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勉強や仕事で「女の子だから」差別(さべつ)されることがある?

小学生のためのSDGs入門記事。第8回は、目標(もくひょう)5「ジェンダー平等を実現(じつげん)しよう」について考えてみましょう。
「男の子なんだから、めそめそするんじゃない」。「女の子なんだから、乱暴(らんぼうな)言い方をしちゃダメ」。
皆さんは、このように「男の子だから~」「女の子だから~」と言われたり、聞いたりしたことはありますか?
でも、少し想像(そうぞう)してみてください。悲しいときに泣(な)きたくなる気持ちは、男の子と女の子でちがうのでしょうか? 乱暴(らんぼう)な言い方は、男の子でも女の子でもしないほうがよいのでは?
この考え方には、「ジェンダー」という問題が関(かか)わっています。
連載(れんさい)【小学生SDGsジャーナル】記事一覧(きじいちらん)
「ジェンダー」ってなんだろう?
先ほどの言葉をよく考えてみると、「男の子なんだから、めそめそするんじゃない」の中には「男の子は強くあるべき」、「女の子なんだから、乱暴(らんぼうな)言い方をしちゃダメ」の中には「女の子はおしとやかで優(やさ)しくあるべき」といったイメージがかくされているのが分かります。
このように、「男はこうあるべき/女はこうあるべき」「男らしいとはこういうこと/女らしいとはこういうこと」と、心の中で無意識(むいしき)に決めつけている男女のちがいのことを「ジェンダー」と言います。
体の性別(せいべつ)とちがって、「ジェンダー」はその国や地域(ちいき)社会にいる人たちの考え方によってつくられます。そのため、「ジェンダー=社会的性別(しゃかいてきせいべつ)」ともいわれています。
例(たと)えば、ピンクとブルーのハンカチがあったとして、「男の子にはブルー、女の子にはピンクをわたそう」と考える人がいます。これは世の中にある「ブルーは男の子の色」というイメージによるもので、「ジェンダー」の1つだといえるでしょう。
「ジェンダー平等」とはどんな状態(じょうたい)?
もし「ブルーは男の子の色」と考える人がいたとしても、ピンクが好(す)きな男の子もいますし、ブルーが好(す)きな女の子だっているはずです。
そこで「男なのにピンクが好(す)きなんて変(へん)だ」と、「ジェンダー」のイメージを押しつけてしまうと、一人一人が持っている個性(こせい)や能力(のうりょく)が発揮(はっき)できません。「男なのにピンクが好(す)きな自分はおかしいのかな?」となやみ、苦しむ人もいます。
体が「男だから/女だから」という理由で、社会にあるイメージや役割(やくわり)を押しつけるのは、「ジェンダー」による差別(さべつ)なのです。
「女性(じょせい)は家庭で育児(いくじ)や家事をするべき」「男性(だんせい)はお金をかせいで家族を養(やしな)うべき」という考え方も、日本に昔からある「ジェンダー差別(さべつ)」のひとつです。
世の中には仕事が大好きな女性(じょせい)や、家事や育児(いくじ)にやりがいを感じる男性(だんせい)もいます。「男だから/女だから」というイメージにとらわれず、一人一人が平等に責任(せきにん)やチャンスを分かち合って一緒(いっしょ)に物事を決められる状態(じょうたい)を「ジェンダー平等」といいます。
関連(かんれん)記事:「リケジョ」と言われることのない世の中を目指して。Waffle(ワッフル)がIT業界を目指す女性(じょせい)を育成(いくせい)する理由(別タブで開く)
「女の子だから」受ける差別(さべつ)がある
ここからは、世界中にどんな「ジェンダー」の問題があるのか学んでみましょう。
1つは、「女だから」という理由で学校に行かせてもらえない女の子がたくさんいることです。日本の小学校にあたる「初等教育(しょとうきょういく※)」を受けられない女の子は、世界に約(やく)900万人もいて、この数は「初等教育(しょとうきょういく)」を受けられない男の子の約(やく)3倍です。
- ※ 5~7才から11~12才ごろまでの子どもに対して行われる基本的(きほんてき)なふつう教育のこと
また、開発途上国(かいはつとじょうこく)と呼(よ)ばれる貧(まず)しい国では、女性(じょせい)の3分の1以上が18才になる前に結婚(けっこん)しており、そのうち35パーセントはまだ15才にならない女の子です。
このように18才になる前の子どものうちに結婚(けっこん)させられることを「児童婚(じどうこん)」と言い、家族によって勝手に決められてしまうことがほとんどです。男の子にも児童婚(じどうこん)がありますが、児童婚(じどうこん)させられる女の子の数は、男の子の約(やく)8倍に上(のぼ)ります。

女の子の問題から見える「ジェンダー不平等(ふびょうどう)」
女の子が「ジェンダー不平等(ふびょうどう)」に合いやすいのには、次のような背景(はいけい)があります。
●貧困(ひんこん)
貧(まず)しい国や地域(ちいき)では、食べものが十分に手に入らない、医療(いりょう)サービスが受けられないなど、苦しい生活を送っている人がたくさんいます。
女の子を結婚(けっこん)させると相手の家から結納金(ゆいのうきん)というお金をもらえるので、家族の生活を助ける手段(しゅだん)として児童婚(じどうこん)が使われてしまうのです。
●教育が大切にされていない
生活が苦しいと、子どもにも「勉強するより働(はたら)いてもらいたい」と考えがちです。特(とく)に女の子は「すぐ結婚(けっこん)して家の仕事をするのだから、勉強をする必要(ひつよう)がない」とされ、なかなか学ぶ機会(きかい)をあたえてもらえません。
学校に行ったことのない親も多いため、「学校に行く意味なんてない」というかたよった考えを持っている場合もあります。
関連(かんれん)記事:学校に通いたくても通えない子どもがいるのはなぜ?(別タブで開く)
●伝統(でんとう)や文化の影響(えいきょう)
その国や地域(ちいき)に伝わる考え方として、「物事を決めるのは男」「女は男の決めたことに従(したが)うもの」といった、「ジェンダー」の役割(やくわり)がずっと続(つづ)いていることがよくあります。
また、家族の名誉(めいよ)をとても大切にする地域(ちいき)では、結婚(けっこん)する前に男性(だんせい)と付(つ)き合うような女性(じょせい)がいると家族の名誉(めいよ)を汚(けが)すため、できるだけ若(わか)いうちに結婚(けっこん)するのがいい、と考える大人も多いのです。
日本の「ジェンダー・ギャップ指数」は世界125位(い)
次に、日本の「ジェンダー平等」は今どのような状況(じょうきょう)にあるのかを見ていきましょう。
世界各国の男女の差(さ)を測(はか)る「ジェンダー・ギャップ指数」という調査(ちょうさ)があります。経済(けいざい)・教育・健康(けんこう)・政治(せいじ)」の4分野ごとに分かれ、男性(だんせい)の数値(すうち)を1として、女性(女性)の数値(すうち)が1より低(ひく)いほど男女の差(さ)が大きいことを表しています。
そして、4分野の数値(すうち)をまとめた順位(じゅんい)が高いほど男女の差(さ)がなく、低(ひく)いほど男女の差(さ)が大きい国ということになります。
2023年に発表された調査(ちょうさ)によると、日本は146カ国のうち125位(い)。2022年の116位(い)よりもさらにランクを下げました。これは経済(けいざい)が進んだ先進国の中でももっとも低い順位です。

日本は、「教育」分野と「健康(けんこう)」分野では、どちらも世界トップクラスですが、「経済(けいざい)」分野ではかなり男女の差(さ)が広がります
その理由は管理職(かんりしょく)の立場(たちば)にいる人のほとんどが男性(だんせい)であること、働(はたら)いてもらえるお金が全体的(ぜんたいてき)に男性(だんせい)より少なく、同じ仕事をしていても女性(じょせい)の賃金(ちんぎん)が低(ひく)い、といった問題があります。
そして最(もっと)も男女の差(さ)が大きいのが「政治(せいじ)」の分野。政治家(せいじか)に女性(じょせい)の数が少ないことや、これまでに女性の総理大臣(そうりだいじん※)が1人も出ていないことが理由になります。
- ※ 日本を代表する政治家(せいじか)
「ジェンダー平等」がもっと進めば、男女に関係(かんけい)なく一人一人の能力(のうりょく)を発揮(はっき)でき、社会の成長(せいちょう)や変化(へんか)を支える新しい力を生みだすはずです。
関連(かんれん)記事:面倒(めんどう)な国民(こくみん)が政治(せいじ)を変(か)える?議員(ぎいん)の「男女平等」を実現(じつげん)するヒントを専門家(せんもんか)に聞いた(別タブで開く)
日本財団(にっぽんざいだん)の取り組み
子どもや若者が少なくなりお年寄(としよ)りが多くなる「少子高齢化(しょうしこうれいか)」をむかえている日本。これから女性(じょせい)が果(は)たす役割(やくわり)はさらに大きくなると考えられます。
日本財団(にっぽんざいだん)では、いろいろな女性(じょせい)の意見を集めて法律(ほうりつ)や社会づくりに反映(はんえい)するために、18才から69才まで1万人の女性(じょせい)に、今後の社会はどうあるべきか広く意見を聞く調査活動(ちょうさかつどう)を行っています。
関連(かんれん)記事:世界8カ国の女性(じょせい)に見る「少子化」問題。理想の子どもの数は2人、働(はたら)きやすい環境(かんきょう)の整備(せいび)を!(別タブで開く)

この「ジェンダー平等の問題」について私(わたし)たち一人一人ができることは何でしょう? その答えは、ぜひ自分で調べて、考えて、自分にできることから取り組んでみてください。
本や図書館、インターネットで調べてみよう!
- 世界で、「男の子だから」「女の子だから」という理由でどんな差別(さべつ)があるのか、なぜその差別(さべつ)が起きているのかを調べてみよう
- ジェンダー・ギャップの問題をなくすために、日本や世界の国々でどのような取り組みが行われているか調べてみよう
「ジェンダー平等の問題」について学べるおすすめの本

『わたしは女の子だから 世界を変(か)える夢(ゆめ)をあきらめない子どもたち』(外部リンク)
女の子だからという理由で、先進国に生まれ育つ子どもたちに当たり前のようにあたえられているものが、あたえられない子は世界にたくさんいます。
この本に出てくる8人の女の子たちも、そんな環境(かんきょう)に育ちましたが、決してあきらめず、貧困(ひんこん)の連鎖(れんさ)を断(た)ち切るためにひたむきに進みます。
性差別(せいさべつ)、児童労働(じどうろうどう)など、世界中の女の子がかかえる問題について知り、考えてみるのに最適(さいてき)な一冊(いっさつ)です。

『イラストで学ぶジェンダーのはなし みんなと自分を理解(りかい)するためのガイドブック』(外部リンク)
毎日のように変化(へんか)を続(つづ)けるジェンダーと世界との関係(かんけい)を学ぶために、そして多様な人々とともに生きるこれからの時代の「当たり前」を身につけるためのガイドブックです。
作家でアーティスト、そして性的(せいてき)マイノリティである著者(ちょしゃ)が、ジェンダーをめぐる基本(きほん)用語や、歴史的(れきしてき)な出来事や事件、世界に大きなえいきょうをもたらした人々の話などをしょうかいします。
まわりの人に話を聞いてみよう!
- お父さんやお母さん、近所のおじさん、おばさん、おじいさん、おばあさんに子どものころと今とで、男女のイメージや役割(やくわり)に変化(へんか)を感じるか、感じたとしたらそれはどういう変化(へんか)か、話を聞いてみよう
- 途上国(とじょうこく)で女の子が学校に行けなかったり、児童婚(じどうこん)させられたりする問題について、どうすれば解決(かいけつ)できると思うか意見を聞いてみよう
- いろんな人の意見を聞いたら、自分に何ができるか考えてみよう
自分にできることからやってみよう!
- 調べたこと、聞いたこと、考えたことをノートにまとめて家族、友だちに発表してみよう
- 世界の女性(じょせい)や女の子に対する差別(さべつ)をなくす活動をしている団体(だんたい)とつながる、「男/女だから」という言葉を使わないようにする、などできることはたくさんあるはず
自分で解決方法(かいけつほうほう)を見つけるのにおすすめ!
国際協力(こくさいきょうりょく)NGOジョイセフ(JOICFP)(外部リンク)
女性(じょせい)の命と健康(けんこう)を守るために活動しています。女性(じょせい)たちが望(のぞ)まない結婚(けっこん)や出産(しゅっさん)をさせられたり、女性(じょせい)だからという理由で暴力(ぼうりょく)をふるわれたりしないよう、また自分で自分の命と健康(けんこう)を守り、どういう人生を送るか決めていけるよう40以上(いじょう)の国と地域(ちいき)で支援(しえん)に取り組んでいます。
女性(じょせい)や女の子を取りまく世界の事情が分かるコラムや、親子で参加(さんか)できるイベントの案内(あんない)もあります。
公益社団法人(こうえきしゃだんほうじん)ガールスカウト日本連盟(にほんれんめい)(外部リンク)
ガールスカウトは少女と女性(じょせい)の幸せを願(ねが)う世界最大(さいだい)の団体(だんたい)で、153の国と地域(ちいき)で約(やく)880万人の会員が活動しています。
自分や仲間を大切にできる、リーダーシップを発揮(はっき)して地域(ちいき)や世界のため、幸せな未来(みらい)のために行動できる人になるよう、国内外でさまざまな体験(たいけん)の場を提供(ていきょう)しています。
男女共同参画局(だんじょきょうどうさんかくきょく)(外部リンク)
1999年にできた「男女共同参画社会基本法(だんじょきょうどうさんかくしゃかいきほんほう)」は、男女が一緒(いっしょ)に社会、仕事、家庭生活に参加(さんか)し、喜(よろこ)びや責任(せきにん)をおたがいに分かち合う社会を目指してつくられた法律(ほうりつ)です。その中で、政治(せいじ)分野の男女共同参画(だんじょきょうどうさんかく)を進めるために活動しています。
ここでは、日本のジェンダー問題の現状(げんじょう)や、それに対して政府(せいふ)がどういう取り組みをしているか、デジタル冊子(さっし)や動画コンテンツで知ることができます。
イラスト:KIKO
[参考文献]
独立行政法人国際協力機構「JICA 事業におけるジェンダー主流化のための手引き」(外部リンク)
男女共同参画局「男女共同参画に関する国際的な指数」(外部リンク)
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- ※ 掲載情報は記事作成当時のものとなります。