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IMBY(インビー)な若者は安全保障や防衛に肯定的~18歳意識調査アンケートより~

中央には街なかにいる迷彩柄の服を着た男性が、テレビ画面の中に映されています。彼の周りには、彼に対して関心を示しているような表情で男性を見つめる人が集まっています。一方、人々が映っているテレビが置かれているテレビ台のふちには何人かの人が座っており、会話をしたりスマートフォンを眺めたりしていますが、そのうち緑髪の男の子だけがテレビの画面を見ており、IMBY(インビー)という言葉を連想しています
「裏庭」と自分ごと

取材:日本財団ジャーナル編集部

石破内閣の基本方針には「日本を守る」が掲げられ、安全保障、防衛力、外交といったキーワードが冒頭から並んでいます。

その方針と反して、日本財団18歳意識調査「第65回 -総裁選/政治関心-」(別タブで開く/PDF)によると、若者にとって、これからの日本の政治で力を入れて取り組んでほしい上位のテーマは自分の生活に直結するものが並び、外交・安全保障や防衛は全体で7番目です。

質問:これからの日本の政治で、特に力を入れて取り組んでほしいテーマを3つまで教えてください。(3つまで複数回答)
18歳意識調査の棒グラフ。「これからの日本の政治で、特に力を入れて取り組んでほしいテーマ」という質問に回答した人の項目別割合(%)。
全体の降順で上位10位までの回答を抜粋した。なお、実際の調査では「外交・安全保障」と「防衛」は別の選択肢としていたが、このグラフでは「外交・安全保障」もしくは「防衛」を選択した人の比率を表示している。
 「少子化・子育て支援」と回答した人は全体(n=1,000)の38.2%。
「経済・景気対策」と回答した人は全体(n=1,000)の34.0%
「教育」と回答した人は全体(n=1,000)の24.3%。
「働き方改革」と回答した人は全体(n=1,000)の23.3%。
「社会保障(年金、保険料等)」と回答した人は全体(n=1,000)の20.0%。
「税制改正」と回答した人は全体(n=1,000)の19.2%。
「外交・安全保障、防衛」と回答した人は全体(n=1,000)の16.3%。
「ジェンダー平等・性の多様性」と回答した人は全体(n=1,000)の13.4%。
「環境・気候変動・エネルギー」と回答した人は全体(n=1,000)の12.0%。
「防災」と回答した人は全体(n=1,000)の8.9%
出典:18歳意識調査「第65回 –総裁選/政治関心–」。※全体の降順で上位10位までを表示。実際の調査では「外交・安全保障」と「防衛」は別の選択肢としていたが、ここでは「外交・安全保障」もしくは「防衛」を選択した人の比率を表示

18歳意識調査第53回「国家安全保障」(別タグで開く/PDF)によると、「今後5年間で日本が他国と武力衝突をする可能性」が80パーセント以上の確率と答えた若者は10パーセントもいません。

防衛関連経費を増やす政府の方針に賛成と回答した若者も同じような割合です。

質問:今後5年間で、日本が他国と武力衝突をする可能性はどれくらいあると思いますか。(選択式/単一)
8歳意識調査の棒グラフ。「今後5年間で、日本が他国と武力衝突をする可能性はどれくらいあると思うか」という質問に回答した人の項目別割合(%)。
全体(n=1,000)のうち、「100%の確率である」と回答した人は1.7%。「80%の確率である」と回答した人は6.6%。「50%の確率である」と回答した人は24.1%。「30%の確率である」と回答した人は21.2%。「10%の確率である」と回答した人は11.2%。「5%の確率である」と回答した人は8.1%。「侵略される可能性はない」と答えた人は2.9%。「わからない」と回答した人は24.2%
男性(n=514)のうち、「100%の確率である」と回答した人は2.5%。「80%の確率である」と回答した人は8.4%。「50%の確率である」と回答した人は23.7%。「30%の確率である」と回答した人は21.0%。「10%の確率である」と回答した人は11.9%。「5%の確率である」と回答した人は9.5%。「侵略される可能性はない」と答えた人は2.9%。「わからない」と回答した人は20.0%。
女性(n=486)のうち、「100%の確率である」と回答した人は0.8%。「80%の確率である」と回答した人は4.7%。「50%の確率である」と回答した人は24.5%。「30%の確率である」と回答した人は21.4%。「10%の確率である」と回答した人は10.5%。「5%の確率である」と回答した人は6.6%。「侵略される可能性はない」と答えた人は2.9%。「わからない」と回答した人は28.6%
出典:18歳意識調査「第53回 –国家安全保障–」
質問:政府は防衛関連経費をこれまでよりも増額し、2023~27年度の防衛関連経費の総額を43兆円とする方針です。あなたは防衛関連経費を増やす政府のこの方針について、どのように考えますか。(選択式/単一)
18歳意識調査の棒グラフ。「防衛関連経費を増やす政府の方針についてどう思うか」という質問に回答した人の項目別割合(%)。
全体(n=1,000)で「賛成である」と回答した人は9.4%。「どちらかといえば賛成である」と回答した人は29.5%。「どちらかといえば反対である」と回答した人は22.4%。「反対である」と回答した人は9.8%。「わからない」と回答した人は28.9%。
男性(n=514)で「賛成である」と回答した人は13.8%。「どちらかといえば賛成である」と回答した人は30.7%。「どちらかといえば反対である」と回答した人は20.8%。「反対である」と回答した人は9.9%。「わからない」と回答した人は24.7%。
女性(n=486)で「賛成である」と回答した人は4.7%。「どちらかといえば賛成である」と回答した人は28.2%。「どちらかといえば反対である」と回答した人は24.1%。「反対である」と回答した人は9.7%。「わからない」と回答した人は33.3%
出典:18歳意識調査「第53回 –国家安全保障–」

ただ、仮に防衛関連経費を増やしたとしても、防衛力を上げるには自衛官や戦闘員の増員が必要になるわけですが、80パーセント以上の若者は徴兵制には反対です。

質問:もし仮に、現行の憲法や法制度にかかわらず、日本で徴兵制度導入の是非が議論になった場合、あなたの意見を教えてください。(選択式/単一)
18歳意識調査の棒グラフ。「日本の徴兵制度導入の是非が議論になった場合、あなたの意見は」という質問に回答した人の項目別割合(%)。
全体(n=1,000)で「賛成である」と回答した人は5.4%。「どちらかといえば賛成である」と回答した人は14.1%。「どちらかといえば反対である」と回答した人は26.4%。「反対である」と回答した人は54.1%。
男性(n=514)で「賛成である」と回答した人は7.8%。「どちらかといえば賛成である」と回答した人は16.0%。「どちらかといえば反対である」と回答した人は20.8%。「反対である」と回答した人は55.4%。
女性(n=486)で「賛成である」と回答した人は2.9%。「どちらかといえば賛成である」と回答した人は12.1%。「どちらかといえば反対である」と回答した人は32.3%。「反対である」と回答した人は52.7%
出典:18歳意識調査「第53回 –国家安全保障–」

本調査では若者の6割が今の日本は平和と感じており、武力衝突は他人事という意識が見られます。平和憲法のもと、軍事的解決よりも外交的努力を重視して、防衛費を増やすよりも平和的な外交や国際協力を通じて安全保障を確保すべきと考える若者が多数派という結果になるのではないかと考えられます。

とはいえ、こうしている今も世界では武力衝突が起きていますし、日本でも隣国との武力衝突の可能性はゼロではなく、3.11東日本大震災やコロナウィルスによるパンデミックを教訓として、有事に向けて正しく備えるためには大勢の意見に流されて終わりではなく、多様な背景を持つ若者による安全保障や防衛のあり方の議論が必要となるでしょう。

では、そのような議論に参加する「安全保障や防衛を肯定的に捉えている側の若者はどのような人だろうか?」と考えてみると、日本財団18歳意識調査からともに体験にまつわる2つのキーワードが見つかりました。

一つはボランティア、もう一つはIMBY(インビー)です。

自衛隊の評価は、回答者である若者のこれまでのボランティア体験によって異なります。

質問:あなたは、これまでの自衛隊の活動について、どのように評価しますか。(選択式/単一) ※ボランティア活動への参加経験(表側)別に分析
【海外での活動】他国の活動に対する後方支援など
18歳意識調査の棒グラフ。「自衛隊のこれまでの海外での活動(他国の活動に対する後方支援など)について、どのように評価するか」という質問に回答した人の項目別割合(%)。
なお、回答者には本調査内で「ボランティア活動に参加した経験があるか」という質問をしており、「3年以内に参加した経験がある」、「3年より前に参加した経験がある」、「したことがないが、内容によっては参加してもよい」、「したことがなく、これからも参加するつもりはない」の4種類の回答をしたグループごとに、本設問の結果を分析した。

全体(n=1,000)のうち、「評価する」と回答した人は39.7%。「どちらかといえば評価する」と回答した人は24.1%。「どちらかといえば評価しない」と回答した人は8.9%。「評価しない」と回答した人は3.4%。「わからない」と回答した人は23.9%。
「(ボランティア活動に)3年以内に参加した経験がある」と答えた人(n=213)のうち、「評価する」と回答した人は54.9%。「どちらかといえば評価する」と回答した人は24.9%。「どちらかといえば評価しない」と回答した人は7.0%。「評価しない」と回答した人は0.9%。「わからない」と回答した人は12.2%。
「3年より前に参加した経験がある」と答えた人(n=174)のうち、「評価する」と回答した人は48.3%。「どちらかといえば評価する」と回答した人は27.6%。「どちらかといえば評価しない」と回答した人は12.1%。「評価しない」と回答した人は2.3%。「わからない」と回答した人は9.8%。
「したことがないが、内容によっては参加してもよい」と答えた人(n=313)のうち、「評価する」と回答した人は44.1%。「どちらかといえば評価する」と回答した人は26.5%。「どちらかといえば評価しない」と回答した人は8.0%。「評価しない」と回答した人は3.5%。「わからない」と回答した人は17.9%。
「したことがなく、これからも参加するつもりはない」と答えた人(n=300)のうち、「評価する」と回答した人は19.3%。「どちらかといえば評価する」と回答した人は19.0%。「どちらかといえば評価しない」と回答した人は9.3%。「評価しない」と回答した人は5.7%。「わからない」と回答した人は46.7%
出典:18歳意識調査「第53回 –国家安全保障–」
【海外での活動】国際平和協力活動など
18歳意識調査の棒グラフ。「自衛隊の海外での活動(国際平和協力活動など)について、どのように評価するか」という質問に回答した人の項目別割合(%)。
なお、回答者には本調査内で「ボランティア活動に参加した経験があるか」という質問をしており、「3年以内に参加した経験がある」、「3年より前に参加した経験がある」、「したことがないが、内容によっては参加してもよい」、「したことがなく、これからも参加するつもりはない」の4種類の回答をしたグループごとに、本設問の結果を分析した。

全体(n=1,000)のうち、「評価する」と回答した人は42.5%。「どちらかといえば評価する」と回答した人は25.3%。「どちらかといえば評価しない」と回答した人は7.0%。「評価しない」と回答した人は2.6%。「わからない」と回答した人は22.6%。
「(ボランティア活動に)3年以内に参加した経験がある」と答えた人(n=213)のうち、「評価する」と回答した人は59.6%。「どちらかといえば評価する」と回答した人は23.9%。「どちらかといえば評価しない」と回答した人は3.8%。「評価しない」と回答した人は0.9%。「わからない」と回答した人は11.7%。
「3年より前に参加した経験がある」と答えた人(n=174)のうち、「評価する」と回答した人は51.7%。「どちらかといえば評価する」と回答した人は28.2%。「どちらかといえば評価しない」と回答した人は6.9%。「評価しない」と回答した人は2.3%。「わからない」と回答した人は10.9%。
「したことがないが、内容によっては参加してもよい」と答えた人(n=313)のうち、「評価する」と回答した人は46.0%。「どちらかといえば評価する」と回答した人は28.8%。「どちらかといえば評価しない」と回答した人は8.0%。「評価しない」と回答した人は1.6%。「わからない」と回答した人は15.7%。
「したことがなく、これからも参加するつもりはない」と答えた人(n=300)のうち、自衛隊の活動を「評価する」と回答した人は21.3%。「どちらかといえば評価する」と回答した人は21.0%。「どちらかといえば評価しない」と回答した人は8.3%。「評価しない」と回答した人は5.0%。「わからない」と回答した人は44.3%
出典:18歳意識調査「第53回 –国家安全保障–」

3年以内にボランティア活動に参加した経験がある人、3年より前に参加した経験がある人、過去にボランティア活動に参加したことがない人の順に、自衛隊の海外活動への評価が高いという顕著な差が見られます。

海外での自衛隊の貢献は一般には分かりづらいものです。ボランティアをしている若者ほどそうしたことに感度が高く、高く評価する傾向にあるようです。

Not in My Backyard(略してNIMBY:ニンビーという。直訳すると「自分の裏庭ではダメ」)は、「防衛や安全保障は必要だと理解しているが、自分の地域や生活圏内には持ち込まないで」との矛盾している拒否感情を指す言葉です。

米軍基地や軍事施設は、米軍関係者による事件・事故や米軍機の離発着に伴う騒音などの地域住民の生活に及ぼす影響や、有事の際に真っ先に標的にされかねない懸念などから、NIMBYの典型的な例でしょう。

戦後の歴史や占領時代の伝聞や憲法第9条の平和主義に軍事力との相反という感情的な要素もあることでしょう。自衛隊の基地や施設に対しても、軍事基地や訓練場が近くにあると航空機や演習の騒音と振動、交通渋滞などの生活環境の悪化や、観光業や自然への悪影響への懸念からNIMBYと考えられます。

そのように考えられるのですが、次のアンケート結果を見てください。

質問:もし仮に、現行の憲法や法制度にかかわらず、日本で徴兵制度導入の是非が議論になった場合、あなたの意見を教えてください。(選択式/単一)
※米軍近くの居住経験有無(表側)別に分析
18歳意識調査の棒グラフ。「日本の徴兵制度導入の是非が議論になった場合、あなたの意見は」という質問に回答した人の項目別割合(%)。
なお、回答者には本調査内で「あなたが生まれ育った自治体(市区町村)や今住んでいる自治体(同)の近くに、自衛隊の基地や駐屯地、米軍基地があるか」という質問をしており、米軍基地について、「ある」、「ない」、「わからない」の3種類の回答をしたグループごとに、本設問の結果を分析した。
全体(n=1,000)のうち、徴兵制度に「賛成」と回答した人は5.4%。「どちらかといえば賛成」と回答した人は14.1%。「どちらかといえば反対」と回答した人は26.4%。「反対」と回答した人は54.1%。
米軍近くの居住経験が「ある」と答えた人(n=99)のうち、徴兵制度に「賛成」と回答した人は23.2%。「どちらかといえば賛成」と回答した人は15.2%。「どちらかといえば反対」と回答した人は21.2%。「反対」と回答した人は40.4%。
米軍近くの居住経験が「ない」と答えた人(n=605)のうち、徴兵制度に「賛成」と回答した人は3.8%。「どちらかといえば賛成」と回答した人は14.4%。「どちらかといえば反対」と回答した人は23.3%。「反対」と回答した人は58.5%。
米軍近くの居住経験があるかどうか「わからない」と答えた人(n=296)のうち、徴兵制度に「賛成」と回答した人は2.7%。「どちらかといえば賛成」と回答した人は13.2%。「どちらかといえば反対」と回答した人は34.5%。「反対」と回答した人は49.7%
出典:18歳意識調査「第53回 –国家安全保障–」
※自衛隊近くの居住経験有無(表側)別に分析
18歳意識調査の棒グラフ。「日本の徴兵制度導入の是非が議論になった場合、あなたはどう思うか」という質問に回答した人の項目別割合(%)。
なお、回答者には本調査内で「あなたが生まれ育った自治体(市区町村)や今住んでいる自治体(同)の近くに、自衛隊の基地や駐屯地、米軍基地があるか」という質問をしており、自衛隊の基地や駐屯地について「ある」、「ない」、「わからない」の3種類の回答をしたグループごとに、本設問の結果を分析した。

全体(n=1,000)のうち、徴兵制度に「賛成」と回答した人は5.4%。「どちらかといえば賛成」と回答した人は14.1%。「どちらかといえば反対」と回答した人は26.4%。「反対」と回答した人は54.1%。
自衛隊近くの居住経験が「ある」と答えた人(n=260)のうち、徴兵制度に「賛成」と回答した人は11.9%。「どちらかといえば賛成」と回答した人は15.0%。「どちらかといえば反対」と回答した人は23.8%。「反対」と回答した人は49.2%。
自衛隊近くの居住経験が「ない」と答えた人(n=448)のうち、「賛成」と回答した人は3.3%。「どちらかといえば賛成」と回答した人は14.1%。「どちらかといえば反対」と回答した人は23.0%。「反対」と回答した人は59.6%。
自衛隊近くの居住経験があるかどうか「わからない」と答えた人(n=292)のうち、「賛成」と回答した人は2.7%。「どちらかといえば賛成」と回答した人は13.4%。「どちらかといえば反対」と回答した人は33.9%。「反対」と回答した人は50.0%
出典:18歳意識調査「第53回 –国家安全保障–」

過去や現在居住している(た)自治体の近くに米軍や自衛隊の基地や駐屯地が「ある」若者は、そうでない若者と比べて徴兵制度導入に賛成と回答した割合が顕著に多くなっています。

本人の意思とは関係なく米軍や自衛隊の近くに居住した経験のある若者は、安全保障や防衛に対して肯定的に捉えているように見えます。NIMBYのNotを取って、米軍や自衛隊が近くにあるIn My Backyard(IMBY:インビー)な若者の意識はそうでない人と比べて大きく異なることが分かります。

日本と外国との間で戦争・武力衝突などが生じた時の自分自身の行動に関する質問でも同様の傾向が見られました。注目すべきは「日本を敵国が攻撃し、自分には直接関係のない日本国民に危害が及ぶ可能性がある」といった他人事と言ってもよい条件設定でも、インビーな若者は「戦闘員として志願し戦う」と回答した割合が多かったのです。

質問:日本と外国との間で戦争・武力衝突などにより以下のような事態が生じた時、あなたはどのように行動しますか。それぞれの項目について1つずつ選んでください。(選択式/単一) 
【日本を敵国が攻撃し、自分には直接関係のない日本国民に危害が及ぶ可能性がある】
※米軍近くの居住経験有無(表側)別に分析
18歳意識調査の棒グラフ。「日本を敵国が攻撃し、自分には直接関係のない日本国民に危害が及ぶ可能性がある場合、あなたはどのように行動しますか」という質問に回答した人の項目別割合(%)。
なお、回答者には本調査内で「あなたが生まれ育った自治体(市区町村)や今住んでいる自治体(同)の近くに、自衛隊の基地や駐屯地、米軍基地があるか」という質問をしており、米軍基地について「ある」、「ない」、「わからない」の3種類の回答をしたグループごとに、本設問の結果を分析した。

全体(n=1,000)のうち「戦闘員として志願し、戦う」と回答した人は9.7%。「戦闘以外の方法で協力する(例:寄付する、ボランティアとして戦闘員の活動を支援する等)」と回答した人は29.2%。「何もしない」と回答した人は26.0%。「その他」を選んだ人は1.8%。「わからない」と回答した人は33.3%。
米軍近くでの居住経験が「ある」と答えた人(n=99)のうち、「戦闘員として志願し、戦う」と回答した人は34.3%。「戦闘以外の方法で協力する(例:寄付する、ボランティアとして戦闘員の活動を支援する等)」と回答した人は23.2%。「何もしない」と回答した人は23.2%。「その他」を選んだ人は5.1%。「わからない」と回答した人は14.1%。
米軍近くでの居住経験が「ない」と答えた人(n=605)のうち、「戦闘員として志願し、戦う」と回答した人は7.9%。「戦闘以外の方法で協力する(例:寄付する、ボランティアとして戦闘員の活動を支援する等)」と回答した人は38.3%。「何もしない」と回答した人は32.9%。「その他」を選んだ人は1.5%。「わからない」と回答した人は19.3%。
米軍近くでの居住経験があるかどうか「わからない」と答えた人(n=296)のうち、「戦闘員として志願し、戦う」と回答した人は5.1%。「戦闘以外の方法で協力する(例:寄付する、ボランティアとして戦闘員の活動を支援する等)」と回答した人は12.5%。「何もしない」と回答した人は12.8%。「その他」を選んだ人は1.4%。「わからない」と回答した人は68.2%
出典:18歳意識調査「第53回 –国家安全保障–」
※自衛隊近くの居住経験有無(表側)別に分析
18歳意識調査の棒グラフ。「日本を敵国が攻撃し、自分には直接関係のない日本国民に危害が及ぶ可能性がある場合、あなたはどのように行動しますか」という質問に回答した人の項目別割合(%)。
なお、回答者には本調査内で「あなたが生まれ育った自治体(市区町村)や今住んでいる自治体(同)の近くに、自衛隊の基地や駐屯地、米軍基地があるか」という質問をしており、自衛隊の基地や駐屯地について「ある」、「ない」、「わからない」の3種類の回答をしたグループごとに、本設問の結果を分析した。

全体(n=1,000)のうち「戦闘員として志願し、戦う」と回答した人は9.7%。「戦闘以外の方法で協力する(例:寄付する、ボランティアとして戦闘員の活動を支援する等)」と回答した人は29.2%。「何もしない」と回答した人は26.0%。「その他」を選んだ人は1.8%。「わからない」と回答した人は33.3%。
自衛隊近くでの居住経験が「ある」と答えた人(n=260)のうち、「戦闘員として志願し、戦う」と回答した人は22.7%。「戦闘以外の方法で協力する(例:寄付する、ボランティアとして戦闘員の活動を支援する等)」と回答した人は35.0%。「何もしない」と回答した人は23.5%。「その他」を選んだ人は3.1%。「わからない」と回答した人は15.8%。
自衛隊近くでの居住経験が「ない」と答えた人(n=448)のうち、「戦闘員として志願し、戦う」と回答した人は5.6%。「戦闘以外の方法で協力する(例:寄付する、ボランティアとして戦闘員の活動を支援する等)」と回答した人は36.4%。「何もしない」と回答した人は34.6%。「その他」を選んだ人は1.6%。「わからない」と回答した人は21.9%。
自衛隊近くでの居住経験があるかどうか「わからない」と答えた人(n=292)のうち、「戦闘員として志願し、戦う」と回答した人は4.5%。「戦闘以外の方法で協力する(例:寄付する、ボランティアとして戦闘員の活動を支援する等)」と回答した人は13.0%。「何もしない」と回答した人は15.1%。「その他」を選んだ人は1.0%。「わからない」と回答した人は66.4%
出典:18歳意識調査「第53回 –国家安全保障–」

インビーな若者は防衛関連諸経費の増額方針にも賛成する割合が多いです。

質問:政府は防衛関連経費をこれまでよりも増額し、2023~27年度の防衛関連経費の総額を43兆円とする方針です。あなたは防衛関連経費を増やす政府のこの方針について、どのように考えますか。(選択式/単一))
※自衛隊近くの居住経験有無(表側)別に分析
18歳意識調査の棒グラフ。「防衛関連経費を増額しようとしている政府の方針について、どう考えるか」という質問に回答した人の項目別割合(%)。
なお、回答者には本調査内で「あなたが生まれ育った自治体(市区町村)や今住んでいる自治体(同)の近くに、自衛隊の基地や駐屯地、米軍基地があるか」という質問をしており、自衛隊の基地や駐屯地について「ある」、「ない」、「わからない」の3種類の回答をしたグループごとに、本設問の結果を分析した。

全体(n=1,000)のうち「賛成である」と回答した人は9.4%。「どちらかといえば賛成である」と回答した人は29.5%。「どちらかといえば反対である」と回答した人は22.4%。「反対である」を選んだ人は9.8%。「わからない」と回答した人は28.9%。
自衛隊近くでの居住経験が「ある」と答えた人(n=260)のうち、「賛成である」と回答した人は16.9%。「どちらかといえば賛成である」と回答した人は37.3%。「どちらかといえば反対である」と回答した人は21.9%。「反対である」を選んだ人は9.2%。「わからない」と回答した人は14.6%。
自衛隊近くでの居住経験が「ない」と答えた人(n=448)のうち、「賛成である」と回答した人は7.8%。「どちらかといえば賛成である」と回答した人は34.6%。「どちらかといえば反対である」と回答した人は27.7%。「反対である」を選んだ人は12.9%。「わからない」と回答した人は17.0%。
自衛隊近くでの居住経験があるかどうか「わからない」と答えた人(n=292)のうち、「賛成である」と回答した人は5.1%。「どちらかといえば賛成である」と回答した人は14.7%。「どちらかといえば反対である」と回答した人は14.7%。「反対である」を選んだ人は5.5%。「わからない」と回答した人は59.9%
出典:18歳意識調査「第53回 –国家安全保障–」

つまり、NIMBY(ニンビー)であることには違いない米軍や自衛隊の基地ですが、IMBY(インビー)になると安全保障や防衛への感度が高くなり肯定的な若者が増える現象が見られます。

このような現象について、若者の意識と安全保障の関係を調査されており、今回の日本財団18歳意識調査の設計にご助言をいただいた早稲田大学教育・総合科学学術院の野上(のがみ)先生にお話を聞きました。

野上先生インタビュー

「ボランティアには肯定派が多い」

野上元さん(以下、敬称略):今回の日本財団18歳意識調査の「ボランティアの参加有無と国家安全保障の関心との相関」を興味深く読んだ。ボランティアに参加しているような若者の方が、米軍や自衛隊に対してより肯定的という結果がきれいに出ている。ここでいう「ボランティアへの参加」は、知識を持っているだけではなく社会に自分から関わっていこうという動的な関心を意味する。知識を前提として関心が生まれるということもあるが、ボランティアは関心から始まる気がする。国家安全保障についてバランスの良い議論には、社会への関心が不可欠だと思う。

ただ、ボランティアに関心を持つ「から」米軍・自衛隊に肯定的だと捉えてしまうとちょっと違っていて、この二つは因果関係ではなく、「社会への関心の高さ」という共通の親から生まれたきょうだいのようなものだということだ。

とはいえ、ボランティアという言葉は、元々は志願兵・義勇兵を意味するので、もしこの調査が国際的な国家安全保障の意識調査であればこの結果はその文脈で読まれるだろう。他人の困窮や苦境に敏感に反応する人々。しかし、日本では意味が違うはずであり、ボランティアに関心があるのであれば戦争に行けという主張が極論であることは言うまでもない。

「知識が肯定派の若者を増やす」

野上:「米軍や自衛隊に肯定的な若者の中には知識・関心がある人が多い」と言える。知識・関心があるから肯定的とは限らず、知識・関心ゆえに否定的になる人もいるわけだが、知識・関心がある若者の半分が否定的だとしても、残りの半分が肯定に回れば全体の数字の傾向のなかでは肯定派が表れてくる。このことは、京都大学の吉田純教授の調査でも私自身の調査でも同じような結果が出ている。

例えば、2022年2月のロシアによるウクライナへの侵攻の前に、国境の緊張状態が2021年末から起こっていたことについて、侵攻直前の私の調査(「わからない(DK)という無責任、それとも希望?」『思想』 (1177号)p5-16 2022年5月)では、その時点でロシア/ウクライナに軍事的緊張状態があるという知識を持っていた若者は、そうでない若者に比べて、軍隊の存在や戦うことに対する肯定的な態度が出ていた。つまり、平和を守るために必要な要素としての軍隊の存在について、社会情勢に知識を持つ若者の一部が肯定していた、と私は考えている。反対に、「戦争を絶対に拒否する」と答えている若者の多くは、ウクライナが緊張状態にあることをほとんど知らなかった。

この調査結果は示唆的だ。この結果を踏まえると、日本財団18歳意識調査の、米軍や自衛隊基地が国家安全保障への知識・関心を高め、肯定派を増やすという結果は次のように理解できるのではないか。つまり、基地が自分の住む自治体や近くの自治体にあると基地を自分事として考えることが多くなり、関心や知識が増し、それをきっかけに米軍や自衛隊の存在に肯定的な人が増えてくる。もちろん、関心や知識によって否定的になる人もいるだろう。反対に、基地がない地域で自分事として考えるきっかけがない場合には否定派が多数のまま、という結果となる。これらを合わせて全体をみれば、基地の存在による関心が肯定を一程度増やすことになる、ということだ。

私の調査からもいえるが、戦後平和主義が今の日本の地盤だと言われてきたが、実は国家安全保障への知識・関心がない環境の上に今の日本の平和主義は成り立っている。もし、そうだとすると危うい状況と言え、平和や国家安全保障に対する知識提供・関心喚起のあり方を改めて考えないといけないだろう。世界的には「軍隊は戦争を防ぐ(平和を守る)ために存在する」という見方が一般的だ。戦争など誰もやりたくないが、平和を守るためには、やりたくないことを誰かがやる必要が出てくるかもしれないという議論は必要だろう。

「自分事化が議論の質を上げる」

野上:私の調査でも日本財団18歳意識調査でも、若者に聞いている以上、かなり自分事化した回答が得られているのではないかと思う。基地があることによって知識が増える、知識が増えると基地もやむなしという人が増える。そうした人たちの問題意識は、基地があることそのものよりも、それが何故自分の地域にあるのか、という負担の不平等感の方だろう。NIMBYと同じ構造だと思う。自分の家の前に原発があるのは誰もが嫌なこと、徴兵制を進んで受け入れる人もいないはずだ。

だからこそ、今回の調査のように自分事になりうる若い層にこそ考え方を聞くべきで、高齢者が自分は兵役に行くことはなく安全な場所にいるのに「戦わない若者はけしからん」と言うのは非道徳的だ。そうではなく、若者が納得して議論できるように、関心によって求められる知識を提供し、一つの選択肢に誘導するのではなく、かれら自身の利害をめぐる論点を整理してあげるのが求められていることではないだろうか。LGBTで言えば「LGBTの人がかわいそうだから優しくしてあげよう」というレベルの話から、一緒にトイレやお風呂に入ることには慣れきれないけどどうしたら共生できるだろうといった自分に近い話になって、議論の段階が一つ前に進んだと思う。そこで試されるのは公共的な議論。みんなの利害に関わってきていて、自分事として捉えて議論している状態になると良い。

一方、私の調査で注目したのは、政治でいうところの無党派層のように、状況によって戦うと回答したり戦わないと回答したり、「わからない」と回答したりして、その時々で回答が変わる若者がいることである。こうした人は一見知識が少ない人に映るが、この中には、知識があって揺れ動いているので「わからない」と回答する人も含まれている。アンケート調査では、自分の人生上の出来事や社会の出来事によっても変動する若者の意見を、一瞬だけ切り取って見ることになる。そのスナップショットを「●●パーセントの人が肯定的である」と言ってしまうことが適切なのだろうか。倫理に根ざし論理が成り立たなければ、そもそも単純な多数決で決めていい問題でもない。とすれば、調査と分析に求められているのは、社会情勢によって回答者の意見や回答の傾向が変わる様を時系列的に精査してゆくことだろう。

「『進撃の巨人』が若者の意識に与えた影響」

野上:ところで、「進撃の巨人」という作品がある。私の調査や日本財団18歳意識調査の回答者はまさにこの作品を読んで育った世代にみえる。主人公たちは壁に頼って生きている。これが日本。壁が壊される前の憲兵団は壁に守られているから大丈夫、と思っていた。その壁が米軍。外から来た巨人にある日突然、壁を壊されることによってみんな震え上がる。そして、若い調査兵団は、自分事として戦う理由がはっきりしていて、危険と言われる壁の外に出て戦うこともいとわない。が、守ってあげているはずの国民からは理解されず、逆に絶対に悪だったはずの「敵」の輪郭もぼやけてゆく、というストーリーが用意されている。戦争ものとしては今までの作品と少し異なる感じがする。


また、この作品では、先祖の国家間のいさかいの歴史を子どもたちは知らず、自分たちがなぜ憎まれるのかわからずに戸惑うシーンもある。まさに今の日本と韓国や中国のようだ。当時を知るものは世を去ってゆき、自分たちの先祖のしたことは忘れ、他方で「日本が過去にしでかしたことを忘れないぞ」と言っている隣国がいくつかあって、日本が今アジアの隣国の憎しみに囲まれているメタファーにも見える。加害を忘れることで成り立ってきた平和主義のナショナリズムと、被害を忘れないことで成り立ってきた反日のナショナリズム。


この読者である若者には、この作品が安全保障に対する意識を変えたのだろうかを聞いてみたいところだし、作者には日本の国家安全保障の観点からこの作品の状況設定をどういうものとして考え、作品を通して何をどのように伝えようとしていたかを聞いてみたいところだ。

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