日本財団ジャーナル

【増え続ける海洋ごみ】海ごみの7〜8割は街由来。その流出原因を探る調査から分かったモラルでは解決できない社会課題(特集第5回)

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日本コカ・コーラと日本財団による「陸域から河川への廃棄物流出メカニズムの共同調査」の記者会見の模様
この記事のPOINT!
  • 海洋ごみの7〜8割は街から川を伝って流れ出たもの。その流出する原因や仕組みは未解明な部分が多い
  • 日本コカ・コーラと日本財団は、これまでにない大規模な「街から川へごみが流出するメカニズム」を探る調査を実施
  • 調査で明らかになったのは、モラルだけでは解決できない海洋ごみ流出の原因。社会全体の意識・構造改革が必要

取材:日本財団ジャーナル編集部

「ごみを見れば、その社会が垣間見える」。特集第2回(別ウィンドウで開く)で取材した、荒川の河川敷でごみ拾い活動を行うNPO法人荒川クリーンエイド・フォーラムから、そんな言葉を聞いた。特集「増え続ける海洋ごみ」第5回は、海洋ごみ対策を目的とした調査結果から見えてきた、日本社会の話だ。

2019年4月から12月にかけて、日本コカ・コーラ株式会社(以下、日本コカ・コーラ)と日本財団は、河川流域における海洋ごみの発生メカニズムを解明するために「陸域から河川への廃棄物流出メカニズムの共同調査」(別ウィンドウで開く)を行った。その調査で明らかになった課題と必要な取り組みを、日本コカ・コーラの技術本部QSE環境サスティナビリティ事業部の柴本健太郎(しばもと・けんたろう)さんに話を聞いた。

ペットボトルの流出を限りなくゼロにするために

「飲料メーカーの一社として、海洋ごみの中にペットボトルがあることに、私たちも長い間、危惧しておりました」

そう話す柴本さんが所属する日本コカ・コーラでは、業界に先駆けて、1970年代から容器回収やリサイクル活動などを行ってきた。2018年からは「World Without Waste(廃棄物ゼロ社会)」(別ウィンドウで開く)の実現を目指し、「設計」「回収」「パートナー」の3本柱からなる「容器の2030年ビジョン」を策定。自社で販売したペットボトルの回収や、使用済みペットボトルの再利用に力を注いできた。

日本コカ・コーラが設定した「2030年ビジョン」(2020年3月更新)。2019年における「設計」の取り組みでは「ボトルtoボトル」の割合を約17%に(2018年の実績)。「回収」の取り組みでは容器を適切に回収。「パートナー」の取り組みでは「一(はじめ)緑茶一日一本」で完全循環型PETボトルリサイクルを実現。2020年における「設計」の取り組みでは「い・ろ・は・す 天然水」で100%リサイクルPET樹脂使用。「ボトルtoボトル」の割合を約21%に(2019年の実績)。「パートナー」の取り組みでは「日本財団海と日本プロジェクト」と共に取り組みを実施。2022年における「設計」の取り組みでは「ボトルtoボトル」の割合を約50%に。2025年における「設計」の取り組みでは、全ての製品のPETボトルにリサイクルPET樹脂または植物由来PET樹脂を使用。2030年における「設計」の取り組みでは植物由来PET樹脂を10%、「ボトルtoボトル」の割合を約90%に。合わせて100%にして新規化石燃料ゼロへ。すべてのPETボトルを、リサイクルPET樹脂または植物由来PET樹脂に切り替え。また「PET樹脂の使用量」を製品1本あたり35%削減(2004年比)。「回収」の取り組みでは国内で販売した自社製品と同等量のPETボトルを回収。「パートナー」の取り組みでは、さまざまなパートナーと連携し、より着実な容器回収・リサイクルスキームを構築・維持。※「ボトルtoボトル」とはPETボトルを回収し、PETボトルとして再生すること。
日本コカ・コーラ「2030年ビジョン」(2020年3月更新)。「設計」「回収」「パートナー」という3本柱の取り組みで廃棄物ゼロの社会を目指す

「私たちの取り組みは成果を上げているものの、廃棄物のない社会を推し進めるには、同じ目標を持つパートナーの協力が欠かせません。そう考えていた矢先に日本財団さんからお声が掛かり、2019年5月に共同調査プロジェクト(別ウィンドウで開く)を立ち上げることになりました」

海洋ごみの7〜8割は、街で発生したごみが河川を伝って海に流出したもの。一方で、日本コカ・コーラの推計ではペットボトルの回収率は98パーセントに上り、残り1〜2パーセントが河川に流出していることが分かってきた。

インフォグラフィック:日本におけるプラスチック動き(2016年)※国内プラ製品消費量1,052万トン(ロス量含む)。商品企画、製造・流通、消費、処分、再利用・廃棄の流れでプラスチック製品は動き、処分されるものは899万トン。再利用・廃棄されるもののうち、エネルギーとして再利用されるものは57%で516万トン。新たにプラスチック製品として再利用されるものが1%で8万トン。マテリアルリサイクルされるもの23%(206万トン)のうち、国内で利用されるものは6%、海外(アジア)で利用されるものは17%。工業原料として再利用されるものは4%で36万トン。埋立焼却されるものは16%で140万トン。プラスチックごみ(ペットボトル、ごみ袋、ストロー、釣り糸・釣り針、漁具、家電、タイヤ、日用品、津波のがれき)は、製造・流通、消費、処分の段階で海へと流れ出し、特に消費の段階ではその多くが流出。またマイクロプラスチックは海外(アジア)でマテリアルリサイクルされる際に多く海へ流出。海亀や魚といった海の生き物たちに多大な被害を与えている。海ごみは私たち一人ひとりが取り組むべき問題。©2018 The Ocean Policy Research Institute
海洋ごみの多くは街から流れ出たもの

「海洋ごみは、街から海に流れ出るごみの量が圧倒的に多い。ペットボトルの流出をゼロにするためには、ごみの発生の元を断たねばなりません。そのためには、河川の本流だけでなく支流や用水路にも目を向ける必要があると感じたのです」

「モラルの問題」だけではない。調査から見えてきた社会課題

海洋ごみ対策に取り組む日本財団と、ペットボトルのリサイクルを促進している日本コカ・コーラが共同で実施した、陸から河川に流れ込むごみのメカニズムの解明。総勢250名以上で行われたこの調査を通して、これまで見えなかった数多くの問題が明らかになった。

写真:調査に参加した多数のスタッフ
調査する様子

調査対象となったごみは、2.5センチメートル以上のプラスチック類(レジ袋、ペットボトル、容器包装等)の他、缶やビン、紙くずなど。調査エリアは、東京都・神奈川県、富山県、岡山県、福岡県の4エリアの中にある4つの河川。大きな特徴として、本流だけではなく、人々の生活に密着している支流や用水路も含め、上流から下流まで流域全体をくまなく調べ上げたことだ。

これまでも河川の調査は、国や自治体によって実施されてきたが、いずれもごみの量を把握するためのもので、「どこに」「どんな」「どれぐらい」のごみがあるかを調べるのが主な目的だった。しかし、ごみの発生の元を断つには、「どこから」「なぜ」ごみが発生しているのか、細かな視点で把握する必要があるため、これまでに類をみない大規模な調査となった。東京都と神奈川県を流れる境川の水域では122.5キロメートルにもわたって調査が行われた。

また、調査手段には最新技術も導入。河川付近のごみ集積所や水路、繁華街の側溝・路側帯などごみがたまりやすい場所をドローンやデジタルカメラで撮影し、その画像や専用スマートフォンアプリで収集した位置情報を、AIなどを活用して分析した。

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調査で活躍したドローン

「これまでは、心無い人たちにより街でぽい捨てされたごみが、海に流れ込むといった認識がありましたが、今回の調査で、それだけが原因とは言い切れない複雑な背景が分かりました」と、柴本さん。

調査の結果、ごみの発生原因は「投棄・ぽい捨て系」「漏洩(ろうえい)系」に大別された。

図表:河川流域におけるごみの分類「投棄・ぽい捨て系」

河川流域におけるごみの分類「投棄・ぽい捨て系のごみ」。「ごみの発生場所」1.家庭。「ごみのホットスポットが確認された主な場所」は住宅地付近の川・水路内。「推察される要因」は生活困窮者。「考えうる対応施策(例)」は有料ごみ袋減免制度の拡充。もう1つの「推察される要因」はごみ収集時間と生活時間が合わない者。「考えうる対応施策(例)」は有料引き取りサービスの実施。「ごみの発生場所」2.車内。「ごみのホットスポットが確認された主な場所」は川・水路沿いの路肩、車の滞留場所。「推察される要因」はトラック(長距離・長時間待機)。「考えうる対応施策(例)」は納品先でのごみの引き取り。もう1つの「推察される要因」は営業車(休憩時)。「考えうる対応施策(例)」は事業所へのごみの持ち帰り。もう1つの「推察される要因」は自家用車。「考えうる対応施策(例)」は自宅へのごみの持ち帰り。「ごみの発生場所」3.屋外。「ごみのホットスポットが確認された主な場所」(1)川・水路沿いの通勤・通学経路。「推察される要因」は通勤・通学・散歩等で左記の通路を利用する者。「考えうる対応施策(例)」は通勤・通学経路上へのごみ箱設置。「ごみのホットスポットが確認された主な場所」(2)川・水路に近い商業区域・交通拠点。「推察される要因」は通勤・通学・買物等で左記の通路を利用する者。「考えうる対応施策(例)」は街中でのごみ箱の設置。「ごみのホットスポットが確認された主な場所」(3)親水施設。「推察される要因」は周辺住民等。「考えうる対応施策(例)」は自宅へのごみの持ち帰り。もう1つの「推察される要因」は周辺事業所の従業員。「考えうる対応施策(例)」事業所でのごみの引き取り。
場所や原因だけでなく、対応策まで落とし込んだ調査資料

図表:河川流域におけるごみの分類「漏洩系」

「河川流域におけるごみの分類「漏洩系」(管理体制の不備等で排出者・利用者が意図していない段階で漏れてしまうもの)。「漏洩場所」1.川・水路沿いのごみ。「主な漏洩物」は集積所のごみ・くず。「考えうる対応施策(例)」は回収方法の工夫(集団回収→戸別回収、夜間・昼間回収)、集積所付近の定期的な清掃。「漏洩場所」2.川・水路沿いの事業所。「主な漏洩物」は集積所のごみ・くず。「考えうる対応施策(例)」は事業所による適切な管理。「漏洩場所」3.川・水路に近い自動販売機横の空容器回収ボックス。「主な漏洩物」は飲料空容器、それ以外の投棄ごみ・くず。「考えうる対応施策(例)」は飲料事業者による適切な管理(定期的な確認・回収)、飲料空容器以外の投機ごみ対策の推進(実態把握調査、空容器回収ボックス付近へのごみ箱設置等)。「漏洩場所」4.被災した堤防の復旧箇所。「主な漏洩物」は劣化した土のう袋。「考えうる対応施策(例)」は災害応急資材の適切な利用(使用箇所や設置時期の記録、現場管理)、代替素材の開発と利用の促進。「漏洩場所」5.川・水路沿いの農地。「主な漏洩物」は農業資材(肥料カプセル、肥料袋、マルチング用シート、ビニールハウス。「考えうる対応施策(例)」は代替素材の開発と利用の促進、適切な農地及び農業用水路の管理(例:水門付近の清掃)。
調査結果から、複雑な社会背景が見えてくる

ぽい捨てと聞けばお菓子袋やペットボトルなどを想像しやすいが、袋詰めのごみが集中した場所もあった。これはどういうことか。

「例えば、住宅付近の川や水路では、生活が苦しくて有料指定ごみ袋を買えずに川に捨ててしまったり、あるいは自治体が決めたごみの回収時間と生活サイクルが合わずに収集場所に放置し、それをカラスが突いて散乱させてしまったりするなどの原因が推測されました。また、川や水路沿いの路肩といった車の滞留場所では、仕事先との兼ね合いで捨てる場所の確保が難しくなった車内のごみを捨てるなど、これまでモラルの問題と一括りにされてきたぽい捨てが、社会的な問題や産業構造などが原因で、そうせざるを得ない状況が発生していることが分かりました」

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住宅付近の川・水路内で確認された投棄・ぽい捨て系の袋詰めごみ
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川・水路沿いの路肩、車の滞留場所で確認された投棄・ぽい捨て系のごみ

一方で、漏洩系では集積所からごみがこぼれ落ちたり、災害時の応急処置で使用された土嚢(どのう)や農業資材が経年劣化によって流出していたりしたことが確認された。

「売れ行きに応じて回収される自動販売機横の回収ボックスも、街にごみ箱がないため、通りすがりの人が一般のごみを捨ててしまうケースが多いんです」

柴本さんによると、場所によって約4割はペットボトルや空き缶ではない一般のごみが捨てられているという。

川・水路沿いのごみの集積所で確認された漏洩系のごみ
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川・水路沿いにある自動販売機横の空容器回収ボックスから溢れた漏洩系のごみ

「それなら、街にもっとごみ箱を設置すればいいという意見もありますが、その場合は回収するための車や人件費などが必要になってきます」

ごみ問題は、単に人が行動を改めれば解決するといった単純なものではなく、自治体や企業、NPOなど流域のステークホルダー(利害関係者)が連携し、実態を把握した上で、適切に問題解決に当たらなければいけないことが分かった。

豊かな海を守るために必要なのは、新たな社会の仕組み

今回の調査結果を受けて、日本財団および日本コカ・コーラでは、今後以下のように海洋ごみ対策に取り組んでいく。

[日本財団の取り組み]

  • 使用済みペットボトルの収集・運搬や事業用自動車内で発生したごみの引き取りなど、現在の廃棄物処理法では、自治体との調整に時間を要したり、企業が表立って環境戦略を打ち出しにくい状況にある。現行制度に対する問題提起と提言に取り組む。
  • 県や市といった行政単位の枠組みを越えた海洋ごみの流出抑制施策を展開。自分たちが排出するごみが多数を占める閉鎖性海域(※)を有するエリアを想定し、川の上下流に位置する自治体の、海洋ごみ対策における連携を促進する。
  • 地域の実態を把握し、今回の調査で用いた「ごみの発生源把握」を重視した調査・分析手法を当該エリアで集中的に実施。関係ステークホルダーを明らかにし、自治体と連携した施策づくりに取り組む。
  • 循環型社会の実現を目指し、メーカーや小売等バリューチェーン(価値の連鎖)を構成する一連の企業と連携した製品・販売手法の開発を促進する。
  • 「海と日本プロジェクト」(別ウィンドウで開く)を通じて、海洋ごみが発生するプロセスを周知・啓発し、国民一人ひとりの“これ以上、海にごみを出さない”という、意識向上に取り組む。
  • 水の入れ替わりの少ない海、内湾、湖沼などの水域

[日本コカ・コーラの取り組み]

飲料空容器の「漏洩」が発生していることが確認された自動販売機横の空容器回収ボックスからの漏洩対策に最優先で取り組む。

「日本コカ・コーラとしては、独自開発した調査アプリを活用し、頻繁に漏洩の発生している空容器回収ボックスを特定の上、河川に近い回収ボックスより優先的に、増設や回収頻度の向上といった対策に取り組んでいきます」

すでに北陸エリアにおいて、北陸コカ·コーラボトリング株式会社の協力のもと、富山県内の一部区域における調査を開始したと話す柴本さん。

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日本コカ・コーラが開発した調査アプリ(左)で、空容器回収ボックスを調査している様子

製品化されてから100年以上の歴史を持つプラスチック(※)。一世紀を経て、安価で耐久性に優れたプラチックは私たちの日常生活に不可欠なものとなった。またペットポトルは適切に回収さえできれば、とても有用性の高いリサイクル可能な資源となる。

  • 19世紀初めに米国の化学者ベークランドが、植物以外の原料で人工合成したフェノール樹脂を「ベークライト」として製品化し、本格的に広まった

「日本コカ・コーラでは、私たちの子どもたちが美しい地球で生活していくためにも、サスティナブルな仕組みづくりに取り組んでいけたらと考えています」

「ものを作ればそれで終わり」ではなく、自分たちが生み出したものが最後にどこに行き着くかまで責任を持って見届ける。そのような社会全体の意識改革が、美しい海、そして地球環境を守り続けていくために重要と言えるのではないだろうか。

日本コカ・コーラと サスティナビリティレポート2020(別ウィンドウで開く)

特集【増え続ける海洋ごみ】