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初めて親と離れて過ごす1泊2日の小さな冒険!子どもたちが見せた“生きる力”

- 「第三の居場所」は、子どもたちに将来必要な自立する力を育む場所
- 自然の中での遊びや生活を通して、子どもたちはたくさんの好奇心と可能性を発揮
- 子どもたちの成長には、さまざまな出会いや体験の機会が欠かせない
取材:日本財団ジャーナル編集部
子どもたちが健やかに成長するためには、十分な教育環境と体験機会が欠かせない。そんな子どもたちが勉強や食事を共にし、歯磨きやお風呂に入るといった基本的な生活習慣を身につけることで、将来の自立に必要な力を育む場所が「第三の居場所」だ。
2019年4月2日〜3日、「第三の居場所」の広島・尾道拠点と香川・丸亀拠点に通う子どもたちが、春休みの思い出作りにキャンプに出かけた。参加したのは全部で11人の小学生。生まれて初めて親元を離れて過ごすという子どもがほとんどだ。
今回のキャンプは、子どもたちが外の世界に出て共同生活を送ることで人間関係力を養い、さまざまな野外活動を通して自信や判断力を身に付け、達成感を味わい、“生きる力”を育むことが目的である。1泊2日の小さな冒険、彼らに待ち受けていた体験とは?
初めてのキャンプ!初めての外泊!ドキドキの出発に子どもたちは大はしゃぎ
快晴に恵まれた出発当日、朝の8時頃から子どもたちが尾道拠点に集まり始めた。親と離れて過ごすことに不安を覚え、行きたくないと言いだす子どももいるのでは…という大人たちの心配をよそに、キャンプに期待を隠しきれずにはしゃぐ子どもや、まだ少し眠たげにぼんやりする子どももいる。
今回の行き先は尾道市から1時間ほどに位置する、愛媛県今治市の七五三ヶ浦公園キャンプ場。みんなの期待やちょっぴりの不安を乗せてバスは出発した。

なだらかな山の麓に到着すると、キャンプをサポートしてくれるスタッフが出迎えてくれた。今回お世話になるのは、元サッカー日本代表監督の岡田武史(おかだ・たけし)さんが校長を務める「しまなみ野外学校」(別ウィンドウで開く)の面々。ここで、丸亀拠点の子どもも合流し、キャンプ場までは山の中を歩いて向かうことに。いよいよ冒険の始まりだ。

トカゲをつかまえたり、珍しい色のお花を眺めたり、子どもたちは好奇心を存分に発揮する。「キャンプ場で魚釣りがしたい!」と釣竿にするための枝を探す子どもや、「これはタラノメ、こっちはゼンマイ…」と、春の山菜を収穫しながら歩く子どもも。

40分ほどかけて山道を抜けると、大人も子どもも思わず目を輝かしてしまうほど澄み切った美しい海が広がっていた。ここが今回の宿泊地。貸し切り状態の浜辺に、子どもたちは大喜びだ。

キャンプ場に到着したところで、まずは簡単な自己紹介から始まった。スタッフが持参した太鼓の音をBGMに、子どもたちは少しはにかみながら挨拶を交わす。

自己紹介が終わり、みんなのお腹の虫が鳴り始めたのを見計らって、少し早めのお昼ごはん。メニューはスタッフの手作りによるミートソーススパゲティだ。青空の下、「おいしい!」とはじける笑顔で子どもたちは旺盛な食欲を見せた。

海辺にあるもので、次々と新しい遊びを発見
使った食器を自分で洗ったら、お待ちかねの自由時間!スタッフが見守る中、出発前から楽しみにしていたという石投げに挑戦したり、シーグラスを拾い集めたり、岩場でヒラメの稚魚やエビの幼生、ヒトデを捕まえて観察したり…。干潮によって道がつながった小島の探検や、まだ冷たい海で水遊びを始めるなど、思い思いのやりたいことに子どもたちは夢中になる。
「見て見て!魚捕まえた!」「このガラス、きれい!」「水が冷たいよ〜!」と、子どもたちの元気な声がキャンプ場に響いた。


自由時間の後は、今夜泊まるテントを自分たちで張ることに。初めてのテント張りに、子どもたちは「できない!難しい〜!」と言いつつも、無事完成させることができた。

テントを張り終えた頃にはどんどん気温も暖かくなり、早朝から活動していただけにお昼寝をしたい子どももいるはず…とここでも大人たちの予想を裏切り、みんな元気に遊び始めた。拾った貝殻やシーグラスを使い「帰ったらお母さんにあげるの!」とアクセサリーを作り始める子どもや、山で拾ってきた枝と持参したひもで釣竿を作り、魚釣りに挑戦する子どももいた。



日が傾く頃、スタッフが晩ごはんのカレーと野菜サラダを作り始めると「僕も切りたい!」「私もやる!」と、子どもたちが自ら調理に参加。スタッフのサポートを受けながら、自分たちが食べるパプリカやじゃがいもを刻んでいく。



すっかり日も落ちて、一気に冷え込む夜の浜辺。満天の星空の下、みんなで焚き火を囲みつつ、楽器を使ったゲームを楽しんだ。そしてこの日に誕生日を迎えた女の子のために、子どもたちがこっそり作ったケーキをサプライズでプレゼント!「覚えてくれてたんだ!」と主役が嬉しそうにろうそくを吹き消した後は、みんなで美味しくいただいた。

しっかり遊んでたくさん食べた子どもたちがテントに潜り込めば、消灯時間。テントの中から子ども同士ではしゃぎ笑う声が漏れていた。親たちと離れて過ごす夜、誰ひとりぐずる様子もなく無事に1日目を終えた。
キャンプを通してひと回り成長した子どもたち
キャンプ2日目の早朝5時。キンと冷えた空気の中、子どもたちは起きてきた。「すごく寒かった!」「僕は平気だったよ」とおしゃべりを楽しみながら、朝ごはんの野菜スープとパンを平らげると、テントのお片づけ。そうこうしているうちにだんだんと暖かくなり、自由時間に。
キャンプのおみやげとなるシーグラスや貝殻を使ったフォトフレーム作りを体験した後は、イカダ作りにもチャレンジした。大きなタイヤと板を使って完成させたイカダにみんなで乗り込み、海へと出発!スタッフと子どもたちで協力しながらオールを漕いで、小さな航海を楽しんだ。


この日のお昼ごはんは、みんなが大好きな焼きそば。キャンプ最後の食事だ。大盛りの焼きそばを完食すると、終わりが近づきつつあるキャンプ場でのひと時を目いっぱい楽しむ子どもたち。何が楽しかったのか尋ねてみると、「山菜採り!」「海に入ったこと」「魚釣かな〜」「ご飯がおいしかった!」「うーん、全部!」など、三者三様の答えが返ってきた。

キャンプ終了直前には、しまなみ野外学校の校長・岡田さんが子どもたちに会いに訪れた。おみやげにもらったサッカーボールで、岡田さんと一緒にボール蹴りを楽しんでいるうちに、いよいよキャンプ場ともお別れの時がやってきた。
「いろんなことを体験して楽しかったと思うけど、自然の中にはまだまだ楽しいことがあるよ。海や川が今治にはたくさんあるから、またぜひ来てください!」と岡田さん。


「本当に楽しかったね!みんなとまた会えますように!」と、しまなみ野外学校のスタッフに見送られながら、子どもたちは帰路へ。丸亀拠点の子どもともここでお別れだ。
ずっと元気いっぱいだった子どもたちもさすがに遊び疲れたのか、帰りのバスの中ではほぼ全員が眠っていた。

シーグラスをあしらったフォトフレームや、貝殻で作ったネックレス、手作りの釣竿、新鮮な山菜などを手に尾道拠点へと帰って来た子どもたち。しまなみ野外学校のスタッフたちとの触れ合い、初めてのお泊まりや、自然の中でのさまざまな体験で培った “成長”というおみやげを抱え、お迎えに来た親たちのもとへ笑顔で帰っていった。
この冒険の終わりに、キャンプにも同行した「第三の居場所」尾道拠点のマネージャー山田克芳(やまだ・かつよし)さんに、子どもたちに見られた変化について伺った。
「外泊するのが初めてな上に、経験の少ない子どもたちなので、いきなりキャンプというのはどうなることかと心配しました。けれど、そのたくましさに驚かされました。誰1人『帰りたい』と口にすることもなく、何事も途中で投げ出さずにチャレンジする姿を見られたのが何よりも嬉しかった。今回の体験は子どもたちにとっても大きな自信につながったと思います。今までできなかったことが1つでもできたという喜びを本人たちも感じられたんじゃないでしょうか」
1泊2日という短い期間ではあったが、子どもたちが未来につながる大きな収穫を得られたことは確かである。
撮影:永西永実
- ※ 掲載情報は記事作成当時のものとなります。