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「夢を持つ、努力する、継続する、自分を認めることの大切さ」-トップアスリートが中高生に伝えた人生の教訓、生きた言葉

写真:上段から時計回りで、中井美穂さんの司会進行のもと対談する中田英寿さん、村田諒太さん、宮脇花綸さん。中高生に語りかける井上康生さん。中高生の悩みに答える五郎丸歩さん。
アスリートたちが若者に向けて、自分との向き合い方や未来の切り開き方を伝えるオンラインスクール「HEROs LAB」
この記事のPOINT!
  • 新型コロナウイルス感染症の拡大が続く中、トップアスリートによる中高生に向けたオンラインスクールを実施
  • 五郎丸歩さんや井上康生さんらトップアスリートが、中高生の悩みや不安に対し、実体験に基づいてアドバイスを送った
  • 困難な状況を自らの力で乗り越えてきたアスリートたちは、若者に勇気を与え、社会を変える力を秘めている

執筆:日本財団ジャーナル編集部

観る者に勇気や感動を与えてくれるスポーツ。しかし、その華やかな舞台の裏には、アスリートたちの日々の努力や、数多くの挫折や失敗を乗り越えてきた積み重ねがある。

日本財団では、そんな自らの力で道を切り開いてきたアスリートたちの社会貢献活動を推進することで多くの人の関心や行動を生み出し、社会課題解決の輪を広げていく「HEROs Sportsmanship for the future(以下、HEROs)」(外部リンク)プロジェクトを展開してきた。

その一環として2020年8月より、アスリートたちが未来を担う若者たちに向けて、スポーツで培った価値観や考え方を伝えるオンラインスクール「HEROs LAB」(外部リンク)を実施。ラグビー元日本代表の五郎丸歩(ごろうまる・あゆむ)さんや、オリンピック金メダリストで柔道男子日本代表の監督を務める井上康生(いのうえ・こうせい)さんなど数多くのトップアスリートが、新型コロナウイルスの感染が拡大する中で将来への不安を募らせる中高生たちの悩みに答え、自らの失敗談や成功体験などを交えながらエールを送った。

その模様は、現在日本財団YouTubeチャンネル内にある、HEROs LABのアーカイブ動画で視聴することができる。

HEROs LABのアーカイブ動画(外部リンク)

今回はその中から反響の大きかったオンラインスクールをピックアップし、ダイジェストで紹介したい。

五郎丸さんから学ぶ、夢に近づくために必要なこと

はじめに紹介するのは、ラグビー元日本代表としてワールドカップなど世界を舞台に活躍した五郎丸歩さんによるオンラインスクールだ。

動画:ラグビー元日本代表・五郎丸 歩の「チャレンジお悩み相談室」(外部リンク)

「チャレンジしたいけど、なかなか一歩を踏み出せない」「過去に引きずられてネガティブになってしまう」。そんな中高生たちが抱える悩みや不安に対し、五郎丸さんが自身のライフストーリーを振り返りながらアドバイスやエールを送った。

写真:フィールドに立つ五郎丸歩さん
ラグビー日本代表としてワールドカップなどで活躍し、2021年限りで現役引退した五郎丸歩さん

冒頭で、3歳からラグビーをはじめ、中学の時に一度やめようと思いながらも、一つ上の兄を超えたい一心で競技を続け、今の自分がどのように存在しているのかを赤裸々に語った五郎丸さん。

自身の中で無謀と思っていた海外での挑戦を後押ししてくれた先輩からの「人生で迷ったときは苦しい方を選んだほうがいい」というアドバイスなど、自分の人生に大きな影響を与えた言葉などに触れながら、苦しい経験から学べることの多さを教えてくれた。

「つまずいた時に目標をどう立て直していますか?」という参加者からの質問に対して、五郎丸さんは「周囲の評価に流されるのではなく、自分にフォーカスを当てて目標を変えていくことが大切。目標を変えることは決して恥ずかしいことじゃないです」と回答。

一方で、「目標を見失いそうな時、どのように軌道修正していますか?」という質問に対しては、「単純に言えば仲間。チームには何人ものチームメイトがいて、試合に出られない人もいる。だから責任を感じるし、仲間のためにもやりきらなくちゃいけない。そういうふうに仲間に助けられてきたというのもあります」と答えた。

個人だけでなく、チームで成長し続け、目標を成し遂げるために闘ってきた五郎丸さんならではの言葉と言える。

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中高生たちからの質問に、ゆっくりと丁寧に答える五郎丸さん

そして、終盤では五郎丸さんから参加者に向けてミッションが与えられた。

「毎日コツコツやる習慣をつけない限り、夢は近づいてきません。その成功体験をつくるために、これから2週間、自分ができる目標を立てて取り組んでほしいし、それを自分で評価してほしいと思います」

五郎丸さんとの交流を終えて、中高生たちからは、「他人ではなく自分の評価を大切にしようと思いました」「準備して失敗することは悪いことではなく、自分の成長につながることが分かりました」「ずっと失敗してはいけないと思っていたけど、今を生きて、自分にフォーカスすることの大切さに気付いた」などの感想が寄せられた。

井上康生さんが説く、目標を達成する上での「回り道の価値」

続いて紹介するのは、オリンピック金メダリストであり、現在は柔道男子日本代表監督を務める井上康生さんによる「今こそ新しい挑戦をしてみよう!」をテーマに行われたオンラインスクールだ。

動画:柔道金メダリストが監督になって気づいた「回り道の価値」(外部リンク)

5歳から柔道をはじめ、小学校の中学年くらいから「オリンピックで金メダルを取りたい」「誰よりも強い柔道家になりたい」という大きな夢を抱くようになったという井上さん。

「人生、つらいこと苦しいことがたくさんあります。そんな時に、自分自身がどう生きていきたいのかという目標があるかないかで、乗り越え方が変わってくる。目標があるから自分を高められると思うんです」

写真:柔道場で子どもたちに指導をする柔道着を着た井上康生さん
現在は、柔道を通じた社会貢献活動を行う特定非営利活動法人JUDOs(ジュウドウズ)(外部リンク)の理事長も務める井上康生さん

子どもの頃の夢を信じて努力し続けてきたからこそ、金メダリストになれたという井上さんは、大学時代に大きなスランプに見舞われたことも。

「全然勝てない時期がありました。その矢先に母が亡くなり、そのショックとけがの影響も重なって大スランプに陥りました。世界選手権を2カ月後に控えていたんですが……」

その時、井上さんを救ったのが生前に母親が書き残した手紙。そこには「初心に戻って頑張りなさい」という言葉が綴られ、それをきっかけに自分の原点を思い出し、世界選手権で優勝することができたという。

「だから、皆さんに覚えていてほしいのは、苦しい時やつらい時には、自分の原点を振り返ってみるということ」。加えて、いろんなプレッシャーに押しつぶされない秘訣として「楽しむことを忘れないでほしい」と、参加者たちに語った。

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苦しいときに原点を振り返ることの大切さについて語る井上さん

そして、井上さんが何よりも伝えたかったのは、時には「回り道」することの大切さ。

「何事もすんなり物事を達成できればいいですが、心も体も行き詰まってしまう部分が出てくる。だからゆとりを持って進むことも大切。時には回り道をしていろんなことに触れれば、自分の幅を広げてくれると思うんです」

参加した中高生たちからは、「当たり前のことを、努力を重ねて夢を叶えた人の言葉から聞けたこと。自分の宣言を聞いてもらえたこと。伝えてもらった言葉を胸に今この瞬間からワクワクする未来に進んでいく」、「留学することを友達に打ち明けることが怖いという自分を受け入れつつ、かつそんな自分も誇りに思って、プレッシャーを超えてみる!」と決意に満ちた感想が届いた

中田英寿さん、村田諒太さん、宮脇花綸さんが語る「いま中高生がやるべきこと」

最後に紹介するのは、「今、中高生がやるべきことは何か」というテーマで、サッカー元日本代表で現在は実業家、社会活動家として活躍する中田英寿(なかた・ひでとし)さん、ボクシングWBA世界ミドル級王者の村田諒太(むらた・りょうた)さん、女子フルーレ日本代表の宮脇花綸(みやわき・かりん)さんの3人によって繰り広げられた、対談形式のオンラインスクールだ。

司会進行をフリーアナウンサーの中井美穂(なかい・みほ)さんが務めた。

動画:中田英寿×村田諒太×宮脇花綸「異色のトップアスリート達に聞く『いま中高生がやるべきこと』」(外部リンク)

今の中高生には、やるべきことや、やりたいことに自信を持つことができない人が多いという話題に対し、「やらない理由ではなく、やる理由をつくることが大事。それと、不安とか疲れたとか、寂しいといった感情は暇な時にしかこない。だから僕は、いつでもやりたいことをたくさん持って予定を詰め込むようにしています。漫画本を読むでも何でもいいので」と語る中田さん。

写真:テーブルを囲んで対談する中田英寿さん、村田諒太さん、宮脇花綸さん、司会進行を務める中井美穂さん
中田英寿さん(写真左端)、村田諒太さん(写真右端)、宮脇花綸(写真:正面奥)さんによる豪華対談が実現

やるべきことを見つける上で、自分と向き合うことが必要だ。その際に、宮脇さんは「自己評価は高くても低くてもいいけど、自己肯定感はしっかり持っておいた方がいい。この2つは別ものだと思います。自分の得意不得意をしっかり把握しておきながら、その上でできる自分もできない自分も、今の自分として肯定することが大事なのではないでしょうか」と、今の自分を認めることの重要性について話す。

それに対し、村田さんは「(悩む人は)起きた問題を周囲のせいにしがちです。自分は変えられますが、周りはほぼ変わりません。だから、(問題が起きた時に)自分の責任として捉えられるようになって、初めて何かを変えられるのだと思います」と、物事を自己責任として捉えることの大切さについて触れた。

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「今、中高生がやるべきこと」について語る中田さん(写真右)と村田さん
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自分を認めること、責任感を持つことの大切さを語る宮脇さん(写真右)、村田さん(写真左)。進行を務める中井さん(真ん中)

そのほか、さまざまな切り口で「いま中高生がやるべきこと」についてトークを展開した、中田さん、村田さん、宮脇さん。彼らの対談に参加した中高生たちからは、「熱中していれば悩まない、悩むのは暇だから、という言葉が印象に残った。悩むくらいなら、どんどん目の前のことに取り組んでいこう、という勇気をもらえた」、「最後の中田さんの言葉「人生に答えはない」が一番響きました。自分の人生は誰かに干渉されるものではないし、干渉されて諦めないといけないわけでもない、自由なものであることを分かっているのに結局自分の思い通りにいかないことが今まで何回かありました。自分のやりたいことを全力でやってみようと思います」という前向きな感想が多数寄せられた。

アスリートの力や可能性を改めて感じたHEROs LAB

「HEROs LAB」で刺激を受けたのは中高生たちだけではない。登壇したアスリートたちからも事務局にメッセージが寄せられ、改めて自分たちが若者や社会に対しできること、この取り組みに対する可能性を見出したようだ。

「『HEROs LAB』は、普段行うような対面での一方的な講演会などとは違い、参加者の意見を聞きながら対応できるので、より参加者に寄り添った内容にできたと思いました。改めて自分の経験から学んだことを整理することができ、もっと多くの人に積極的に伝えていきたいと感じました。スポーツの価値を高めて、より多くの人の身近な存在になり、興味を持ってほしいです」

「今まで自分自身が経験してきたこと、苦しみながら乗り越えてきたこと。テレビなどでは結果ばかりが取り上げられますが、その中には一人ひとりにたくさんのストーリーがあります。輝いているところだけではなく、そこに行くまでの悩んでもがいている姿や、それを乗り越えようと頑張っている姿を、こういった形で伝えられる場は素敵だなと感じました」

「今後は大きなイベントに昇華させて、中高生たちのチャレンジをアスリートが共に実現するなど HEROsの活動を若者たちと共に広げていけたら良いですね」

アスリートたちの実体験に基づいて語られた「夢を持つ、努力する、継続する」そして「自分を認める」ことの大切さは、中高生たちにたくさんの勇気や元気を届けたに違いない。アスリートの力は、社会を変える大きな可能性を秘めているのだ。

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HEROs LABのアーカイブ動画一覧(外部リンク)

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