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NPO法人とは? 収入源・メリット・設立の流れを簡単に解説

イメージ:動物保護、ごみ拾い、チャリティ演奏会などNPOの活動を描いたイラスト
さまざまな社会課題の解決にはNPO法人の存在は欠かせない。星野スウ/PIXTA
この記事のPOINT!
  • NPO法人とは、営利を目的とせず社会貢献活動を行う、法人格を取得したNPOのこと
  • 社会的信用度が高く、補助金や助成金を受けやすくなるなどのメリットがある
  • 一方で、情報公開義務や事業年度ごとに書類作成が必要な点など厳しい規定も

執筆:日本財団ジャーナル編集部

「そもそもNPO法人って何?」「NGOとはどう違う?」「NPO法人を設立するにはどうすればいい?」、そんな疑問を持っている人は少なくないだろう。

NPO法人とは、法人化されたNPO(非営利組織)のこと。利用できる助成金や補助金が増えるなどのメリットがあるが、活動内容に制約があったり、経営に関する情報の公開義務が生じたりする厳しいルールもある。

今回の記事では「NPO法人とは何か」を深掘りしつつ、ほかの組織との違いやメリット・デメリットなどに焦点を当てて紹介したい。

1. NPO法人とは

NPO法人とは「特定非営利活動促進法に基づき法人化されたNPO組織」のこと。正式名称を「特定非営利活動法人」という。

さまざまな社会貢献活動を行う団体の総称で、収益を構成員に分配することを目的としない。

NPOの法人化には、補助金や助成金を受けやすくなるなどのメリットがあるが、設立するためには、事務所を置く地域の、NPO法人や社会福祉法人、学校法人などの非営利法人に対し、認証や認可、監督権限を持つ行政機関「所轄庁(※)」の認証が必要となる。

また、NPO団体には「NPO法人」のほかに「NPO」「認定NPO法人」などが存在する。

1-1. NPO法人とNPOとの違い

NPOとは、利益ではなく社会課題の解決を目的とした団体のこと。法律によって認められた組織ではないことから、設立するのに所轄庁の認証をもらう必要はない。

NPO法人とNPOの違いの1つが、団体名の使用範囲。例えば、法人になることで、団体名義での口座開設や財産所有が可能になる。

法人でない場合、上記の契約は代表者など個人名義で行うのが一般的だ。しかし、代表者が死亡した場合「預金の所有権は代表者のものか、団体のものか」などが問題となるケースがある。

また、代表者名義で事務所を借りる場合は、代表者が交代するごとに契約を締結し直さなければならない。

NPOは、金融機関や不動産会社など他団体とじは個人名義でしか契約できず団体名義は不可。

法人格を取得したNPO法人であれば、団体名義で契約できる。

※法人格付与の可否は提出書類などから所轄庁が判断
NPOとNPO法人の違い

1-2. NPO法人と認定NPO法人の違い

認定NPO法人とは、NPO法人のうち、実績判定期間(直前の2事業年度)において、一定基準を満たすものとして所轄庁の認証を受けた法人のこと。

認定NPO法人として認められると、個人や法人からの寄付が所得税や法人税の控除対象となる。例えば、個人の場合は確定申告時に寄付金控除を受けられるため、より多くの人が寄付しやすくなり、団体の活動資金が集めやすくなる。

認定基準には、各年度において一定以上の寄付者数・寄付額を集めていること、活動や組織運営が適切なこと、法人に関する情報を公開していることなどがある。

関連記事:認定NPO法人とは? NPO法人との違いや申請のメリットを解説(別タブで開く)

1-3. NPO法人の活動内容

NPO法人の活動は、利益を受ける人が特定・限定されず、社会一般の利益の追求を目的とした「特定非営利活動」に限られ、次の20分野が該当する。

1.保健、医療又は福祉の増進を図る活動
2.社会教育の推進を図る活動
3.まちづくりの推進を図る活動
4.観光の振興を図る活動
5.農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
6.学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
7.環境の保全を図る活動
8.災害救援活動
9.地域安全活動
10.人権の擁護又は平和の推進を図る活動
11.国際協力の活動
12.男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
13.子どもの健全育成を図る活動
14.情報化社会の発展を図る活動
15.科学技術の振興を図る活動
16.経済活動の活性化を図る活動
17.職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
18.消費者の保護を図る活動
19.前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
20.前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
法律で決められた「特定非営利活動」の活動分野

関連記事:NPO法人の活動内容とは? 法によって決められた分野や具体例を解説(別タブで開く)

2. NPO法人の5つの収入源

NPO法人の収入源は以下の5つである。

  • 入会金・会費:NPO法人の構成員やサポーターなどから徴収できる
  • 寄付金:NPO法人の活動内容に賛同した個人・民間企業などから寄付を受けられる
  • 助成金・補助金:NPO法人の活動を支援するため、個人や民間企業、行政が提供している
  • 収益活動・事業収入:物販などで上げた収益を事業活動に利用できる
  • 借入金:個人や各金融機関から融資を受けられる

「非営利組織」という言葉から勘違いされやすいが、NPO法人は物販サービスなどの収益活動が認められている。ただし、その収益は組織の運営や事業を継続するために使わなければならず、構成員に分配できないといった制限がある。

3. NPO法人とほかの組織との違い

NPO法人とほかの組織の違いを知ることは、NPO法人の定義への理解にもつながる。ここでは、NPO法人と株式会社、NGO、一般社団法人を比較したい。

3-1. NPO法人と株式会社の違い

NPO法人を含むNPOと株式会社の違いの1つは、事業目的にある。

NPOは非営利団体で、社会課題の解決を目的としているため、前段でも述べたとおり事業で得た利益は活動資金に当てなければいけない。一方、株式会社は営利団体で、事業で得た利益は役員や従業員、株主への分配が認められている。

一般的な会社は売上のうち利益を、株主、役員・従業員に分配できる。

NPO法人は、売上である事業収入・寄付金等の利益は、株主、役員・従業員に分配できず、活動資金に当てなければいけない。
NPO法人と株式会社の利益の活用手段

3-2. NPO法人とNGOの違い

NPOは「Non-Profit Organization」(非営利組織)、NGOは「Non-governmental Organization」(非政府組織)の略称である。NPO法人を含むNPOとNGOの違いについて、外務省は以下のように記している。

「日本では、海外の課題に取り組む活動を行う団体をNGO、国内の課題に対して活動する団体をNPOと呼ぶ傾向にある」

ただし、共に非政府・非営利団体であることから、事実上、NGO=NPOといわれる場合もある。

3-3. NPO法人と一般社団法人の違い

一般社団法人も利益の分配を目的としない法人だが、事業内容への制限がない。また、設立するためにNPO法人は10人以上の社員を必要とするが、一般社団法人は2人以上の社員がいれば問題ない。

一方で、NPO法人は情報公開が徹底されていることもあり、社会的信頼を得やすい。法人設立時には団体の名称や所在地などを公示する必要があるが、その際生じる費用(登記費用)が不要になる。

4. NPO法人を設立する3つのメリット

ここでは、NPO法人設立の主なメリットを紹介する。法人格を取得するべきか悩んでいる人は、次のメリット3点を材料に検討するとよいだろう。

4-1. 設立費用や税金を抑えられる

通常、法人の設立認証を申請する際には手数料が、法人情報を公示、変更する際には「登録免許税」が発生するが、NPO法人は対象外となる。また、資本金や基本財産なども必要ない。

さらに、法人税が免除されたり、課税対象が収益事業に関する所得に限られたりといった税制上のメリットもある。

4-2. 資金援助を受けやすい

NPO法人は収益が社員に分配されないため、活動への共感を得やすく、寄付金も集まりやすい。

また、NPO法人専用の助成金や課税免除をしている自治体もある。例えば、愛媛県の「NPO法人活動助成事業(団体支援助成)」(外部リンク)は、基準を満たしたNPO法人に25万円以内で管理運営費・事業費を助成している。

各自治体の資金援助は内閣府NPOホームページから確認できる。

4-3. 社会的信用を得やすい

「法人」が社会的に認知されていることや、事業報告書などが一般公開されることなどから、社会的信用を得やすい。また、法人化した団体は信用の対象が代表者ではなく組織全体に向けられる傾向がある。

一方、法人化していない団体の場合、組織の信頼度は代表者個人によるところが大きい。そのため、代表者が交代すると信用度が低下するリスクがある。

5. NPO法人を設立する3つのデメリット

法人化には乗り越えるべきハードルもあり、場合によっては対策が必要となる。しかし、負うべき義務生じることで社会的信用度が高くなるとも言える。

5-1. 行政審査が厳しい

NPOを法人化するためには、所轄庁の厳しい審査をクリアしなければならない。審査要素には「社員が10人以上所属しているか」「事業内容が特定非営利活動に含まれるか」「定款(組織のルール)や申請書が法令の規定を満たしているか」などがある。

なお、申請書や定款に不備がないかを提出前に確認してくれる自治体も。ホームページなどから確認し、利用できる場合は積極的に活用しよう。

5-2. 情報公開義務がある

NPO法人は事業年度が終了してから3カ月以内に、前事業年度の事業報告書、計算書類、役員名簿などを作成する義務がある。

作成書類は全ての事務所に備え置き、社員および利害関係者に閲覧させなければならない。さらに、年に1回行政機関に提出する必要がある。

書類は提出後に内閣府NPOホームページで公開され、一般市民も閲覧できるようになっている。

5-3. 設立に4カ月ほどかかる

NPO法人設立には約4カ月の時間がかかる。申請書の一般公表に2週間、行政による審査に最大2カ月、認証後の登録(登記)までに最大2週間を要する。

書類作成の時間も考慮し、余裕のあるスケジュールを組もう。

6. NPO法人設立の3ステップ

NPO法人設立のプロセスは、大きく3つに分けられる。不備があると再申請しなければならない場合があるため、しっかりと把握しよう。

なお、プロセスの一部が異なる自治体もある。申請する際は、各自治体のNPO法人を担当する行政機関のホームページを事前に確認しよう。

6-1. ステップ1:書類を所轄庁に提出する

次の10点の書類を添付し、申請書を所轄庁へ提出する。本拠地とする事務所がある都道府県知事に提出するのが基本だが、そうでない地域もあるため、事前に確認しよう。

また、提出前には社員全員を集め、内容を確認するのが一般的だ。

  1. 定款
  2. 役員名簿(役員の氏名及び住所又は居所並びに各役員についての報酬の有無を記載した名簿)
  3. 役員の就任承諾書及び誓約書の謄本
  4. 役員の住所又は居所を証する書面
  5. 社員のうち 10 人以上の氏名及び住所又は居所を示した書面
  6. 認証要件に適合することを確認したことを示す書面
  7. 設立趣旨書
  8. 設立についての意思の決定を証する議事録の謄本
  9. 設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書
  10. 設立当初の事業年度及び翌事業年度の活動予算書

申請書の一部は、受理された日から2週間一般公開される。行政機関だけでなく、市民からも検証されることになる。

6-2. ステップ2:審査結果通知が届く

公開期間の2週間が経過後、2カ月以内に審査結果が送付される。主な審査基準は次の8点である。

  1. 特定非営利活動を行うことを主たる目的とすること
  2. 営利を目的としないものであること
  3. 社員の資格の得喪に関して、不当な条件を付さないこと
  4. 役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の3分の1以下であること
  5. 宗教活動や政治活動を主たる目的とするものでないこと
  6. 特定の公職者(候補者を含む)又は政党を推薦、支持、反対することを目的とするものでないこと
  7. 暴力団又は暴力団、若しくはその構成員、若しくはその構成員でなくなった日から5年を経過しない者の統制の下にある団体でないこと
  8. 10人以上の社員を有するものであること

6-3. ステップ3:設立登記をする

登記とは、団体の名称や所在地、役員氏名などを国が管理する「登記簿」に記載し、公開すること。設立認証の通知から2週間以内に設立登記をすることで、法人が成立する。その後、次の3点を所轄庁に届け出ることで、全手続きが完了する。

  1. 設立登記完了届
  2. 登記事項証明書
  3. 法人成立時の財産目録

なお、認証通知から半年以内に登記がない場合は、認証が取り消される可能性がある。

まとめ

NPO法人とは、法人化したNPOのこと。

法人化の主なメリットには「設立費用や税金を抑えられる」「資金援助を受けやすくなる」「社会的信用を得やすい」ことなどがある。一方、情報公開義務が発生し、事業年度ごとに書類作成が必要な点など厳しい規定もある。

法人を設立したい場合は、負担に対応できる目処をつけることが大切だ。自治体によっては相談窓口を設けているため、積極的に活用しよう。

参考文献:

内閣府NPOページ「NPOのイロハ」(外部リンク)

内閣府NPOページ「特定非営利活動法人(NPO法人)制度の概要」(外部リンク)

内閣府NPOページ「2023年度(令和5年度)『特定非営利活動法人に関する実態調査』の結果について<概要版>」(外部リンク/PDF)

外務省「国際協力とNGO FAQ(よくある質問)」(外部リンク)

内閣府NPOホームページ「認証制度について」(外部リンク)

  • 掲載情報は記事作成当時のものとなります。