大阪府内5拠点の活動から学ぶ。第2回「子ども第三の居場所」スタディツアーを開催

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新開筋商店街に面した「山王こどもセンター 子ども第三の居場所」(大阪市西成区)

2023年7月、第2回「子ども第三の居場所」スタディツアーを開催しました。今回の開催地は大阪。1泊2日の日程で大阪府内の5カ所拠点を訪れました。

第1回(2023年3月実施)に引き続き、泉佐野市・熊本市から1拠点ずつを対象とした相互スタディツアーになります。参加団体は、前回同様、熊本から一般社団法人熊本私学教育支援事業団(熊本県熊本市)、大阪で活動するNPO法人キリンこども応援団(大阪府泉佐野市)です。

また、今回は希望する拠点の現地参加を可能にし、大阪府近隣の6拠点も参加しました。拠点準備中の団体から複数拠点を運営しているところまで、さまざまなフェーズの団体スタッフの皆さまと共に訪問しました。

1日目は府内4拠点の視察へ

伊丹空港で熊本私学教育支援事業団の皆さまをお出迎えした後、二つのコースに分かれて移動。NPO法人トイボックス(箕面市)が運営する常設ケアモデル「b&gみのお西」、NPO法人クラウドナイン(高槻市)の学習・生活支援モデル「コノイロ」に向かいました。

コノイロは2022年2月に開所した拠点。就労支援事業B型、放課後デイサービス、訪問看護ステーションをはじめ様々な福祉事業を行うNPO法人が運営しています。理事長の小林將元(まさゆき)さんが病院で勤務していた経験があるため、医療関係者とのネットワーキングが強み。医療・福祉・教育・労働面の一貫したサポート体制の構築を目指しています。

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退院後、不登校、ニートになったり、医療を受けられない人がいたりすることがわかり、子どもの居場所づくりを始めた。ボルタリング、サンドバックなどがあり、子どもが楽しめるスペースになっている。

箕面市内の2拠点目の常設ケアモデルとして開設されたb&gみのお西は、子どもたちとの調理体験や、個別の学習サポートを行うなど少人数の環境できめ細やかな支援を行っています。

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b&gみのお西は、遺贈寄付で作られた。

その後は、2チームが合流しての拠点訪問。青年海外協力協会が運営するコミュニティモデルの「JOCA大阪」を訪ねました。スタッフや地域の方も巻き込みリノベーションやDIYを行い、地域に開かれた居場所を目指しています。
居場所の担い手にとっても負担になりすぎない、肩肘をはらない運営方法をとっているため、利用時に登録は必要なく、いつでも、誰でもふらっと遊びに来れます。その分、ポイントを集めるとご褒美がもらえる「こどもスタンプカード」を作って、子どもの名前や訪問回数を把握し、支援が必要な子どもを把握できるように工夫しています。
そうした小さな工夫を実際に感じられるのもスタディツアーならでは。「これはなぜこうしているの?」「何を意識している?」などレイアウトや物品を見ながら、質問が飛び交っていました。

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左:JOCA大阪で取り入れている「こどもスタンプカード」。右:常連さんにはマイカップをおいてもらい、紙コップ代の経費削減に繋げると同時に、自分の居場所と感じてもらいやすくしている。

その後は、西成区にある「山王こどもセンター 子ども第三の居場所」へ移動。2023年6月にできたばかりの新築の建物を見学しました。建物には、就労継続支援B型事業所を併設しており、障害のある方や地域のみなさんも日常的に出入りしています。
大人と子どもが過ごすスペースがそれぞれありながらも、ゆるやかにつながる建物で、これからどのような相乗効果が生まれていくのか。建物の使い方についてみんなで想像を膨らませる時間になりました。

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もともと築80年以上の古民家で活動していたが、日本財団の助成を得て、屋上もある2階建てに生まれ変わった。大きなガラス張りの窓は、縁側のような役目を果たす。ご近所さんや通りがかった人が足を止めて子どもたちと関わり、見守ってくれることを期待している。

そして1日目のラストは、生野区のいくのコーライブズパーク「学習サポート教室DO-YA」へ。廃校を活用した多文化共生のまちづくり拠点として、私設図書館や飲食店、託児所、
スポーツコート、K-POPのダンススクールが入る複合施設の一角に、コミュニティモデルの拠点を開所しました。
日本の子どもをはじめ8カ国、約60名の子どもが利用していることから、日本語学習や生活支援、外国ルーツの子ども・世帯に対応などを実施しています。地域柄に合わせた支援の重要性について学びました。

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5人に1人が外国籍のまちである背景を踏まえ、子ども第三の居場所の必要性を話してもらった

2日目は泉佐野へ

翌日は大阪中心部から足を伸ばして、泉佐野市を訪れました。ここでは「キリンこども応援団」が、コミュニティモデルの拠点・キリンの家を運営しています。また、2023年秋には泉佐野駅からほど近くの一軒家を借りて、2拠点目を開所予定。リノベーション中の建物も見学させてもらいました。

経営コンサルタント会社やメーカー、市役所で働いた経験のある代表・水取博隆さんのファンドレイジング手法には多くの団体が関心を示し、具体的なアドバイスを求めるシーンも見られました。

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左:キリンの家、右:開設準備中の二拠点目

こうして2日間に渡った視察は終了。最後は、熊本私学教育支援事業団とキリンこども応援団の2団体で、意見交換会を実施しました。「複数拠点の情報管理の仕方」「会議体の設定」「採用」など、経営から現場レベルまで、各々の方針ややり方を共有し、自団体の取り組みをより良くする方法を探りました。
3月と7月の2回に渡ってお互いの拠点を訪問し、事業概要や課題などがわかっている関係性だからこそ話せるテーマもあり、最後まで議論が尽きることはありませんでした。

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経営者と現場スタッフそれぞれの横の繋がりもでき、必要に応じて連絡を取り合える関係になった

参加団体の感想

  • ツアーを組んでくださったから、沢山の拠点を見て学ぶ事が出来た。自分達ではなかなかこのような機会を作る事が出来ないのですごく価値のあるツアーでした。
  • 開始準備中なので、物理的に取り入れることの選択ができ、心構えも学べました。また、それぞれの拠点での課題や悩みを伺い知ることもでき、自分たちならどう解決の糸口を見つけるのか考えることができました。
  • 拠点の中はこだわりでいっぱいで、ひとつひとつの物やレイアウトに狙いがあって効果を生んでいました。その話を目で見て聞いて実感できることは訪れることの価値だと思いました。
  • 一番大きいのは、横のつながりだと思います。現在、子ども第3の居場所事業を実施している人から、これから作る人まで、沢山の方とつながることができたのは本当に大きな価値だと思いますし、何より感謝しています。
  • 短い時間の中、訪問先だけでなく参加者拠点でも交流がもて、直接相談ができるのでありがたいです。オンラインでも繫がれるけれど、雑談からでるヒントや悩み事、思っている事の共有や意見交換はすごく貴重です。
  • 1回だけの交流では、とてももったいないと思います。数年間の交流が出来れば相互に団体として、成長していくのではないでしょうか。オンラインでの交流も、今後、続けられれば、いいかとも思います。よき機会を与えて下さりありがとうございます。

取材:北川由依