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ADHDの夫が語る。障害を受け入れて得た信頼とパートナー

写真:インタビューに答える西出光さん
発達障害があり、現在は訪問介護士として働く西出光さん
この記事のPOINT!
  • ADHD(※)が原因で20回以上転職。人に気付かれにくい障害のためトラブルに発展しやすい
  • 同じ発達障害者の妻が薦めてくれた訪問介護士が、今の仕事。理由は「一人でできる」から
  • 障害があるから、自分の得意と苦手を理解し生きやすくなった。今では障害に感謝している
  • 発達年齢に比べて落ち着きがない、待てない、注意が持続しにくい、作業にミスが多い(不注意)といった特性がある発達障害の1つ

西出光(にしで・ひかる)さんは発達障害であるADHDの当事者だ。

発達障害は脳機能の発達が関係する障害で、障害の程度や年齢、生活環境などによっても症状はさまざま。他人とのコミュニケーションや対人関係を築くのが苦手な傾向にあり、その行動や態度は「自分勝手」「変わった人」「困った人」などと誤解されやすい。そのため、養育者が育児の悩みを抱えたり、本人が生きづらさを感じたりすることがある。

それぞれの障害の特性

[自閉症]
●言葉の発達の遅れ
●コミュニケーションの障害
●対人関係・社会性の障害
●パターン化した行動、こだわり

[アスペルガー症候群]
●基本的に言葉の発達の遅れはない
●コミュニケーションの障害
●対人関係・社会性の障害
●パターン化した行動、興味・関心の偏り
●不器用(言語発達に比べて)

[注意欠陥多動性障害(AD/HD)]
●不注意(集中できない)
●多動・多弁(じっとしていられない)
●衝動的に行動する(考えるよりも先に動く)

[学習障害(LD)]
●「読む」「書く」「計算する」等の能力が、全体的な知的発達に比べて極端に苦手

自閉症とアスペルガー症候群は広汎性発達障害と呼ばれる。
広汎性発達障害と注意欠陥多動性障害は知的な遅れを伴うこともあります。

それぞれの障害の特性

[自閉症]
●言葉の発達の遅れ
●コミュニケーションの障害
●対人関係・社会性の障害
●パターン化した行動、こだわり

[アスペルガー症候群]
●基本的に言葉の発達の遅れはない
●コミュニケーションの障害
●対人関係・社会性の障害
●パターン化した行動、興味・関心の偏り
●不器用(言語発達に比べて)

[注意欠陥多動性障害(AD/HD)]
●不注意(集中できない)
●多動・多弁(じっとしていられない)
●衝動的に行動する(考えるよりも先に動く)

[学習障害(LD)]
●「読む」「書く」「計算する」等の能力が、全体的な知的発達に比べて極端に苦手

自閉症とアスペルガー症候群は広汎性発達障害と呼ばれる。
広汎性発達障害と注意欠陥多動性障害は知的な遅れを伴うこともあります。

※このほか、トゥレット症候群や吃音(症)なども発達障害に含まれます。
発達障害の症状はさまざま。画像引用元:政府広報オンライン「『発達障害』とはどんな障害?」より

光さんはADHDが原因で、過去に20回以上も転職を繰り返してきたが、今の訪問介護士の仕事は3年以上続いている。薦めてくれたのは、同じ発達障害の1つアスペルガー症候群(※)の妻・西出弥加(にしで・さやか)(外部リンク)さんだという。

  • 社会性・コミュニケーション・想像力・共感性・イメージすることに困難を抱え、こだわりの強さ、感覚の過敏などを特徴とする、知能や言語の遅れがない障害。自閉スペクトラム症

今では障害に感謝をし「それぞれに『生きやすい場所』はある」と、その理由と夫婦の関係性について話を聞かせてくれた。

※この記事は、日本財団公式YouTubeチャンネル「ONEDAYs」の動画「【発達障害の夫婦②】介護士の夫に1日密着してみた | ADHD」(外部リンク)を編集したものです

ADHDは「気付かれにくい」からトラブルに発展しやすい

光さんはADHDの生きづらさについて、自身の経験をもとに話す。

「ADHDは不注意が多いんです。物忘れが激しくて、気が付いたら電車のICカードを20枚くらい買っていました。仕事だと入力間違いが非常に多かったり、大切な書類をシュレッダーにかけてしまったり……」

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自身のADHDの症状について話す光さん

日常生活において、ADHDという障害は他者に気付かれにくいと話す。光さんはそれが原因で、転々と職場を変えざるを得なかった。

「短い時間であれば、特に問題なくコミュニケーションはできるんですよ。でも、作業はうまくできません。説明を聞いて、頭では理解しているはずなのに、なぜかできないんです。そういう状態が続くと、同僚や上司からは『やる気がない』とか『この人は私のことが嫌いなのかな?』って思われてしまいますよね。『会話はできる』というだけに障害だと気付かれずに、人間関係のトラブルに発展しやすいんです」

入社してわずか1時間で仕事を辞めるということもあったそうだ。

訪問介護士の仕事は周囲のサポートもあり、3年以上継続

光さんの現在の仕事は訪問介護士。利用者の自宅を訪問し、身体的な介護だけではなく、生活のサポートも行う。勤続3年を超えて今も続けられている。

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利用者の自宅で介護を行う光さん

「仕事は楽しくやっています。『1人でできる』ということが一番大きいですね。誰かと一緒に作業をするという時点で、頭が混乱してしまうんです。一人でできる仕事は他にもあるとは思うんですが、訪問介護が良いのは『指示待ち』でも問題がないから。利用者の方に何か言われたときに、言われた分だけお返しするのがこの仕事。利用者さんの手足の役割なんです」

同僚も光さんの障害を理解しており、サポート体制も万全だという。

例えば、同僚が作製したカレンダー型の薬入れ。利用者がいつ、どの薬を飲めばよいか一目で分かるようになっている。

「それでも利用者さんと外出するときに、薬を取り忘れることがあります。なので、職場の人が気を遣って、僕に薬の入ったジップロック(チャック付きポリ袋)を渡してくれます。カレンダーから取り忘れても、このジップロックがあるから大丈夫」

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薬の入ったジップロックを持つ光さん。壁に掛かっているのが、同僚が作ったというカレンダー型の薬入れ

光さんの上司である加藤さんはこう話す。

「例えば『ドアが開いたままだった』とか、『物をあるべき場所に戻してない』とか、そういうミスって、光さんに限らず誰にでも起こり得えますよね。なので、何か足りない部分があったときは、『全員で補っていきましょう』と社員たちに伝えています。光さんにはそれ以上の仕事をしてもらっているので、頼りにしていますよ」

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光さんの採用も担当したという上司の加藤さん

発達障害でも環境次第で実力を発揮ができる

仕事が終わり、光さんが帰宅すると、出迎えてくれたのは妻の弥加さん。3年前にSNSで出会い結婚した。弥加さんにも発達障害があり、アスペルガー症候群と診断されている。

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帰宅した光さんを玄関で迎える弥加さん
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光さんに訪問介護士を薦めた理由について話す弥加さん

光さんに訪問介護の仕事を薦めたのは弥加さん。その理由は、弥加さんの実体験にもとづくものだった。

「光と出会って、とにかく『光のことを知ろう』と観察していたら気付いたんです。1対1の会話ならスムーズにいくけど、相手が複数になるともうダメ。そこでふと思い出しんたんですけど、うちの叔母もADHDで、仕事を転々としていたんですよね。でも、訪問介護の仕事だけは10年以上続けられていたんです。なので、光くんに薦めました」

それから光さんは1カ月で訪問介護士の資格を取得、現在まで続く仕事となっている。

「弥加さんは命の恩人だと思っています。誰も助けてくれなかった僕に手を差し伸べてくれました。この恩は何があっても返していきたいなと思います」

そう語る光さん。最近、日々の生活の中で感じたことがあるという。

「障害があっても環境次第で楽に生きられるし、頑張れるというのを、同じく発達障害を抱えている方に伝えたいと思いました。障害であることと、実力を発揮できるということは、別の問題なんですよ。僕は障害がきっかけで、何が得意で何が苦手なのかを明確にできました。だから、今の仕事に出会えたんだと思っていて、そういう意味では障害に感謝しています」

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「今となっては障害に感謝している」と話す光さん

光さんはこう続ける。

「複数人でまとまって動くということは、正直、今も5分とできないんですけど(笑)。そんな僕でも仕事ができていて、弥加さんがいます。きっとみんなに、それぞれの『生きやすい場所』があると思います」

自身の強みと弱みを自覚する。一見簡単なことのように思えるが、見栄やプライドが邪魔をして難しいものだ。自分に素直になり、相手を理解しようという気持ちを、一人一人が持てるようになれば、世の中はもっと生きやすくなるのかもしれない。

【発達障害の夫婦②】介護士の夫に1日密着してみた | ADHD」(動画:外部リンク)
ONEDAYs 動画一覧 | Youtube(外部リンク)