未来のために何ができる?が見つかるメディア
非営利団体にはいくつ法人格の種類がある? それぞれの特徴と設立要件を解説
- 非営利団体にはNPO法人や社団法人、財団法人などさまざまな法人格がある
- そのうちNPO法人には4種類あり、それぞれ認定要件や優遇措置が異なる
- 法人を設立する際には、団体の活動内容や規模に適した法人格選びが重要
執筆:日本財団ジャーナル編集部
事業として社会課題の解決に取り組むためには、団体の目的に適した法人格の選択が重要である。
非営利団体には、NPO法人や一般社団法人などさまざまな種類があり、それぞれに特徴や設立要件、税制上の優遇措置などが異なる。
この記事では、これから非営利団体の設立を考えている方、あるいは既存団体の法人化を検討している方に向けて、主な非営利法人の種類や特徴、選択のポイントを解説する。
1.営利法人と非営利法人の違い
営利法人と非営利活動法人との根本的な違いは、事業で得た利益の配分方法にある。
- 営利法人
- 株式会社、合同会社、合資会社などが該当。事業活動で得た利益を、株主などの出資者に分配することを目的としている。例えば、営利法人である株式会社は、商品の製造・販売、サービスの提供などを通じて利益を上げ、株主へ配当という形で利益を分配する
- 非営利法人
- NPO法人、一般社団法人、一般財団法人、医療法人などが該当。寄付金・支援金・会費・事業活動から得た利益を、社員や設立者などに分配することは認められず、事業活動を継続するために使用しなければならない。ちなみにここでいう「社員」とは、株式会社における株主のような、法人の意思決定に参加する権利を持つ構成員を指す
![[一般的な会社]
売上=費用+利益
利益を分配→株主/役員・従業員
[非営利法人]
事業収入・寄付金等=費用+利益
利益を次の活動資金に](/wp-content/uploads/2025/08/SEO-1_3.png)
2. 非営利団体の法人格の種類とそれぞれの違い
非営利活動法人は法人格の種類によって特徴、要件、優遇内容が異なる。ここでは、法人格ごとの詳細について解説する。
2-1. NPO法人(特定非営利活動法人)
保険、福祉、教育、まちづくり、環境保全、国際協力など、法律で定められた20分野など、法律で定められた20分野の社会貢献活動を行う団体。設立するためには10人以上の社員が必要となり、都道府県または政令市の長が管轄する所轄庁の認証を受ける必要がある。
法人税は、収益事業から生じた所得にのみ課され、収益事業以外には課されない。特に公益性が高いと認められた場合には認定NPO法人、特例認定NPO法人、指定NPO法人となることができ、寄付者への税制優遇などがある。
これらの詳細は後の章で解説する。
関連記事:NPO法人とは?収入源・メリット・設立の流れを簡単に解説(別タブで開く)
2-2. 一般社団法人
一般社団法人は、事業内容に制限がなく幅広い活動を行える。社員2名以上、理事1名(社員と理事は兼任可)以上いれば設立できる。
一般社団法人は法人税法上「非営利型法人」「非営利型法人以外の法人(普通型)」の2つに分かれる。どちらも非営利法人だが、法人税の課税対象となる所得が異なる。
非営利型の一般社団法人の課税対象は、NPO法人と同じ「収益事業から生じた所得のみ」。一方、非営利型法人以外の法人は、全所得に課税される。
2-3. 一般財団法人
一般財団法人は個人や法人が拠出した財産(300万円以上)を維持・運用し、その運用益を特定の事業に活用する団体。設立するには設立者1名以上(理事・監事と兼任可)、理事3名以上、評議員3名以上、 監事1名以上の最低7名以上が必要となる。
大きな特徴は、一般的な法人が「人の集団」に法人格が与えられるのに対し、一般財団法人は「一定の財産」に法人格が与えられる点にある。
また、一般社団法人同様、事業内容に制限がなく幅広い活動を行えるが、法人税法上「非営利型法人」「非営利型法人以外の法人(普通型)」の2つに分かれ、課税対象も同じ。「非営利型法人」の特定の事業の具体例としては、奨学金の支給、研究活動への助成、芸術・文化活動への支援などがある。
2-4. 公益社団法人・公益財団法人
公益社団法人・公益財団法人は、一般社団法人・一般財団法人のうち、公益性が高いと行政庁(内閣府または都道府県)から認定を受けた団体。公益目的事業の割合が費用額において50パーセント以上を占めるといった、厳しい認定基準を満たす必要がある。
また公益目的事業は非課税であり、寄付者も税制優遇を受けられる。
公益性が高いと認定されるには、学術・技芸・慈善などに関する事業であって、不特定の多くの人の利益に寄与する事業を行うことが必要となる。
2-5. 社会福祉法人
社会福祉法人は、介護、障害者支援、児童福祉など、社会福祉事業を行う団体。具体的には特別養護老人ホームや介護老人保健施設、障害者支援施設、保育所の運営などが挙げられる。設立には、最低6名以上の理事と2名以上の監事が必要だ。
事業運営には、社会福祉法に基づいて国や自治体からの指導監督を受ける。社会福祉事業の適正な運営確保のために、事業報告書の提出、会計監査、運用状況の報告などが求められる。社会福祉事業は非課税であり、さまざまな税制優遇がある。
2-6. その他の非営利法人
その他にも次のような非営利法人がある。
- 学校法人
- 私立学校の設置・運営を行う
- 医療法人
- 病院や診療所などの開設・運営を行う
- 宗教法人
- 神社、寺院、教会などの宗教団体が、礼拝施設の所有・維持や教義の普及などの宗教活動を行う
自分たちで取り組む事業が、法令で定められた特定の事業に該当するか、また、どのような組織形態で運営したいかなどを考慮し、法人格を選択するようにしよう。
3. NPO法人の4つの種類それぞれの概要と認定までの流れ
NPO法人には、特定非営利活動法人(NPO法人)、認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)、控除対象特定非営利活動法人(指定NPO法人)、特例認定特定非営利活動法人(特例認定NPO法人)の4種類がある。ここではそれぞれの概要を解説する。
![[所轄庁 (都道府県・政令市)]
任意団体
↓
認証
↓
NPO法人(法人格)
↓
認定
↓
認定NPO法人(税制優遇)
任意団体
↓
認証
↓
NPO法人(法人格)
↓
仮認定
↓
特例認定NPO法人
(税制優遇 ※制限あり)
↓
認定
↓
認定NPO法人(税制優遇)
任意団体
↓
認証
↓
NPO法人(法人格)
↓
条件指定
↓
指定NPO法人
↓
認定
↓
認定NPO法人(税制優遇)](/wp-content/uploads/2025/11/SEO-9_1.png)
3-1. 特定非営利活動法人(NPO法人)
特定非営利活動法人(NPO法人)は、「特定非営利活動促進法」に基づいて所轄庁の認証を受けて設立されたNPOのことを指す。4種類のNPO法人の基本となるものだ。
前章で紹介したNPOの税制優遇や社会的信用などのメリットが得られる。社会への貢献が認知されれば、寄付金を集めやすいというメリットにもつながる。
3-2.認定特定非営利活動法人
「認定特定非営利活動法人制度」によって認められるのが「認定特定非営利活動法人」、いわゆる認定NPO法人である。通常のNPO法人より厳しい基準を満たす必要があるが、税制上の優遇処置が拡張され、寄付金を集めやすい。
さらに認定NPO法人自身に対する税の優遇措置(みなし寄附金制度)も適用され、収益事業から公益目的事業へ金銭その他の資産を支出した場合に、その支出した金額も収益事業にかかる寄付金の額とみなして税額を計算することができる。
認定されるためには、NPO法人として1年を超える活動実績があることに加え、より公益性の高い活動を適正に行っていることを確認するための要件を満たしている必要がある。
要件のうちの一つが、市民から広く支援を受けていることを判断する基準を指すパブリック・サポート・テスト(PST)には、次の基準のうち1つを満たす必要がある。
- 相対値基準
- 経常収入のうち、寄付金収入が5分の1以上
- 絶対値基準
- 寄付金総額が3,000円以上の人が、年平均で100人以上
- 条件個別指定
- 自治体の条例によって「寄付金税額控除の対象となる法人」に指定されていること
なお、認定NPO法人の有効期間は、認定日から起算して5年となっている。更新する場合は、有効期間満了日の6カ月前~3カ月前までに申請が必要だ。
関連記事:認定NPO法人とは? NPO法人との違いや申請するメリットを解説(別タブで開く)
3-3.条例指定特定非営利活動法人
各自治体が独自に定める基準を満たすことで、指定を受けられるのが「条例指定特定非営利活動法人」、いわゆる指定NPO法人だ。
指定NPO法人は、認定NPO法人に準じた税制優遇を寄付者が受けられる。認定NPO法人の認定要件を満たせない場合でも、指定NPO法人を目指すことで、寄付促進につなげられる。
認定NPO法人の認定要件を満たせない具体例は、設立後間もない、支援者数が少ないなどのケースだ。
なお、条例指定されることでパブリック・サポート・テスト(PST)の基準を1つ満たすことができ「認定NPO法人」の認定を受けやすくなるメリットもある。ただし、指定期間が5年間と定められており、5年ごとに更新を受けなければならない。
3-4. 特例認定特定非営利活動法人(特例認定NPO法人)
NPO法人のうち、特にスタートアップ期を支援するために設けられた法人格が「特例認定特定非営利活動法人」、いわゆる特例認定NPO法人だ。設立後5年以内のNPO法人を対象に、申請の機会は認定の有効期間(3年間)を含め、1回のみ認められる。以前は「仮認定NPO法人制度」と呼ばれていた。
認定NPO法人になるための基準を満たすことが難しいNPOのスタートアップ支援として作られたものである。
特例認定NPO法人も個人や法人の寄付者に税制上の優遇措置があり、寄付金を集めやすく、支援活動がしやすくなるメリットがある。ただし、認定NPO法人の優遇措置「みなし寄付金制度」は適用されない。
まとめ
NPO法人、一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人・公益財団法人、社会福祉法人など、非営利団体にはさまざまな法人格がある。
さらに、NPO法人の中にはNPO法人、認定NPO法人、指定NPO法人、特例認定NPO法人の4種類があり、それぞれに認定・指定の要件が異なる。
法人を設立する際には、各法人格の特徴を比較検討しよう。また、どの法人格を選ぶにしても、団体の理念や活動内容を明確に示し、広く周知させ市民に共感を得ることが継続した活動を続けるために重要だ。
参考文献:
国税庁「特定非営利活動促進法により設立されたNPO法人の法人税法上の取扱い」(外部リンク)
内閣府NPOホームページ「特定非営利活動(NPO法人)制度の概要」(外部リンク)
内閣府「公益法人制度とNPO法人制度の比較について」(外部リンク)
法務省「 一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A」(外部リンク)
国土交通省官公庁『「観光地域づくり法人(DMO)における自主財源開発手法ガイドブック」 第3章法人格の種類による財源の特徴』(外部リンク)
公益法人Information「(公益社団・財団法人と一般社団・財団法人の違い)」(外部リンク/PDF)
法務省 「一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A」(外部リンク)

- ※ 掲載情報は記事作成当時のものとなります。