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【里親になりたいあなたへ】里親認定部会での審査、そして認定・登録へ(連載最終回/全8回)

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幅広い分野の有識者によって実施される里親認定部会の様子(イメージ)
この記事のPOINT!
  • 里親として認定・登録されるには、里親認定部会による審議が必要
  • 里親認定部会では、申請書類や家庭訪問の際の状況を踏まえ、有識者が里親の適否について審査をする
  • 里親として適格と認められれば里親として自治体の知事より認定、登録される

取材:日本財団ジャーナル編集部

さまざまな事情により、生みの親と暮らすことができない子どもたちを家庭に迎え入れて育てる「里親制度」。この連載では、里親登録するまでの準備や手続きの内容について、実際に里親になることを検討する「山田夫婦(仮名)の体験」をもとに、妻の視点を通してお届けする。

最終回となる今回のテーマは、「里親認定部会での審議」について。法律により、里親の認定に当たっては、児童福祉審議会の意見を聞く必要があると定められている。里親登録の申請書類(別ウィンドウで開く)家庭訪問(別ウィンドウで開く)の結果をもとに、児童福祉に関わる各分野の有識者が、専門的かつ公平で中立な立場から里親認定基準に照らし、里親として適格であるかどうか審議する。

「山田夫婦の体験記」登録ステップ6. 里親認定部会での審査、認定・登録

児童福祉の専門家や医者、弁護士などが多様な視点から里親としての適否を審査

児童相談所の職員さんなどによる家庭訪問から数週間経った週末。リビングで夫とお茶を飲みながら話をしていた。

私「里親登録の申請ってどこまで進んでいるのかな…」

夫「家庭訪問の後は、確か里親認定部会っていう審議会が開かれて、僕たちが里親として適しているか話し合われるんだっけ」

私「そうそう。東京都の場合は2カ月に1回程度(※)開催されるって聞いたけど、いつ頃になるのかしら」

  • 里親認定部会の年間実施回数は自治体により異なる

里親認定部会は、児童福祉審議会と呼ばれる有識者からなる委員会の中に設置されており、そのメンバーは、児童福祉の専門家や精神科医、弁護士など多岐にわたる。私たちが提出した申請書類や家庭訪問の結果を踏まえて審議が行われ、それをもとに知事が里親として認め、里親登録される。

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専門家による審議の様子(イメージ)

夫「東京都の資料『里親認定部会について』(別ウィンドウで開く)をみると、多くは里親として認定されているみたいだな」

私「みんな面談や研修、家庭訪問を受けて申請書を出すから、基準は満たしている人が多いんだろうね。でも里親になるには、いろんな角度から要件を満たしている必要があるから、どう評価されるのかやっぱり心配だわ」

夫「申請書類もバッチリ書いたし、家庭訪問でもちゃんと思いは伝えたし、心配ないさ」

夫と私は、里親として子どもを預かることを待ちわびている。どんな子と出会えるのかワクワクしている。春休みが終わり下宿先に戻った息子からも「何か進展はあった?」と度々メールが届いた。彼なりに気になっているみたいだ。

私「まぁ、考えてもしかたないか!」

早まる気持ちを抑えて私は夕食の支度に取り掛かり、いつもの生活に戻った。

里子を迎え入れるまでにできること

そして家庭訪問後2カ月半ほど経ってから「里親認定通知書」(※)を児童相談所の職員さんが届けてくれた。

  • 認定式を行い、関係者の紹介などをする児童相談所もある

職員「おめでとうございます。無事に里親として認定されましたので通知書の方をお届けに伺いました」

私「ありがとうございます!良かった~、私たち里親として認められたんですね」

夫「考えてみたら、里親になろうって決めてから半年くらいかかったね。長かったような、短かったような…」

それから職員さんは、子どもが委託されたときに必要となる手続きなどが載った冊子を私に手渡し、今後は子どもの紹介をする電話があることや、里親になった後に受講しなければならない研修もあることなどを説明して帰って行った。

私「そうだ!あの子にも報告しなきゃ」

私はすぐに息子に電話した。里親になりたいという私たちの思いに文句を言わず応じてくれた息子に一番に報告し、ありがとうの言葉を伝えたかった。

私「今日ね、やっと里親認定通知書が届いたの」

息子「ほんと!良かったじゃん。これで里親になったんだね」

私「そうね。ただ、この後子どもを紹介されても何度か面会をしたり、うちで外泊したりしながら交流を重ねる期間が必要になるのよ。その様子を見て正式に委託されるかどうかが決まるから、うちに来るのはまだまだ先ね」

息子「交流期間も必要になるのか。まぁお互いの相性も大事だもんね」

私「そうね。この期間も子どもとの関係を築く大事な期間だと考えると、楽しみが増えたわ。里親になること承諾してくれて本当にありがとうね。立派な里親になれるように頑張るわ」

息子「うん。僕も応援してるから、頑張ってね」

息子の言葉が私に勇気を与えてくれた。夫と2人で話をして、児童相談所から連絡を待つ間、里親関連のイベントや里親サロンに参加して、里子との暮らしについてもっと勉強しようということになった。調べてみると、いろんなイベントが開かれているようだ。

また、職員さんから話のあった研修にも参加した。他の里親さんと話をする機会を持つことができ、養育するための知識を得るだけじゃなく、里親同士のつながりもできた。今後さらに広げていき、苦労やよろこびを分かち合える仲間をつくりたい。そう考えると、なんだかワクワクしてきた。

無理をせずにゆっくり新しい家族の形を築いていく

時が動き始めた。児童相談所の職員さんから、今は施設にいるが実の親御さんの養育環境が整うまでの間、里親への委託を検討している子どもがいるという連絡を受け、夫と2人で考えて申し込んだのが2週間前のこと(※)。その職員さんから正式に子どもの説明に伺いたいという電話があった。会社から帰宅した夫にそのことを伝え、さっそく児童相談所に連絡をして日程調整をした。

  • 複数の児童相談所から子どもの里親の候補が挙がることもある。そのため、いったん里親候補に申し込むことになり、その後、児童相談所で地理的要件や家族構成などを踏まえ、子どもにとってどの里親家庭がふさわしいか検討することになる

その1週間後、児童相談所の職員さんが家に訪れると、夫と2人で子どもの写真を見せてもらい、育った環境や状況、家族の状況について詳しい説明を受けた。「この子に会ってみたい」という気持ちが自然に湧いてきた。主人も同じ気持ちだった。後日、そのことを職員さんに伝えると、その子がいま暮らしている施設で面会することになった。

そして、ついに対面の日を迎えた。子どもが暮らす施設で、日頃からその子を担当している職員さんや里親を担当している職員さんから状況を聞いてから、本人と対面。お互いどこかぎこちなく、その子はいつも一緒にいる職員さんから離れようとしなかったが、そんな様子も愛おしく思えた。帰り際に、職員さんから言われた。

職員「このまま交流を進めていくかどうか、ご夫婦でよく話し合ってから返答をください」

しかし、すでに私たちの気持ちは預かる方向で固まっていた。そう決めたことを息子にも伝えると、「僕も早く会いたい」と声を弾ませて言った。そして翌日、児童相談所に交流を続ける旨を伝えた。「ぜひ、子どもと交流を続けさせてください」と。

面会後正式に委託されるまでは、子どもの様子を見ながら、施設での交流、外出、里親宅での外泊というステップを、全体で3~4カ月かけて行うことが多いそう。児童相談所の職員さんからは、負担にならない程度に日にちを開けずに交流してほしいと言われた。里親候補の中には頑張りすぎて体調を崩してしまう人もいるらしい。

職員「中にはなかなか打ち解けてくれない子もいますが、あまり焦らないでください。子どもによっては、自分の感情をうまく表現できない子もいますから」

私「ありがとうございます。初めてなのでいろいろ分からないこともあるかと思いますが、よろしくお願いします」

ようやく里親としての一歩を踏み出せたような気がした。

里親になることにはじめは少し不安だったけど、今はたくさんの勉強や体験を通じて、子どもの専門家や里親経験者でつなぐ地域のネットワークがあるということも知った。きっと子どもを預かるようになったら、試行錯誤する日々が始まるのだろうけど、他に頼れる場所があるのは心強い。

この半年間の里親として登録するための時間を通じて、自分たちだけで子どもを育てるのではないことを知り、里親制度の意味を考え、里親としての自覚を養うことができたと思う。里親になることで、より多くの子どもたちを笑顔にしたい、血のつながりがなくてもいつでも帰ってこられる場所になってあげたいと思う。

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里親と里子(イメージ)
  • 里親には養子縁組を前提とする養子縁組里親もいますが、今回の記事においては、養子縁組をせず、一定期間子どもを預かる養育里親(東京都においては養育家庭(里親))について記載しています
  • 里親にまつわる制度は、自治体によって異なります。詳細はお住いの地域を管轄する児童相談所までお問い合わせください
東京都のロゴーク

この記事の取材・編集は東京都福祉保健局にご協力をいただいています。

連載【里親になりたいあなたへ】