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東京2020大会を支えるボランティアの思い。村田諒太選手らトップアスリートがエールを送る

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東京2020大会のボランティアを応援するオンラインイベントに出演したプロボクサーの村田諒太さん(左)、元パラ射撃選手の田口亜希さん(右)、ノルディックスキー複合元日本代表選手の荻原次晴さん(後)
この記事のPOINT!
  • 一部無観客開催が決まった東京2020大会では、さまざまな事情により参加できなくなったボランティアも少なくない
  • 大会直前に、これまでの感謝の気持ちも込めて、アスリートがボランティアにエールを送るオンラインイベントが開催された
  • アスリート同様、大会を支えるために努力し続けてきたボランティアにも拍手を

取材:日本財団ジャーナル編集部

2021年7月23日に開幕した東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)。新型コロナウイルスの影響を受け、1年延期での開催となった東京2020大会では、多くのボランティアが準備を進めてきたが、開会直前に1都3県で無観客開催が決まり、一部の活動が中止になった他、さまざまな事情からやむを得ず参加を辞退した人も少なくない。

こうした状況を踏まえて、これまで東京2020大会を支えてきたボランティアの皆さんへ感謝の意を込めて、開会直前となる7月21日、アスリートの社会貢献を推進する日本財団HEROs(外部リンク)日本財団ボランティアサポートセンター(外部リンク)の共催によるボランティアと、オリンピアン・パラリンピアンのオンライン交流イベント「Go Together! Tokyo Volunteer 2020」が開催された。

ノルディックスキー複合元日本代表選手の荻原次晴(おぎわら・つぎはる)さんが司会を務め、ゲストにはロンドンオリンピック・ボクシングミドル級金メダリストでプロボクサーの村田諒太(むらた・りょうた)さん、アテネ、北京、ロンドンと3大会連続でパラリンピック射撃日本代表として出場した田口亜希(たぐち・あき)さんらトップアスリートが登場し、ボランティアの皆さんに向けてエールを送った。

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日本財団ボランティアサポートセンター内に設けられた特設スタジオから生配信する(写真右から)司会の荻原次晴さん、ゲストの田口亜希さん、村田諒太さん

ボランティアとして関われることがうれしい

イベント前半では、村田さんと田口さんがHEROsで取り組んでいる社会貢献活動や、過去にオリンピック・パラリンピックに出場した際のエピソードが語られた。

日本財団HEROsは、「誰かのため、社会のため、未来のため」をキャッチフレーズにアスリートが社会の助けとなる活動に積極的に取り組んでいこうというプロジェクト。そのアンバサダーでもある村田さんは、司会の荻原さんから活動内容について尋ねられ、少年院に訪れ講演を行った時(外部リンク)のことを振り返る。

「僕みたいな“強い”イメージのある人間が話をするのって、彼らにとってとても刺激的なことなんですね。素直でとても伝わりやすい。逆にうわべだけの話をすると、すぐに見透かされてしまいます。だから、顔と顔を付き合わせてしっかり話をするように心掛けています」

少年院で話をすることは村田さん自身にとっても良い刺激になると話す。

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HEROsの活動の一環で少年院を訪問し、講演後に院生と交流する村田さん

話題はオリンピックに変わり、荻原さんに集中力を高めるためのトレーニング法を問われたゲストの2人は、「試合が近くなると、毎朝起きたら10分間座禅を組んで、『無』になる時間をつくります」と村田さんが回答すると、「私は練習の時から試合モードで臨みます。途中で集中力が切れたり、緊張したりする時は、8回呼吸。それでもだめだったら、銃をなでてみます(笑)」と田口さん。また、「パラリンピックを通して人間の可能性を観ていただきたいですし、観てくださった方が何かチャレンジするきっかけになれば」とも語った。

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軽快なトークで進行を務める司会の荻原さん
写真:大会本番に向けて射撃の練習をする田口さん
パラリンピック射撃日本代表として、アテネ、北京、ロンドンと3大会連続出場を果たした田口さん

後半では、東京2020大会ボランティアの皆さんとのトークセッションが行われた。

ひと言でボランティアといっても仕事の内容は多岐にわたる。輸送チームに所属するドライビングサポーター・山口(やまぐち)さんの役割は、オリンピック委員会関係者の送迎だ。

「私はいつも、『ようこそ日本に来てくださいました』という気持ちを込めてハンドルを握っています。降りられる際に、ポチ袋に折り鶴を入れてお渡しすると、皆さん喜んで受け取ってくださるんですよ。私はパラリンピックでも別の役割があるので、2回もボランティアとして活動することができてラッキーです!」と笑顔を見せる。

写真:オンラインで交流イベントに参加したボランティアの皆さん
東京2020大会にボランティアとして参加する9名の方が登場

オリンピックにボランティアとして参加するのは今回で4回目という西川(にしかわ)さんは、試合直後の選手へのインタビュー時に通訳として活動している。

「実はロンドンオリンピックの時に、村田選手のインタビューも担当しました。私の仕事は試合を終えたばかりの選手の第一声を世界に伝える役割なので、とても恵まれたポジションでした」

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ボランティアの「関われてうれしい」という言葉に感激する村田さん。右側に写るのは、村田さんが保持するロンドンオリンピックの金メダルと、プロボクシングWBA世界ミドル級王者のチャンピオンベルト

一方、高山(たかやま)さんは、東京・武蔵野エリアのシティキャスト(※)として参加する予定だったが、東京都の3回目の緊急事態宣言発令を受けて活動がキャンセルになった。

  • 都市ボランティア。国内外からの旅行者に対し観光・交通案内を務める

「東日本大震災の時に初めてボランティアに参加したのですが、世界中の若い方たちと一緒に活動しながら、ボランティアは人のためにするのではなく、自分のためにするものなのだと感じました。ごみ拾いや片付けでもいいから参加できたらと思っています」

選手たちの練習会場でボランティア活動を行う予定のMiaさんは、村田さん、田口さんに向けて質問を投げかけた。

「今回は無観客での開催ですが、私はボランティアとして選手に接する機会があります。皆さんに応援する気持ちを伝えるにはどうしたらいいでしょうか?」

それに対して村田さんは、「直接言葉をかけられない状況かもしれませんが、言葉がなくても絶対に伝わるものはあると思います。『祈りの効果』という言葉がありますが、声には出さなくても心の中でも祈る、応援する。それだけでも選手にとっては全然違いますよ!」と回答。

田口さんは「どんな結果であれ、笑顔で出迎えてくれるだけで嬉しいものです。勝っても負けても、その笑顔から、皆さんの応援する気持ちが受け取れると思います」と、Miaさんに励ましの言葉を送った。

写真:テレビ画面を通して、オンラインで参加したボランティアと交流する村田さんと田口さん
ボランティアの皆さんからの質問に答える村田諒太さん(手前)、田口さん

アスリートはボランティアから勇気や元気をもらっている

さらにボランティアの皆さんには、サプライズゲストとして8月24日に開幕を控える東京パラリンピックのテコンドー日本代表選手・太田渉子(おおた・しょうこ)さんからビデオメッセージが送られた。

太田さんは、かつてノルディックスキー選手として冬季パラリンピックに3度出場。その際に出会ったボランティアの笑顔が忘れられないと言う。

「選手はボランティアの皆さんの笑顔に触れるとリラックスすることができて、いつものプレーができるようになります。なので、ぜひ明るい笑顔で挨拶をしていただけると、とてもうれしいです。いまはマスクをしているので表情は分かりにくいですが、親指を立てて『グッドラック!』とか、ジェスチャーも交えながら応援の気持ちを伝えてもらえると、選手の皆さんにも届きやすいと思います」とアドバイスを送った。

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ビデオメッセージでボランティアの皆さんにエールを送る、東京パラリンピック・テコンドー代表の太田渉子さん

また、オンラインで登場した東京パラリンピック・アーチェリー日本代表選手の上山友裕(うえやま・ともひろ)さんは「応援してくださっている皆さんに『上山を応援してきて良かった!』と言っていただけるような大会にしたいと思います」と熱い思いを語った。

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東京パラリンピック・アーチェリー日本代表の上山友裕さん

オンラインイベントの最後に、村田さん、田口さんの2人からボランティアの皆さんへ応援の言葉が送られた。

「こんな状況で(オリンピック・パラリンピックを)開催するのは初めてのことです。いろいろな意見がありますが、ボランティアの方々には本当に頭が下がる思いです。この大会が素晴らしいものになるよう、力を貸していただくことをお願いしたいです」と村田さん。

田口さんはパラリンピアンとしての視点で「障害のある選手に出会ったら、ぜひ『何か手伝いましょうか?』と声をかけていただきたいです。そのときに『結構です』と言われたら『自分はできるから大丈夫』ということ。パラアスリートだけでなく、街中で見かける障害者の方に対しても『何かできることありますか?』と声をかけてもらえたら、とてもうれしいですね。ボランティアの皆さんには堂々と活動してほしいですし、誇りに思ってほしいと思います。本当に感謝の気持ちでいっぱいです」とあふれんばかりの笑顔で思いを伝えた。

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ボランティアの笑顔に励まされてきたと話す田口さん

東京2020大会を支えるボランティアに声援を

オンラインイベント終了後、ボランティアの皆さんに行ったインタビューで、輸送チームに参加する予定のにしやんさんは「選手の皆さんへの声のかけ方など、アスリートとしての視点でコメントをいただいたので、ぜひ実践したいと思います。(同じ輸送チームの)山口さんが折り鶴を用意されているということも勉強になりました。僕もぜひやってみようと思います!」と意気込みを語った。

また、ベテランボランティアの西川さんが「今回はこれまでとは違う大会になると思いますが、私たちがその一員であったことに誇りを持てる日が必ず来ると思います。ポジティブに、いま私たちができることを一緒に頑張りましょう!」と拳を上げると、参加した全員が大きくうなずきながらガッツポーズを見せてくれた。

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オンラインイベントの最後には、全員で記念撮影も

ゲストとして参加した村田さん、田口さんにもボランティアの皆さんと触れ合った感想を伺った。

田口さん:今日改めてボランティアの皆さんとお話ししてみて、喜びを感じながら活動をしてくださっているのを強く感じました。私も初めて出場したアテネ大会で、ボランティアの方の『あなたはここにいるだけで素晴らしいことなんだよ。心から楽しんで!』という言葉に励まされたことを覚えています。皆さんの献身的な姿勢を見ていると、人間ってなんて素晴らしいんだろうと感じました。

村田さん:ボランティアの皆さんの「2度も活動できてうれしい」とか「自分はラッキーだ」という声を聞いて、不思議な気持ちになりました。すごく意外でしたし、人の心ってこんなに美しいんだなと感じました。見返りを求めず、人のために活動することは幸せなことなんだと、皆さんから教わった気がします。

競技会場や練習会場をはじめ、さまざまな場所で活動するボランティアは、東京2020大会を運営する上でなくてはならない存在。選手はもちろん、「オリンピック・パラリンピックを成功させたい」と日々努力を続けてきたボランティアの皆さんにも、心から拍手を送りたい。

撮影:十河英三郎

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