日本財団ジャーナル

Uber Eatsが困窮家庭に食事を無償提供。人の命と心を「食」がつなぐ

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食事を配達するUber Eatsの配達パートナー(イメージ)
この記事のPOINT!
  • 新型コロナの影響による休校で給食がなく、食事を取る機会が大幅に減っている子どもがいる
  • Uber Eatsが、日本財団が運営する困窮家庭の子どもの支援施設に食事を無償提供
  • 自粛継続で高まる社会からの「孤立」リスク。いまこそ国や企業だけでなく地域による支えが必要

取材:日本財団ジャーナル編集部

子どもの成長にとって欠かせない「食事」。日本では、7人に1人の子どもが相対的貧困(※)状態にあると言われ、毎日の栄養補給を学校の給食に頼っている子どもも少なくない。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大による学校の休校で給食がなくなり、食事する機会が大幅に減っている子どもたちがいる。

  • その国の等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分に満たない世帯のこと。経済的な困窮を要因とした衣食住の余裕のなさに加え、経験や体験の機会が乏しく、さまざまな面で不利な状況に置かれる傾向にある

オンラインフードデリバリーサービス「Uber Eats(ウーバーイーツ)」(別ウインドウで開く)は、そんな困窮家庭をはじめ、難病児がいる家庭、新型コロナウイルスの感染者の医療従事者を支援するため、計4万食の食事を無償で提供する取り組みを始めた。

これは、Uberが新型コロナウイルスに関する支援策として世界中で進めている乗車・食事を無償提供する取り組み「Move What Matters」の一環で、日本では医療従事者には希望する医療機関を通して計3万食、困窮家庭には日本財団が全国で展開する困窮家庭の子どもを支援する施設「第三の居場所」(別ウィンドウで開く)を通して、難病児がいる家庭には日本財団が取り組む難病児とその家族を支援する施設を通して、計1万食が届けられている。

今回は、その支援先の一つである第三の居場所・尼崎拠点(兵庫県)のマネージャーに、子どもたちの現状、いま必要な支援について話を聞いた。

命と心をつなぐ「食」の支援

「第三の居場所では、放課後から親御さんがお子さんを迎えに来るまでの間、一緒に宿題をしたり、ごはんを食べて、お風呂に入ったりして、子どもたちが将来自立するための手助けや、基本的な生活習慣を身に付けるお手伝いをしています。ですが、新型コロナウイルスの影響でたくさんの子どもを1カ所に集めるのが難しくなってしまい、せめてごはんだけはしっかり食べてもらうおうと、昼食を中心に2時間ごとに上限3人と決めて、交替制で拠点に来てもらい子どもたちに食事を提供しています」

子どもたちに提供するメニューは、ごはんと汁物、主菜と副菜と、栄養バランスがしっかりとれた食事である。「給食を食べられない分、しっかり拠点で栄養補給をしてほしい」とマネージャーは話す。

第三の居場所・尼崎拠点に通う子どもは、小学校低学年から高学年まで全部で11人。その中には、長期休校が続き生活が昼夜逆転したことによる影響や、新型コロナウイルスに対する感染の恐怖から外出することが難しくなり、尼崎拠点に顔を見せることができない子どももいるという。

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第三の居場所で提供する手作りの食事。写真:第三の居場所・尼崎拠点提供

「繊細な子どもたちの中には、家から出られなくなってしまっている子も多いんです。彼らの健康状態や生活リズムの乱れも心配ですが、連日のコロナ報道のニュースや『家にいよう』と配信される動画を、おうちの中で一人で見ている子どもたちが、精神的にどれくらいの不安を抱えているかも懸念しています」

尼崎拠点に顔を見せる子どもたちからも、学校から宿題が出されているが家で一人だとなかなか進まない、家ではテレビばかり見てしまう、他の子どもと遊べないのがつらいといった声が上がっているという。

「いま尼崎拠点では、顔を見せてくれる子どもたちと一緒に、感染予防のためのマスク作りのワークショップなども実施しています。私たちや他の子どもたちの顔を見ると少し安心するようです」

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スタッフと一緒にマスク作りをする子ども。写真:第三の居場所・尼崎拠点提供

感染防止のための外出自粛が続く中で、子どもたちがいかに生活のバランスを取ることが難しいかが見えてくる。経済的事情で親が仕事を休むわけにいかず、家に一人でいる子どもだとなおさらだ。新型コロナウイルスの感染を防げても、栄養面だけでなく心に支障をきたしてしまう恐れがある。

「だからこそ、今回のUber Eatsさんの支援は本当に助かっています。子どもたちだけでなくその親御さんたちの分までお弁当による食事をサポートいただくことは、子どもたちの健康を守る上でも重要なこと。保護者の皆さんからも『助かります』と感謝の言葉をいただいています。また、ただ食事を提供する機会だけでなく、不足しているコミュニケーションを補う良い機会を与えてくれました」

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Uber Eatsで届いたお弁当を受け取る尼崎拠点のスタッフ。写真:第三の居場所・尼崎拠点提供

尼崎拠点では、施設に通える子どもについては拠点にて食事を提供。施設の利用を自粛している子どもたちについては、少しでも接点を持ち様子が確認できるようにと取りに来てもらう形で、Uber Eatsの支援によるお弁当を手渡ししている。お弁当を受け取る時に、「今日のおかずは何?」と楽しみに聞いてくる子どもや、昨日食べた感想をうれしそうに話す子どももおり、その声を聞くだけでスタッフたちも元気をもらえていると話す。

また、外出すること自体が難しい子どもの家庭には、尼崎拠点のスタッフが自宅までお弁当を届けている。

「おかげで、1カ月ぶりに会えた子どもいます。1日1食しか食べていないそうで、少し痩せていたので心配になりました。このお弁当を直接渡すことで、孤立感が和らぎ、少しでも心とお腹を満たしてもらえたらと思っています」

健やかな子どもを育むために

第三の居場所の取り組みには拠点ごとにさまざまな特徴があり、尼崎拠点では設立当初より「食」を大切にしてきた。

「コロナが流行る前までは、月に1、2回料理イベントを開催してきました。はじめは、普通のレシピ本から『今日はこれを作るよ』といった感じでやっていましたが、『みじん切り』や『ひたひた』などといった料理の専門用語が子どもたちには難しい場合もあるので、私たち自身で調理の仕方やレシピが載った小冊子を作り、子どもたちの役割を『野菜を切る係』や『煮込む係』と分担しながら教えています」

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尼崎拠点手作りの小冊子「包丁の使い方」。写真:第三の居場所・尼崎拠点提供
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尼崎拠点手作りの小冊子「ちらし寿司の作り方」。写真:第三の居場所・尼崎拠点提供

料理イベントの開催は、子どもたちが調理方法や旬の食材などを覚える以外に、自分の役目を終えた子どもが「他に何か手伝うことはある?」と自ら進んでスタッフや他の子どもの手伝いをするなど、協調性を育てる上でも役に立っているという。

「何か新しいことができるようになるのは、子どもたち自身にとってもうれしいこと。それは自己肯定感を育てることにもつながります」

尼崎拠点では、みんなで食事を作ったり食べたりすることで仲間意識を高めたり、遊びの中では聞けないような学校や家庭の話を聞いたりするように心掛けている。

「いまは料理イベントを開くことは難しいですが、子どもたちが健やかに育つためにも、コロナが終息した際にはより積極的に取り組んでいきたいと考えています」

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第三の居場所で、楽しく食卓を囲む子どもたちとスタッフ(イメージ)

孤立しがちな子どもや家庭を守るには

食事の機会が減ってしまった子どもとその家庭に、少しでも食事を楽しめる時間を提供しようと始まったUber Eatsによる困窮家庭への食事の無償提供。マネージャーに、今後、第三の居場所を利用する子どもや保護者たちに必要な支援を尋ねた。

「私たちの拠点を訪れる子どもたちや親御さんは、社会の中でも孤立しやすい状況の方が多い印象です。感染防止のために家に留まることは大事ですが、家庭によっては、ずっと家にいることでさまざまなリスクが増える場合もあるのです。感染防止対策をしっかり行った上で、食事の受け渡しや、近所との挨拶でもいいので、周囲とのちょっとした『つながり』ができれば、そんなリスクを抑えることができるのではないでしょうか」

新型コロナウイルスが終息し学校が再開した時に、子どもたちが以前と変わらない健康な状態であるよう、さまざまな取り組みを行っていきたいとマネージャーは語る。

Uber Eatsでは新型コロナウイルスによる感染拡大に対し、これまでにも配達パートナーやドライバーへの経済的支援制度の実施、中小規模のレストランへの支援や「Stay Home」の推推に取り組んできた。しかし、この未曾有の危機を乗り切るためには、国や自治体、企業による支援だけでなく、「隣の子は元気かな?」「近所のお宅は大丈夫かしら?」といった周囲とのつながり、地域で支え合う気持ちが大切ではないだろうか。