日本財団ジャーナル

【増え続ける海洋ごみ】今さら聞けない海洋ごみ問題。私たちに何ができる?(特集第1回)

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海洋ごみによる生き物たちへの被害は深刻化している
この記事のPOINT!
  • 海洋ごみ問題が深刻化、2050年には魚より海洋ごみの量が多くなると言われている
  • 海洋ごみの7〜8割が街から発生。雨が降った際などに路上のごみが川や水路に流出し、海へ至る
  • 国や企業だけでなく、一人一人のごみを減らす意識や行動が、海の未来を守る

取材:日本財団ジャーナル編集部

私たちの海がごみで溢れようとしている。プラスチックごみだけをとっても、世界に合計1億5,000万トン以上(※1)の量が存在していると言われ、毎年約800万トン(ジャンボジェット機にして5万機相当)(※2)に及ぶ量が新たに流れ出ていると推定される。美しい海が消える。これは、遠い未来の話ではなく、私たちの子どもや孫の世代に起きうる問題なのだ。

  • 1.参考:WWFジャパンWEBサイト「海洋プラスチック問題について」、McKinsey & Company and Ocean Conservancy(2015)
  • 2.参考:WWFジャパンWEBサイト「海洋プラスチック問題について」、Neufeld,L.,et al.(2016)

特集「増え続ける海洋ごみ」では、人間が生み出すごみから海と生き物たちを守るためのさまざまな取り組みを通して私たちにできることを考え、伝えていきたい。今回は、海洋ごみ問題のおさらいと注目すべき取り組みについてご紹介する。

増え続ける海洋ごみ

世界の国々が2030年までに達成すべき17の目標として、2015年9月に国連サミットで採択された持続可能な開発目標「SDGs(エスディージーズ)」(別ウィンドウで開く)。最近では、メディアなどでも取り上げられることが多いSDGsの14番目の項目に掲げられているのが「海の豊かさを守ろう」である。

画像:SDGs17項目のアイコンを記したポスター
SDGs17項目のアイコン

海洋ごみにもさまざまな種類があるが、もっとも問題とされているのがプラスチックごみである。海洋ごみの半分以上を占めるプラスチックごみは、その素材の性質上滞留期間が長く、中には400年以上海の中を漂うものもあるという。

図表:海洋ごみでプラスチックごみが占める割合

海洋ごみでプラスチックごみが占める割合を示す棒グラフ。海ごみに含まれるもののうち、紙が0.3パーセント。布が0.8パーセント。木材が7.3パーセント。自然物が15.9パーセント。プラスチックが65.8パーセント。金属が4パーセント。ガラス・陶器が2.8パーセント。その他人工物が3.1パーセント。
海洋ごみの65パーセント以上をプラスチックごみが占める。環境省「海洋ごみをめぐる最近の動向」(平成30年9月)より引用

環境省の調べによると、毎年海に流出するプラスチックごみのうち2〜6万トンが日本から発生したものだと推計される。このままでは2050年の海は、魚よりもごみの量が多くなる(別ウィンドウで開く)と言われるほど問題は深刻化している。

海の生物たちへの影響も甚大だ。これまでに魚類をはじめ、ウミガメや海鳥、クジラなどの海洋哺乳動物など少なくとも700種ほどに被害をもたらしている。この内92パーセントがプラスチックごみによる影響(※)で、例えば、ポリ袋を餌と間違えて食べてしまったり、漁網に絡まったりして傷つき、死んでしまうことも日常だ。

  • 参考:WWFジャパンWEBサイト「海洋プラスチック問題について」、Gall & Thompson(2015)

海洋ごみがこのまま増え続けると、漁業や観光業への影響だけでなく、船舶運航の障害、沿岸中域の環境も悪化。これは、はっきりと分かっている問題だけで、地球の表面積の7割を占める海の汚染が及ぼす影響は未知数の部分も多い。

海洋ごみの7〜8割は街から

海洋ごみはいったいどこから来るのか。その大半は私たちが暮らす街からである。街で捨てられたごみが水路や川に流れ出し、やがて海へとたどり着く。

図表:海洋ごみの発生メカニズム(プラスチック)

インフォグラフィック:日本におけるプラスチック動き(2016年)※国内プラ製品消費量1,052万トン(ロス量含む)。
商品企画、製造・流通、消費、処分、再利用・廃棄の流れでプラスチック製品は動き、処分されるものは899万トン。再利用・廃棄されるもののうち、エネルギーとして再利用されるものは57%で516万トン。新たにプラスチック製品として再利用されるものが1%で8万トン。マテリアルリサイクルされるもの23%(206万トン)のうち、国内で利用されるものは6%、海外(アジア)で利用されるものは17%。工業原料として再利用されるものは4%で36万トン。埋立焼却されるものは16%で140万トン。プラスチックごみ(ペットボトル、ごみ袋、ストロー、釣り糸・釣り針、漁具、家電、タイヤ、日用品、津波のがれき)は、製造・流通、消費、処分の段階で海へと流れ出し、特に消費の段階ではその多くが流出。またマイクロプラスチックは海外(アジア)でマテリアルリサイクルされる際に多く海へ流出。海亀や魚といった海の生き物たちに多大な被害を与えている。海ごみは私たち一人ひとりが取り組むべき問題。©2018 The Ocean Policy Research Institute
海洋ごみとは関係ないように感じられる街のごみも海へ流出

日本財団と日本コカ・コーラ株式会社が2019年4月から12月にかけて東京都、神奈川県、富山県、岡山県、福岡県の河川流域を中心に実施した「陸域から河川への廃棄物流出メカニズムの共同調査」(別ウィンドウで開く)によると、ごみの発生原因は「投棄・ぽい捨て系」「漏洩(ろうえい)系」の2つに大別されることが分かった。

「投棄・ぽい捨て系」では、これまでモラルの問題と一括りにされることが多かったが、社会的な問題や産業構造などが要因でごみを投棄・ぽい捨てせざるを得ない状況も発生していることが明らかとなった。

一方「漏洩系」では、ごみを集積している地点からの漏洩や、災害時の応急処置で使用され経年劣化した製品や農業資材の流出が確認された。

では、そのような流出経路をたどる海洋ごみに対し、どのような対策が有効なのか。ここからは日本財団とステークホルダーが取り組むプロジェクトについて紹介したい。

海洋ごみ削減を実現するビジネスを創出

日本財団、JASTO (別ウィンドウで開く) 株式会社リバネス(別ウィンドウで開く)が中心になって展開する「プロジェクト・イッカク」(別ウィンドウで開く)は、「海洋ごみ問題の根本は生産、消費、廃棄を原理とする経済システムそのものにある」という考えのもと、「これ以上、海にごみを出さない」システムの構築を目指している。異分野の専門家たちと「衛星・ドローンによるごみ漂着状況診断システム」の構築、「自律分散ごみ処理システム」の開発、「海洋プラスチックごみをリサイクル原料とした人の心に残る製品」の開発といった複数のチームを立ち上げ、循環型の世界を実現するビジネスの創出に取り組んでいる。

イラスト:「プロジェクト・イッカク」が目指す循環型の社会を示す図。「生産」したものを「消費」し「廃棄」するといった直線的にモノが流れる経済(リニア・エコノミー)から、「生鮮」したものを「消費」し「リサイクル」する循環型の経済(サキュラー・エコノミー)を目指す。
プロジェクト・イッカクの考える循環型の社会

「コスプレ」を軸にアワード、一斉清掃活動、シンポジウムを実施

世界最大のコスプレイベント「世界コスプレサミット」(別ウィンドウで開く)と日本財団がタッグを組み、海洋ごみ削減に貢献したコスプレイヤーを表彰するアワードや、国内外のコスプレイヤーによる一斉清掃活動など行っている。2019年6月に開催され「コスプレde海ごみゼロ大作戦!in東京タワー」(別ウィンドウで開く)では、世界の人気コスプレイヤーや一般参加者合わせて総勢430名が集結し、2,700リットル(1袋30リットル)もの街ごみを回収。人気漫画『ワンピース』のモンキー・D・ルフィに扮した日本財団・笹川陽平(ささかわ・ようへい)会長も話題を集めた。

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世界を代表するコスプレイヤーたち。日本財団・笹川陽平会長の姿も(後方右から4人目)

自動回収機によるペットボトルの新しい回収スキームを構築

日本財団とセブン-イレブン・ジャパン株式会社、行政の連携により、セブン-イレブン店舗への自動回収機設置による新しいペットボトルの回収スキームの構築(別ウィンドウで開く)に取り組んでいる。キャップやラベルをはずした使用済みのペットボトルを回収機に投入すると、自動的に圧縮・減容。利用者にはnanacoポイントが付与されるなど利用促進が図られる仕組みになっている。また、これにより使用済みペットボトルから再びペットボトル(BtoB)にするために必要となる高純度なプラスチック素材を作り出すことが可能に。現在自動回収機は、東京都大和市(15台)、東京都渋谷区(1台)、沖縄県那覇市(20台)の店舗で展開しており、今後も増える予定だ。

イラスト:新しいペットボトルの回収スキームを示す図。ペットボトルが、コンビニエンスストア「セブン-イレブン」の店舗に設置された自動回収機で選別・回収・減容されることで、効率的に資源の収集・運搬ができると共に、高純度なプラスチック素材の生成を可能にする。その素材をもとに飲料メーカーが再生ペットボトルを製造・販売することで、より環境に優しいリサイクルの循環を実現する。
ペットボトル自動回収機設置による新しいリサイクル

海洋ごみ問題を科学的に分析し、正しい情報を発信

日本財団は東京大学と共同プロジェクト(別ウィンドウで開く)を立ち上げ、海洋プラスチックごみの発生メカニズムや、人体への影響などについて研究・対策に取り組んでいる。問題の解決基盤となる科学的知見を充実させ、正しい情報を国内外に広く発信することで、社会全体で解決するためのアクションにつなげていく。

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日本財団と東京大学による共同プロジェクト発表時の様子(2019年5月)

地域ぐるみで取り組む「海にやさしい」街づくり

美しい富山湾を臨む富山市で始まったのが、市民を巻き込んだ「地域ぐるみ」での海洋ごみ対策モデルづくり(別ウィンドウで開く)だ。日本財団と連携し、神通川支流などでごみ流出のメカニズムを調査したほか、子どもたちが海洋ごみについて学ぶモデル授業なども展開。さらに、地元のプロスポーツチームなどと連携した市民一斉のごみ拾いなどを実施した。今後はこれらの取り組みを“富山モデル”として、全国に向けて発信していく。

全国一斉清掃活動の推進と対策モデル事例の発信

日本財団では環境省と連携し、全国一斉清掃キャンペーンの実施や海洋ごみ対策のモデル事例の発信を行っている。

「海ごみゼロウィーク」(別ウィンドウで開く)は、5月30日(ごみゼロの日)から6月5日(環境の日)を経て、6月8日(世界海洋デー)前後を「海ごみゼロウィーク」と定め、「海ごみゼロ」を合言葉に一斉清掃活動を推進。日本全体が一緒になって、海洋ごみ削減のためのアクションを行うことで、一人一人の「ごみを出さない」「ごみを捨てない」「ごみを拾う」という意識を高め、美しい海を未来へとつなぐ。2019年度は全国約1,500箇所で清掃イベントが開催され、約43万人が参加した。

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2019年に実施された「海ごみゼロウィーク」の様子

海洋ごみ対策に関する優れた取り組みを全国から募集・選定し、表彰する「海ごみゼロアワード」(別ウィンドウで開く)も実施している。実践的活動や普及啓発などの取り組みに贈られる「アクション部門」と、革新的な技術や製品に贈られる「イノベーション部門」、将来に向けた広がりが期待される取り組みや着想に贈られる「アイディア部門」を設置し、その功績を讃えると共に日本のモデル事例として世界に発信するのが目的だ。2019年度には、254件もの団体から応募があった。

海を守るには私たちの意識変化がカギ

増え続ける海洋ごみに対し、国や企業による取り組みも重要だが、私たち一人一人が普段からごみを減らす努力をすることが、何よりも効果的だ。

例えば、日頃の生活ですぐに実践できるものとして、3R(スリーアール)がある。3Rとは「Reduce(リデュース)」「Reuse(リユース)」「Recycle(リサイクル)」の頭文字を取った3つの行動の総称であり、限りある地球の資源を有効的に使う、循環型社会を目指すものである。

  • Reduce…使用する資源の量を少なくすること、廃棄物の発生を抑制すること
  • Reuse…使用済みとなった製品を廃棄せずに、繰り返し使用すること
  • Recycle…廃棄物などを原材料やエネルギー源として再利用すること

2019年11月に開催された「日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2019」の基調講演で登壇した小泉進次郎環境大臣(別ウィンドウで開く)は、「小さな行動が地球の未来を救う」と語り、「個人レベルでも、水道水をマイボトルで持ち歩くようにすれば、家計にも環境にも良いですよね。一人一人ができること、企業や自治体にできること、環境省はそれらを全力で応援しますから、ぜひみんなでソーシャルイノベーションを起こして行きましょう!」と呼びかけた。

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自身の水筒を見せ、個人レベルでの行動を促す、小泉進次郎環境大臣

小泉大臣の基調講演の後にスピーチを行った日本財団・笹川陽平(ささかわ・ようへい)会長も「簡単なことでいいから一歩前に踏み出してほしい」と行動を起こすことの大切さを語った。

マイボトルの他にも、ごみをポイ捨てしない、過剰包装を避ける、マイバックを持参するなど、私たちにできることは多い。四方を海に囲まれ、長年その恩恵を受けて暮らしてきた私たち日本人。一人一人の環境に対する意識の変化が、海の未来を変えるはずだ。

特集【増え続ける海洋ごみ】