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目標達成の秘訣は「ゆるいつながり」?習慣化アプリ「みんチャレ」がいま求められる理由

- 新型コロナウイルスによる外出自粛で、生活リズムの乱れや運動不足に陥る人が多い
- 「みんチャレ」は5人1組のチームで、励まし合いながら同じ目標を達成するアプリ
- 人と人との「ゆるいつながり」を広め、誰もが健康でポジティブに暮らせる未来を目指す
取材:日本財団ジャーナル編集部
「運動したいけど長続きしない」「勉強する習慣が身に付かない」。目標を掲げても達成する前に諦めてしまった経験は誰しもあるだろう。そんな“三日坊主”を克服・防止するための習慣化アプリ「みんチャレ」(別ウィンドウで開く)の人気が、新型コロナウイルスの影響で加速している。外出自粛により在宅時間が増え暮らしが変化する中で、自宅にいながら新しい仲間とつながり、同じ目標に取り組む人が増えている。

「みんチャレ」の特徴は、同じ課題や悩みを持つ5人(最大人数)が1組のチームをつくり、目標達成に取り組むところ。お互いに励まし合いながら習慣を身に付けることができるため達成できたという声も多く、アプリストア内での平均レビューは4.7(2019年12月時点)と高い評価を得ている。

今回は運営者であるエーテンラボ株式会社の代表・長坂剛(ながさか・ごう)さんに、「みんチャレ」だから続く、目標を達成できる仕組みについて話を伺った。
「宅トレ」や生活リズム改善に取り組むチームが人気
世界で累計感染者数が300万人以上(2020年5月1日時点)に達し、いまなお拡大し続ける新型コロナウイルス感染症。日本では2020年4月7日に政府より緊急事態宣言が発令され、外出自粛の要請を受け、多くの人が在宅を余儀なくされている。
その影響は大きく、エーテンラボが2020年4月13日から16日にかけて「みんチャレ」の登録ユーザーに行ったアンケート調査によると、通学や出勤の必要がないため、学習習慣や生活リズムが乱れてしまったり、ジムやヨガ教室などの休業によりトレーニング不足に悩まされていたりする人は、決して少なくない。
図表: 新型コロナウイルスによる運動への影響

図表: 新型コロナウイルスによる勉強への影響

そのような背景もあり、「みんチャレ」の利用者数は急増し50万人を突破。2020年4月のダウンロード数は2019年の同月に比べ約4倍にも上る。35~45歳頃の働き盛り世代を中心に、学生や60歳以上のユーザー層も増え、新たなチームが続々と立ち上がっている。
「私たちが提唱しているのは、リモートワークならぬ『リモートエクササイズ』。新型コロナウイルスによるスポーツジムの休業や外出自粛などで、運動不足を実感している人たちを中心に、『毎日ラジオ体操をしよう!』『アプリで筋トレしよう!』といった多くの“宅トレ”チームが立ち上がっています」

他にも「早起きをしよう」「毎日9時には机に向かおう」といった、在宅勤務中の会社員や学生が生活リズムを整えるために立ち上げたチーム、主婦による家事や育児について相談や励まし合うチームも活発だという。
「同じ目的に取り組んでいるためポジティブなコミュニケーションが交わされ、気軽に人と会えない状況の中で感じる孤独を解消するのに役立っているのだと思います」
オンライン上で、気軽に同じ目標を持つ人とつながることができ、切磋琢磨できる「みんチャレ」は、外出自粛の大変さが続く中、多くの人にとって精神的な支えになっているようだ。
楽しみながら自己肯定感アップ。「みんチャレ」だから続く仕組み
これまで三日坊主だったことを克服し、新しい習慣を身に付けるのは決して簡単なことではない。「みんチャレ」の仕組みにはユーザーが“楽しみながら”目標が達成できるように、さまざまな工夫が凝らされている。
最大効果を生みやすい「1チーム5人制」
全てのチームは最大5人まで。アプリの構想段階で長坂さんは、仲間と習慣を身に付けるには何人で組むのが効果的か、実証実験を繰り返したという。
「例えば2人だとすぐに返信ができなかったり、近すぎてプレッシャーになったりすることもあります。逆に人数が多くなると、通知がうるさく感じたり、個々の責任感が薄れてしまったりします。仲間同士で支え合う仕組みとして、5人が最も良い結果が出ました」
気兼ねなくて容赦のない「ゆるいつながり」
チームには匿名(ニックネーム)と簡単な自己紹介のみで参加でき、自分でチームを立ち上げることも可能。チーム内のチャットではチャレンジした証拠を写真で共有したり、スタンプやメッセージを使って互いを励まし合えたりするので、自分の投稿に反応があれば励みになり、他のメンバーにとっては良い刺激にもなる。また、チームの設定で自動退出期間も決められるので、さぼった人は自動で脱落し、自然と意欲の高いメンバーだけが残りやすい。
「チャットボットのにゃんチャレンジャーが『挨拶するニャー』など、チーム内での関わり方をサポートするので、自然と相手を褒める習慣も身に付きます」

みんなに「安心・安全」なシステム
全てのユーザーが安心して使えるように、チーム内に不適切な発言をしている人がいないか運営側でも定期的にチェックを行っているほか、通報機能も設置。また、SNS疲れやトラブルを防ぐため、ユーザーはチームのチャット内のみ交流可能で、1対1のやりとりができない仕組みになっている。
「フォローをし合ったり、『いいね!』の数を誇ったりするものではなく、チームのメンバーは一期一会の関係。目標を達成したら卒業して次のチームへ入る人もいれば、同じメンバーで何年も続いているチームもあります」
「みんチャレ」でチャレンジできるジャンルは「トレーニング」「体重管理」「勉強」「家事・仕事」「糖尿病改善」「マインドフルネス」など50種類以上。無料会員は3チームまで、プレミアム会員なら10チームまで同時に参加可能で、多くのユーザーが複数のチームに参加していると長坂さんは話す。
「エーテンラボのコンセプトは『テクノロジーでみんなを幸せにする』こと。最新の研究結果では、人間の脳は、積極的に行動を起こすことで幸せを感じることが分かっています。ただ、自己肯定感の低さや、過去の失敗がネックになって第一歩を踏み出せない方が多いんですね。それを克服して『自分にもできるんだ』という体験を積み重ねると、また次のチャレンジに取り組みたいという気持ちになります。私たちはテクノロジーを使って、人が行動範囲を広げて、どんどん幸せになっていくサイクルをつくりたいと思っています」
大学卒業後、ソニー株式会社で開発や人間の行動変容について学んだ長坂さんが「みんチャレ」を開発するきっかけになったのは、ゲームプレイ中に感じる幸福感だったという。
「何事も楽しくなければ長続きはしません。どうしたらもっと楽しみながら活用してもらえるかゲーミフィケーション(※)にも力を入れ、ほぼ毎週アップデートを行っています。ユーザーの要望にできるだけ応えたいですし、行動変容に関する新しい研究データなども積極的に取り入れています」
- ※ ゲームデザイン要素やゲームの原則をゲーム以外の物事に応用すること
「みんチャレ」では、勉強やダイエット、ストレスチェックなどのアプリを開発する企業と提携し、「公式チャレンジ」チームとして各アプリのユーザーがつながる場所も提供。習慣化に大きく貢献している。こうした取り組みが高評価につながり、話題になったゲーム、アプリを選出し発表するプログラム「Google Play ベストアプリ」を3回にわたって受賞している。

誰もが健康でポジティブに生きる社会を作りたい
日本の高齢化が進むにつれ、生活習慣病の増加が問題視されている中で、「みんチャレ」ユーザーの中にも糖尿病をはじめ、生活習慣病の改善を目的とする人も少なくない。
エーテンラボが2019年に糖尿病改善を目的とするユーザーにアンケート調査を行ったところ、60パーセント以上が運動・食事療法へのモチベーションが上がったと回答。「一人じゃないと思えた」「他の人の気を付けていることが参考になるし、自分も注意するようにった」などの前向きな意見が多数寄せられた。さらに、超高齢社会を乗り越える次世代ヘルスケア社会システムの創出を目指す神奈川県が取り組む未病対策事業の実証実験にも採用され、糖尿病改善に関する医学的エビデンスも蓄積している。

「幸せに生きるために一番大切なのは、健康でいることだと思うんです。生活習慣病などの疾病を抱えている人の中には、家族や周囲の人に言えずに一人で苦しんでいる人も少なくありません。そんな人たちが仲間を見つけて、一緒に健康をコントロールできるようになるなど、『みんチャレ』を通してみんなで支え合い、前向きに生きることができる社会をつくっていけたらと考えています」
人生100年時代。自分の健康は自分で守る、セルフメディケーションの重要性も高まっている。「みんチャレ」(別ウィンドウで開く)を、新型コロナウイルス禍による外出自粛対策をきっかけに日々の生活習慣を振り返るためのツールとして活用してみてはいかがだろうか。
撮影:十河英三郎
〈プロフィール〉
長坂剛(ながさか・ごう)
1982年生まれ。2006年ソニー株式会社入社。BtoBの営業やプレイステーションネットワークのサービス立ち上げに従事。2015年ソニーの新規事業創出プログラムから「みんチャレ」の開発に取り組み、2017年に独立しエーテンラボ株式会社(A10 Lab Inc.)を創業。2019年には世界的アクセラレーターと協働して行う実践的起業支援プログラム「日本財団ソーシャルチェンジメーカーズ」にも参加している。
エーテンラボ株式会社(A10 Lab Inc.)(別ウィンドウで開く)
みんチャレ 公式サイト(別ウィンドウで開く)
- ※ 掲載情報は記事作成当時のものとなります。