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クラウドファンディングが生み出す希望のつながり。CAMPFIREの「新型コロナウイルスサポートプログラム」とは
- 新型コロナウイルスの影響で、苦境に立たされる音楽事業者や飲食店、宿泊施設などが増加
- 国内最大のクラウドファンディングCAMPFIREは、手数料無料のサポートプログラムで経営を支援
- 新型コロナウイルスによって分断された世界で、新たな経済圏を生み出す可能性を秘めている
取材:日本財団ジャーナル編集部
1929年、アメリカ・ウォール街での株価暴落に端を発し、世界をかつてない経済危機に落とし入れた「世界大恐慌」。今回の新型コロナウイルスによる各国への影響は、それを凌ぐ可能性が高いとも言われている。感染拡大を抑えるため、人や物の動き、流れが世界的に遮断され、経済活動にも大きな影響を及ぼし、廃業や休業を余儀なくされる事業者も多い。
そのような状況下で、当座の資金調達の手段としてクラウドファンディングが注目を集めている。ユニークなアイデアや、それを具現化した商品やサービスを返礼するなどして、資金を集めるクラウドファンディング。新型コロナウイルス禍のいま、どのように利用されているのだろうか。
新型コロナウイルスによる影響で苦境に立たされる事業者に向けて、手数料無料となる支援プログラムをいち早く立ち上げた国内最大のクラウドファンディング「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」(別ウィンドウで開く)の篠原陽子(しのはら・ようこ)さん、大畑広太(おおはた・こうた)さん、加賀美実里(かがみ・みさと)さんにお話を伺った。
負の連鎖を食い止めるために
大畑さん「クラウドファンディングには、さまざまな種類があります。一番メジャーなのが、支援者に対して商品やグッズ、サービスなどをリターン(※)として返す『購入型』と呼ばれる形式ですね。他にも社会貢献につながる『寄付型』や、投資家やベンチャーキャピタル以外から投資を募る『投資型』などもあります。私たちの提供するプラットフォームCAMPFIREは、東日本大震災が起こった2011年に立ち上がったサービスということもあり、当初から購入型以外にも寄付や社会貢献的なプロジェクトが多いのが特徴と言えます」
- ※ 支援してもらったお返しとして発送するオリジナルの商品やサービス。支援額によってリターンの内容も変わる
CAMPFIREが2020年2月28日に立ち上げた「新型コロナウイルスサポートプログラム」(別ウィンドウで開く)は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、イベント中止や自粛、予約キャンセルが相次いだ音楽事業者や飲食店、宿泊施設など経営に大きな支障が出ている事業者を対象に、通常12パーセント掛かるサービス手数料が0パーセントとなるプログラム。決済手数料の5パーセントのみでクラウドファンディングの実施が可能だ。
4月末日までだった実施期間は大幅に延長され、2020年の7月31日までにエントリーフォームから申し込み、8月31日までにプロジェクトページ作成後の初回申請を行い、10月30日までに公開することがプログラムの適用条件となる。
篠原さん「CAMPFIREとして、社会のために何ができるか社内で話し合った結果、このプログラムを提供するに至りました。飲食業など業種によっては、1カ月分ほどの余力しかない事業者も多いです。そのような状況下で、クラウドファンディングは迅速な資金調達ができるところが大きな特徴です。新型コロナウイルスサポートプログラムが、少しでも経営に苦しむ方たちの助けになればと考えています」
日本企業の99パーセント以上は中・小規模経営の会社が占める。新型コロナウイルスはこういった、大企業と比べて資金力が乏しい会社に深刻なダメージを与えている。
そしてこれは、特定の業界だけに限った話ではない。例えば、宿泊施設が休業に追い込まれれば、近くの飲食店もその影響を受け、飲食店が店を閉めれば、そこに材料を卸している生産者にも大きな影響が出ることが予想される。こういった負の連鎖を食い止める上でも、クラウドファンディングのように市民一人一人からサポートが受けられる仕組みは貴重である。
クラウドファンディング成功の鍵は、企画力と「やる気」
加賀美さん「新型コロナウィルスサポートプログラムは、プログラム開始のタイミングからものすごく反響がありました。5月13日時点で、申請数は3,300件以上、公開は1,000件以上、支援者数は25万人、支援総額は25億円に到達しています」
プログラムの利用者は、各国の渡航禁止や外出自粛の煽りを受けた飲食店や宿泊施設、いち早く休業を決意したライブハウスや、ライブがキャンセルとなったアーティストなど音楽関連が多い。
図表:新型コロナウイルスサポートプログラムの利用属性
「コロナ関連のプロジェクトの特徴として、特定の地域のお店や宿泊施設が合同でプロジェクトを立ち上げているケースが多くあります。このメリットとしては、参加者の負担を下げながら、それぞれの人脈を使って多くの人にサポートを呼び掛けることができるところです。後は、いかにプロジェクトメンバー全員が一つの思いや方向性を持って走っていけるか、チームワークやコミュニケーションが重要となります」
クラウドファンディングのプロジェクトを成功させるために大切なのは「企画力」だという。
篠原さん「重要なのは、プロジェクトの目的と内容の整合性、そしてそれを誰に届けるかという視点です。これが噛み合っていないと、プロジェクトとして目標額を達成するのはなかなか難しくなります」
企画力と聞いて心配になった人は案ずることなかれ。CAMPFIREはキュレーターと呼ばれるスタッフによるサポート体制が充実しているのも特徴。企画の相談など、不安や疑問に寄り添いサポートしてくれる。
大畑さん「他社とCAMPFIREの大きな違いは、プロジェクトの数と携わるスタッフの多さです。初めてクラウドファンディングを検討される方でも、安心してご利用いただけます」
企画を立てたら、それをどうアウトプットするかも大切だ。キャッチーな画像、動画の活用なども効果的だという。また、プロジェクトを表現する具体的な画像を多く掲載する方が、内容をじっくり読まれやすい傾向もあるそうだ。
加賀美さん「プロジェクト公開後のPRも重要ですね。クラウドファンディングには『3分の1』の法則というものがありまして、支援の3分の1はつながりのある親しい友人から、残りの3分の1が友人の友人、最後の3分の1がそれ以外の人からの支援につながることが多いんです。まずは応援してくれる身近な人たちにしっかりと思いを伝えることが大切です」
CAMPFIREの場合、初日に目標金額の30パーセントを達成するとプロジェクトの成功率はグンとアップするという。
篠原さん「とはいえ、プロジェクトの『成功』の定義は、達成率だけでは測れないものです。CAMPFIREでは、新型コロナウイルスサポートプログラムをできるだけ多くの方の事業継続の役に立てればとサポートに力を入れています」
企画内容も重要だが、大切なのは自ら前に踏み出す「やる気」なのかもしれない。
つながりを新たに紡ぎ出す手段として
CAMPFIREでは、他にもクラウドファンディングに関するさまざまなサービスを展開している。
「CAMPFIREコミュニティ」(別ウィンドウで開く)は、いわゆるサブスクリプション型のコミュニティ運営サービス。期間限定での支援募集しかできないクラウドファンディングに対し、継続的に活動費の支援を募ることができる。アーティストやミュージシャン、起業家、コンサルタント、スポーツ選手など多種多様なコミュニティが存在し、交流も活発だ。活動を自粛しなければならない今だからこそ、ファンの基盤作りにぜひおすすめしたい。
「GoodMorning」(別ウィンドウで開く)は、社会問題と向き合い、課題解決に取り組んでいる人に特化したクラウドファンディングのプラットフォーム。「声を上げる」「アクションを起こす」「アクションを継続する」「社会を変える」といった4つのステップで、社会変革を一貫してサポートしてくれる。
日本初の「クラウドファンディング保険」(別ウィンドウで開く)サービスを提供するのもCAMPFIREならでは。例えば、プロジェクト実施者が、会社倒産などの理由によりリターンの実行が難しくなった場合などに、支援者に対し支援金額の80パーセントを上限とし補償される。プロジェクトを実施する側も、支援する側も特別な費用を支払うことなくサポートを受けることが可能だ。
篠原さん「私たちも、手数料無料プログラムの提供を通じて、その先の事業継続をサポートできたらと考えています。もし、少しでも関心を持っていただけたら、ぜひ詳細をご覧になってみてください」
新型コロナウイルスにより分断された社会の中で、地域や業種間、新しいファンとのつながりをつくるクラウドファンディングは、資金を集めるだけでなく、新たな経済圏を生み出すツールとなるのかもしれない。
- ※ 掲載情報は記事作成当時のものとなります。