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世界では十分な食べ物を得(え)られずに苦しむ人が増(ふ)えている?
小学生のためのSDGs入門記事。第16回は、目標(もくひょう)2「飢餓(きが)をゼロに」について考えてみましょう。
みなさんは、お腹(なか)がすいて食べ物がほしくてたまらないのに、何も食べられない状態(じょうたい)を想像(そうぞう)できますか?
それが長く続(つづ)くと、体が弱(よわ)ってしまい、命に関(かか)わることがあります。ずっとごはんが食べられず、体を動かすために必要(ひつよう)な栄養(えいよう)が得(え)られない状態(じょうたい)のことを「飢餓(きが)」といいます。
世界には、十分(じゅうぶん)な食べ物を得(え)られない人がたくさんいて、その数はどんどん増(ふ)えています。このままでは2030年になっても世界全体で6億(おく)人以上が飢餓(きが)に苦しんでいるだろうと予測(よそく)されています。
どうすれば、みんなに十分な食べ物が行きわたるのでしょうか?
連載(れんさい)【小学生SDGsジャーナル】記事一覧(きじいちらん)
世界で起きている問題
飢餓(きが)で苦(くる)しむ人の増加(ぞうか)
世界には飢餓(きが)に苦しむ人が増(ふ)え続(つづ)けています。新型(しんがた)コロナウイルスが世界で流行する前と後を比(くら)べると、1億(おく)人以上(いじょう)も増(ふ)えて、2022年の飢餓人口(きがじんこう)は約(やく)7億(おく)3,500万人にもなってしまいました。
特(とく)に問題が深刻(しんこく)なのはアフリカで、5人に1人が飢餓(きが)の状態(じょうたい)にあります。
●世界の3人に1人が、毎日ごはんを食べられていない
飢餓(きが)の状態(じょうたい)でなくても、十分に食事ができない人はたくさんいます。世界の約(やく)24億(おく)人が、食料(しょくりょう)を安定(あんてい)して手に入れることができていません。
この問題を考えるとき、都市部(としぶ)と農村部(のうそんぶ)の違(ちが)いに目を向けることも重要(じゅうよう)です。農村部(のうそんぶ)の中には市場やお店がない場所もあるため、食料(しょくりょう)を手に入れるのが難(むずか)しいことがあります。
また、せっかく作物を育てても、都市部(としぶ)のようにしっかりとした倉庫(そうこ)がないため、害虫(がいちゅう)に食べられたり、カビが生えたりしてダメになってしまうことがあります。
●子どもの成長(せいちょう)にも悪いえいきょうがある
十分(じゅうぶん)な食べ物を手に入れられないことは、子どもの成長(せいちょう)にも大きな問題をもたらします。世界の5才以下(いか)の子どものおよそ22.3パーセント、1億(おく)4,800万人が、栄養(えいよう)が足りていないせいで成長(せいちょう)がおくれています。
例(たと)えば、年齢(ねんれい)に比(くら)べて身長(しんちょう)が低(ひく)い、言葉(ことば)を話せるようになるのがおそい、など知能(ちのう)や体(からだ)の発達(はったつ)に悪いえいきょうをおよぼします。
また、消耗症(しょうもうしょう※)で、とてもやせている子どもが4,500万人(6.8パーセント)いる一方で、3,700万人(5.6パーセント)の子どもは太り過(す)ぎの傾向(けいこう)にあります。これはどちらも、栄養(えいよう)のバランスが取れていないことが原因(げんいん)です。
- ※ 重い栄養不足(えいよぶそく)により体重が減(へ)り、病気に対する抵抗力(ていこうりょく)が低下(ていか)。死の危険(きけん)に直面している状態(じょうたい)
- ※ 1.日常的(にちじょうてき)に栄養(えいよう)を十分に取ることができずに、年齢(ねんれい)に見合った身長まで成長(せいちょう)しない状態(じょうたい)
- ※ 2.太り過(す)ぎによってさまざまな病気になる危険性(きけんせい)をかかえた状態(じょうたい)
関連(かんれん)記事:なぜ世界から貧困(ひんこん)はなくならない?(別タブで開く)
日本で起きている問題
豊(ゆた)かな国だといわれる日本にも、飢餓(きが)や貧困(ひんこん)の問題があります。
●7人に1人が貧困(ひんこん)状態(じょうたい)
その国の平均的(へいきんてき)な生活水準(せいかつすいじゅん)の半分(はんぶん)以下(いか)の収入(しゅうにゅう)で暮(く)らしている状態(じょうたい)のことを、「相対的貧困(そうたいてきひんこん)」といいます。
日本では7人に1人の子どもが相対的貧困(そうたいてきひんこん)の状態(じょうたい)にあります。収入(しゅうにゅう)が少ないことにより、塾(じゅく)や大学に行けない子どもや、習い事や旅行をしたことがない子どもが増(ふ)えています。
関連(かんれん)記事:ひとり親家庭の貧困率(ひんこんりつ)は約(やく)5割(わり)。子育てに活用できる国や自治体(じちたい)の支援制度(しえんせいど)(外部リンク)
飢餓(きが)が起こる理由
どうして飢餓(きが)は起こるのでしょうか? 主(おも)な原因(げんいん)を見ていきましょう。
●戦争・紛争(ふんそう※)
戦争(せんそう)や紛争(ふんそう)は飢餓(きが)の大きな原因(げんいん)の1つです。世界で飢餓(きが)に苦しんでいる人の60パーセントは紛争(ふんそう)のえいきょうを受けている地域(ちいき)に住んでいます。
戦争(せんそう)や争(あらそ)いのせいで食べ物を作ること、食べ物をほかの場所から運んでくることが難(むずか)しくなっています。
- ※ 宗教(しゅうきょう)や文化のちがい,政治(せいじ)や経済(けいざい)問題などで起こる争(あらそ)い事
関連(かんれん)記事:世界では5分に1人の子どもが、さまざまな暴力(ぼうりょく)によって命を落としてる?(外部リンク)
●気候変動(きこうへんどう)
地球温暖化(ちきゅうおんだんか)や気候変動(きこうへんどう)も、飢餓(きが)を引き起こす大きな原因(げんいん)です。
異常気象(いじょう)による高温(こうおん)や大雨、干(かん)ばつなどのえいきょうで、作物(さくもつ)がうまく育たなくなったり、家畜(かちく)が死んでしまったりする被害(ひがい)が、世界中で増(ふ)えています。
関連(かんれん)記事:地球温暖化(ちきゅうおんだんか)が進めば、いまの場所に住めなくなる人がたくさんいる?(外部リンク)
●災害(さいがい)
地震(じしん)や台風、洪水(こうずい)といった自然災害(しぜんさいがい)も、飢餓(きが)を起こす原因(げんいん)です。
災害(さいがい)によって農地(のうち)や漁場(ぎょじょう)がダメージを受けたり、食べ物を運ぶための道路(どうろ)や港がこわれたりすると、食料(しょくりょう)の生産(せいさん)や流通に大きなえいきょうが出ます。
●人や国の不平等(ふびょうどう)
国と国の間、または同じ国の中でも、お金持ちと貧(まず)しい人の差(さ)が大きくなっています。そのため、食べ物を買うお金がない人が増(ふ)えています。
また、農村部(のうそんぶ)に住む人は勉強や仕事の機会(きかい)が少ないため貧(まず)しさからぬけ出しづらくなります。一方で、勉強や仕事の機会(きかい)が多い都市部(としぶ)に住む人が豊(ゆた)かになりやすいので、暮(く)らしに差が広がる、という問題もあります。
関連(かんれん)記事:お金、勉強、子育て…世の中は不平等(ふびょうどう)でいっぱい?(外部リンク)
●食品ロス・フードロス
世界中で作られる食べ物の5分の1にあたる、10億(おく)食分の食料(しょくりょう)が毎日捨(す)てられています。食べられるのに捨(す)てられてしまう食べ物の問題を「食品ロス」または「フードロス」といいます。
食品ロスの多くが家庭から出ており、食べ残しや、買ったけれど使い切れない、賞味期限(しょうみきげん)切れなどが理由で捨(す)てられています。このように、満足(まんぞく)に食べられない人がいるにもかかわらず、食べ物を無駄(むだ)にしてしまっていることも、飢餓(きが)の原因(げんいん)の1つといえるでしょう。
関連(かんれん)記事:100年以内(いない)に地球の資源(しげん)のほとんどがなくなる?(外部リンク)
日本財団(にっぽんざいだん)の取り組み
小規模農家(しょうきぼのうか)と共(とも)に歩(あゆ)むアフリカ農業支援(のうぎょうしえん)(別タブで開く)
アフリカでは、人口が増(ふ)えて食べ物がたくさん必要(ひつよう)になっている一方で、土(つち)がやせてしまったり、気候変動(きこうへんどう)のえいきょうを受けたりして、農作物(のうさくもつ)がとれる量(りょう)が減(へ)っています。
日本財団(にっぽんざいだん)は、アフリカの小さな農家(のうか)を支(ささ)えるため、環境(かんきょう)にやさしく、長く続(つづ)けられる農業の方法(ほうほう)を広めています。
例(たと)えば、作物を育てる場所をこまめに変(か)えたり、化学肥料(かがくひりょう)をなるべく使わずに土(つち)をよみがえらせたりする方法(ほうほう)を、現地(げんち)の農家に教えています。
子どもの貧困対策(ひんこんたいさく)(別タブで開く)
日本財団(にっぽんざいだん)では、生活が苦しい家庭に生まれ育つ子どもたちが自立する力をのばし、未来への希望(きぼう)を持って社会の中で生きぬく力を育む支援(しえん)を行っています。
例(たと)えば、人とうまく関(かか)われるようになることや、自分に自信(じしん)を持つこと、規則(きそく)正しい生活(せいかつ)ができるようになること、勉強の習慣(しゅうかん)をつけることなどを目指して、子どもたちをサポートしています。
この飢餓(きが)の問題について私(わたし)たち一人一人ができることはなんでしょう?
その答えは、ぜひ自分で調べて、考えて、自分にできることから取り組んでみてください。
本や図書館、インターネットで調べてみよう!
- 世界のどの国や地域(ちいき)で飢餓(きが)の問題が起きているのか、調べてみよう
- 飢餓(きが)をなくすために、どんな取り組みが行われているのか調べてみよう
- 日本の食品(しょくひん)ロスの現状(げんじょう)について調べてみよう。どんな食べ物が多く捨(す)てられているのか、どんな理由で捨(す)てられているのかを考えてみよう
「飢餓(きが)の問題」について学べるおすすめの本
『続(ぞく)・世界の子どもたちは今 飢餓(きが)と貧困(ひんこん)』(外部リンク)
世界の子どもたちが直面(ちょくめん)している飢餓(きが)と貧困(ひんこん)の問題について、3つの国の事例(じれい)から絵本形式で分かりやすく説明(せつめい)しています。
世界の現状(げんじょう)を知り、自分たちにできることを考えるきっかけになる本です。
『食べものが足りない! 食料危機問題(しょくりょうききもんだい)がわかる本』(外部リンク)
世界ではすでに10人に1人が飢餓(きが)のじょうたいです。今、世界で最(もっと)も大きい問題だとされる「食料危機(しょくりょうきき)」に私たちがどう向き合うべきか、イラストを使って分かりやすく解説(かいせつ)しています。
まわりの人に話を聞いてみよう!
- お父さんやお母さん、おじいさんやおばあさんに、子どものころと今とを比(くら)べて、食べ物の量(りょう)や種類(しゅるい)、食べ残(のこ)しの様子(ようす)に変化(へんか)があるか聞いてみよう
- 周(まわ)りにいる大人に、世界の飢餓(きが)問題についてどう思うか聞いてみよう。また、日本で行われている食品ロスを減(へ)らす取り組みについても意見を聞いてみよう
- いろんな人の意見を聞いたら、自分に何ができるか考えてみよう
自分にできることからやってみよう!
- 調べたこと、聞いたこと、考えたことをノートにまとめて家族、友だちに発表してみよう
- 食べきれるぶんだけ買う、外食するときも食べきれるぶんだけよそってもらうなど、できるだけ食べ残(のこ)しを減(へ)らすように心がけよう
- 賞味期限(しょうみきげん)や消費期限(しょうひきげん)をよく確認(かくにん)し、期限(きげん)の近いものから食べる、といった食べ物を使い切る工夫(くふう)をしてみよう
自分で解決方法(かいけつほうほう)を見つけるのにおすすめ!
レッドカップキャンペーン(外部リンク)
WFP国連世界食糧計画(こくれんせかいしょくりょうけいかく)という機関(きかん)が、2011年から行っている活動(かつどう)です。
「レッドカップ=赤いカップ」のマークがついた食品や日用雑貨(にちようざっか)を買うと、その商品を作っている企業(きぎょう)から売り上げの一部が寄付(きふ)されます。
寄付金(きふきん)は学校の給食(きゅうしょく)を支援(しえん)するのに使われ、学校に通う途上国(とじょうこく)の子どもたちが、勉強をしながら栄養(えいよう)のある食事もできるようになります。
ハンガーゼロ(外部リンク)
「ハンガー」とは、英語(えいご)で「飢餓(きが)」のこと。だれもが当たり前に食べられる、「ハンガー=飢餓(きが)」ゼロの社会をつくることを目指(めざ)して、日本や海外でさまざまな取り組みを行う日本国際飢餓対策機構(にほんこくさいきがたいさくきこう)が運営(うんえい)するウェブサイトです。
私(わたし)たちの知らないところで起きている、世界の飢餓(きが)の問題に関(かん)する最新(さいしん)のニュースやイベントを知ることができるほか、飢餓(きが)を無(な)くすための支援(しえん)活動に参加(さんか)したり、寄付(きふ)をしたりすることもできます。
イラスト:KIKO
[参考文献]
国際連合広報センター「持続可能な開発目標(SDGs)報告 2023:特別版」(外部リンク)
United Nations SDGs Report 2024「Zero hunger」(外部リンク)
国際連合広報センター「7億8,300万人が飢餓に苦しむ中、食料全体の5分の1が廃棄処分に(UN News 記事・日本語訳)」(外部リンク)
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