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選択的夫婦別姓制度は、夫婦の関係を安定させる ~日本財団18歳意識調査アンケートより~

夫婦のマトリョーシカが描かれたイラスト。互いに上半分と下半分のパーツが入れ替わった姿を想像している。

取材:日本財団ジャーナル編集部

日本財団は、2025年8月、「選択的夫婦別姓制度」(別タブで開く)をテーマに73回目の18歳意識調査を実施しました。有識者に印象に残った調査結果についてインタビューを通してお考えをお聞きしていきます。

質問:夫婦別姓について、あなたの考えに最も近いものを選んでください。

18歳意識調査の棒グラフ。「夫婦別姓について、あなたの考えに最も近いものを選んでください。」という質問に回答した人の項目別割合(%)。
全体(n=1,000)で「今の制度(夫婦同姓)を維持すべき」と答えた人は20.5%。「名字変更後も、旧姓を使える場面を維持すべき」と答えた人は19.1%。「希望する夫婦は別姓を選べるようにすべき」と答えた人は47.6%。「よくわからない/どれにも当てはまらない」と答えた人は8.6%。「答えたくない」と答えた人は4.2%。
男性(n=513)で「今の制度(夫婦同姓)を維持すべき」と答えた人は27.7%。「名字変更後も、旧姓を使える場面を維持すべき」と答えた人は15.2%。「希望する夫婦は別姓を選べるようにすべき」と答えた人は42.5%。「よくわからない/どれにも当てはまらない」と答えた人は9.2%。「答えたくない」と答えた人は5.5%。
女性(n=487)で「今の制度(夫婦同姓)を維持すべき」と答えた人は12.9%。「名字変更後も、旧姓を使える場面を維持すべき」と答えた人は23.2%。「希望する夫婦は別姓を選べるようにすべき」と答えた人は53.0%。「よくわからない/どれにも当てはまらない」と答えた人は8.0%。「答えたくない」と答えた人は2.9%。
出典:18歳意識調査 第73回テーマ「選択的夫婦別姓制度」

全体の約半数が「希望する夫婦は別姓を選べるようにすべき」と回答しました。

この質問に「今の制度を維持すべき」または「名字変更後も、旧姓を使える場面を拡大すべき」と回答した人にその理由を尋ねました。

質問:夫婦別姓について、「今の制度を維持すべき」または「名字変更後も、旧姓を使える場⾯を拡⼤すべき」と答えた⼈にお伺いします。(複数回答2つまで)

18歳意識調査の集合横棒グラフ。「夫婦別姓について、「今の制度を維持すべき」または「名字変更後も、旧姓を使える場面を拡大すべき」と答えた人にお伺いします。その考えの理由を教えてください。」という質問に回答した人の項目別割合(%)。2つまで複数回答可。「その他」「特に理由はない」「答えたくない」を除き、全体の降順で表示。
「子どもの姓がややこしくなると思う」を選択したのは、全体(n=396)のうち36.4%、男性(n=220)のうち39.5%、女性(n=176)のうち32.4%。
「名字変更後も、旧姓を使える場面を拡大すれば十分に対応できると思う」を選択したのは、全体(n=396)のうち31.8%、男性(n=220)のうち19.1%、女性(n=176)のうち47.7%。
「制度が複雑になる・面倒なことが増えるのが心配」を選択したのは、全体(n=396)のうち26.0%、男性(n=220)のうち29.1%、女性(n=176)のうち22.2%。
「今のままで困っていない」を選択したのは、全体(n=396)のうち19.2%、男性(n=220)のうち22.3%、女性(n=176)のうち15.3%。
「法律を変えてまで対応する必要はないと思う」を選択したのは、全体(n=396)のうち13.4%、男性(n=220)のうち15.0%、女性(n=176)のうち11.4%。
「姓が違うと家族としての一体感が損なわれると思う」を選択したのは、全体(n=396)のうち13.1%、男性(n=220)のうち15.9%、女性(n=176)のうち9.7%。
「その他」を選択したのは、全体(n=396)のうち3.3%、男性(n=220)のうち4.1%、女性(n=176)のうち2.3%。
「特に理由はない」を選択したのは、全体(n=396)のうち6.3%、男性(n=220)のうち6.8%、女性(n=176)のうち5.7%。
「答えたくない」を選択したのは、全体(n=396)のうち3.0%、男性(n=220)のうち3.2%、女性(n=176)のうち2.8%
出典:18歳意識調査 第73回テーマ「選択的夫婦別姓制度」

女性の約半数が「旧姓を使える場面を拡大すれば十分に対応できると思う」と回答し、「別姓を選べるようにすべき」と回答しなかった理由として突出しています。

また、「希望する夫婦は別姓を選べるようにすべき」と回答した人にもその理由を尋ねました。

質問:夫婦別姓について、「希望する夫婦は別姓を選べるようにすべき」と答えた⼈にお伺いします。その考えの理由を教えてください。(複数回答2つまで)

18歳意識調査の集合横棒グラフ。「夫婦別姓について、「希望する夫婦は別姓を選べるようにすべき」と答えた人にお伺いします。その考えの理由を教えてください。」という質問に回答した人の項目別割合(%)。2つまで複数回答可。「その他」「特に理由はない」「答えたくない」を除き、全体の降順で表示。
「家族の形は多様でいいと思う」を選択したのは、全体(n=476)のうち55.0%、男性(n=218)のうち55.0%、女性(n=258)のうち55.0%。
「選べるほうが時代に合っていると思う」を選択したのは、全体(n=476)のうち43.7%、男性(n=218)のうち46.3%、女性(n=258)のうち41.5%。
「姓を変えるのは不便・面倒だと思う」を選択したのは、全体(n=476)のうち19.7%、男性(n=218)のうち15.6%、女性(n=258)のうち23.3%。
「名前はその人のアイデンティティだから」を選択したのは、全体(n=476)のうち19.3%、男性(n=218)のうち19.7%、女性(n=258)のうち19.0%。
「自分が将来そうしたいから」を選択したのは、全体(n=476)のうち4.4%、男性(n=218)のうち3.2%、女性(n=258)のうち5.4%。
「海外では当たり前になっているから」を選択したのは、全体(n=476)のうち2.9%、男性(n=218)のうち1.8%、女性(n=258)のうち3.9%。
「その他」を選択したのは、全体(n=476)のうち3.8%、男性(n=218)のうち2.8%、女性(n=258)のうち4.7%。
「特に理由はない」を選択したのは、全体(n=476)のうち5.9%、男性(n=218)のうち6.4%、女性(n=258)のうち5.4%。
「答えたくない」を選択したのは、全体(n=476)のうち0.4%、男性(n=218)のうち0.9%、女性(n=258)のうち0.0%
出典:18歳意識調査 第73回テーマ「選択的夫婦別姓制度」

男女とも「家族の形は多様でいいと思う」が最も多く、次いで「選べるほうが時代に合っていると思う」が多く、他の回答を大きく引き離しています。

これらの「夫婦別姓の通称利用」と「家族の形の多様性」の若者の意識について、有識者にお話をお聞きします。

今回は、上智大学法学部/法学研究科法律学専攻の三浦(みうら)まり先生にお話を聞きました。三浦先生は、「さらば、男性政治」(岩波新書2023年)などの著書もあるジェンダーと政治の専門家で、2026年10月に日本政治学会(会員・約1,800人)の初の女性理事長に就任予定です。

三浦まり先生

夫婦別姓の通称利用がどんなに不便かを知ってほしい

今回の調査で、約半数が「希望する夫婦は別姓を選べるようにすべき」と答え、女性では過半数となっています。「名字変更後も、旧姓を使える場面を拡大すべき」と答えた人は2割弱ですが、実態を知るとまた意見が変わるかもしれません。通称使用がどれだけ不便か、あるいは別姓を望む人にとってどれだけ尊厳を傷つけるか、といった想像力は、社会全体でまだあまり共有されていないかもしれないからです。

現在では免許証やマイナンバーカードに旧姓を併記することができますが、通称で銀行口座の開設がすんなりできるわけではありません。

先日ある銀行で口座を開設しようとしましたが、とても大変でした。通称で申し込んだら、「できません。どうしてですか?(意図が)わかりません」という反応が返ってきました。いろいろと説明しましたが、あまり納得してもらえず、最後は仕方がなく、「この名前を見るのが嫌なんです」って言ったら、「ああ、そうなんですね。わかりました」と、ようやく申請書を受け付けてもらえました。

仕事で使っている名前を口座で使えない不利益をあまり理解してもらえないようでしたが、「そこまで言うのなら」ということだったのかもしれません。銀行によって通称が使えるかはまちまちで、断られたところもあります。この銀行は口座を開けただけよかったともいえます。口座開設で通称利用を希望する人が、実はまだあまりいないのかもしれないと感じました。

それから、一般社団法人の法人登記では、戸籍名しか使えません。対外的には通称しか使わないので、正式な登記上の名称と社会的に認知されている名称にズレが生じてしまっています。

源泉徴収票が通称で発行されても、確定申告は問題なくできます。ただ、国税庁は支払調書に屋号や芸名ではなく氏名(個人名)を書くように指導しているため、支払い元から戸籍名を尋ねられることも多いです。

芸名と旧制使用は異なりますが、通称が芸名扱いされ、実際の利用には限度があるのです。通称で行った仕事の対価が、異なる名前で法的処理がなされることに、強い違和感を覚えますし、通称を使う人だけが、不必要な場面でいちいち婚姻関係を晒されるのも、理不尽です。

結局、マイナンバーカードに通称が記載できも、こうした壁が残っているのです。通称には法的根拠がないですから、当然といえば当然で、選択的夫婦別姓以外にこの問題の解決方法はないといえます。

特に、海外では苦労します。日本の通称というのは海外ではまったく通じません。パスポートでは戸籍名の後にスペースなしの(カッコ)で旧姓を入れることはできます。ただ、カッコはアルファベットではなく、記号なので、コンピューターなどに入力するときにはじかれることがあります。

スペースを入れて通称を記載すれば「ミドルネーム」として処理されるのでしょうが、カッコなのでそうは認識されない。さらに、カッコの前にスペースがないので、理論的には「戸籍名(旧姓)」が名前の一部を構成しているように見える。カッコだったとしてもスペースがあれば、戸籍名だけを入力するという処理になるでしょうが、カッコ含めて1つの名前として認識した場合に、カッコを入力できない仕様になっていると、操作する人が戸惑うことになります。

なぜパスポートの記載がこうなっているのか、つまり日本では夫婦別姓が認められていないことを説明し、そして、対処法としてどの名前を登録するのがいいのかを伝えなくてはなりません。結果的に、海外で通称を使うことはかなり難しいのが現実です。

それから、海外の大学院に推薦書を書くとき、最後にプラットフォーム上でリーガルネームを打ち込むことを求められることが多く、これにも困っています。学生の推薦状は、当然「三浦まり」で書くのですが、それをアップロードすると、最後にリーガルネームをタイプすることを求められます。リーガルネームを書いたら、推薦書に書いた名前とは異なるわけです。

私の場合は、パスポートに「戸籍名(通称名)」のダブルネームを記載しているので、それを打ち込んではいますが、もしリーガルネーム(戸籍名)だけでサインしたら、「これは誰?間違った推薦状ではないか?」と疑われるかもしれない。そもそも、学者としても教員としても戸籍名は使っていませんから、それを書かなくてはいけないというだけで、自分の尊厳が踏み躙られる感覚を覚えます。

さらに、戸籍名を書くことで、推薦される学生にとって不利益になるのではないかと心配になります。今のところカッコを使えるプラットフォームが多いので助かっていますが、もしアルファベットしか受け付けない場合は、非常に困ることになります。

今回の調査結果で、女性の過半数が「希望する夫婦は別姓を選べるようにすべき」と答え、「今の制度を維持すべき」または「名字変更後も、旧姓を使える場面を拡大すべき」と回答した人(36.1パーセト)のうち、通称利用の拡大で「十分に対応できる」と回答した女性が多かったですが、通称利用の限界を知れば、回答が変わってくるのではないかと思います。

夫婦別姓を望む人もいれば、同姓を望む人もいる。あるいは、仕事上は旧姓を使い、家族関係や地域社会では家の氏を名乗るダブルネームを望む人もいます。再婚の場合にどの名字を使いたいかは、事情によってさまざまでしょう。名前はその人のアンデンティティに関わることですから、本人が選べるようにすることが人権の観点から必要です。

他方、他人にとっての名前は識別情報です。同じ人物であることを識別するには、同じ名前がいい。通称利用は、この観点から広がってきました。しかし、法的根拠のないままの拡大には限界があります。同一人物なのかの識別を難しくさせることは、本来は望ましくありません。

人権の保障と識別情報の信頼性という全く違う観点を混同せずに議論を深める必要がありますが、ここに家族制度の維持という別の論点が加わることで、議論が一層複雑になっています。

選択的夫婦別姓制度は現代の家族観に合っている

選択的夫婦別姓制度は、法制審議会が1996年に答申を出しましたが、集票力を持つ宗教団体が反対し、法制化に至っていません。このような宗教団体への配慮やせめぎあいは、日本に限らず世界各国でもよく見られ、中絶や同性婚への反対運動などが展開しています。

日本人は強い宗教的な信仰を持つ人が多いわけではなく、宗教教義を説教される機会も多くはありませんが、伝統的な家族観とそれに基づく家族行事は依然として残っていると思います。

伝統的な家族観というのは、異性愛同士で結婚し、結婚したら離婚すべきではなく、不倫ももちろんいけないし、配偶者と子供を持つべきで、女性は子育てや家事の責任を担う、というものです。伝統的な価値観が強いコミュニティでは、離婚したり、再婚したり、連れ子がいたり、あるいは同性パートナーがいるというような、伝統的な家族観から外れることに対して、否定的な評価が下されがちです。

日本のお墓は個人単位ではなく、「〇〇家」の墓となっているように家単位が基本形です。また、法事は長男が掌るという慣習は残っています。社会通念としての家制度や家父長的なものが家族行事の中で可視化される時があります。女性たちがおさんどんして、男性たちだけで飲み交わすのもよく見る光景です。

今は、相続はきょうだい平等で、家督もなく、法的には家族関係は平等になっていますが、慣習上の序列や男尊女卑が消えたわけではなりません。

他方で、社会意識としては男女平等が浸透してきている。伝統的家族を守りたい立場からすれば、夫婦別姓になるとさらに「伝統」が壊れていく怖さを感じているのでしょう。法的に本当にみんなが平等になって、個人単位になったら、「社会通念としての伝統的家族がどこまで守られるんだろうか?」と。だから余計に運動を頑張ることになるのかもしれません。

実際には、家族のあり方はどんどん多様になっていて、さまざまな家族が存在します。法が現実に追いついていないわけです。調査結果からも、そのことが見えてきます。

ジェンダー平等を妨げるのは、強制的な夫婦同性だけではない

ジェンダー平等な社会にしていくためには、それを支える法制度の整備が必要ですが、日本では不十分です。選択的夫婦別姓制度以外にも、日本の法律は、セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(Sexual and Reproductive Health and Rights:SRHR)のライツ(権利)にあたる女性の性的自己決定権を保障していません。

日本は人口妊娠中絶ができる国だと誤解されていますが、自己堕胎罪が刑法に残り、犯罪化されています。ただし、その違法性が棄却される条件として母体保護法があるので、その条件を満たせば中絶ができる仕組みになっています。

中絶を受けるためには配偶者同意の条件が入っています。つまりは、夫が妻に産ませる権利が保障されているわけです。予期しない妊娠をした時に、パートナーと音信不通になってしまうと中絶手術を受けられなくなるケースも出ています。トイレで死産した高校生や技能実習生が遺体遺棄罪で逮捕されるという悲しい事件が起きていますが、罪はその女性にあるのではなく、女性を追い詰める法制度や責任を取らない男性にあるのです。

ジェンダー平等を支える法整備が遅れている理由には国会に女性が少ないからということもありますが、SRHRのライツ(権利)には宗教が絡むためという側面もあります。

女性の性的自己決定権を妨げる一つの政治勢力として、宗教団体の存在は大きいです。性的な案件ではあるものの、最近成立した不同意性交等罪は宗教団体が反対しないから実現することができたのでしょう。宗教的に反対勢力が強い案件は、なかなか進まないのが実情です。

宗教とは関係ない経済的合理性のある案件であれば、日本でも法整備は進んできました。人口減少が急速で、女性も働かないと経済が回らないですから、女性活躍推進法などの働く女性をサポートする政策は一定程度の進展が見られます。

選択的夫婦別姓制度は、家族の多様な形を許容し、むしろ夫婦関係を安定させる

国民管理の手法として、明治期に家を単位とする戸籍制度が作られたわけですが、現在はマイナンバー制度のように個人を単位とする制度が整えられつつあります。個人の多様な幸せを実現するものとして、編成し直すことを考えていいのではと思います。

戸籍制度では戸籍筆頭者がいますし、住民票には世帯主が置かれ、個人を対等に扱う制度にはなっていません。地方では「戸主」という法律上の死語が使われることも珍しくありません。自治会が一家一票、家単位で営なまれている地域もかなり多いと思います。すると、総会は男性ばかりになってしまいます。

これだけ働く女性も増えて、今の若い人にとっては共働きがもうデフォルトですよね。妻のほうが稼いでいるとか、妻が先に出世するといったことは、これからいくらでも出てくるでしょう。男尊女卑的な価値観を内面化していると、それは離婚につながるような不仲の原因になりかねない。最初から「対等が当たり前」の制度にしておいた方がむしろ夫婦関係も安定するのではないでしょうか。

結婚したら、男性が相手の女性の名字を変えさせ、戸籍筆頭者になり、世帯主になる。夫婦で新しい戸籍を作るので、「入籍」は理論的におきませんが、婚姻届を出すことがイコール「入籍」だという誤解があります。今はまだこういう関係性が多いので、夫の面子を潰さない範囲で女性が外での活動を控えることも起きているでしょう。

最初から世帯主もなく、家族は夫婦が対等に共同で運営するもの、という制度になっていたら、「家族の形はいろいろ」だともっと気楽に考えられるようになるのではないでしょうか。一人ひとりが幸せになるためにどういう制度が望ましいかを考えていくべきでしょう。

以上

  • 掲載情報は記事作成当時のものとなります。