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世界には教育も訓練(くんれん)も受けられず、仕事もない若者(わかもの)が4人に1人いる?

イラスト:十分な教育も訓練も受けられず、仕事がなくて困っている世界の若者たち
世界には十分な教育も受けられず、仕事もない若者が数多くいる

小学生のためのSDGs入門記事。第11回は、目標(もくひょう)8「働(はたら)きがいも経済成長(けいざいせいちょう)も」について考えてみましょう。

私(わたし)たちは、仕事をしてお金をもらい、そのお金で食べ物や生活に必要(ひつよう)なものを買ったり、貯金(ちょきん)したりして、安定した暮(く)らしを送っています。

会社やお店も働(はたら)いてくれる人がいないと、物を作ったり、サービスを提供(ていきょう)したりすることができないので、お金をはらって人をやとっています。

こうした生活の中でお金と物やサービスを交換(こうかん)していくことを「経済活動(けいざいかつどう)」といい、人や社会が元気になって、社会をめぐるお金が増(ふ)えていくことを「経済成長(けいざいせいちょう)」といいます。

しかし世界には、働(はたら)きたくても仕事がない人がたくさんいます。また、仕事を選(えら)べずに安いお金で、長時間、厳(きび)しい環境(かんきょう)で働(はたら)かなければならない人もいます。

全(すべ)ての人が安定して働(はたら)けるチャンスをつくり、無理(むり)のない持続可能(じぞくかのう)な形で社会を成長(せいちょう)させていこう、というのが目標(もくひょう)8の目指すことなのです。

【小学生SDGsジャーナル】記事一覧(きじいちらん)

働(はたら)くことにまつわる世界のさまざまな問題

●経済成長(けいざいせいちょう)する先進国、仕事がない人が多い途上国(とじょうこく)

2020年から、世界中で広がった新型(しんがた)コロナウイルス。世界の経済成長(けいざいせいちょう)は何年も止まり、仕事をなくした人たちがたくさんいました。

いまはコロナ前の状況(じょうきょう)にもどりつつありますが、それは経済(けいざい)が発展(はってん)した先進国の話。途上国(とじょうこく)と呼(よ)ばれる貧(まず)しい国々(くにぐに)には仕事をなくしたままの人がたくさんいます。

世界と途上国(低所得国)の失業率を示す横棒グラフ:
2019年/世界5.5% 途上国5.2%
2020年/世界6.6% 途上国5.9%
2022年/世界5.4% 途上国5.7%
2023年(よそう)/世界5.3% 途上国5.7%
世界全体では働(はたら)ける人が増(ふ)えてきたが、途上国(とじょうこく)では仕事をなくしたままの人が多い。出典(しゅってん):国連統計部(こくれんとうけいぶ)SDGsレポート2023年

●貧(まず)しさが子どもや若者(わかもの)のチャンスをうばう

貧(まず)しいと、生活に使うお金が足りなくなるので、子どもも農作業や家事の手伝(てつだ)いなどにかり出されます。これを「児童労働(じどうろうどう)」といいます。

世界にいる5~17才の子ども16億人のうち、およそ1億(おく)6,000万人が児童労働(じどうろうどう)をさせられており、これは世界中の子どもの10人に1人となる計算です。

イラスト:世界中の子どもの10人に1人が児童労働により十分な教育を受けることができていない
途上国(とじょうこく)では家が貧(まず)しく、自分も働(はたら)かなければいけい子どもが数多くいる

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学校に通いたくても通えない子どもがいるのはなぜ?(別タブで開く)

●働(はたら)きたくても働(はたら)けない若者(わかもの)たち

大人になって仕事につくためには、若者(わかもの)のうちに読み書きや計算を覚(おぼ)え、仕事で使う能力(のうりょく)や技術(ぎじゅつ)を身につけることが大切です。

しかし家が貧(まず)しいために教育も、仕事に役立つ訓練(くんれん)も受けられず、仕事につくことができない若者(わかもの)たちがたくさんいます。

その数は、アフリカやアジアを中心に世界にいる15~24才の若者(わかもの)12億人のうち、およそ2億(おく)8,900万人に上り、世界の若者(わかもの)の4人に1人に当たります。

また、教育も訓練(くんれん)も受けられず仕事もない若者(わかもの)の割合(わりあい)は、男性(だんせい)15.4パーセントに対して女性(じょせい)32.1パーセント。若(わか)い女性(じょせい)は、若(わか)い男性(だんせい)の2倍以上(いじょう)も仕事を見つけるのが難(むずか)しいのです。

日本にある働(はたら)き方の問題

●長時間労働(ちょうじかんろうどう)

2023年に国がまとめた「男女共同参画(だんじょきょうどうさんかく)白書」によると、お金をもらって仕事をする時間を先進11カ国で比(くら)べた場合、日本は男性(だんせい)は452時間でトップに。女性(じょせい)も272時間で、仕事をする時間が一番長いスウェーデンの女性の次に長く働(はたら)いているという結果が出ています。

生活時間の国際比較を示す横棒グラフ:
男性
日本452分
韓国419分
カナダ341分
アメリカ332分
スウェーデン313分
イギリス309分
ドイツ290分
ノルウェー277分
フィンランド249分
フランス235分
イタリア221分

女性
スウェーデン275分
日本272分
韓国269分
カナダ268分
アメリカ247分
イギリス216分
フィンランド210分
ドイツ205分
ノルウェー200分
フランス175分
イタリア133分
出典(しゅってん):男女共同参画(だんじょきょうどうさんかく)白書 令和(れいわ)5年版(ばん)「生活時間の国際比較(こくさいひかく)」

長い時間働(はたら)くことは、仕事の忙(いそが)しさが原因(げんいん)で心や体の調子をくずしたり、それが原因(げんいん)で死んでしまったりすることがあります。

●雇用格差(こようかくさ)

日本では、正社員や正職員(せいしょくいん)である「正規雇用(せいきこよう)」の人と、アルバイトやパートとして働(はたら)く「非正規雇用(ひせいきこよう)」の人とで、仕事の内容が同じでも、もらえるお金が大きく変(か)わってしまう「雇用格差(こようかくさ)」が広がっています。

この「雇用格差(こようかくさ)」は男女の中にもあり、同じ仕事をしているのに男性(だんせい)と女性(じょせい)でもらえるお金がちがうといった問題も生じています。

また、家事や子育てと仕事を両立しやすくするために、「非正規雇用(ひせいきこよう)」の働(はたら)き方を選(えら)ぶ人の数は男性(だんせい)が8万人に対し、女性(じょせい)は209万人と25倍以上(いじょう)も多くなっています。

障害(しょうがい)がある人とそうでない人との間にも「雇用格差(こようかくさ)」があり、障害(しょうがい)がある人が働(はたら)ける場所が限(かぎ)られている、障害(しょうがい)がない人に比(くら)べてもらえるお金が少ない、といった問題が見られます。

仕事でもらえるお金が少ないと、できるだけお金を使わないようにしようという気持ちになりやすいので、国の経済(けいざい)も成長(せいちょう)しづらくなっていく、という問題があります。

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経済発展(けいざいはってん)すると環境(かんきょう)がこわれる?

では、たくさんの人が働(はたら)けるようになって経済(けいざい)が成長(せいちょう)していけば幸せになれるのか、というとそうではありません。

人間は水や植物、石油などの地球にある資源(しげん)やエネルギーを使って生活をし、物を作っています。つまり経済(けいざい)を成長(せいちょう)させようとして、たくさん物を作ろうとすると、資源(しげん)をたくさん使うことになり、そのぶん森林がなくなったり、水がよごれたりする問題を引き起こすのです。

環境(かんきょう)がこわれると、地球温暖化(ちきゅうおんだんか)が進み異常気象(いじょうきしょう)が起こる、生き物が死んでしまって生態系(せいたいけい)のバランスがくずれる、などさまざまな問題の原因(げんいん)になり、めぐりめぐってそれが経済(けいざい)にもよくないえいきょうをあたえます。

持続可能(じぞくかのう)な未来をつくるには、経済成長(けいざいせいちょう)と地球環境(ちきゅうかんきょう)を守ること、両方の目線が欠(か)かせないのです。

環境破壊(かんきょうはかい)が進む南アメリカのアマゾン地域(ちいき)

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日本財団(にっぽんざいだん)の取り組み

日本財団(にっぽんざいだん)はたらく障害者(しょうがいしゃ)サポートプロジェクト(別タブで開く)

障害(しょうがい)のある人の「働(はたら)く」を全力で応援(おうえん)し、だれもが「当たり前に地域(ちいき)で働(はたら)く」社会を目指すプロジェクトです。

障害者(しょうがいしゃ)が地域(ちいき)に根差(ねざ)して働(はたら)くための新事業をサポートする「モデル構築(こうちく)プロジェクト」や、障害者(しょうがいしゃ)の仕事や働(はたら)き方にまつわるさまざまな問題をみんなで考える「就労支援(しゅうろうしえん)フォーラムNIPPON」を活動の大きな柱にしています。

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チャリティーではなくチャンスを!障害者(しょうがいしゃ)と社会成長(しゃかいせいちょう)にコミットする就労支援(しゅううしえん)のカタチ(別タブで開く)

WORK!DIVERSITYプロジェクト(別タブで開く)

ひきこもり、ニート、ホームレス、過去に犯罪(はんざい)をおかしてしまった人、難病(なんびょう)にかかっている人など、生きづらさや働(はたら)きづらさをかかえる人たちは日本におよそ1,500万人以上(いじょう)いるとされています。

そういう働(はたら)きづらさのある人たちを社会で支(ささ)えて、幸せに働(はたら)けるようサポートする新しい仕組みをつくっていくプロジェクトです。

この働(はたら)きがいと経済成長(けいざいせいちょう)の問題について私(わたし)たち一人一人ができることは何でしょう? その答えは、ぜひ自分で調べて、考えて、自分にできることから取り組んでみてください。

本や図書館、インターネットで調べてみよう!

  • 学校の先生や警察官(けいさつかん)、看護師(かんごし)など世の中にはどのような仕事があるのか調べてみよう
  • 調べた仕事について、その人たちはどんなことをしているのか、お休みはいつなのか、1日に何時間くらい働(はたら)いているのか、といった働(はたら)き方についても調べてみよう
  • そのような仕事をするためには、どんな勉強をしなければいけないのか、どんな能力(のうりょく)や技術(ぎじゅつ)が必要(ひつよう)になるのかを調べてみよう
  • 調べた中から、自分らしく働(はたら)けそうな仕事は何か、どうしてそう思ったのか、理由もいっしょに考えよう

「働(はたら)きがいと経済成長(けいざいせいちょう)の問題」について学べるおすすめの本

出版(しゅっぱん):日本法令(にほんほうれい) 著者(ちょしゃ):山下敏夫(やました・としお)、笠置裕亮(かさぎ・ゆうすけ)

『こども労働法(ろうどうほう)』(外部リンク)

会社で働(はたら)く大人たちが出会う、さまざまな「?」を通じて、「働(はたら)き方にまつわる法律(ほうりつ)」を弁護士(べんごし)が分(わ)かりやすく伝えます。

これから次代をつくる子どもたちが読めるよう、10才くらいの読者を想定して、やさしい日本語とイラストをつかっています。

出版(しゅっぱん):SB Creative(えすびー くりえいてぃぶ) 著者(ちょしゃ):山本御稔(やまもと・みとし)

『世界一たのしい経済(けいざい)の教科書 経済(けいざい)ってなんだ?』(外部リンク)

円高・円安? インフレ・デフレ? 金利? 仮想通貨(かそうつうか)? などなど、耳にしたことはあるけど説明(せつめい)するのは難(むずか)しい経済(けいざい)のキホンを、小学3年生にも分(わ)かるように対話形式のストーリーで解説(かいせつ)している入門書です。

まわりの人に話を聞いてみよう!

  • お父さんやお母さん、近所のおじさん、おばさん、おじいさん、おばあさんに子どものころと今とを比(くら)べて、世の中の働(はたら)き方が変化(へんか)したと思うか、あるとすればどんなところか、話を聞いてみよう
  • 環境(かんきょう)を守りながら、経済(けいざい)を成長(せいちょう)させるために、例(たと)えばどんな方法(ほうほう)があると思うか、意見を聞いてみよう
  • いろんな人の意見を聞いたら、自分に何ができるか考えてみよう

自分にできることからやってみよう!

  • 調べたこと、聞いたこと、考えたことをノートにまとめて家族、友だちに発表してみよう
  • 世界の児童労働(じどうろうどう)を防(ふせ)ぐ活動をしている団体(だんたい)とつながる、安いお金で人を働(はたら)せたり、児童労働(じどうろうどう)をしないようにしてつくられている「フェアトレード商品」を買う、などできることはたくさんあるはず

自分で解決方法(かいけつほうほう)を見つけるのにおすすめ!

金融庁(きんゆうちょう)(外部リンク)

子どもが分(わ)かりやすくお金や経済(けいざい)について学ぶための「小学生のみなさんへ」というコーナーがあります。

人気の「うんこドリル」と金融庁(きんゆうちょう)がコラボして、ドリルで楽しくお金のことが学べる「うんこお金ドリル(生活編)」、クイズやゲームで金融(きんゆう)が学べる「カネールのKIN★YOUランド」など、お金について知ることのできる8つのコンテンツが楽しめます。

シャプラニール(外部リンク)

主にバングラデシュ、ネパール、日本で貧困(ひんこん)のない社会を目指して活動している団体です。

ボランティアや寄付(きふ)の窓口(まどぐち)があるほか、いらなくなった本やはがき、ゲームなどを送ることで寄付(きふ)ができたり、演劇(えんげき)を通じて現地(げんち)の文化や課題(かだい)を知ってもらう劇団(げきだん)があったりと、ユニークな活動をしています。

フェアトレード商品が買えるオンラインショップもあります。

キッズタウンビルダーズ(外部リンク)

なぞ解(とき)き脱出(だっしゅつ)ゲームなどのイベントを企画(きかく)する会社「IKUSA(イクサ)」が開発した、親子でリアルな仕事体験(しごとたいけん)ができるワークショップです。

事務員(じむいん)、デザイナー、工場の責任者(せきにんしゃ)、レストランのスタッフなど、日本で働(はたら)く人の7割(わり)をしめる仕事をピックアップし、遊びながら社会の仕組みや、働(はたら)くことの面白さを学ぶことができます。

関連(かんれん)記事:
防災訓練(ぼうさいくんれん)に必要(ひつよう)なのは「遊び」?防災(ぼうさい)を社会に広げるための楽しい仕掛(しか)けづくり(別タブで開く)

[参考文献]

unicef「Child Labour: Global estimates 2020, trends and the road forward」(外部リンク)

United Nations SDGs Report 2023「Decent work and economic growth」(外部リンク)

内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和5年版|生活時間の国際比較」(外部リンク)

総務省統計局「労働力調査(詳細集計)2022年(令和4年)平均結果の概要」(外部リンク/PDF)

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