらうのは難しいかもしれないな」と、私たちは焦らず息子からの連絡を待つことにした。すると、1週間後、思っていたよりも早く息子から電話があった。

息子「あれから里親制度のこと、自分なりに調べてみたんだ。いろいろ大変そうだけど、お父さんとお母さんが里親になりたいんなら、僕も応援してみようかな」

私「え?ほんとに?」

息子「うん。正直不安はあるけど、弟や妹みたいな子ができるのも、悪くないかなって」

私「ありがとう、本当にうれしいわ。きっとお父さんも喜ぶと思う」

息子「うん。で、いつからうちに来るの?」

私「実はまだ里親に申し込む前なの。ちゃんとあなたに承諾してもらってからと思って」

息子「そっか。何か僕がしなきゃいけないことってある?」

私「児童相談所の人たちがうちに来て話をする『家庭訪問』があるの。いつもは離れて暮らしているけれど、あなたも長い休みの間とかは一緒に過ごすことになるし、できれば同席してもらった方がいいと児童相談所からは言われているの」

息子「分かった。じゃまた家庭訪問の日が決まったら教えてよ」

私「ありがとう、助かるわ。じゃあ、また連絡するわね」

そうして息子との電話を終えた。少しクールなところもあるが、理解のある素直な子どもに育ってくれたことを感謝しないと。息子の返答次第では里親になるのを諦めることも考えなければと思っていたけど、これで晴れて、里親に申し込むことができる。夫としっかり話をして、申請書の残りの部分を埋めなければ。

里親になる覚悟を明確化する申請書

「里親になりたい理由」「里子との関わり方・育て方」「養育環境をどのように整えていくか」。夫が自分の記入する箇所を書き終えた里親認定登録申請書が、今手元にある。残すは私の箇所だけだ。

写真:里親認定登録申請書に記入する様子
申請書には家庭状況や住居、経済状況なども細かに記入する

里親になりたい理由は、はじめの頃と変わらない。生みの親と暮らせない子どもたちに「安心できる温かい居場所」をつくってあげたいから。座学で子どもたちの現状を知り、施設で実際に触れ合ったことで、その思いはより一層強くなった。

里子の関わり方・育て方。一人一人と向き合い「その子らしさ」を伸ばす手助けをしたいと思っている。一緒に遊んだり、本を読んだり、時には旅行に出かけたり、いろんなことを経験させてあげたい。子どもが興味あることはできるだけチャレンジさせて、自分の好きなこと、得意なことを見つけてあげたいと考えている。

養育環境をどのように整えていくか。最近は里親でも共働きの家庭もあると、児童相談所では聞いた。ただ、私は、今は子どもとの時間を最優先したいと考えている。そのためにパートを辞めてもいいように、自宅で仕事できる資格を取ろうとも考えていた。子どもの年齢や性格をみて、児童相談所の人と相談しながら生活を変えていこうと思っている。

私「よし、記入漏れもなし」

完成した里親認定登録申請書と一緒に、里親認定前研修の受講レポートや研修の修了証などの必要書類(※)を封筒に入れて、私は近所の郵便局へと向かった。

  • 東京都の場合は、申請者の自宅の面積や間取りが確認できる書類、住民票の写し(原本)、申請者や同居する人の収入が確認できる書類及び里親の欠格事由に当たらないこと等を確認する宣誓書の提出が必要となる。必要書類は自治体によって異なる

撮影:十河英三郎

  • 里親には養子縁組を前提とする養子縁組里親もいますが、今回の記事においては、養子縁組をせず、一定期間子どもを預かる養育里親(東京都においては養育家庭(里親))について記載しています
  • 里親にまつわる制度は、自治体によって異なります。詳細はお住いの地域を管轄する児童相談所までお問い合わせください
東京都のロゴーク

この記事の取材・編集は東京都福祉保健局にご協力をいただいています。

連載【里親になりたいあなたへ】