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あなたの1票で社会が変えられる? 選挙のキホンについて学ぼう!

イラスト:選挙について説明する女子学生となるほどとうなずく男子学生
選挙で投票するための基本的な知識について分かりやすく紹介

執筆:日本財団ジャーナル

10代の今だからこそ読んでほしいトピックをお届けする「ジャーナル@ソーシャルグッドラボ」。今回は、2025年7月に実施予定の参議院選挙を前に、「選挙の基本」についてご紹介します。

「選挙なんて大人の話でしょ?」と思う人も多いかもしれません。でも実は、18歳になると選挙権を得られるため、高校生のうちに投票を経験する人もいるのです。

ただ、若い世代の投票率は他の世代と比べて低い状況が続いています。過去10年間に行われた国政選挙における「年代別投票率」の移り変わりを見ると、10代、20代の投票率は常に低い水準にとどまっていることが分かります。

折れ線グラフ:
2014年(衆議院選挙):20代32.58%、30代42.09%、40代49.98%、50代60.07%、60代68.28%、70代59.46%、全体52.66%
2016年(参議院選挙):10代46.78%、20代35.60%	、30代44.24%、40代52.64%、50代63.25%、60代70.07%、70代60.98%、全体54.70%
2017年(衆議院選挙):10代40.49%、20代33.85%、30代44.75%、40代53.52%、50代63.32%、60代72.04%、70代60.94%、全体553.68%
2019年(参議院選挙):10代32.28%、20代30.96%、30代38.78%、40代45.99%、50代55.43%、60代63.58%、70代56.31%、全体548.80%
2021年(衆議院選挙):10代43.23%、20代36.50%、30代47.13%、40代55.56%、50代69.26%、60代71.38%、70代61.90%、全体555.93%
2022年(参議院選挙):10代35.24%、20代33.99%、30代44.80%、40代50.76%、50代57.33%、60代65.69%、70代55.72%、全体552.05%
2024年(衆議院選挙):10代39.43%、20代34.62%、30代45.66%、40代52.66%、50代59.16%、60代68.02%、70代60.42%、全体553.85%
過去10年間に行われた国政選挙における年代別投票率(抽出)の推移。出典:総務省

この記事では、改めて選挙が大切な理由や、選挙の基本的な仕組みを解説。さらに、子どもや若者の政治参加を後押しするための取り組みも紹介します。

この記事のPOINT!

  • 選挙は自分たちの未来を決める大切な手段。生活のあらゆることに影響を与える
  • 若者の投票率の低さが大きな課題。参加しなければ、若者世代の意見が反映されにくい
  • 子どものうちから選挙の仕組みを身につけることが、よりよい社会づくりにつながる

そもそも、なぜ選挙は大切なの?

●選挙は、自分たちの未来を決める手段

選挙は、私たちが国や地域の方向性を決めるための手段です。政治家や政党を選ぶことは、教育、福祉、経済、環境、平和など、自分たちの生活に関わるあらゆることに影響を与えます。

身近なところでは、学校の制度や進学にかかる費用、病気やけがの治療費、住んでいる地域の安全性など、みなさんの日常生活と深く関わる政策が、選挙で選ばれた人たちによって決められているのです。

●選挙は、自分の意見を社会に伝える基本的な方法

選挙は、自分の考えを社会に伝えるもっとも基本的で確実な方法です。投票で政治を行う代表者を選ぶことで、自分の意見や考えを政治に反映させることができます。

●選挙は、民主主義を支える仕組み

民主主義の基本的な考え方は「国民が主権を持つこと」です。国のリーダーや政策を選ぶのは国民の役割であり、選挙を通じて国民が政治に参加しなければ、民主主義は形だけのものになってしまいます。

●選挙は、全世代にとって暮らしやすい社会づくりに重要

特に若い世代の投票率が低いと、大人の意見ばかりが政治に反映されやすくなります。その結果、若者に向けた政策が実現されにくくなる可能性があります。

選挙は、自分の人生に影響を及ぼす機会であり、未来をより良いものにするチャンスなのです。

選挙権が得られる前に知っておきたい「選挙」の基本

●選挙の4つの原則

国民が政治に参加する大切な機会である選挙には、公平性を守るための4つの原則があります。

普通選挙:性別、財産などに関係なく、満18歳以上のすべての国民に選挙権が与えられること

平等選挙:1人が持つ票の価値がみんな同じであること

直接選挙:有権者(選挙権を持つ人)が直接、代表者を選ぶこと

秘密選挙:誰に投票したかを秘密にすることができ、他の人に知られないこと

●選挙の種類

選挙には大きく分けて、国全体の政治に関わる選挙と、みなさんが住んでいる地域(都道府県や市町村)に関わる選挙があります。まず、国全体の政治に関わる選挙は以下になります。

衆議院議員総選挙(総選挙)

衆議院は「国民により近い議院」とも呼ばれ、内閣総理大臣を選ぶ重要な役割を持っています。選挙制度は小選挙区制(1つの選挙区から1人を選ぶ)と比例代表制(政党に投票する)を組み合わせています。衆議院議員の任期は4年ですが、解散(※)により早まることがあります。

  • 「衆議院の解散」とは、4年間の任期を終える前に衆議院の全議員を辞めさせること。主に内閣と衆議院の間で意見の対立が起こった場合に、解散後に行われる選挙にて、国民に判断を委ねる目的で行われる。なお、解散があるのは衆議院のみで参議院には解散はない

参議院議員通常選挙(通常選挙)

参議院は「良識の府」とも呼ばれ、衆議院で決まったことをもう一度慎重に検討する役割を持っています。選挙区制と比例代表制を組み合わせており、任期は6年で解散はありません。また、参議院議員は3年ごとに半数が入れ替わるよう憲法で定められ、3年に1度、議員定数248名の半分(124名)を選び直す選挙が行われます。

衆議院		
議員定数:465名
小選挙区/289名
比例代表/176名
任期:4年
選挙権:満18歳以上の男女
被選挙権:満25歳以上の男女
解散:あり

参議院
議員定数:248名
小選挙区/148名
比例代表/100名
任期:6年 ※3年ごとに半数を改選"
選挙権:満18歳以上の男女
被選挙権:満30歳以上の男女
解散:なし
衆議院と参議院の違い

続いて、みなさんが住む地域に関わる選挙です。

地方選挙

都道府県や市町村の議員、知事や市町村長を選ぶ選挙で、2025年6月22日(日)に行われる東京都議会の議員を決める「東京都議会議員選挙」もその1つ。私たちの身近な暮らしに関わる政策を決める人たちを選びます。

地方議員と首長(しゅちょう・知事や市町村長のこと)の任期は4年で、知事になれる年齢は満30歳以上です。

地方議員
任期:4年
選挙権:満18歳以上の男女
被選挙権:満25歳以上の男女

首長
期:4年
選挙権:満18歳以上の男女
被選挙権:満25歳以上の男女。知事のみ満30歳以上
地方議員と首長の違い

●実際の投票の流れ

投票所は、住んでいる地域からそれほど遠くない場所(公民館や小中学校の体育館など)に設置されている場合が多く、受付から投票箱に投票用紙を入れるまで、5分もかからずに終わります。

1.受付
あらかじめ郵送で届く入場券を持参し、受付をします。持ち物は入場券のみでOK。

2.名簿対照係
市区町村の選挙管理委員会が管理する「選挙人名簿」に登録されている本人かどうか、確認を受けます。

3.投票用紙交付係
投票用紙を受け取ります。

4.投票記載所
決められた記載方法に従って候補者の名前や指示する政党名を記入します。

5.投票箱
記入済みの投票用紙を投函します。

入口→1.受付→2.名簿対照係→3.投票用紙交付係→4.投票記載所→5.投票箱→出口までの行程を表したイラスト
投票所における受付から投票箱に入れるまでの流れ

投票日に予定があって行けない場合は、期日前投票(※1)や不在者投票(※2) ができます。また、海外に住んでいる人のための在外投票という方法もあります。

  • 1.投票日にほかの予定があり投票所に来られない人が、投票日より前に指定の投票所で投票する方法
  • 2.旅行や入院などで、投票日または期日前投票の投票所に来られない人が、投票日より前に滞在先の選挙管理委員会や入院先の病院、郵便など、投票所以外の場所で投票する方法

若者の政治参加を促す社会の取り組み

●若者の投票率が低い理由

若者の投票率が低い背景には、政治に対する不信感や、「自分一人が投票しても何も変わらない」という無力感、政治と自分の生活に関係がないと感じていることなどがあります。

それを裏付けるように、日本財団が2024年に実施した18歳意識調査第63回テーマ「政治とカネ」(別タブで開く)、若者の政治に対する関心の低さや、政治家への不信感が明らかになりました。

問:あなたは、今の日本の政治について、どのような印象を持っていますか。 「クリーンである(不正や不透明なところがない)」

18歳意識調査の棒グラフ。「あなたは、今の日本の政治について、どのような印象を持っていますか」という質問に回答した人の項目別割合(%)。
「日本の政治は不正や不透明なところがなく、クリーンである」という記述に関して、「そう思う」と答えたのは全体(n=1,000)の4.4%。「どちらかというとそう思う」と答えた人は8.5%。「どちらかというとそう思わない」と答えた人は31.9%。「そう思わない」と答えた人は55.2%。
男性(n=513)で「そう思う」と答えた人は5.7%。「どちらかというとそう思う」と答えた人は10.3%。「どちらかというとそう思わない」と答えた人は28.8%。「そう思わない」と答えた人は55.2%。
女性(n=487)で「そう思う」と答えた人は3.1%。「どちらかというとそう思う」と答えた人は6.6%。「どちらかというとそう思わない」と答えた人は35.1%。「そう思わない」と答えた人は55.2
日本財団18歳意識調査「第54回 –国会と政治家–」より

問:あなたは、今の日本の国会議員に対してどのような印象を持っていますか。「特権や優遇を多く受けている」

8歳意識調査の棒グラフ。「あなたは、今の日本の国会議員に対してどのような印象を持っていますか」という質問に回答した人の項目別割合(%)。
「特権や優遇を多く受けている」という記述に関して、「そう思う」と答えた人は全体(n=1,000)の42.0%。「どちらかというとそう思う」と答えた人は29.4%。「どちらかというとそう思わない」と答えた人は16.8%。「そう思わない」と答えた人は11.8%。
男性(n=513)で「そう思う」と答えた人は44.2%。「どちらかというとそう思う」と答えた人は26.5%。「どちらかというとそう思わない」と答えた人は16.2%。「そう思わない」と答えた人は13.1%。
女性(n=487)で「そう思う」と答えた人は39.6%。「どちらかというとそう思う」と答えた人は32.4%。「どちらかというとそう思わない」と答えた人は17.5%。「そう思わない」と答えた人は10.5%
日本財団18歳意識調査「第54回 –国会と政治家–」より

関連記事:若者は政治と裏金のスキャンダルをどう見ているか? ~18歳意識調査アンケートより~(別タブで開く)

しかし、「どうせ何も変わらない」と選挙に行かなければ、あなたの意見が政治に反映されることはありません。学校で行われる「主権者教育(※)」を通して政治の仕組みを学び、自分自身がこの社会を支える国民の一人ということを意識して行動することが重要です。

  • 「主権者教育」とは、国民が政治に参加し、社会をよくしていくために必要な知識や考え方を身につける教育

選挙権を得る前に、僕や私たちにできること

ここからは、みなさんが政治を身近に感じられる社会の取り組みをご紹介します。

ここで紹介する「こども選挙」や、NPOが実施する模擬選挙に参加してみることで、選挙の仕組みを体験的に学べます。

また、学校の授業や生徒会活動の中で模擬選挙を企画し、実施してみるのもおすすめです。実際の候補者や政策について調べて意見を交わし、投票するというプロセスを通じて民主主義の基本を体験できます。

●子どもが実際の選挙に参加? 「こども選挙」

大人が参加する実際の選挙に合わせて、⼩学⽣〜17才の子どもが実際の候補者に投票する「こども選挙」という取り組みが全国各地に広がり始めています。

2022年10月の茅ヶ崎市長選挙に合わせて実施された「ちがさきこども選挙」では、子どもたちが真剣に候補者の政策を比較し、投票を行いました。こういった取り組みを通じて、子どもが選挙の仕組みを体験的に学び、政治を身近に感じることができます。

こども選挙 公式サイト(外部リンク)

こども選挙の会場の様子。画像提供:ちがさきこども選挙実行委員会
こども選挙にて、自分が選んだ候補者を投票する子ども。画像提供:ちがさきこども選挙実行委員会

●主権者教育に取り組む「Wonder Education」

一般社団法人Wonder Educationは、世の中をみんなでおもしろく学び合い、みんなで創る学びを通して、『生きる知恵と力』『学ぶ力』を育むシティズンシップ教育(※)や主権者教育を提供しています。

  • 「シティズンシップ教育」とは、社会の一員として必要な知識、技能、価値観を身につけ、社会参加できる力を育む教育

こども・若者が主催するよのなかづくりイベント「WE CITY」では、参加者が実際に社会課題について話し合い、解決策を考える体験ができます。このようなイベントは、若い世代が政治や社会問題を「自分ごと」として捉えるきっかけになります。

また、2025年7月に行われる参議院選挙に合わせて、中四国7地域(松山・今治・高知・高松・浜田・鳥取・矢掛)で模擬選挙イベント「こども選挙参院選2025」を開催予定。ぜひ、公式サイトをチェックしてみてください。

一般社団法人 WONDER EDUCATION 公式サイト(外部リンク)

こども・若者が主催するよのなかづくりイベント「WE CITY」の様子。画像提供:一般社団法人Wonder Education

●自分の意見が政策に反映される? こども家庭庁「こども若者★いけんぷらす」

こども家庭庁の「こども若者★いけんぷらす」では、国の政策について子どもや若者の意見を聞く取り組みが行われています。このような場に参加することで、自分の意見が政策に反映される体験ができます。

こども若者★いけんぷらす 特設サイト(外部リンク)

「こども若者★いけんぷらす」公式サイト

関連記事:「こども基本法」って知ってる? 「こどもまんなか社会」の実現を目指してぼくたち私たちに何ができるの?(別タブで開く)

選挙は、私たちの未来を決める大切な仕組みです。18歳になれば選挙権を得られるため、今のうちから選挙の基本的な知識を身につけておくとよいでしょう。

そして、皆さんにとって大切なのは、「自分には関係ない」と思わず、身の回りの課題に目を向けてみること。その小さな一歩が、よりよい未来へつながっていくと思います。

参考資料:

公益財団法人 明るい選挙推進協会「選挙について考えてみよう」(外部リンク/PDF)

Try IT「政治参加と国の政治」(外部リンク)

文部科学省「『主権者として求められる力』を子供たちに育むために」(外部リンク/PDF)

朝日新聞社 先生コネクト「主権者教育とは 目的・実践例・海外の事例・課題まで詳しく解説」(外部リンク)

NHK for School「政治に声を届けるには?」(外部リンク)

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