日本財団ジャーナル

社会のために何ができる?が見つかるメディア

2022年に世界で起きた異常気象を振り返る。原因は地球温暖化?私たちの暮らしにある?

写真:美しい地球の絵を描く子ども(イメージ)
世界で多発する異常気象。地球温暖化との関係は?また、私たち一人一人が地球環境を守るためにできる行動とは
この記事のPOINT!
  • 暴風雨や洪水、干ばつなど異常気象の発生件数が1970年から50年間で5倍に
  • 地球温暖化が進むほど異常気象は極端に。頻度や強さが世界で増すと指摘されている
  • 地球温暖化を止めるためには国や企業の努力だけでなく、一人一人の行動変容が鍵に

取材:日本財団ジャーナル編集部

近年、世界各地で頻発している異常気象。世界気象機関(WMO)によると、暴風雨や洪水、干ばつといった気象災害の発生件数が1970年から2019年の50年間で5倍近くに増加しているという(※)。

縦棒グラフ:
1970年-1979年 711件
1980年-1989年 1410件
1990年-1999年 2250件
2000年-2009年 3536件
2010年-2019年 3165件
世界における1970年から2019年までの気象災害発生件数。出典:WMO Atlas of Mortality and Economic Loss from Weather, Climate and Water Extremes (1970–2019)

異常気象は多くの場合、気温や気象パターンの長期的な変化による「気候変動」によって起こり、その要因の1つに「地球温暖化」が大きく影響していると言われている。

もしそれが事実ならば、これ以上地球温暖化を進めないために私たちができることとは何だろうか。

世界で頻発する、気候変動によって起こる異常気象

「異常気象」とは、気象庁では原則として「ある場所(地域)・ある時期(週、月、季節)において30年に1回以下で発生する現象」と定義している。ここには大雨や暴風などの激しい数時間の気象から、数カ月も続く干ばつ、極端な冷夏・暖冬までを含んでいる。

2022年に世界と日本で起きた異常気象の中から、特に被害が著しいケースを挙げてみた(※)。

日本

2月に日本各地で記録的大雪が発生し、岐阜県関ケ原町の積雪は観測史上1位に。除雪作業中の死亡事故なども相次いだ。6月には東京で9日続いて35度を超える猛暑日を記録し、観測史上最長に。

南アフリカ

4月に南アフリカの南東部で60年ぶりとなる豪雨が発生。洪水や土砂崩れにより広範囲にわたって街が破壊され、540人以上が死亡したと伝えられた。

フィリピン

4月の台風第2号、10月の台風第22号の被害により合計で440人以上が死亡。フィリピン中部のマクタン島では、4月の月降水量368ミリメートルで平年比651パーセントを記録した。

ブラジル

ブラジル北東部~南東部では、1・2・5月の大雨により各地で避難指示や緊急事態宣言が発令される事態に。洪水や地滑りなどが発生し合計で430人以上が死亡したと伝えられた。

オーストラリア

オーストラリア南東部では1・3~5・7~11月と大雨に見舞われ、各地で洪水が発生。特にシドニーでは7月に4日間で800ミリの雨が降り、約5万人に避難を呼びかける事態に。農作物にも深刻な被害をもたらした。

アメリカ

8月に1200年ぶりの干ばつが発生。2020年から続いた少雨の影響だとみられ、2030年までこの状態が続くと予想されている。またアメリカ南東部~東部では、9~10月のハリケーンにより130人以上が死亡。

パキスタン

南アジア及びその周辺では、5~9月の大雨により合計で4,510人以上が亡くなった。特にパキスタンでは、大雨により食料や医療品不足なども続き、1,730人以上が死亡したと伝えられた。

これらの異常気象は多くの場合、気候変動によって起こると言われている。例えば2020年7月に東北地方から西日本にかけて発生した記録的豪雨は、日本付近上空の偏西風の北上が遅れ、梅雨前線が停滞し続けたこと、前線に沿って西から流入した水蒸気と、平年より南西に張り出した太平洋高気圧の影響で南西から流入した水蒸気が、大量に集中したことが主な原因とされている(※)。

気候変動には、自然の要因と人為的な要因の2つがあり、自然の要因には大気や海洋の変動、太陽活動の変化などがある。そして、人為的な要因の1つとして近年問題になっているのが地球温暖化だ。

地球温暖化は人間活動によるものと断定

そもそも地球温暖化とは何か。

地球の表面は大気に覆われ、その中には二酸化炭素やメタンなどの「温室効果ガス」が含まれている。この温室効果ガスがあることで、太陽の光によって温められた熱が宇宙に逃げず、私たちが生活しやすい温度に保ってくれる。現在地球の平均温度は14度前後に保たれており、もしなければマイナス19度になってしまうと言われている。

しかし、18世紀の産業革命以降、人類は石炭や石油などの化石燃料を燃やしてエネルギーを得るようになり、経済成長を遂げると共に、大気中の二酸化炭素の量が急増。温室効果ガスが増え過ぎたため、地球の温度がうまく調整できなくなり、地球温暖化を引き起こす主な原因になると考えられていた。

イラスト;地球温暖化はどんなしくみで起こるの?
約200年前の地球/産業革命の始まった頃の二酸化炭素の濃度は280ppmでした。
地球に届く、太陽の光で温められた熱は、大気(温室効果ガス)によって余分な熱が放出され適温に保たれていました。

現在の地球/二酸化炭素の濃度は2013年には400ppmを超えてしまいました。
地球に届く、太陽の光で温められた熱は、大気(温室効果ガス)が増え過ぎたことで、熱の放出をうまく調整できなくなりました。
地球温暖化の仕組み。出典:温室効果ガスインベントリオフィス/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト

そして2021年、世界の科学者でつくる国連のIPCC(※)が8年ぶりに公表した報告書(外部リンク/PDF)で、地球温暖化の原因が初めて人間活動の影響によるものと断定。2013年に発表した報告書で「影響の可能性は極めて高い(95パーセント以上)」としていたものが、「疑う余地はない」とより確信度を引き上げた表現となった。

  • 世界気象機関(WMO)及び国連環境計画(UNEP)によって1988年に設立された、国際的な専門家でつくる政府間組織。気候変動や地球温暖化についての科学的な研究の収集、整理などを行う

最新の報告書の中では、次のように地球温暖化による地球環境の現状と将来の予測がまとめられている。

[現状(観測事実)]

  • 2019年の大気中の二酸化炭素濃度は410 ppm(パーツ・パー・ミリオン※)であり、産業革命以前(1850年から1900年)より約47パーセント上昇
  • 世界平均気温(2011~2020年)は、産業革命前と比べて約1.09度上昇
  • 陸域では海面付近よりも1.4~1.7倍の速度で気温が上昇
  • 北極圏では世界平均の約2倍の速度で気温が上昇
  • 陸域のほとんどで1950年代以降に大雨の頻度と強度が増加
  • 強い台風(強い熱帯低気圧)の発生割合は過去40年間で増加
  • 北極の海氷(2010~2019年)は、1979~1988年と比べて、海氷が一番少ない 9月で40パーセント減少、海氷が一番多い3月で10パーセント減少
  • 世界の平均海面水位は1901~2018年の間に約0.20メートル上昇
  • 100万分のいくらであるのかという割合を示す比率量

[将来予測]

  • 今世紀末(2081~2100年)の世界平均気温の変化予測は、産業革命以前と比べて+1.0~5.7度上昇
  • 今世紀末(2081~2100年)の年平均降水量は、1995~2014年と比べて、最大で13パーセント増加
  • 世界規模では地球温暖化が1度進行するごとに、極端な日降水量の強度が約7パーセント上昇
  • 2100年までの世界平均海面水位は、1995~2014年と比べて、0.28~1.01メートル上昇
SSP(共有社会経済経路)シナリオ概要を示す折れ線グラフ:
地球の気温はこれからどうなるの?
1850〜1900年を基準とした2100までの世界平均気温の変化予想
出典.IPCC第6次評価小国書 WG1 Figure SPM.8a/Figure TS.8

SSP5-8 → 化石燃料依存型の発展の下で気候政策を導入しない最大排出量シナリオ(赤色の線)
SSP3-7.0 → 地域対立的な発展の下で気候政策を導入しないシナリオ(ピンク色の線)
SSP2-4.5 → 中道的な発展の下で気候政策を導入するシナリオ(オレンジ色の線)
SSP1-2.6 → 持続可能な発展の下で気温上昇を2度未満に抑えるシナリオ(青色の線)
SSP1-1.9 → 持続可能な発展の下で気温上昇を1.5度以下に抑えるシナリオ(水色の線)
※5つのシナリオそれぞれの予測を色で示す
※黒い曲線は過去のシミュレーションを示す
※陰影は、不確実性の範囲を示す

短期2021~2040年
SSP5-8/最良推定値1.6度 可能性が非常に高い範囲1.3–1.9度
SSP3-7.0/最良推定値1.5度 可能性が非常に高い範囲1.2–1.8度
SSP2-4.5/最良推定値1.5度 可能性が非常に高い範囲1.2–1.8度
SSP1-2.6/最良推定値1.5度 可能性が非常に高い範囲1.2–1.8度
SSP1-1.9/最良推定値1.5度 可能性が非常に高い範囲1.2–1.7度

中期2041~2060年
SSP5-8/最良推定値2.4度 可能性が非常に高い範囲1.9–3.0度
SSP3-7.0/最良推定値2.1度 可能性が非常に高い範囲1.7–2.6度
SSP2-4.5/最良推定値2.0度 可能性が非常に高い範囲1.6–2.5度
SSP1-2.6/最良推定値1.7度 可能性が非常に高い範囲1.3–2.2度
SSP1-1.9/最良推定値1.6度 可能性が非常に高い範囲1.2–2.0度

長期2081~2100年
SSP5-8/最良推定値4.4度 可能性が非常に高い範囲3.3–5.7度
SSP3-7.0/最良推定値3.6度 可能性が非常に高い範囲2.8–4.6度
SSP2-4.5/最良推定値2.7度 可能性が非常に高い範囲2.1–3.5度
SSP1-2.6/最良推定値1.8度 可能性が非常に高い範囲1.3–2.4度
SSP1-1.9/最良推定値1.4度 可能性が非常に高い範囲1.0–1.8度
2100年までの世界平均気温の変化予測(1950~2100年・観測と予測)。出典:温室効果ガスインベントリオフィス/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト

地球温暖化が進むほど、異常気象の頻度と強さが増す

先述のIPCCの最新報告書によると地球温暖化が進むほど熱波(※)や大雨、干ばつ、熱帯低気圧といった「極端現象」の頻度や強さが、世界各地で増すと指摘している。

  • 広い範囲に4~5日またはそれ以上にわたって、その地域の平均的な気温に比べて著しく高温な空気が覆う現象

[10年に一度の「熱波」に見舞われる割合]

  • +1.5度の場合:4.1倍発生する可能性が高い
  • +2.0度の場合:5.6倍発生する可能性が高くなる
  • +4.0度の場合:9.4倍発生する可能性が高くなる

[10年に一度の「干ばつ」に見舞われる割合]

  • +1.5度の場合:2.0倍発生する可能性が高い
  • +2.0度の場合:2.4倍発生する可能性が高くなる
  • +4.0度の場合:4.1倍発生する可能性が高くなる

[10年に一度の「大雨」に見舞われる割合]

  • +1.5度の場合:1.5倍発生する可能性が高い
  • +2.0度の場合:1.7倍発生する可能性が高くなる
  • +4.0度の場合:2.7倍発生する可能性が高くなる

地球温暖化は大規模な自然災害だけでなく、気温上昇や干ばつによる食料不足、水資源不足、水産・農業生産減少、生態系への影響、感染症の増加など、私たちの暮らしにも多大な被害を及ぼすと予測されている。

写真:洪水で浸水した村に立つ子ども。その後ろに複数の大人や子どもが浸水した村の中で暮らす様子
バングラディシュでは昔から雨季に洪水が起こっていたが、近年は温暖化の影響か、洪水の起こる頻度が増え、住民の生活を脅かしている(写真は2005年7月)。出典:温室効果ガスインベントリオフィス/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト
写真:ハリケーンで浸水したトルヒーヨの様子。水の上を船で行き交う人々
ホンジュラス、カリブ海沿岸の町トルヒーヨ。1998年10月に大型ハリケーン「ミッチ」が直撃し、町が水浸しとなった。出典:温室効果ガスインベントリオフィス/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト

2021年に国際機関が10カ国1万人の若者を対象に行った調査をもとに、イギリスのバース大学が行った研究では、回答者の75パーセント以上が気候変動に不安を感じているということが分かった。

これを受け、国連では将来的に子どもたちが地球温暖化に対処する力を身につけられるよう、2025年から学校での気候変動教育の義務化を呼びかけている。

ストップ!地球温暖化のためにできること

IPCCが2013年に公表した報告書を受け、2015年にパリで開かれた「国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)※」では、2020年以降の気候変動問題に対する多国間(55カ国以上)による国際的な協定「パリ協定」が合意された。

  • 温室効果ガス削減に関する取り決めを話し合う国際会議

その中では、世界共通の長期目標として「世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保つと共に、1.5度に抑える努力をすること」と盛り込まれている。

パリ協定に批准した国は、温室効果ガスの排出削減目標を5年ごとに提出・更新する義務がある。日本を含む主な6カ国の目標は次の通りだ。

主要国の温室効果ガス削減目標を示す表組み:
[中国]
<削減目標>
2030年までにGDP当たりのCO2排出を60-65%削減(2005年比)。
※CO2排出量のピークを2030年より前にすることを目指す
<今世紀中頃に向けた目標(ネットゼロ※を目指す年など)>
2060年までにCO2排出を実質ゼロにする。

[EU]
<削減目標>
2030年までに温室効果ガスの排出量を55%以上削減(1990年比)。
<今世紀中頃に向けた目標(ネットゼロ※を目指す年など)>
2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする。

[インド]
<削減目標>
2030年までにGDP当たりのCO2排出を45%削減。
電力に占める再生可能エネルギーの割合を50%にする。
現在から2030年までの間に予想される排出量の増加分を10億トン削減。
<今世紀中頃に向けた目標(ネットゼロ※を目指す年など)>
2070年までに排出量を実質ゼロにする。

[日本]
<削減目標>
2030年年度において46%削減(2013年度比)。
※さらに、50%の高みに向け、挑戦を続けていく。
<今世紀中頃に向けた目標(ネットゼロ※を目指す年など)>
2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする。

[ロシア]
<削減目標>
森林などによる吸収量を差し引いた温室効果ガスの実質排出量を2050年までに約60%削減(2019年比)。
<今世紀中頃に向けた目標(ネットゼロ※を目指す年など)>
2060年までに実質ゼロにする。

[アメリカ]
<削減目標>
温室効果ガスの排出量を2030年までに50-52%削減(2005年比)。
<今世紀中頃に向けた目標(ネットゼロ※を目指す年など)>
2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする。

※ネットゼロは、温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにすること
主要国の温室効果ガス削減目標。出典:温室効果ガスインベントリオフィス/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト

日本がこの目標を達成するために必要なのは経済活動と両立しながら、温室効果ガスの「低排出型社会」を目指すことだ。経済の発展がなければ、温暖化対策となるイノベーションも生み出されない。そのためには、次の取り組みが重要となる

  • 再生可能エネルギーの導入を増やすなど低排出なエネルギーミックス(※)の推進
  • さらなるエネルギー効率化の追求
  • 火力、原子力、再生可能エネルギーなど、さまざまな方法を組み合わせて発電すること

生産活動を担う企業は、自社の温室効果ガスの排出量削減に努めるだけでなく、高機能素材や低炭素・省エネ製品の開発、国内外への普及を進めることが求められる。

では、地球温暖化を防ぐために私たち一人一人ができる行動とは何か。国連では次の10の行動(外部リンク/PDF)を示している。

  • 家庭で節電する
  • 徒歩や自転車で移動する、または公共交通機関を利用する
  • 肉や乳製品を減らして野菜をもっと多く食べる
  • 長距離の移動手段を考える
  • 廃棄食品を減らす
  • リデュース、リユース、リペア、リサイクルを活用する
  • 家庭のエネルギー源を再生可能エネルギー源にかえる
  • 電気自動車に乗り換える
  • 環境に配慮した製品を選ぶ
  • 声を上げて周りの人にも行動を起こすように訴える

温室効果ガスの削減のために私たちにできることは決して難しいことではなく、毎日省エネを実践するだけでも大きな効果につながっていく。こういった意識を持つことが、未来の地球の姿を大きく変えていくのだ。

  • 掲載情報は記事作成当時のものとなります。