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【増え続ける海洋ごみ】きれいな海で泳ぎたいから――。海ごみアーティストあやおさんの地球に優しい生き方

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海洋生物をモチーフにした海ごみアートを手がけ、SNSを中心に注目を集めるあやおさん
この記事のPOINT!
  • 世界の海には年間800万トンのプラスチックごみが流出。そのうち2〜6万トンは日本由来
  • あやおさんは海ごみで作った海洋生物のアートを通じて、地元の海の実情を伝えている
  • 関心を引くには“面白さ”が大事。環境問題を自分事にしてもらうためにアートを作る

取材:日本財団ジャーナル編集部

年間800万トン。これは世界中の海に流出しているプラスチックごみの重量だ。そのうち2~6万トンは、日本から流出されているものと推計される。その多さは、世界全体で30位。先進国に限っていえば、20位のアメリカに次ぐ2位に日本は位置している(※)。

確かに、今の日本の海はきれいとは言い難い。海岸を歩けば、大小さまざまなごみが目につくだろう。

そんな海洋ごみ問題を少しでも解決したいと、アートの側面から奮闘している人がいる。“海ごみアーティスト”のあやおさんだ。

海の汚さに絶望した日

あやおさんは短大を卒業後、長野県で念願だった自然を相手にした仕事に就いた。都市部の子どもたちが自然豊かな農山村地域の共同宿泊施設で暮らし、地元の学校に通いながら自然体験や生活体験をする「山村留学」というプログラムの職員をしていた。

しかし、描いていた自分とは少し違う。「面白い大人になりたい」と思ったあやおさんは、石川県の能登島に移住し、ひとり住み開き(※)をしながら自給自足の生活を送っていた。

  • 住んでいる場所の一部を開放し、気の合う仲間や地域との交流を図ること

そこで、パートナーと出会い、石川県加賀市に引っ越してきたのは最近のこと。しかし、そこで絶望的な景色を目の当たりにした。

「引っ越してきた地域にある海岸はごみで溢れていた。海が大好きな私は絶望してしまいました。能登島の海岸でもごみ拾いはしていたので、ここでも始めることにしました。その時、せっかくなら『このごみを使って、何かを伝えられないだろうか』と思ったんです」

あやおさんが海洋生物をモチーフにした“海ごみアート”の創作活動を本格的に開始したのは2021年3月とまだ間もない。海岸で拾ったごみを使って作った作品は、SNSを中心に瞬く間に話題になった。その作品と共に、海ごみアーティストとしての知名度が、わずか数カ月で広がっていったという。

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あやおさんが撮影した石川県加賀市の海岸。漁網やロープといった漁具、ブイ、街から流出した生活ごみなど、海岸はごみで溢れ返っていた

「いろんな“ごみアーティスト”をリサーチして、自分には何ができるのか模索していったんです。ほとんどが立体物でしたが、アートの勉強をしたことがない私には難しかった。それでキャンバス上で作る平面物にしてみよう、と。早速ペンギンを作って、試しにフェイスブックにアップしてみたんです。すると、知り合いがすぐに買ってくれました。勢いづいてもう一つ作ってみたら、それも30分ほどで売れて。楽しくなって、どんどん作るようになっていきました」

制作の過程は、とても地道な作業の連続だ。

「海に行ってごみを拾うのに2、3時間。集めたごみを1時間ほどかけてきれいに洗って、乾かすのに半日かかります。それから使えそうなものを2時間ほどで選別し、ようやく制作に入るんです。制作にかかる時間は、平均して3日くらい。結構時間がかかるんですよ。ちなみに今後は、ごみ拾いを委託しようと考えています。そうすればごみ拾いをしている人たちにお金が行き渡るし、私も制作活動に集中できるじゃないですか。小さなことだけど良い循環になりそうだなって」

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友人たちとごみ拾いをするあやおさん(中央)
写真:海岸で集めた海ごみを囲むボランティアの皆さん(5人)
あやおさんが海ごみを買い取ったボランティアの皆さん

海洋ごみ問題に関心を持ってもらうために

あやおさんは、海ごみアートを通じて日本の海が汚れている事実を知ってもらいたいと話す。その根底にあるのは「環境問題への意識」だ。

「数年前であれば、私が何かを発信しても『若い子が頑張っているのね』と軽く見られてしまうことも少なくなかった。でも、コロナ禍で生活環境が変化したことにより、環境やライフスタイルについて考える人が増えてきました。私がこうしてメディアに取り上げていただけるのも、時代の流れが変わってきたからだと思います。みんな、環境問題を自分事にしやすい時代になったのかな、と」

海ごみアートをきっかけに、環境問題についてもツイッター(外部リンク)などで積極的に発信するあやおさんは、「まず知ることが大事なんです」と語る。

写真:海岸で拾ったごみと一緒に写るあやおさん
事実を知ってもらうことが大切だとあやおさんは語る

「環境問題について関心がなかった人たちに問題意識を持ってもらうことは、容易ではありません。特に高齢者など価値観が固まってしまった人たちは難しい。だから、まずは若い人たちから変わってほしくて。そのためには、まず知ってもらうこと。ごみアートなら興味を引きやすいし、環境問題が身近であることを知ってもらえるんじゃないかと思っています。知ってもらうためには“面白さ”が大事。だから私は、海ごみアートを作っているんです」

あやおさんの作品を見て、「初めて海ごみの問題を知りました」というメッセージをもらったこともあるという。その活動は着実に広がっているようだ。

「面白さを大事にしている」というあやおさんに、これまで制作したお気に入りの作品を数点ピックアップしてもらった。

「まずは制作に3日かかった『シュモクザメ(ハンマーヘッドシャーク)』。立体感や細長い感じを表現するのがとても難しかった。『カツオ』も時間がかかりました。生きているカツオって銀色で美しい。それを表現するのが大変でしたね。色でいうと、『キンメダイ』もお気に入りです。特徴である赤い目を表現するために、実物をじっくり観察しながら制作しました」

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海ごみアート「シュモクザメ」
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海ごみアート「カツオ」
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海ごみアート「キンメダイ」

素材には、主にプラスチックの破片が使用され、ルアーや注射器、空き瓶に電気プラグ、ブラシの先などといった生活ごみも、海洋生物の特徴に合わせてうまく使用されている。体の部位にどんな素材を使うか、そのアイデアもユニークで感心させられる。

無駄なものを買わない、増やさない

あやおさんが言う通り、海洋ごみをはじめとする環境問題は、私たち一人ひとりの問題でもある。

でもそれを自分事化することは難しいし、仮にできたとしても、次にどう行動に移したらいいのか分からないという人も多いだろう。

「海ごみ問題で言うなら、無駄なものを買わないこと。最初から徹底するのは難しいかもしれませんが、本当に必要なもの以外は買わない。なぜかというと、無駄なものを買えば買うほど、ごみが増えるからです。ごみを捨てないのは当たり前で、もう一歩進んでごみになるものを買わない、増やさないという意識を持ってもらいたい。それと断捨離も大事。ごみを増やさないようにするためには、自分にとって必要なものが何かを把握する必要があります。だからごみをあまり出さない人の家って、とてもきれいに整頓されていることが多い。そういうことを少しでも心掛けてもらえるとうれしいですね」

そんな想いを下敷きにしてスタートした、海ごみアーティストとしての活動。その先に見えている景色はどんなものだろうか。

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大好きな海が美しくなることを願って、あやおさんは今日もごみを拾う

「もちろん、海ごみを減らすことです。海洋プラスチックごみのうち漁網・ロープといった漁業ごみが約30パーセント(容積)を占め、ブイやその他の漁具を含めると50パーセントを超えると言われています。不要になった漁業ごみを処理するには相当なお金がかかる。だから、漁網やロープを海に捨ててしまう。それがもう当たり前のことになっていると思うんです。それを止めれば、海ごみは減りますよね。なので、その仕組みをつくりたいんです。例えば、不要になった漁網を預ければ、キャッシュバックがもらえるようにする。そしてその漁具が別の価値あるものに生まれ変わる。私1人でそれを実現するのは難しいけれど、同じように考える人たちとこの活動を通じてつながり、共に協力していきたいです」

大好きな海で楽しく泳ぎ続けたい。その純粋な願いを叶えるために、今日もあやおさんは海ごみを拾いアートを作る。

写真提供:あやおさん

海ごみアーティスト 暮らしを創る人 あやおさん公式サイト(外部リンク)

特集【増え続ける海洋ごみ】